(旧)本気禁止制限決闘   作:阿音

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公開日:2010年10月09日/2010年 10月 10日 改稿


27話【初めての闇のゲーム】

 視点 明日香

 

 

大徳寺先生が企画した課外授業

古い遺跡であり、入る事を禁止されている場所

曰く付きの遺跡、闇の決闘《デュエル》にも関係しているという話も聞く

私は兄の居なくなった事に僅かでも関係しているかもしれないと思って参加する事に決めた。

 

答えは絶対に断るだと思うけど、一応瑞貴も誘ってみた

返事は当然ながら拒否、理由は体力が無い自分が言っても足手まといになるだけだって

まともな事を言ってる気がするけど、単に面倒なだけでしょ?

 

私以外の参加者は大徳寺先生に中半強引に連れてこられた十代、翔君、隼人君

それに十代が行くと言う話しを聞き、どこからか湧いてきたジュンコの5人ね

瑞貴も誘ったって言ったら十代以外が嫌そうな顔をした……瑞貴、彼らに何かしたの?

 

移動中、崖を登ったり、丸太橋を渡ったり、森林を歩き回ったり

かなり辛かったわ……言い訳だったけど、瑞貴じゃこれは無理ね

多分最初の崖でギブアップしてたんじゃないかしら?

 

隼人君はバテて十代と翔君に背負ってもらっている状態

ジュンコは私よりも体力が有るから少しは余裕そう

そうは言っているけど、私自身ももう疲れたわ……

 

休憩時間も兼ねてのお弁当

ジュンコは自分で作ってきたお弁当を十代に渡してる

微笑ましいわね……翔君が悔しそうに嫉妬心丸出しにしてなければ。

 

十代は気恥ずかしそうにしてるけど嬉しそう

元々十代が持って来ていたお弁当も食べるみたいだけど、ジュンコと分けるみたい

どう見てもラブラブなのに、まだカップルになってないのよね

ちょっと後押しすればくっつきそうなんだけど。

 

そういう私は自作のお弁当

あんまり時間が無かったからちょっと簡単だけどあまり問題じゃないわ

余った分は来る途中に瑞貴に渡してきた、微妙そうな顔をされたけど、少しは自信有るのよ?

帰ったら感想でも聞かしてもらおうかしら。

 

大徳寺先生のお弁当はトメさんに作って貰ったらしい

でもそのお弁当、飼い猫のファラオが勝手に食べちゃったの

分けて欲しいって言われたけど、自分の分を渡す気にはなれないわ。

 

最初は拒否していた十代だけど、ジュンコの分も含めればやっぱりちょっと多い

十代は自分の分を先生に渡す事にした

先生は感謝してたけど、ジュンコが来なかったらお弁当抜きだったのよね。

 

暫く食べていると、突然緑の光の柱がいくつも空に向かって伸びた!?

辺りが緑に輝き、光に包まれる……いったい何が?

 

「どうしたのニャ……太陽が3つに……」

 

大徳寺先生の言う通り、何が起こったのか……太陽が3つに分かれた

分裂したのか、それともただの錯覚なのか……可能性としては後者ね

その理由は現れ始めたオーロラのような虹色の光が辺りを包み込んだ。

 

「こんな自然現象……見た事無いんだな」

 

いえ、これは絶対に自然現象じゃない!

何か原因が有り、それが起こした半人為的な現象のはず!

少なくともこの場に怪しい人は居ないけど……そうでもないか

これを企画した大徳寺先生……最も怪しい人はこの人ね。

 

でも自分まで巻き込まれている時点でちょっと微妙

怪しい事は怪しいけど、決めつけは駄目よね。

 

「綺麗だなぁ」

 

何を暢気な……嫌な予感がするわ

普通じゃ絶対に起こらない事が起こっているのよ

ここは馬鹿みたいに眺めるんじゃなくてどうするかを考えるべきよ!

 

って、今度は雷!? でも音だけ……雷じゃない?

光ってるけど、音と光だけで雷が落ちているわけじゃなさそうね。

 

「みんな、逃げるのニャ!」

 

大徳寺先生の言葉にみんなが一斉に走り出す

でもそっちは遺跡の方じゃ……この場合、遺跡から離れた方が良いんじゃない?

 

だからといって、自分だけ別行動するのは拙い

1人だけはぐれたらどうやって帰るのかと、そういう意味でも困る

連絡手段もそんなに無いんだし、ここは一緒に行くべきね。

 

「遺跡の中へ逃げるのニャ!」

 

怪しい……何故態々遺跡に?

誰も疑問に思っていないのは突発的な事で混乱しているからね

冷静になっている自分が少し気になるけど、今は逆に感謝するべきね

色々と別の視点から見れるのは助かる。

 

みんなが遺跡に入るが十代だけ止まる

邪魔ね、遺跡に押し込もうかしら?

 

「十代、貴方も早く遺跡に入りなさい!」

 

「俺は大丈夫だ、明日香も早く隠れろ!」

 

「ジュンコが心配してるからさっさと隠れなさい!」

 

十代の背中を強引に押して遺跡の中に押し込む

その時、大徳寺先生の顔が一瞬歪んだ……これは黒に決まりね。

 

でも今手出しをしては駄目、何をしでかすか分かったもんじゃないわ

行動に移すのは安全になってから、そして自分の身の安全も確保してからね。

 

今度は別行動に移る

大徳寺先生が何を考えているのか、少しでも知る為にね。

 

「気になる事が有るから少し別行動するわ

貴方達はこのまま隠れてて」

 

「明日香さん!?」「明日香!?」

 

驚かれても関係無い

気付かれない程度に睨んでくる大徳寺先生、本当に何を考えているの!?

 

オーロラから逃げるように走る

しかし、動きは速く、追いつかれてしまった

そして……私の意識はそこで落ちた。

 

………………

…………

……

 

目が覚め、辺りを見回す

ここは……遺跡だけど遺跡じゃない?

