言葉を答えにしたくはなかったー映画『リズと青い鳥』監督・山田尚子×原作・武田綾乃インタビュー（後編）

山田　なんというか、言葉にしていることが正解ではないと思っているんです。あまりその発している言葉を、キャラクターの答えとして見せちゃうと、キャラクターが本当に伝えたいものは伝わらないというか。それで結構すぐ他のところはどう言っているのかな？と思って映しちゃうんですね。なので言っていることがすべてではないというのが、この作品の肝ではあると思います。言葉を答えにしたくはなかったんです。

山田　この作品は『響け！ユーフォニアム』の新作映画を作るというのがまずあったところから始まっているので、エンターテイメントは本編でちゃんとやってくれるから、これはいいんじゃないのかなって思ったんです（笑）。そういうと語弊があるかな。もちろん見ていても楽しいもの、飽きないもの、何かしらの映画体験をしてもらえるものにするという意味では全力を尽くしているんですが、わかりやすい起承転結とか、勝負に勝つ！とかは本編でちゃんとやっているので、そこは甘えて、女の子ふたりの表現に夢中になってもいいのかなと思いました。

武田　原作を書いているときに、ここはどうするんだろう、どう表現するんだろうと思っていたんです。でも映画になると音も付いて表情も付いて、何から何まで付いて、ぐわっと目の前に迫ってきたんです。音楽の力を感じさせてくれるような映像になっていて、ありがたいなと思いました。

山田　私も原作を読んで、どうするんだろうこれ、って思いました（笑）。

武田　書きたいものを書き散らかしてしまったんですよね（笑）。

山田　これはハードルが高いなと。でも原作を読まれているファンの方は、ここに期待を寄せてらっしゃるだろうなと思ったので、そのファンの方たちの期待に応えなければ！と思いました。毎回演奏シーンは一本ドラマというか、何かきっかけが掴めないとコンテを書けないんです。今回はそれを見つけるのにすごく時間がかかりました。でもオーボエとフルートの演奏者の方もすごく感情を入れて吹いてくださったので、それはありがたかったですし感銘を受けました。

山田　ふたりの生活音、ふたりの起こす音から音楽を作っていきたいというところから始まったんです。牛尾さんと打ち合わせをしているときに同時に思いついて、「あーー、先に言ったらあかん！」みたいな感じになって、どっちが先に言ったかということにはなっているんですけど（笑）、ミュージカルにしたいということだったんです。音楽みたいな映画を作りたかったので、そこから着想を得た感じなんです。コンテを切ってテンポだけ決めて、それを牛尾さんに渡して、やり取りをして出来上がったんですけど、やったことがなかったので手探りでした。一度仮で映像を作って音楽と合わせてみて、そこからまた作り直して、みたいなことを何度かやったので大変でした（笑）。

武田　作品を印象づける最初のところだったので、すごく良かったです。あの足音は映画館じゃないとなかなか感じられないんじゃないかなって。普段聞き逃してしまうような音に耳を澄ますというのは、この作品を象徴しているのかなと思いました。