警察庁が発表した昨年1年間の懲戒処分者数は、前年比27人減の266人となった。4年連続の減少で、統計が残る2000年以降3番目に少ない数になったが、逮捕者は72人から81人に増えた。
発表によると、処分者のうち業務上の不祥事が74人、私生活上が192人だった。理由別では、強制わいせつや盗撮、セクハラを含む「異性関係」が最多の94人、「窃盗・詐欺・横領など」61人、酒気帯びなど「交通事故・違反」36人、「公文書偽造・証拠隠滅」17人。このほか、パワハラや借財など「その他の勤務規律違反」17人、「暴行・傷害など」15人、職務上の不適切事案を含む「職務放棄・懈怠など」12人となった。犯罪行為に起因する処分者が多いことに驚かされる。処分の内訳をみると、免職39人、停職60人、減給118人、戒告49人。階級別は警視以上7人、警部13人、警部補と巡査部長各67人に上った。
本県で対象となったのは3人。いずれも私生活上によるものだった。このうち1人は薬物犯罪に関する捜査を装って女性の車の中を確認したり、一般住宅に侵入し現金を盗むなどし逮捕、免職となった八戸警察署の元巡査長が含まれる。大阪31人、警視庁25人、兵庫18人と比べれば、はるかに少ない数ではあるが、逮捕者が出たこと、元巡査長による行為は衝撃的な内容でもあった。
地域住民の安全と安心を確保するため、事件・事故の対処や未然防止に当たる警察関係者から、逮捕を含む懲戒処分対象となるケースが出るということは何とも本末転倒に思われる。「あってはいけない」「やってはいけない」ことをただすことが仕事である。襟を正して、業務に当たっていただきたい。
一方で、警察関係者の大多数が職務規律を守り、業務に励んでいるわけでもある。一線署での交通取り締まりや交通安全運動といった身近な活動はもとより、交番や駐在所勤務者の地域に根差した活動は住民の安心感を保つことになる。そうした人たちの頑張りがあってこそ、日々の平和が保たれていることも忘れてはならない。
そうした中で、「現職警察官を逮捕」などといった耳を疑うようなニュースが流れることは、警察業務への信頼を損なわせ、精勤している警察官らの意欲をそぐことになる。言うまでもないが、なぜ警察に奉職しようとしたのかを常に考え、初心を忘れずに業務に当たってほしい。
警察への信頼度合いが高いほど、その地域の人々が日常生活の中で感じる治安の状況「体感治安」も良い、というデータもある。確かに「警察など当てにできない」と考える地域住民が増えれば、事故や犯罪抑止にはつながりにくい環境となる。信頼獲得と維持のためには、住民目線で業務に取り組むことが必要だ。