 

ふーん、タイムスリップしたか……それともこれも幻覚か

慌ててる場合じゃないわね、今はどうするか考えないと。

 

目の前には遺跡、後ろにはアーチ型の門

ここは確実に、私達がさっきまで立っていた場所ね

となると……タイムスリップ説の可能性が高いわ。

 

しかし考えると色々と変ね

タイムスリップしたと仮定しても、あんなオーロラ程度でするはずが無いわ

そもそも、オーロラが発生する条件を満たしてないわ。

 

詳しい事まで覚えてないけど、基本的に寒い場所でしか発生しない

この暖かいデュエル・アカデミア本校では先ず有り得ないわ

私、一応冬なのに袖無しなのよ?

……冬にここまで足を出して、更に生足でも平気って凄いわよね。

 

そこら辺を見回してみる……やっぱりおかしいわ

ここは本当にどこなの?

 

「そこの貴女」

 

声が聞こえた方を見てみる

褐色の肌の女性……デュエル・アカデミアの人間じゃないのは確実ね

そして足元には隼人君の鞄!?

何故彼女が隼人君の鞄を?

 

「ここは貴女が来るような場所ではない

ここから早く立ち去りなさい」

 

立ち去れるのなら立ち去るわよ

どうやって立ち去れば良いのかも分からないのに、無茶言わないで

何よりも、みんなを見捨てて帰るなんて選択肢も無いわ。

 

何かに気付いた女性は私を壁まで追いやる

少なくとも害意を感じなかったので素直にされるがままにされておく

誰か来たのかしら?

 

「貴女もあの者達のように墓守の衛兵に捕まりたいのか?」

 

「捕まった……ですって?」

 

「シー……」

 

足音……複数の人間ね

なんとか見つからずに済んだけど、あの見た目って……確かどこかで見たような気がするわね

一体どこで……思い出せないわ。

 

「捕まったってどういう事かしら?

その鞄の持ち主の事も知りたい、教えてくれないかしら?」

 

「……ここは神聖な王家の墓

墓を曝かんとして足を踏み入れし者は皆、生きたまま墓に埋葬される」

 

「つまり、みんな殺されるって訳ね

さっきの兵達も殺気立ってたし、処刑されるのは私の友達達ね」

 

彼女は返事をしなかった

無言、つまりそれは肯定しているのと同じ事。

 

「彼らを助けたいわ、どうすればいいの?」

 

女性は暫く黙り込む

何を考えているのかしら?

 

「……貴女も埋葬されますよ」

 

そう言って歩き出す女性

手伝ってやる、しかし責任は自分で取れって事ね。

 

案内された場所は小部屋

こんな場所に案内して、どうするつもり?

 

「この墓は広い、闇雲に歩き回っても衛兵に捕まるだけ

待つのです……」

 

黙って頷く

実際、私にできる事は少ない

できる事なら手伝いたいけど、私はまだ現状を完全に理解できていない

頭の整理もできるし、少し休ませてもらおう。

 

みんな無事かしら……心配だわ

もしここに居るのが他の人だったらどうなってたかしら?

 

十代、勝手に動き回りそうね

翔君、怯えて泣き叫ぶか逃げ出すかしら?

隼人君、頑張るけど……うーん

ジュンコ、逆ギレ決定ね

大徳寺先生、怪しくて信用できないので分からないわ

 

ついでにももえ、ちょっと予想できないわ

万丈目君、怒るけど最終的に助けようとしそう

三沢君、彼の頭脳なら何か思いついたかもしれない

瑞貴、ストレスが溜まって面倒になって勝手に帰りそう

 

…………私なんてまだマシよね?

素直におとなしく待っているんだから。

 

「助けてくれニャーーー」

 

っ! 大徳寺先生!?

外から? でも……高くて届かないわ

どうやって外を見ようかしら……無理ね。

 

「痛! な、何!?」

 

何かで背中を軽く刺された!?

後ろを振り返ってみると……いつの間にこんな大勢の兵士が!?

 

槍兵達に首もとに槍を突き出される

これじゃあ身動きが取れないじゃない!

 

でも……やっぱりどこかで見た事があるわね

服装、顔、武器……もう少し何かヒントが有れば思い出せそうなんだけど。

 

とりあえず、黙ったままでは話しが進まないわね

向こうからすれば私は墓荒らしらしいし、下手な事を言えば問答無用で殺されるかもしれない

どうしてこうなったのやら……はぁ。

 

「私の名前は天上院明日香、友達や知り合いを返してくれないかしら?」

 

私の言葉の後、暫く音が消える

聞こえているはずだし……何を考えているの?

 

「無いとは思うけど、言葉が通じていないとか?」

 

「お前の言葉は分かる

今までにも、お前達と同じ世界からやって来た人間がいた……」

 

私の予想は外れね

タイムスリップじゃなくて異世界への移動だったのね

って、それもまた変でしょ! どうなってるのよ!?

 

「言葉が通じるなら何でもいいわ、私はみんなを連れて元の世界に戻りたい

できれば助けてくれると嬉しいんだけど……そう簡単にはいかなそうね」

 

「理解が早くて助かる

お前達は墓荒らしとして処刑されるのだ

生きたまま石棺の中、葬り去られる

それがここの掟だ」

 

やっぱり……パッと見ピラミッドだったけど、本当にピラミッドだったなんてね

ここはエジプトをモデルにした世界かしら?

太陽が多いのは蜃気楼や目の錯覚をイメージしているとか?

 

そもそも、太陽が3つも有れば地上への熱も半端無いわよ

熱中症になって死んでしまうわ

紫外線はお肌にも悪いし……こっちの太陽はどうなってるのかしら?

 

そして、この手の人達には何を言っても無駄ね

手っ取り早く話しを進めましょう。

 

「その処刑から逃げる方法は?

掟なら、1つぐらい妥協案が有るんじゃないの?」

 

「ふふ、本当に話が早いな

その通りだ、この掟から逃れる手段は存在する

かつて1人だけ、この掟から逃れた者がいるのだ」

 

言ってみるものね、半分ぐらい適当に言ったのに有ったなんて

でも……何をすればいいのかしら?

