(旧)本気禁止制限決闘   作:阿音

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公開日:2010年10月10日


28話【襲来 セブンスターズ】

 視点 明日香

 

 

定期的にしている亮との夜の会話

今日も進展は無い……か。

 

「明日香、この頃お前……表情が優しくなったな」

 

何それ? 口説き文句?

全く似合わないんだけど……

 

「そう? 変わらないと思うけど」

 

「良い事だよ」

 

すっごく似合わないわ

そんな事を言ってるからレイちゃんみたいに貴方に夢中になる人が出るのよ

馬鹿な事を言うのは抑えた方がいいわよ?

 

そんな事を考えていると雨が降ってきた

しかも強い……夕立かしら?

この調子ならすぐ収まりそうだけど、その前にびしょ濡れになるわね。

 

「帰りましょ」

 

2人で引き返す

亮はブルー寮へ、私は……ん?

 

今視線の端に何か映った気が……

そちらを見てみるが何も見えない

しかし、雷の光で少し見えた……何かしら?

 

侵入者か……それともただの見間違いか

どちらにせよ、警戒した方が良さそうね。

 

亮もそう思ったらしく頷く

私も頷き、寮へと帰る……

でもその前にちょっと移動して……

 

「ちょっと雨宿りさせて?」

 

「そんな濡れている状態で部屋に入って来るな!

とりあえずさっさと体を拭け! せめて頭だけでもいい!」

 

そう言ってバスタオルを投げ渡してくれる瑞貴

突然の訪問だけど、ちゃんとこれぐらいはしてくれるみたいね。

 

一応体は拭くけど、服まではどうしようも……

風邪をひいたらどうしよう?

 

「はぁ……ほら、俺の服を貸してやるから、トイレででも着替えろ

狭いとは思うがそれぐらいは我慢しろ」

 

そう言って投げ渡されるレッド制服とズボン

なんか瑞貴が親切で違和感が……

 

「着替えないならさっさと出て行け

部屋が濡れたら掃除が大変になるだろうが

だから出て行くか着替えるかさっさと選べ」

 

……前言撤回した方がいいかしら?

前も似たような事を言った気がするわ。

 

でもせっかく貸してくれるって言ってるんだし、素直に借りる事にした

うーん……やっぱり胸がキついわ。

 

「瑞貴、上着は持ってないの?

ちょっと胸辺りがキつくて……」

 

「…………冬用の私服でいいか?

ちょっと暑くなると思うが、まぁ雨だしいいだろう」

 

不機嫌そうな声が聞こえたのでほんの僅かに扉を開けて手だけを出して待っておく

手に何かを持たされたのですぐに引っ込める

無いと思うけど突然開けられたら嫌だもの

……でも少しは意識してくれてもいいんじゃない?

女の子が自分の部屋で着替えてるのよ?

 

普通の冬用の私服ね……でもかなり地味

目立つ事を嫌っている瑞貴からすればそれも当然か

着てみると材質が柔らかいので割と余裕だった。

 

『あの男は誰?』

 

『変人で別名、堅守瑞貴よ

そういえばサラと一緒になってから初めて会ったのよね

でもサラ、突然現れないでよ、驚いたじゃない』

 

『悪かったな』

 

そう言ってサラはすぐに消えた

別に怒ってたんじゃないんだけどね。

 

あの課外授業の後、色々と実験した結果

私が見ようと思えば見える、しかし見たくないと思えば見えない事が判明

別に見たくないという事は無いと思うけどね。

 

見えなくても声は聞こえる

でも精霊は出てくるのに僅かに力を使うので長時間出ていられない

基本的に見えない状態で過ごす事となる。

 

姿を現すには時間を置くか、決闘《デュエル》で使うのが効果的らしい

これからはサラ用のデッキも作らないと駄目ね、瑞貴に協力してもらおうかしら?

