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羽田空港のトイレで出産直後に女子大生はなぜ乳児を殺めたか デリヘルのバイトは「性経験を積むことで女性であると確認したかった」
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「文藝春秋」2月号よりノンフィクションライターの三宅玲子氏による「女子大生はなぜ乳児を殺めたか」を全文公開します。(全2回の1回目/後編に続く)
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「就活の邪魔になると思った」
就活で上京した神戸在住の女子大生(当時)が、羽田空港のトイレで産み落とした赤ちゃんを殺害し、遺体を新橋のイタリア公園に埋めたとして逮捕されたのは2020年11月。事件発覚から1年後だった。
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殺害遺棄前後の女性の行動は不可解で強烈だった。飛行機の中で陣痛に耐え、空港のトイレで産んで窒息死させると、女性は殺害後に袋に入れた赤ちゃんの遺体を持ったまま空港内のカフェでアップルパイと飲み物を注文し、写真をSNSにアップしていた。さらに、殺害動機を「赤ちゃんの存在に困った」「就活の邪魔になると思った」と供述した。加えて女性が裕福な層が通うイメージの大学の出身で、赤ちゃんの父親がアルバイト先である風俗の客だったなどのエピソードは、人々の好奇心と加罰意識を刺激した。
2021年9月24日、懲役5年の実刑判決が下り、裁判長の「就職活動への影響を避けるべく、自らの将来に障害となる女児の存在をなかったものにするため殺害した。身勝手で短絡的(な犯行)」〔※( )内は筆者加筆〕との言葉とともに、共同通信は次のように報じた。
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〈被告は公判で、動機について「頭が真っ白になった。自分でも分からない」と説明したが、判決は「出産時の対応は冷静で、遺体を袋に隠したまま飲食店に立ち寄っており、意識障害も認められない」と指摘した。(中略)「一時しのぎな言動に出る傾向がある」とした被告の精神鑑定結果を引用。「周囲からの失望などを避けるため妊娠を隠し続け、出産やその後に生じる問題を直視せず、先送りしたまま現実に直面し、事件に至った」と結論付けた。〉
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だが、ことは単純ではなかった。背後には私たちが見ようとしてこなかったある問題が隠されていた。