厭らしい事ならお断りよ!

 

「この掟から逃れる方法

それはわしと試練の儀式を行い、勝たねばならない」

 

そして男が取りだした物……それはカード!?

まさかとは思うけど、決闘《デュエル》しろって事かしら?

 

「決闘《デュエル》すればいいのね?

私が勝ったら、私を含めてみんな元の世界に戻れるのね?」

 

「約束しよう」

 

決まりね……確か以前、タイタンの時に隼人君の鞄の中に決闘盤《デュエルディスク》が……有ったわ!

でもなんで持ち歩いてるのかしら? それなりに大きいのよ?

今回は助かったけど、今度理由を訊いてみようかしら?

 

「お前が負けたら、生きたまま肝を抜かれミイラにされるのだぞ?」

 

「脅しても無駄よ

受けなければ殺されるんだもの、受けた方が生き残れる可能性が高いわ

最初から受けないで諦めるなんて、そんな馬鹿な真似はしない!」

 

「……ふはは、勇気ある若者だな」

 

これは馬鹿にされてるのかしら?

誰でも受けるでしょ? 勇気なんて別に必要無いと思うし

というか、若者って言うけど貴方は何歳なの?

 

………………

…………

……

 

槍兵に槍を突きつけられたまま移動し、決闘《デュエル》できる場所まで来た

段々と思い出してきたわ……この人達、墓守のモンスター達ね。

 

槍兵は墓守の長槍兵、禿の大柄の男は墓守の番兵

先ほどの中年は墓守の長かしら?

異世界って、デュエルモンスターズのモンスターの世界だったのね

まぁ……コスプレって可能性も否定できないけど。

 

墓守と名の付くモンスターは魔法使い族で統一されている

墓守を相手にする時に注意しなければならないカード、王家の眠る谷-ネクロバレー

墓地に干渉するカードを無効にされ、除外する事もできない。

 

私のデッキにはあまり刺さらない効果だけど……邪魔なのには変わりない

でも、相手はテーマデッキに近い

なら私も、ちょっと完成したばかりのデッキで悪いけど相手してもらうわ。

 

それに、このデッキなら墓守に勝てるはず

ちょっと相性は悪いけど、負けるほどでは無いわ

万丈目君に使ったデッキでも勝てそうだけど……あんまり使うと怒らせてしまいそうなのよね

卑怯だって言われそうで……堅苦しい人相手には使えないわ。

 

おっと、少し下がっておかないとね

スカートだし、下には男子生徒が居るんだもの

遠目だから見えないとは思うけど、やっぱり気になるものよ。

 

後……どうでもいいけどジュンコ、その狭い石棺の中でよく十代と一緒の石棺の中に入ったわね

しかもよくよく見てみると嬉しそうだし……しかも十代も満更じゃないって感じ

狭くないの? というか、下手すれば死んでしまうのに暢気ね。

 

「行くわ……決闘《デュエル》!」

 

「儀式、開始!

わしのターン、カードドロー」

 

普通にターンとか、カードとか、ドローって言ってるわね

何度か外の人間が来てるせいかしら?

横文字も覚えられたのね。

 

「強欲な壺を発動! カードを2枚ドローする!

そして裏守備表示で召喚!

更に2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

「私のターン、ドロー!」

 

ふふ、最近妙に調子が良いわ

欲しい時に欲しいカードが来てくれるみたい

今回の手札もなかなかの物ね。

 

「私は永続魔法、六武の門を発動!

このカードは、六武衆と名の付くモンスターが召喚、特殊召喚される度、武士道カウンターを2つ乗せるわ

武士道カウンターを任意の数取り除く度に、必要に応じて効果が発動される!

そして私は六武衆の御霊代を攻撃表示で召喚するわ、これにより、六武の門に武士道カウンターが2つ乗る

更に場に六武衆が存在しているので六武衆の師範を特殊召喚するわ、六武の門に武士道カウンターが2つ乗る

武士道カウンターを4つ取り除き、墓地かデッキから六武衆と名の付くモンスターを手札に加えるわ

私は真六武衆-キザンを手札に加え、特殊召喚! このモンスターは六武衆の師範と同じ召喚方法を持ってるわ

六武の門に武士道カウンターを2つ乗せる、そして場には六武衆が2体以上存在している

大将軍 紫炎を特殊召喚するわ!」

 

「最初から4体ものモンスターだと!?」

 

自分でもこの展開力には驚いたわ、手札が良すぎる……何でかしら?

でも、できれば御霊代じゃなくて裏守備表示モンスターをそのまま破壊できる六武衆-イロウ

伏せカードを破壊できる六武衆-ヤイチ、連続攻撃のできる六武衆-ニサシ

それか生け贄にする事でモンスターを破壊できる六武衆の露払いが良かったわ。

 

「真六武衆-キザンで守備モンスターに攻撃!

キザンは自分の場にこのカード以外の六武衆と名の付くモンスターが2体以上存在している時

攻撃力と守備力が300上がる!」

 

本当は御霊代を師範に装備させたかったが、この攻撃力上昇効果を選んだ

キザンの攻撃力は2100、これなら余程固いモンスターじゃない限り勝てる!

 

表となり、破壊されたのは墓守の番兵!?

しまった! リバース効果が発動され、モンスターを手札に戻される!

 

「墓守の番兵の効果発動!

このカードが表となった時、場のモンスターを手札に戻す!

わしが選ぶのは……大将軍 紫炎だ!」

 

チッ、紫炎はすぐに特殊召喚できるけど攻撃モンスターが減った

キザンの攻撃力の為、御霊代を装備しなくて良かったわ

もし装備していたら装備モンスターを手札に戻されて御霊代は消滅していた。

 

「なら、六武衆の師範で直接攻撃《ダイレクトアタック》!」

 

「罠カード、降霊の儀式を発動!