魔法使い系のカードは殆ど買ってないから……はぁ、借金が増えていくわ

後で値段だけでも聞いておかないと。

 

他にも、精霊が見えない人には全く見えないし声も聞こえない

試しにジュンコとももえで実験してみた

サラにジュンコ達の目の前に現れてもらったけど無反応

声を掛けてもらったけど、やっぱり無反応だったわ。

 

逆に精霊からは人間の声とかは聞こえるらしい

それに、人間の感情にも割と敏感なので相手がどんな状態なのかある程度分かるらしい。

 

実験相手は同じくジュンコとももえ

相手が怒るかなー……と、微妙な事を言ってみた

表面上はあまり変化が無かったが、サラは少し機嫌が悪くなっていると教えてくれた

逆に喜ぶような事も言ってみたが、サラはこれにも気付き、少し喜んでいると知らせてくれた。

 

これは……凄く助かる!

瑞貴相手だと時々神経を削られるので少しでも感情が分かるのは凄く助かるわ!

あんまり多用できないけど、それでも助かる事には変わり無い。

 

話しを戻して実験結果だったわね

会話は声を出さなくてもできる事が判明したわ

話しているつもりで口パクすれば良いみたい

でも、これってサラが暗殺者《アサシン》だからじゃないかしら?

まぁどっちでもいいわ、変人扱いされないんだったらね。

 

『で、サラ

質問なんだけど、瑞貴の機嫌はどう?』

 

『あの男の機嫌?

少し悪い程度か? そこまで怒っているとは思えない

口程明日香の事を嫌っているわけでもないし……』

 

怒ってない? 突然来て部屋を濡らしたのに?

瑞貴ならかなり怒るかと思ったんだけど……

 

とりあえず着替えにそこまで時間を掛けるわけにもいかないのでトイレから出る

瑞貴は濡れた床の上にタオルを置いて水を吸収させていた

私には見向きもしないの? 少し屈辱なんだけど……

 

「で、いつになったら出て行くんだ?

邪魔だからとっとと帰ってほしいんだが」

 

「この雨の中で帰るのは大変なんだけど……」

 

「知るか、雨宿りなんだったら帰れ

泊まるとか言ったら怒るぞ」

 

「やっぱりそうよね……はぁ」

 

泊まるのは最初から期待してないわよ

それに、前みたいに瑞貴を縛っている訳でもないのに泊まるのはちょっと……ねぇ?

やっぱり心配だし、別になにかされるなんて思ってないけど……でもやっぱり心配だし。

 

『明日香、この男殆ど怒ってない

どちらかと言うと心配してる』

 

『心配!? 瑞貴が!?』

 

『あ、あぁ、全く表には出てないがな

それより私は明日香がそんなに驚いた事に驚いた』

 

だってあの瑞貴が私の事を心配してるのよ!

人の事を借金の弱みに付け込んで使いっ走りにしたり、お説教したり

嫌がらせもするし性格も悪いし何を考えているのか分からないし

そんな瑞貴が私の事を心配してるのよ!

 

『サラ、それはきっと勘違いよ

瑞貴が私の事を心配するはずが無いわ』

 

『断言!?

そこまで思われるこの男は何だ!?

今までどんな関係を築いてきたんだ!?』

 

『瑞貴と話していればいずれ分かるわ

だから少しでも私を安心させるような事は言わないで……油断したら辛いから』

 

『…………頑張れ』

 

精霊に励まされる私って何?

精霊に励まされる私って何なの?

精霊に励まされる私って何なのよ?

 

気付けば瑞貴が少し引いていた

どうやら体で落ち込んでいる事を表現していたらしい

いつの間にか床を叩いていた。

 

「……悩みでもあるのか?」

 

「そんな哀れむような顔をしてそんな悲しい事言わないで!」

 

「………………」

 

「だからそんなに可哀想な人を見るような顔をしないで!」

 

『明日香、本当にそう思ってそんな顔をしてない

だから落ち着け!』

 

サラがそう言うので瑞貴を睨んでみる

暫く眼が合い……溜め息を吐かれた!?

しかも呆れ果てたって感じの溜め息だった!

