視点　明日香

学園対抗試合の出場者決定戦

瑞貴対十代の試合ね

試合なんだけど……

「ドロップアウトボーイ、シニョール堅守はどうカしましたか？」

「さ、さぁ？

俺だって瑞貴との決闘《デュエル》を楽しみにしてたんだけど……」

「むむむ、シニョーラ天上院、シニョール堅守はどこに居るか知ってマスか？」

「私も知りません

友達に部屋を見に行ってもらったんですけど見当たらないそうで……」

どうやら瑞貴……逃げたらしいわ

昨日の戦いと悪目立ちがよっぽど嫌だったんでしょうね

でもまさか逃げるとは……どこに隠れた事やら。

「現れない事には仕方有りません

学園対抗試合には遊城十代君に出てもらいましょう」

「ちょちょちょ、ちょっと待つノーね校長！

あんなドロップアウトボーイを出すなんて……

そうだ、シニョーラ天上院、貴女がドロップアウトボーイと戦うんでスーの！」

「いえ、私は瑞貴に負けた立場なのでちょっと……」

本当は瑞貴と戦いたくて出ただけだしね

十代とはこの前戦ったばかりだし、疲れるから遠慮しておくわ。

「えー、いいじゃんか明日香

この前の借りも返したいし、俺と決闘《デュエル》しようぜ！」

はぁ……そのノリが無理なのよ

それに１度受けたら際限なく言い寄りそうだし

疲れそうだからできれば十代とは戦いたくないわ。

十代に返事をしないで出て行く

どうしようかしら……瑞貴を探すにしてももう遅いし

適当に時間でも潰してましょう。

　視点　瑞貴

学園対抗試合の出場者決定戦から逃げ切ったぞ……疲れた

絶対に出たくないから誰も予想できない場所に隠れてたんだ……校長室にな

ふ、誰が気付くだろうか、校長室の鍵ぐらい簡単に開けられるさ

鍵や電子ロックを解除する為に必要な物は全て複製したからな

このマスターキーが有ればこの学園のどこにでも行けるのさ、金も時間も掛かったがな。

それにしても間に合ってよかった

このマスターキーが手に入ったのは学園対抗試合の出場者決定戦の明日香と戦う前日だったからな

いや、おかげで当時の貯金の半分ぐらい消えちまったよ

気付かれないように複数の場所に依頼したからな

今後役に立つんだし、持っておいて損は無いだろう。

まぁ、今は更に金は増えていてとっくに消費分を取り返してるけどな

しかし……プチモスを５万も出して買った馬鹿は誰だろうか？

こっちでは完全に絶版になってて手に入らないとはいえ、プチモスだぞ？

余程の昆虫族マニアか金持ちの道楽だろうか……

同じく絶版になっているトモザウルスに４万も出す馬鹿も居るし

こっちのカード状況は軽く意味不明だな

本来なら手に入らないモンスターだから余計に欲しいのか？

馬鹿の考える事はよくわからん。

試しに絶版カードとなったかなり初期のカードをオークションに出してみた

勿論、セットなんかじゃなく全部別で

……各カード最低３万で売れた、攻撃力１０００以下の通常モンスターに何故そこまで金を掛けるんだ？

しかもコンボも難しい上、種族統一にしても役に立つかどうか……ファンデッキにしか使えん

ちなみに最高は２０万で禁止カードのブラックホール、使えないのに何故買ったのだろうか？

禁止カードじゃファンデッキさえ組めないのにな。

今度は同じく絶版になっている弱い、しかし何故かレア度の高いカードを出してみた

同じくセットじゃなくて全て別々でだ

…………各カード最低１０万で売れた、どこの馬鹿だろうか？

最高は５０万、試しに買った馬鹿を調べてみると……万丈目グループ！？

で、買ったのは……ドラゴンの秘宝！？

攻守３００しか上昇しないドラゴン族の装備魔法かよ！

お前ら、レア度しか見ないで効果を知らずに買っただろ！　絶対にそうだろ！？

そういえば万丈目グループっていや世界でそれなりに有数のグループだっけ？

まぁ中堅クラスの実力だろう、KC社やI2社に比べたらな