墓地の墓守を特殊召喚できる!

わしは墓守の番兵を守備表示で特殊召喚する!」

 

蘇生カードを使ってきたか!

仕方無い、一気に潰す!

 

「師範で墓守の番兵に攻撃!」

 

墓守の番兵はリバース効果モンスター

特殊召喚されたから効果は発動しないわ!

 

「続いて御霊代で直接攻撃《ダイレクトアタック》!」

 

どんな攻撃方法かと思えば、周りに纏っている怨念みたいなので攻撃って……

貴方守護霊の一種じゃないの? 随分怖い攻撃するのね。

 

「紫炎をもう一度特殊召喚!

そして御霊代の効果発動! このモンスターは1ターンに1度、自分の場に存在する六武衆の装備カードとなる!

御霊代を師範に装備し、攻撃力、守備力を500アップ!

最後にカードを1枚伏せ、ターンエンドよ」

 

私の場にはキザン、御霊代を装備した師範、それに大将軍 紫炎

そう簡単に崩せる陣形じゃないわ。

 

「ぬぅ……わしのターン、ドロー!

墓守の暗殺者《アサシン》を召喚!

そして墓守の司令官の効果発動!

このカードを手札から捨て、王家の眠る谷-ネクロバレーを手札に加え、発動!」

 

来たか……思ったより早い登場だったわね

でも、私には通用しないんだけどね

だって私の手札には……

 

「ゆくぞ! 墓守の暗殺者《アサシン》で、六武衆の師範に攻撃!

墓守の暗殺者《アサシン》の攻撃宣言時、相手モンスター表示形式を入れ替える、よって師範を守備表示に変更!

更に罠カード、マジシャンズ・サークルを発動する!

魔法使い族が攻撃した時、お互いのプレイヤーはデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族を特殊召喚できる!

…………発動されないだと?」

 

「大将軍 紫炎の効果よ

このカードが場に存在している限り、相手は魔法、罠カードを1ターンに1度しか発動できないわ

貴方は既にネクロバレーを使用している、このターンの使用は不可能よ」

 

「なんだと!?」

 

墓守の暗殺者《アサシン》は止まらずに攻撃を続行

しかし、師範には御霊代が憑いているわ!

 

「御霊代の効果発動!

装備モンスターが破壊される時、装備カードとなっているこのカードを代わりに破壊する事で装備モンスターは破壊されない!」

 

御霊代は破壊されるが、師範は無傷

どうやってこの状況を打破するかしら?

 

「わしはカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

伏せカード……1ターンに1度しか発動できないと分かっていて2枚伏せた

という事はブラフ? それとも用途が違うのか……

 

「私のターン、ドロー!

強欲な壺を発動! デッキから2枚ドローするわ!

永続魔法、六武衆の結束を発動!

六武衆が召喚、特殊召喚される度に武士道カウンターが1つ乗るわ!

私は六武衆-ニサシを召喚! 六武の門と六武衆の結束に武士道カウンターを乗せるわ!

更に六武の門の効果を発動! 武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから真六武衆のキザンを手札に加える!

そしてそのままキザンを特殊召喚! 六武の門と六武衆の結束に武士道カウンターを乗せる!

六武衆の結束の効果発動! このカードを墓地に送り、デッキからこのカードに乗っている武士道カウンターの数だけドローする!

私はデッキから2枚ドロー!

装備魔法、漆黒の名馬を師範に装備! 攻撃力を200上げるわ!

そして……フィールド魔法、紫炎の霞城を発動するわ!」

 

「なんだと!? 新たなフィールド魔法という事はネクロバレーが!」

 

そう、新たなフィールド魔法が発動され、ネクロバレーは破壊される

ふぅ……ネクロバレーを警戒して最初に使わなくて良かったわ

やっぱり後の事を考えておくべきね、これで墓守の攻撃力は500も下がったし。

 

紫炎が場に存在しているから相手は魔法、罠を1回しか使えない

これで終わらせてやるわ!

 

私の場にはキザンが2体、ニサシ、師範、紫炎の5体

総攻撃力はニサシの連続攻撃も含めて11800ね

そこまで高くないけど、それでも勝つには十分な攻撃力よ!

 

でも……できれば連続攻撃よりも伏せカード除去のヤイチが良かったわ

って、これはさっきも言ったわね。

 

「師範を攻撃表示に変更!

師範で墓守の暗殺者《アサシン》に攻撃するわ!」

 

「そうはいかん! 罠カード、聖なるバリア-ミラーフォース!

この効果により、相手攻撃表示モンスターを全て破壊する!」

 

ここでミラーフォース!?

でも、今回は私の運が圧倒的に勝っていたわね!

 

「リバースカードオープン! 速攻魔法、六武衆の理!

更に手札から速攻魔法、六武ノ書を発動!

先に六武ノ書の効果、場の六武衆2体を生け贄に捧げ、デッキから大将軍 紫炎を守備表示で特殊召喚するわ!

私は2体のキザンを生け贄に捧げ、現れろ、紫炎!」

 

キザン達がが居た場所へのミラーフォースは消えたキザン達の場所を通り過ぎる

そしてその場所に現れたのは紫炎、回避成功よ。

 

「そして六武衆の理の効果!

場の六武衆を墓地に送り、墓地から六武衆を1体特殊召喚する!

私はニサシを墓地に送り、ニサシを守備表示で特殊召喚!」

 

ニサシが消え、ミラーフォースが通り過ぎる

ミラーフォースが通り過ぎた後、ニサシが再び場に現れた。

 

「漆黒の名馬の効果発動!

装備モンスターが破壊される時、代わりにこのカードを破壊して破壊から逃れる事ができる!」

 

ミラーフォースの光を受け、師範の身代わりに破壊される真っ黒な馬

もし漆黒の名馬が無ければもっと被害が大きかったでしょうね。

 

最終的に破壊されたのは紫炎だけ

新たな紫炎が現れたので1ターンに1度の制限がリセットされ、相手はもう一度魔法、罠を使う事ができるのが失敗ね

でも、攻撃反応型罠を2枚も伏せているとは思えない

先に伏せていたのは宣言していたマジシャンズ・サークル、残りの1枚は多分ブラフ

攻撃を心配する必要はあまり無いわ!