 

「もういい、傘なら貸してやる、服も貸してやる

だから早く出て行け、どうも今日のお前は変だ

凄まじく鬱陶しいから苛々するし邪魔

出て行かないなら力尽くで追い出すぞ」

 

私に心から呆れ果てたという感情をぶつけてくる

本当に邪魔だって思われているみたい

傘も貸してくれるって言ってるし、早く帰りましょう。

 

『あの男……優しいんじゃないか?』

 

『気紛れなのよ、気分が良い時には優しいわ

今回は気分が良いとか悪いとか以前に、邪魔だから帰れって言ってるのよ

夜も遅いし、寝ないと駄目でしょ?』

 

『そうだけど……何か違和感を感じる

でもよく分からない、行動と感情、思考が全部バラバラ

変な人間ね』

 

行動も感情も思考もバラバラ?

どういう事かしら……でも今は考えてる時間は無さそうね

瑞貴が苛々した様子で足踏みしている

さっさと出て行けって事でしょうね。

 

「わかったわ、出て行くから少しだけ休ませて

体が冷えてるのよ」

 

瑞貴は苛々とした様子で立ち上がり、ポットに水を淹れてお湯を沸かし始めた

暫く経ち、沸騰した所でお茶を淹れて渡してくれた

暖かい所か熱いんだけど……目が飲めの言っている。

 

これ以上睨まれるのは嫌なので少しだけ飲む

……熱い! そして凄く苦い! 更に渋い!

何よこれ!? とてもじゃないけど飲めないわよ!

 

『サラ! やっぱり瑞貴は絶対に優しくないわ!

気に入らないとすぐにこんな事するもの!』

 

『そうだけど……やっぱり違和感を感じる』

 

違和感は全く感じないぐらいの悪意だと思うわよ?

結局、体が冷えていたので苦さと渋さを押して飲み干した

熱いし苦いし渋いしと……ちょっとした悪夢のような時間だったわ。

 

『飲み干さなくてもよかったんじゃ……』

 

『瑞貴相手にその選択肢は無いわ

飲み干さないと何を言われるか、分かったものじゃないもの!』

 

サラは微妙そうな顔をしてるけど、それは瑞貴を知らないからこそできる顔よ!

私も甘かったわ、慣れてきたと思ったら別方向から攻撃されるとは

例えるならビッグ・シールド・ガードナーを出して安心してるのに、マジック・ストライカーを出された気分よ

直接攻撃《ダイレクトアタック》されても困るし、ビッグ・シールド・ガードナーを攻撃されても困る

他にモンスターが居れば攻撃表示になったビッグ・シールド・ガードナーがやられて大ダメージだもの!

 

……あら?

何か少し話しがずれたような……まぁいいわ。

 

お茶は酷い味だったけど体は温まった

傘を借り、服はビニール袋を貰ったのでそこに入れておいた。

 

「じゃあ傘は借りておくわね

明日には返すわ」

 

「二度と濡れて来るな

次に濡れてきたら即刻で追い出す」

 

本気でしそうだから怖いわ

良くて傘を貸してくれるかどうかね

それ以外は全部諦めた方が良さそう。

 

………………

…………

……

 

翌日の授業終了後の事

大徳寺先生の授業が終わった時の事よ。

 

「あぁ、遊城十代君

お昼はちょっと待つのだニャー

私と校長室に行くのだニャ」

 

お弁当を食べようとしていた十代

しかし、大徳寺先生はそれを止める

そもそも十代、教室で食事は駄目よ。

 

それにしても校長室?

また何かしでかしたのかしら?

十代なら有り得るから困るわ。

 

そして退学かと言う翔君の話に乗る万丈目君

でも、その万丈目君も校長室に呼ばれる。

 

「それから三沢君、明日香さん、堅守君も」

 

何かと思うけど校長室なら仕方がない

どうしようかしら……あんまり遅いと数少ないお昼を食べるチャンスが減る

今日は月に1度、瑞貴に食費を借りられる日だったから楽しみにしてたんだけど……

 

10日ぶりのお昼ご飯……校長先生もタイミングが悪すぎるわ

まぁ瑞貴も本当にギリギリしか貸してくれないからね

少しでも余計な事に使うとすぐに無くなってしまうわ、足りなくなったのは自業自得だけど。

 

おかげで体重が……女の子としては嬉しいんだけど

別に太ってもいないのに強制ダイエットは辛いわ。

 

教室を出て校長室に向かおうとするんだけど……

やっぱり寝てるのね、瑞貴。

 

「瑞貴、ほら、起きなさい!」

 

「……んぁ? 昼休みか?