他にも大手でもっと強いグループは有るしねぇ。

金に物を言わせてそれなりにやんちゃしてるらしいし

今回のドラゴンの秘宝もその一部だろうか？

じゃなきゃ持ってても無駄になる可能性の高いカードを買うわけが無いな。

よし帰るか

そろそろ帰らないと校長が帰ってくるだろうしな。

帰っている途中で何人もの生徒と擦れ違った

睨んだり、何を考えているという顔を向ける奴が多かった

別にお前らにどう思われたって出たくないものは出たくないんだ。

特に知り合いにも会わずに帰れた

はぁ、まったく面倒な……

そう思いながら部屋に入る。

…………お前らな、殴ってもいいよな？

「おかえりなさい瑞貴

ちょっとお茶を飲ませてもらってるわよ」

「何で今日の決闘《デュエル》に来なかったのよ！

十代なんて凄く楽しみにして待ってたのよ！」

「この人に何を言っても無駄ですわジュンコさん

怒りたい気持ちはよく分かりますが」

こいつらは……

「明日香、とりあえず俺の部屋のスペアキーを返せ

そして二度と俺の部屋に来るな」

「鍵は今すぐ返すわ

だから部屋に来るなっていうのは取り消して」

別に取り消さなくてもいいんだけどな

まぁ使える時も来るだろうし、これぐらいはいいだろう

後で面倒事を押し付ければいいし。

「で、何の用だ？」

「学園対抗試合の出場者決定戦

何で十代と戦わなかったの？」

「そうよ！

十代はね、昨日から凄く楽しみしてたのよ！

あんたに勝つ為にデッキの調整を遅くまでして

あんたと戦った私やももえに質問までしてきたのよ！」

「そうですわね、絶対に勝とうって気持ちが溢れてましたわ

楽しそうにもしれましたし、それを無下に扱うなんて酷くありませんこと？」

１の質問に３で答えるな！

鬱陶しいっての！

「はぁ……面倒」

「「「一言で切り捨て！？」」」

「って、それで納得できるわけないじゃない！」

「瑞貴なら私は納得したわ

よかった……昨日は強引にしておいて」

「明日香様、そんな事を言うとまた怒られますわよ？」

「もういい、お前らちょっと黙れ」

その１はともかく、明日香は納得し、その２は何か変じゃないか？

こいつら……本当に何がしたいんだ？

俺に文句を言いに来たのか？　それとも遊びに来たのか？

「とりあえず俺は出る気は無い

また強引に連れ出される可能性を考えて逃げさせてもらった

例え出て十代に勝ったとしても対抗戦に出る気も無い

出場権は十代に譲ってやるよ」

「譲る譲らないは置いといて

それなら出てもよかったんじゃないの？」

「明日香さんの言う通りよ！

十代と戦うぐらいいいじゃない！」

「というか、最初から勝つ気満々なんですのね

どこからそんな自信が出てくるんですの？」

だから俺の１に対して３の返事をするな

邪魔くさいし、面倒だろうが。

「はぁ……何を言っても無駄なんだろ？

お前らは俺に何をさせたいんだ？」

「あら、瑞貴にしては諦めが早いわね」

「これ以上の問答は無駄だと判断しただけだ

疲れるし、時間も無駄に過ぎていくだけだろうしな」

「私達も同じ事を考えてたわ

瑞貴に何を言っても多分無駄だろうってね」

一応試しに言ってみたって所か？

こいつらの目的は何だ？

嫌な予感がする……逃げた方がいいような気がする。

「（ん？　瑞貴が逃げ腰に……何か気付いた？）

ジュンコ、ももえ、先手必勝よ！」

「「はい！」」

やっぱり何か企んでやがった！

急いで逃げ出すがその前にその２が俺の腰に抱きついて来やがった！

重い！　離せ！　邪魔だし暑苦しい！

そのまま押し倒され、見上げるとその１が……とりあえずそこに立つのは止めた方がいいぞ？

何故かって？　あー……白とだけ言っておこう、不可抗力だから怒られる云われは無いよな？

「ぐぁ！　背中に座るな両手を押さえるなその１！

その２も！　腰に座って足を押さえつけるな！

明日香！　これはどういうつもりだ！？