 

「師範で墓守の暗殺者《アサシン》に攻撃!」

 

「そう簡単に行くと思うなよ!

速攻魔法、ディメンション・マジックを発動!

場の魔法使い族を生け贄に捧げ、手札から魔法使い族を特殊召喚する!

わしは墓守の大神官を、特殊召喚!」

 

そっちで来たか!?

なるほど、ミラーフォースで紫炎を破壊した後で大神官を特殊召喚しようって事ね

紫炎は破壊できるから伏せても全く問題無い、厄介ね。

 

「ディメンション・マジックのもう1つの効果!

相手モンスターを1体、破壊する!

わしは大将軍 紫炎を破壊する!」

 

「大将軍 紫炎の効果発動!

場の六武衆を紫炎の代わりに破壊する事ができる!

ニサシを破壊し、紫炎を守るわ!

この効果は対象を取る効果とは関係無く、破壊される時に発動する!

よって破壊を免れる事ができるわ!」

 

これで紫炎は生き残る

後は紫炎で攻撃したい所だけど、紫炎は守備表示……

墓守の大神官を攻撃し、師範で攻撃すれば大きなダメージを……それも無理か

墓守の大神官の攻撃力は墓地の墓守の数×200上昇する

相手の墓地には墓守が3体、攻撃力は2600となり、攻撃力2500の紫炎では勝てない

六武の門の効果はバトルフェイズ中は使えないし……このターンは見送りになるわね。

 

「私はこのままターンエンドよ」

 

状況はあまり良くない

私の場には師範と紫炎、六武の門だけ

更に手札が無い状態……負けるとは思わないけど勝つのは少し難しいか。

 

「わしのターン、ドロー!

わしは墓守の大神官で紫炎に攻撃!

そして罠カード、マジシャンズ・サークルを今度こそ発動!

わしはデッキより魔法使い族……もう1体の墓守の大神官を特殊召喚!

貴様も魔法使い族を出すがいい!」

 

「私のデッキは六武衆のデッキ、魔法使い族は入ってないわ」

 

戦士族しか入ってないんだもの、魔法使い族を入れる余裕なんて無いわ

それよりも問題は2体目の墓守の大神官……このままでは師範まで倒されるかもしれない!

 

「墓守の大神官の攻撃を続行!

大将軍 紫炎を粉砕せよ!」

 

クッ、紫炎は紫炎の霞城の効果を受けないから相手の攻撃力が変わらない!

師範を身代わりにする意味も無いし、素直に破壊されるしかない!

 

紫炎が破壊され、状況は悪化する!

墓守の長……彼は強い!

 

「もう1体の墓守の大神官で師範に攻撃!」

 

「紫炎の霞城の効果により、六武衆を攻撃したモンスターの攻撃力を500下げるわ!

これで師範と攻撃力は並んだ……相打ちよ!」

 

「甘いわぁ! 墓守の大神官は手札の墓守を墓地に送り、破壊を免れる事ができる!

わしは手札の墓守の呪術師を墓地に送り、墓守の大神官は破壊されない!」

 

拙い! 捨てるのは戦闘後だけど、これで更に墓守の大神官の攻撃力が上昇した!

攻撃力2800……このモンスターに勝てるカードは、デッキには殆ど居ないわ

私の場には六武の門だけ、手札は無い!

 

「もう貴様の負けだ……諦めるがいい

ターンエンドだ!」

 

「私が諦めたら……誰がみんなを助けるのよ!

私はまだ諦めない、絶対に逆転のカードをドローしてやるわ!

私のターン……ドロー!」

 

よし、逆転こそできないけど、まだ耐えられるわ

私の残りライフは無傷で4000も残ってる

ここは耐えて、次のターンこそ、絶対に逆転のカードをドローするわ!

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンドよ!」

 

「諦めの悪い小娘め

わしのターン、ドロー!

墓守の大神官でプレイヤーに直接攻撃!」

 

「罠カード発動! 六武衆推参!

このカードの効果は墓地の六武衆を特殊召喚できるわ!

私は六武衆の師範を守備表示で特殊召喚!」

 

「小賢しい真似を……

墓守の大神官で、六武衆の師範に攻撃! 王家の裁き!」

 

墓守の大神官の持つ杖から青い光が迸る

その光は師範に直撃し、師範は破壊された……

 

「もう1体の墓守の大神官で、プレイヤーに直接攻撃!」

 

先ほど大神官を葬った光が私に向けられる

さ、さすがに攻撃力2800の攻撃ね、威圧感タップリよ。

 

そんな余裕も攻撃された瞬間に胡散した

い……痛い? ソリッドビジョンじゃないの!?

まさか……これが噂に聞く闇のゲーム!?

 

「ふふふ、痛かろう? 苦しかろう?

これが闇のゲームの恐ろしさよ

ターンエンドだ!」

 

本当に闇のゲームだったなんて……これは少し拙いかしら?

残りライフは1200、墓守の長のライフは3500も……

このターンの救いは新たなモンスターを出されなかった事

もし出されていたら、私は負けていたかもしれないわ。

 

「私の、ターン……必ず逆転するわ

だからお願い……来て! ドロー!」

 

状況を打破できるかもしれないけど拙いカードが来た!

このカードを使えば墓守の大神官は更に強化されてしまう!

けど……何もしないよりはマシよ!

 

「魔法カード、天よりの宝札!

お互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにドローする!」

 

「ほぅ、良いのかな?

例え貴様が逆転のカードを引こうとも

わしが更なる逆転のカードを引くかもしれんのだぞ?

わしは手札が1枚なので5枚ドローだ!」

 

「そんな事、言っている余裕なんて無いわよ!