あー……そうだったな、今日は食費を貸す日だったっけ

ちょっと待ってろ、財布財布……寮に忘れた」

 

「ちょ! それは洒落にならないわよ!

私のお昼ご飯はどうなるのよ!?」

 

校長室の件もだけど、どうして今日はこんなにタイミングの悪い日なの!?

財布を忘れたら自分も食べれないじゃない!

瑞貴は平気って言うけど……私はあんまり平気じゃないのよ!

 

「冗談だ」

 

そう言って私に財布を見せる瑞貴

……そうだったわね、瑞貴はこういう奴だったわね

思いっきり相手の気持ちを叩き折るような奴だものね

うぅ……また引っかかったわ。

 

「天上院君、瑞貴、今はそんな事をしている場合か?

校長室に呼ばれてるんだから早く行くぞ!」

 

そんな事……ですって?

今の私にとって凄く大事なお昼ご飯をそんな事?

また戦う機会が有ったら絶対に前よりもオーバーキルするわ!

 

「校長室?

面倒、お前らだけで行ってこい」

 

「そう言わないで一緒に来てほしいのニャー」

 

「大徳寺先生がその鬱陶しい話し方を止めたら行きます

少なくとも俺の前でしないのなら行きます」

 

「これは私の癖なのニャ!

止めるのは難しいし、勘弁してほしいのニャ!」

 

「……うぜぇ」

 

相変わらず敵を作るような事を言うのね

大徳寺先生、ちょっと涙目になってるわよ?

 

溜め息を吐き、立ち上がる瑞貴

そして1人で勝手に先に出て行ってしまう

止めようとするも、向かっている方向は校長室なので文句を言えない

後を追いかける私達、もう少し集団行動というものをしなさい!

 

校長室の前、そこに現れたのはクロノス教諭と亮

瑞貴は先に着いていたらしく、壁にもたれ掛かっていた

私達も早足で来たのにどうやってそんなに早く来たのよ!

……欠伸までしてる!?

 

相変わらずクロノス教諭のレッド嫌いは変わらないわね

十代を馬鹿にする、だけど当の十代は万丈目君が馬鹿にされていると軽く流す

楽しそうだけど、暇そうな瑞貴が立ったまま寝そうよ?

 

なんだかんだで校長室

入って私達が並ぶと校長先生が一言。

 

「三幻魔のカード……」

 

「三幻魔の……カード?」

 

「そうです、古よりこの島に伝わる3枚のカード」

 

デュエル・アカデミアは設立されてから10年も経ってない思うんだけど……

それなのに古って……なんか変な感じね

 

「あれ? この学園ってそんな昔から有ったのか?」

 

「煩い、黙って聞け!」

 

十代と万丈目君、貴方達って仲が悪いんじゃなかったの?

随分仲が良さそうだけど……まぁ万丈目君が一方的に嫌っているだけだけどね。

 

「そもそもこの学園は

そのカードが封印された場所の上に、建っているです」

 

「「「えぇーーー!」」」

 

KC社が考える事はよくわからないわ

凄い事をしているのは分かるんだけど、それでよく経営できるわね

海馬社長の考える事は凡人の私には理解できないのかしら?

 

「学園の地下深くに、その三幻魔のカードは封印されています

島の伝説に依ると、そのカードが地上に放たれる時、世界は魔の世界に包まれ

混沌が全てを覆い、人々に潜む闇が解放される

やがて世界は破滅し、無絵と帰す

それほどの力を持つカードだと、伝えられています」

 

なんともまぁ……大袈裟な話しよね

神のカードでも似たような話が有ったり無かったりだけど

こっちの三幻魔のカードも大概ね。

 

「なんだかよくわかんないけど、凄そうなカードだな」

 

「黙って聞いてるノーね」

 

十代、貴方は暫く口を開かない方が良いわよ?