そして何よりも貴様ら重い！　ブルーの豪華な食事で太ったんじゃないか！？」

「重いって言うなぁ！」「太ってなんかいませんわ！」

チッ、重いって言えば反射的に退くかと思ったのに……

もっとたたみ掛けるべきか？　何度も言われればさすがに退くだろう。

「どう考えても重ぐぅむ！？」

「女の子にあんまりそういう事は言わないの

悪いけど口を塞がせてもらうわよ？」

明日香め……俺が更に言うと気付いて先手を打ちやがったな！

後、お前も目の前にしゃがむのは止めた方がいいぞ

理由？　だからその……なぁ？　青で派手なのはちょっと似合わないぞ？

というか、それはその１でお前は何となく白じゃね？

その１は海系カードの使い手だし、お前は後々白くなるだろ？

あんまり覚えてないけど……何が起こったんだっけ？

で、俺を押さえつけるのはともかく縛るのはどういう事だ？

足を縛られ、手は後ろでに縛られ、腕も縛られて芋虫状態なんだが

猿轡をされてないだけマシなのだろうか？

ちなみに、縛っている物は縄が見つからなかったのか布だ。

「おい」

「だって逃げるでしょ？」

「だからって」

「縄が無かったし、布ならそんなに痛くないわよね？」

「しかし」

「ちゃんと説明するから焦らないで」

……先手先手を取って返事するなよ

最初は何故縛るか、次は何故布なのか、最後は縛る意味は

それを訊こうとしたのに先に返事された。

うーん……こいつには色々と見せすぎたか？

行動原理や思考がけっこう読まれてるな

次から別の奴と知り合った時には注意しないと

今回の事は反省するべきだな、付き合いが長くなるとこうなるってな。

「はぁ……とりあえず落ち着いた

だから話せ、そして放せ」

「最後のは却下よ

説明すると簡単、対抗戦の決闘《デュエル》だけどね

無理を言って明日に延期してもらったわ」

お前ら何しやがる！　何という余計な事を！

もしかしてそれまで俺はこのままなのか！？

「予想はできてると思うけどそれまでこのままよ

瑞貴の事だから何もしないとまた逃げ出しそうだしね」

泣いていいよな？　俺は泣いてもいいよな？

怒っていいよな？　俺は怒ってもいいよな？

切れていいよな？　俺は切れてもいいよな？

殴っていいよな？　俺は殴ってもいいよな？

潰していいよな？　俺は潰してもいいよな？

結論、そんな気力も出ないぐらいテンションが低い。

「諦めた……もう疲れた……俺は寝たい」

「寝るのはいいけど、先にデッキを決めておきなさいよ

またももえに適当なデッキを使われたらどうするのよ？」

「うっさい、余程酷いお遊びデッキじゃない限りどのデッキでも十代ぐらい潰せる

が、もし俺があいつと戦う時には使うと決めているデッキが有るからそれを使う

足は解かなくていいから腕ぐらい解放しろ、できんだろうが」

「凄い自信ね、でも駄目よ

デッキは私達が取るから場所を教えて」

「絶対に嫌だ、自分の事ぐらい自分でする

させないと言うのなら決闘《デュエル》した瞬間にサレンダーしてやる

どんな文句を言われようとも絶対に戦わん

退学させられようが何されようが絶対にしない」

本気で俺が実行すると気付いた明日香は溜め息を吐きながら腕を解放する

まったく、肩が凝るだろうが。

俺は棚を開け、デッキを取り出す

十代と戦う気が全く無かったから使うとは思わなかったが……まぁいいだろう

このデッキを使えば大半の奴はやる気を失うか気力を無くすだろうし

十代のチートドローが逆に仇となるデッキだからな。

棚を閉めてロックを掛ける

早く金庫届かないかなぁ……高かったんだから早く来いっての

８重ロック式の金庫に６重の鍵を掛けておくからな

開けるのが毎回面倒そうだが……それでももう少し強固にしたいなぁ

赤外線探知機でも入れるか？　かなり高そうだけど別にいいかな。

デッキを決闘盤《デュエルディスク》に差し込む