私の手札は0、よって6枚ドロー!」

 

目を閉じたままドローする

何のカードが来たのか怖くて見れない!

恐る恐る手札を確認してみると……まだ戦えるわ!

 

「六武の門の効果で武士道カウンターを4つ取り除き、真六武衆-キザンを墓地から手札に加える!

2枚目の六武衆の結束を発動!

六武衆-ザンジを召喚! 更にキザンを特殊召喚!

六武衆の結束を墓地に送り、デッキから2枚ドロー!

魔法再生を発動! 墓地の魔法カード、六武衆を結束を手札に加え、発動!

六武の門の武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから3枚目のキザンを手札に加え、特殊召喚!

2枚目の師範を特殊召喚! 六武衆の結束を墓地に送り、デッキから2枚ドロー!

更に六武の門の武士道カウンターを6つ取り除き、墓地から大将軍 紫炎を特殊召喚!」

 

「む……むぅ、手札1枚からよくそこまでできるものだな」

 

ちょっと冷や汗を掻いてる墓守の長

でも、我ながらかなり凄い事になっているのは自覚してるわ

実はこれだけして手札がまだ5枚も残ってるのよね……凄まじいわ。

 

「しかし墓守の大神官の攻撃力は2800

貴様のモンスターでは到底勝つ事は不可能だ!」

 

「なら勝てるようにすればいいだけの事よ!

永続魔法、連合軍を発動!

連合軍は場の戦士族、魔法使い族の数かけ、戦士族の攻撃力を200上昇させる!

私の場には戦士族が5体、よって攻撃力は1000アップ!

更に永続魔法、一族の結束発動!

一族の結束は墓地の種族が1種族の時、場の同じ種族の攻撃力を800上昇させる!」

 

「なんと! 合計1800もの攻撃力上昇だと!?」

 

「そう、勝てないなら勝てばいい

倒せないのならダメージを与え続ければいいわ

連合軍と一族の結束により、私のモンスターの攻撃力は墓守の大神官を大きく越えた」

 

六武衆-ザンジ 攻撃力1800+1000+800=3600

真六武衆-キザン 攻撃力1800+1000+800+300=3900

六武衆の師範 攻撃力2100+1000+800=3900

大将軍 紫炎 攻撃力2500+1000+800=4300

合計攻撃力は19600、だけど与えられるダメージは半分にも満たないわ。

 

墓守の大神官 攻撃力2000+200×4=2800

墓守の長のライフは残り3500、これだけのモンスターで攻撃すれば破壊から逃れてもライフが先になくなるわ!

 

でもザンジで攻撃はできない

何故ならザンジで戦闘すると戦闘破壊からの回避に1枚、効果破壊の回避にもう1枚墓守が墓地に送られるから

ライフは削りきれると思うけど、それでもより安全にダメージを与えるならザンジは最後ね。

 

「キザンで墓守の大神官に攻撃!」

 

無抵抗で大神官がそのまま破壊された!?

……そうか! 手札を温存し、更に墓地に送られるので残り1体の墓守の大神官の攻撃力を上げるのね!

墓守の長の残りライフは2400、削りきってみせる!

 

「2体目のキザンでもう1体の墓守の大神官に攻撃!」

 

「墓守の大神官の効果発動!

破壊される時、手札の墓守を墓地に送る事で破壊を免れる!」

 

残りライフは1500、倒せるか?

 

「師範で攻撃!」

 

「墓守の大神官はやられぬ!」

 

墓守の長の残りライフは800

墓守の大神官の攻撃力は3400

もしここでザンジで攻撃したら200ダメージだけど墓守の大神官の攻撃力が3800になる

そうなると紫炎で攻撃しても与えられるダメージは500、ライフが100残ってしまう

私は順番を間違えるような馬鹿な真似はしないわ!

 

「大将軍 紫炎で墓守の大神官に攻撃!」

 

「ぬぐぅぅぅ……がは!」

 

攻撃力差は900で勝ちよ……あ、危なかった

こんな時に少しでも試運転デッキを使おうと思った自分を殴りたくなったわ

もっと安全に普段のデッキかE・HEROデッキを使えば良かった

でも、勝ったんだから今回は良いわ。

 

って、墓守の長が大分苦しんでるわね

墓守の暗殺者《アサシン》や他の墓守達が駆け寄ってるわ

大丈夫かしら?

 

今していたのは闇のゲーム……辛い戦い

心配だわ、少し近づいて様子を見た方が良いかしら?

 

「あの、大丈夫っ!?」

 

近づいて声を掛けた瞬間、長槍兵と番兵に槍を突きつけられた

呪術師には杖を向けられるし、ちょっと怖すぎるわよ!

 

「止めよ!

少女よ……見事な決闘《デュエル》だった」

 

今度は少女なのね

小娘って言われたり貴様って言われたりだったけど。

 

「いえ、長も強かったわ……何度冷や汗を掻いた事やら

良い決闘《デュエル》だったわ……試練とかを抜きにまた戦いたいものね」

 

「なんと、あの闇のゲームを体感して

また戦いと申すか?」

 

「さすがに闇の決闘《デュエル》は嫌だけどね

でも異世界での決闘《デュエル》よ? 少しは楽しかったわ

最近圧倒的に勝つか負けるかばっかりだったし、久しぶりに良い勝負ができて嬉しかったわよ」

 

勝ったのは十代の時と万丈目君の時

負けたのは瑞貴ね、レイちゃんとはそれなりに良い勝負だったけど最後は一気に……ね

本当、久しぶりにお互いギリギリの戦いをしたわ。

 

「闇のゲームを少しとはいえ楽しむとはな

以前試練を乗り越えた者は楽しむ余裕など無かったのに……」

 

そう言って長は首に掛けていた金細工を取りだした

でも欠けてる? 半分ぐらいに割れてるわね。

 

「受け取るが良い」

 

渡された金の飾りを受け取る

これ……どう表現すればいいのかしら?