話しが進まないし、邪魔だから。

 

「そのカードの封印を解こうと、挑戦してきた者が現れたのです」

 

「いったい……誰が?」

 

「七星門……セブンスターズと呼ばれる決闘者《デュエリスト》です

全くの謎に包まれた7人ですが、もう既に1人がこの島に……」

 

やっぱり昨日のは見間違いじゃなかったか

あれがセブンスターズ……雨の中ご苦労様ね

大丈夫かしら? 風邪をひいてたら笑い話なんだけど。

 

「だが、どうやって封印を解くんだ?

鍵か何かでも有るのか?」

 

どうでもいいけど万丈目君、さっきから口が悪いわよ?

瑞貴でさえ、教師にはある程度敬語を使ってるんだから

もう少し丁寧に話したらどうなの?

 

「三幻魔のカードは、この学園の地下の遺跡に封印され

七星門と呼ばれる7つの巨大な石柱がそのカードを守っています

その7つの石柱は7つの鍵によって破られる」

 

そう言って校長先生は小箱を取りだした

小箱の中に鍵が入っているんでしょうけど……小さくない?

だって7つも鍵が入ってるんでしょ?

 

「じゃあ、セブンスターズ達はこの鍵を奪いに……」

 

「そこで、貴方達にこの7つの鍵を守ってもらいたい」

 

「守る……と、言っても

一体どうやって?」

 

「勿論、決闘《デュエル》です」

 

いや、当然じゃない

だって相手は決闘者《デュエリスト》なのよ?

どうしてそこに気付かないのよ……って、瑞貴以外全員驚いた顔をしてる!?

何でみんなそんなに鈍いのよ!?

 

「七星門の鍵を奪うには、決闘《デュエル》によって勝たねばならない

これも古より、この島に伝わる約束事……

だからこそ、学園内でも屈指の決闘者《デュエリスト》でもある貴方方に集まってもらったのです」

 

屈指の決闘者《デュエリスト》?

…………少なくとも三沢君と万丈目君、十代、クロノス教諭は違うような気がするんだけど

大徳寺先生の実力は知らない、瑞貴は私より強い、亮は学園1と呼ばれるから分かる

私自身は……微妙かしらね?

 

「ごほん、まぁ……2名ほど数合わせと予備に呼んだのですが……」

 

そう言って大徳寺先生とクロノス教諭を見る校長先生

でも、予備ってどういう意味?

 

ちなみにクロノス教諭は十代がその2名だと言っている

十代は無視するけど、でもその十代に負けてますよね、クロノス教諭?

 

「この7つの鍵を持つ決闘者《デュエリスト》に、彼らは決闘《デュエル》を挑んできます

貴方方に、セブンスターズと戦う覚悟を持っていただけるのなら……

どうか、この鍵を受け取ってほしい」

 

そう良いながら小箱を開ける

中には7つの平面パズルのような物が入っていた

とてもじゃないけど……鍵には見えないわ。

 

真っ先に鍵を取ったのは十代

すぐに鍵を首に掛ける。

 

「おもしれぇ、やってやるぜ!」

 

それに触発されて亮、三沢君、万丈目君が鍵を取る

私は……どうしようかしら?

瑞貴はもう当然のように取らないし、少し悩むわ。

 

……って、最近何でも瑞貴を基準にしてる気がするわ

自分で言うのも悲しいけど、使いっ走りさせられ過ぎて奴隷根性でも身に付いた?

飼い主に言われるまで行動できない犬?

 

現状、無いと言い切れないのが辛い!

でも瑞貴の用心深さは知ってるし、何か気になる事でも有るのかしら?

 

「ふふふのひー、校長、脅かしはいけませんノーね

要すルーに、学園の看板ンーを、道場破リーが、奪いに来ると考えればいいノーね」

 

「まぁ、今はそう考えてもらっても結構ですが……」

 

そう言って鍵を取るクロノス教諭

それにしても、今は……ね

という事はまだ何か隠してる事でも有るのかしら?

