中国「五輪外交」の大一番…38回目の中ロ首脳会談が歴史的転換点となる可能性

今後はどちらが「兄貴分」になるのか
近藤 大介 プロフィール

したたかで老獪な中国外交

習近平主席としても、カザフスタンにはオリンピックで因縁がある。

今回の北京冬季オリンピック・パラリンピックが決まったのは、2015年7月31日のIOC総会だが、北京の他に立候補していた唯一かつ強力なライバルが、カザフスタンのアルマトイだった。そこで同年5月7日、習近平主席自らがカザフスタンを訪問し、「カザフの独裁者」と言われたヌルスルタン・ナザルバエフ大統領に、立候補を取り下げるよう説得を試みた。

だがナザルバエフ大統領は、「カザフスタンでオリンピックをやるのだ」と言って、断固拒否。そこから中国の国を挙げたIOCへの「攻勢」が本格化し、結果は44票対40票という「薄氷の勝利」だった。

そのため習近平主席は、ナザルバエフ大統領のことを「愛(う)い奴」とは思っていなかった。それを今回、騒乱に紛れて、トカエフ大統領がナザルバエフ前大統領を完全に蹴落としてしまったのだから、「よくやった」と思ったはずである。

オリンピック開幕前の多忙な中、1月25日、習近平主席はわざわざ、まもなく北京を訪れる中央アジア5ヵ国トップを集め、「中国・中央アジア5ヵ国国交30周年テレビ首脳会議」を開いた。そこで、オリンピックのスローガンをもじった「共同の運命に手を携え、共に未来へ向かおう」と題した長い演説をぶった。

「中国人は『30歳にして立つ』(孔子)と言う」という前置きから入り、「(30年で)投資を100倍にし、パイプラインや鉄道建設など『一帯一路』を発展させた」「58組もの姉妹都市を制定した」「不穏な勢力(新疆ウイグル自治区の独立派など)から国を守った」などと、30年の成果を誇った。その上で、次の5点を提唱したのだった。

 

1)友好の模範地域にする、2)高質で発展する経済ベルトを作る、3)平和的な防護の盾を強化する、4)多元的で互助的な大家庭を構築する、5)平和的発展の地球村を維持し、保護する。

つまり、中央アジア5ヵ国に、「ロシアばかり見るのでないぞ、経済協力してやれるのは中国なのだぞ」と、念押ししているのである。

同時に、ロシアの大会期間中のウクライナ侵攻を戒めている。さらにはアメリカに対し、「暴力的なロシアと平和を愛する中国は違いますよ」とアピールしているのである。

中国外交は4000年の歴史があり、したたかで老獪だ。このオンライン首脳会議では、何としても大会期間中のウクライナ戦争を回避したいという中国のホンネが滲み出ていた。

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