面倒だし、首飾りでいいわ。

 

「残りの半分は試練を乗り越えたもう1人の男が持っている

お主がまた闇の決闘《デュエル》を受ける事になった時

そのアイテムがきっと……助けになってくれるだろう」

 

呼び方がお主になったわね

それにアイテムって……また横文字?

でももう闇の決闘《デュエル》は懲り懲りよ……はぁ。

 

「ふぅ、できれば闇の決闘《デュエル》はもうしたくないけどね

もしもの為に、ありがたく受け取っておくわ」

 

長は石棺に指先を向ける

すると石棺の蓋が開いていった……

あら? 最初より何で閉じてたのかしら?

 

それにジュンコ、すっごく幸せそうな顔してるわよ

十代も顔が真っ赤だし……体が縛られていたのに密室空間で何してたのよ?

私は体を張って助けたっていうのに。

 

………………

…………

……

 

長と暗殺者《アサシン》に案内されてピラミッドを下りる

するとそこでは十代達が待っていた

ちなみに、ジュンコは十代の腕を取って恋人のように寄り添っている

で、くっついてるの? それともジュンコが想いと体を寄せてるだけ?

 

「さぁ、仲間達と共に元の世界に戻るが良い」

 

「そうは言うけど、どうやって戻るの?」

 

長は空を見上げる

釣られて私達も同じように空を見上げる

でもジュンコだけは十代の顔をジッと見てる……はぁ。

 

「天の3つの光、1つに重なりし時

光の幕が現れる前に、王家の墓の門より出でよ」

 

あの太陽って交わる物なの?

とりあえず光の幕は来る時に見えたオーロラの事よね

オーロラじゃないって事は確かだけど。

 

突然複数の足音

何かと思って見てみると墓守の長槍兵と墓守の番兵が構えている!?

 

「お前達、何をしている!」

 

「王家の墓を荒らす者には裁きを!」

 

「「「「「「「裁きを! 裁きを!」」」」」」」

 

裁きと連呼しながら近づいてくる衛兵達

怖いんだけど滑稽に見え、更に暑苦しいわよ?

 

「止めろ! この者は掟に従い儀式を行い、それを乗り越えたのだ!」

 

「裁きを!」「裁きを!」

 

頭の固い人はこれだから嫌いよ!

あぁもう! どうしろって言うのよ!

 

危うく槍が当たりそうになった時、墓守の暗殺者《アサシン》が助けてくれた

しかしフードが脱げ、素顔が露わになる

その顔は私が最初に出会ったあの女性だった。

 

「ごめんなさい、私は墓守の暗殺者《アサシン》

墓守の長の言う事に逆らう事はできなかった」

 

逆らう事ができればそれはもう暗殺者《アサシン》じゃないわよ?

いや、弁護するのも変なんだけど……何か変な気がするわ。

 

「貴方達の世界に帰ったら、その半身のアイテムを持っている人に伝えて

サラは例え異世界に居ても、貴方の事を忘れません

またいつかお会いできる日を信じています……と」

 

二度と会えないだろうと、分かってて言ってるのね?

ならばその願い……絶対に受け取らないわ!

 

「お断りよ、本当に信じていない人の言う事なんて聞かないわ」

 

「…………ふ、そうか」

 

自分でも分かってるのにね

でも私はお願いされたら断れない性格なの

だから強引にでも……

 

「動くな、この少女は儀式を勝ち抜いたのだ

神聖なる墓守としての誇りを忘れたか

この者達に手を出す者は、私が容赦しない!」

 

近づいてきた衛兵達の前にサラは一喝

衛兵達は下がっていき、道を開ける

なんというか……女性1人に情けないわね

番兵は攻撃力1000だから仕方無いけど、長槍兵は暗殺者《アサシン》と同じ攻撃力1500なのよ?

もう少しその……何か無いの? されたら困るけど。

 

「さぁ、今の内に」

 

「どうすればいいのか分からないわ

貴女が案内して頂戴」

 

「いや、それは後ろの精霊が知っているさ」

 

後ろを見てみるとハネクリボー

なるほど、ようやく彼女達の事が分かったわ

彼女達も精霊って事なのね……この異世界は精霊の世界か。

 

「悪いけど、念の為に着いてきてくれないかしら?

無いとは思うわ、でももしハネクリボーが道を間違えたらと思うと心配なの」

 

後ろで十代とハネクリボーが怒ってるけど無視

私は少しでも可能性を上げ、心配を減らしたい。

 

「でも……」

 

「行くが良い

それぐらい構わぬ」

 

「はっ!」

 

こうして中半強引にサラを連れ出す事となった

ハネクリボーも飛び立ち、その後を追う私達

空を見上げると空の光がもうすぐ交わる、急がないとならないわね!

 

そう思った矢先、隼人君が転けた

しかもその倒れた拍子に伸びた手に押されたジュンコも巻き込まれる

だ、大丈夫?

 

隼人君は膝を強打、ジュンコは足を挫いた

どちらも走れる状態じゃない!

 

そう思っていると太陽が交わり、光の幕が現れる

どうすれば……このままだと2人が!

 

すると隼人君の鞄が光り、その中からデス・コアラが!?

隼人君を背負うけど、ジュンコがまだ……

 

「彼女は私が運ぼう」

 

サラはジュンコを抱き上げ、走り出す

私達はサラを先頭に、デス・コアラ、私、大徳寺先生、翔君、十代と並んで走る

太陽が殆ど重なり終える時、なんとか私達は門まで来れた。

 

しかしその瞬間、下から緑の光が現れる

ジュンコを置き、この場から離れようとするサラ。

 

「っっ! な、何をする!」

 

「駄目よ、逃がさないわ」

 

「な!? はな、放せ!