 

「堅守君、天上院さん

貴方達はどうするのですか?」

 

「決めるのは話しが最後まで終わってからですね

話しの途中で受け取り、嫌な事を聞かされては堪らないので」

 

「私は受け取ってもいいんですが……少しだけ考えさせてください」

 

「そうですか、考えてくれるだけでもありがたい

よく考えて決めてください」

 

瑞貴はやはり用心深かった

私も勢いで決めるのは良くないと思うので保留

校長先生は私達の意志を酌んでくれた。

 

「道場破りか……俺だったら一番強い奴から行くだろうなぁ……俺ってか?」

 

「それは違いますノーね!」

 

そりゃそうでしょ、貴方は私にも亮にも瑞貴にも負けてるじゃない

しかも私と瑞貴に負けた時なんて落ち込んでたし

ノリと勢いだとしてもよく言えたわね。

 

「実力で言えば私か、カイザーこと、シニョール丸藤亮なノーね」

 

ま、そう考えるのが妥当かしら?

亮とは戦った事が無いし、瑞貴はデッキが変わりすぎるのでどちらが強いか分からない

クロノス教諭とも戦ってないから何とも言えないわ。

 

「遊城十代、私が密カーに調査した所に依ると

貴方はカイザー亮ォーに、こてんパーンに、負けているノーね

そうデーしょ?」

 

そういうクロノス教諭はその十代に負けてるじゃない

大体、どうやって調べたのよ?

あの場には私と翔君、隼人君、亮、十代しか居なかったはずよ?

誰か隠れて見てたのかしら?

 

「ありがとう皆さん

この瞬間から戦いは始まっています

どうかいつでも決闘《デュエル》のスタンバイをしておいてください

そして必ずや、三幻魔のカードを……七星門の鍵を、守りきってください」

 

そこで私と瑞貴、大徳寺先生の3人以外は解散

この3人が残されたのはまだ鍵を受け取っていないから

返事もしていないので当然とも言えるわ。

 

「では堅守君、天上院さん

お返事をいただけないでしょうか?」

 

「返事の前に質問はいいですか?」

 

「どうぞ、私に答えられる事なら全てお答えしましょう」

 

校長先生相手にも遠慮しないわね

言葉遣い以外は全く変わらないって凄いわ。

 

「三幻魔の伝説は誰に訊いたんですか?」

 

「この学園の理事長です

お年を召していらっしゃりますし、オカルトにも詳しいお人です

おそらく、何か知る切欠が有ったのだと思います」

 

「セブンスターズがこの学園に来るという情報はどこからですか?」

 

「同じく理事長です

あの人は様々な事に関わっているので

そういう話しを聞く事も多いのだと思います」

 

「……謎に包まれてないじゃないですか」

 

それもそうね、それにしても理事長って何者なのかしら?

三幻魔の事も知っている、セブンスターズの事も知っている

何か……何か裏が有りそうな気がしてならないわ。

 

「なら最初の1人がここに来たという証拠は?」

 

「昨夜、この学園に進入しているのを見つけました」

 

「なら警備員か何かに補導させればいいじゃないですか

侵入者なんですよ? 相手が何であれ、捕まえても問題無いでしょう?」

 

「む、むぅ……」

 

言ってる事は間違ってないけど……

面倒って言ってるのが丸分かりよ?

手っ取り早く片付けられるのに何故しないって言いたいんでしょ?

 

「大体、そんなに奪われたら困る物なら最初から決闘《デュエル》をしなければいい

鍵を壊すのも1つの手でしょう?

なのに何を体面か何かに拘って態々相手が奪いやすくするような事をするんですか?」

 

「しかし、そういう約束事なのです

これを変えるわけにはいきません」

 

考えを変えない校長先生

いい加減、瑞貴も苛立ってきている。

 

「あーーーーー……もう、苛々する!

そんな下らない事の為に面倒をしろと? 絶対にお断りします!

他にも鍵を守る手段はいくらでも有るのにしないなんて言語道断!

馬鹿馬鹿しい、俺は帰らせてもらいます!」

 

強い足音を立てて帰る瑞貴

やっぱりこうなったか……今の会話なら当然か

そうでなくとも、面倒事になると分かっている事

嫌がって当然、むしろよくここまで我慢した方よ。

 

「やはり……彼に協力を頼むのは無理でしたか

天上院さんはどうしますか?」

 

私は……どうしよう?

確かに色々と厄介な事になっている

でも、無視できる事じゃない!

 

「私は……私は受けます」

 

私は鍵を小箱から取り出す

でも、取り出すのは2つ。

 

「何故、2つ取ったのですか?」

 

「瑞貴に渡します

負けられない戦いなのなら、必ず彼が必要になると思います

何とか説得してみせるので、私に預からせてください」

 

万が一の事は考えておくべき

そう言ったのは瑞貴、貴方よ

だから私は少しでも可能性を上げる為、貴方を強引にでも巻き込むわ!

 

後が凄く怖いし、何をされるか分かったものじゃないけどね

うぅ……あんまり逆らいたくないわ。

 

「では、お願いします

私も、できれば彼に手伝ってほしかったので」

 

やはり惜しかったんでしょうね

瑞貴は強いから……はぁ、どうやって説得しようかしら?

最悪、また無視されそうで怖いわ。

 

「では、私も失礼します」

 

「うむ、頼みますよ」

 

校長室から出る

出た瞬間、サラが話しかけてきた。

 

『本当に戦う気か?』

 

『えぇ、少しでも可能性が有るのならね』

 

『そうか……お前が決めたのなら私は何も言わない

明日香、絶対に負けるな』

 

『ありがとうサラ、絶対に負けないわ』

 

瑞貴以外になら勝つ自信は有る、亮は微妙だけど

はぁ……瑞貴にいい加減に勝ちたいわ。




※旧後書き
本当に瑞貴は明日香を意識してないの? 主に女の子が自分の部屋で着替えているのに……
特に意識していません
興味がありませんでした
しかし、雨の中何をしてるんだと呆れていました。

精霊での実験の結果って?
特に理由はありません、捏造ですね
アニメの方ではどうなのかは知りません
全部見てないので……作者は光の結社の帝達の辺りまでしか見ていません
全部見てからにしろって?
時間が足りないので……全部見ていたら投稿が10日ぐらい遅くなりそうです
現在は少し先まで見ながら同じ部分を何回か再生しながら書いている状態です。

瑞貴はあまり怒ってないのに随分明日香への態度が……何で?
反応を楽しむ為に態と態度を変えている事も多いので。

瑞貴は明日香の心配してるのに表になんで出さないの?
下手に優しい態度を見せると調子に乗られるかもしれないと思っているからです
見せてもすぐに悪い態度で覆い隠します
なので誰も気付けません。

行動と感情と思考がバラバラって?
行動は相手への悪意、感情は心配、考えている事はどうやって追い出すか
今回はこの違いにサラは違和感を感じました。

例えが軽く意味不明……
自分でも意味不明です、何が書きたかったんでしょうか?

明日香の体重……どうなってるの?
軽くなっています
そして空腹に慣れて最近では空腹状態が割と普通に……哀れな。

校長の話での明日香の思考が……
染まっている証拠です。

瑞貴の質問って……
アニメを見ていて違和感しか感じなかったので代弁して貰いました
特に鍵を守る方法が意味不明でした
鍵を砕けば守れるんじゃないかって思うのは普通じゃないですか?
え? 普通じゃない? そうですか……まぁいいか。

瑞貴……断っても良かったの?
特に問題は無いかと、まぁどちらにせよ後々巻き込まれるでしょうが。


✩感想
セブンスター戦前の状況説明会話回。
特に何も無いですね。

★反省
主人公が大徳寺先生に対して口が悪すぎたかな?
とはいっても、既に正体を知っているので……難しいところです。


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