私は墓守としての……」

 

「私には関係無いわ

さぁ、異世界に渡りましょう!」

 

私が言い終えた瞬間、緑の光が一面に広がる

でも、サラは逃がしてあげない。

 

………………

…………

……

 

目が覚める

辺りを見回してみると……元の世界に帰れたみたいね

門が古く、苔が生えている。

 

夢みたいだった、でも私の首には長に貰った首飾りが残ってる

更に私の横には……

 

『………………』

 

私を睨んでいる半透明の墓守の暗殺者《アサシン》、その名をサラ

ふふふ、予想は大当たりね。

 

十代がハネクリボーを見ても全く反応が無かった

つまり、それまでにもハネクリボーが見えていたという事になる

こちらにも精霊はある程度干渉できる、その予想は当たった。

 

更に私の手には墓守の暗殺者《アサシン》のカード

十代はハネクリボー、隼人君はデス・コアラ、私には墓守の暗殺者《アサシン》が精霊になったわ。

 

『………………』

 

「そんなに睨まないで

少しは悪かったって思ってるんだから」

 

『……目的は?』

 

「決まってるでしょ

あの伝言、自分で伝えなさい

私は瑞貴以外の使いっ走りになりたくないわ」

 

借金でだしね

もうその件以外で使いっ走りになりたくないの

別に命令とかじゃなかったけどね。

 

『余計な真似を!』

 

「そうは言うけど、少しだけ顔が緩んでるわよ?

本当は嬉しいんじゃないの?

その男の人に会える事が」

 

サラは顔を隠す

でも実は緩んで何て無かったわよ

カマを掛けただけ、引っかかるとは思わなかったわ。

 

『はぁ、来てしまったものは仕方無い

もうこんな事はしないでくれ』

 

「分かってるわよ

嫌われたくないしね」

 

サラは再び溜め息を吐き、消える

どうやったのかは知らないけど、部屋に戻ったら色々と試してみましょう。

 

再び辺りを見回してみる

大の字で寝ている隼人君と、その隼人君にもたれ掛けている

大徳寺先生は仰向きに倒れており、その顔の上には猫のファラオが……呼吸できるの?

十代は門の柱に背中を預けており、隣には十代の肩に頭を乗せ、もたれ掛かっているジュンコ

ちなみに私は十代達と反対の柱にもたれてたわ。

 

『クリクリー』

 

「あら、ハネクリボーじゃない」

 

『クリ?』

 

「こんにちは、さっき振りね」

 

『クリ! クリクリー!』

 

「あはは……

何言ってるのかサッパリ分からないわ」

 

『クリー……』

 

十代は分かっていたんだけどね

クリ語でも覚えてるのかしら?

 

全員を起こし、学園に帰る

ちなみに、隼人君とジュンコの足は治っていた

理由はよくわからないわ。

 

帰って色々と試さないと

サラと話してたら変な人だと思われちゃう

どうにかして声を出さないで話す方法が無いか試さないとね。




※旧後書き
瑞貴が明日香の誘いを断った理由は?
面倒だからです。

実際に瑞貴が参加してたら?
挫折していました。

明日香と瑞貴はどう見てもカップルです、本当にありがとうございました?
でもお互いにそう思われている自覚が有りません
鈍いのか馬鹿なのか……

明日香が鋭い!?
瑞貴に付き合っていると自然と……可哀想に
本人にもあまり自覚が無いようですしね。

げ……原作ブレイクも大概にしろ!!!
しかし十代だと書く事が無く、薄っぺらい内容に……
内容も短くなるでしょうし、楽しみも減るかと思いました。

で、それで大丈夫なの?
さぁ? どうにかしようとは思いますけど……
しかし原作の主人公って誰でしたっけ?
明日香ですよね? あれ、十代でしたっけ?

明日香が冷静だ……
どうしてこうなった……どうしてこうなった……

明日香はどこから墓守の知識を?
瑞貴からです。

ジュンコは余裕だな!?
十代と一緒ですから
吊り橋効果で更に好きになったんじゃないでしょうか?

六武衆!?
いや、戦士族で探したら見つかったのでなんとなく……
ちなみに、作者は六武衆を1枚も使った事がありません。

展開力すげぇ!
BFやライトロードを越えている気がします
本当にリアルでできるんでしょうか?
できそうな気がしてなりません。

墓守の長の手札が違う……
原作だと弱すぎて話しになりません
なので強化、更に墓守の大神官という最近のカードまでちょっと加えました
ちなみに、墓守の巫女も入っていますが未登場ですね。

連続でサクリファイス・エスケープってできるの?
ちょっと自信が無かったり……できますかね?
できないと大幅修正の必要が出るんですが……
割と序盤なので修正するには凄く大きな変更になるので変えられず……どうしましょう?

石棺が閉まっていった事に気付いてなかったの!?
そんな余裕は有りませんでした
十代とは違うんです。

ジュンコーーーーーー!
もう溺愛……どうしてこうなったんでしょうか
あ、やっぱりキスさせたからですかね?

もう十代とジュンコくっつけよ!
まだくっつきません
何か切欠が有れば……今回は切欠じゃないかって?
だって、閉じ込められただけですよ? シチュエーションとして微妙じゃないですか。

明日香さん! な、何をなさってるんですか!?
サラを捕まえました
どうしてかって? なんとなく……いや、冗談ですよ?
主な理由は原作ブレイクしたかったのと、サラが何だか可哀想だったからです。

実験結果は?
不明、まだあまり考えていません。


✩感想
体力の低い主人公は来ませんね、好奇心は強い方ですが古い遺跡に興味は出なかったみたいです。
そして十代とジュンコが……カップルになってあまり時間が過ぎていないのにこのリア充っぷり。
そして明日香が六武衆を使い始める回、この時期はまだ真の方は出ていなかったんでしたっけ?
加えてあまり使いこなせていないようです。

★反省
明日香が精霊を見る事ができるようになったのはいいものの、それにその後有用に働く場面の少ない事……
今回、明日香が決闘をした理由は鍵の時にアレをしたかったからです。
それにしても明日香は主人公をしていて十代はヒロインしていますね……イケメン系ヒロインだから仕方ないかも?


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