勿論、デッキ内容はこいつらに見せたりしない

今回に限ってはこいつらは十代側、言いに行くとは思わないが念の為にな。

再び腕を縛られる

俺は縛られて喜ぶような趣味は無い

むしろ縛って楽しむ側だ。

「で、まだ夕方なんだが……

俺は明日までこのままなのか？」

「そのつもりよ

見張りは私がするわ」

だからその１とその２はもう帰ったのか

しかしお前な、縛られているとはいえ男を相手によく見張りなんかするな

誰か代理を頼まないか？

「……食事は？」

「食べさせてあげる」

「トイレ」

「う、腕さえ解けば大丈夫でしょ？」

「…………○○」

「な、何を言うのよ！？　我慢して頂戴！」

「チッ」

「舌打ちしないの！」

これは逃げるのは無理そうだな

明日香は小娘の時に泊まったし、また泊まる事にそう抵抗は感じないだろう

俺も縛られてて動けないからな。

「完全に解放しないともっと言うぞ」

「セクハラで訴えるわよ！？

それに貴方の見張りなんて私にしかできないわよ！

他の人が貴方の見張りをできるはず無いじゃない！」

「そうか？」

見張りぐらい別にできると思うが……

何か問題でも有るのか？

「貴方の毒舌に耐えられる人材が居ないのよ

本当だったら誰か男子に頼もうと思ったんだけど……

ブルー生徒に頼んだら暴力を振るいそうだし

イエロー生徒は貴方の事を怖がっている人が多いし

レッド生徒にそんな度胸の有る人は居ないわ」

なんか微妙な事を言われた気がする

悪い気はしないんだが、嬉しくもない

俺ってそんなに毒舌かねぇ？

弱みに付け込んで苛めるのは得意だけど。

「そういえば、俺をこうすると言い出したのは誰だ？」

「ジュンコよ

十代と戦わずに待たせたのが余程気に入らなかったんでしょうね

私とももえにどうにかして貴方と十代を戦わせたいって相談されたわ

私は反対したんだけどももえは賛成

最終的には押し切られて私まで手伝う嵌めになったの」

「わかった、とりあえずその１にはお灸を据えねばならないらしい

その２も、あれだけ説教したのに反省してないらしいな

お前は長時間説教か借金１割増しのどちらがいい？」

「借金１割増しで

もうあのお説教は二度とされたくないわ」

チッ、せっかくまた拳骨できると思ったのに逃げられた

しかしその２はどうするかな……あいつは何度言っても無駄らしい

あいつは俺を怒らせてそんなに楽しいのか？

でもいつまでも説教してると嫌な予感がする

気のせいか昨日の説教が終わった後、俺を見る目が何か変だった気がする

負の感情を何故か感じなかった、ちょっと怖いぞ。

夕食の時間、足だけ自由にされて腕は縛られたまま食堂に

無論、逃がさないように布の先は犬を牽くように繋がれている

その先を持つのは当然ながら明日香、この屈辱は絶対に忘れん。

「ほら、口を開けなさい」

「あのな……人前で食べさせられるってどう考えても公開処刑だろ

お前は俺を社会的に殺す気か？」

「仕方無いじゃない、こうしないと逃げるんでしょ？

分かったら口を開けて、ね？」

「…………あー」

周りで何故か羨ましそうに見ている奴ら

もっと考えろ、正直かなりの屈辱だぞ！

唯一の救いはメインキャラが明日香しか居ない事

十代とか水色とかでかいのが来たら明日香を突き飛ばしてでも逃げてやる。

が、そんな都合良くいくはずも無く

最後まで明日香に食べさせられた

気分的には親鳥に餌を食べさせられている雛鳥の気分

明日香はレッドの食事だがあまり気にしないで食べていた。

なんとも恥ずかしく、屈辱な時間を終えて部屋に戻る

羨ましく思う奴はよくよく想像してみるがいい

特に好いてない奴に体を縛られ、何人も人が居る前で子供に食べさせるかのように食わされる

これが屈辱以外なんだと言うんだ！　現時点で人生最大の恥だ！

風呂……は無理か、今日は諦める

着替え……も無理か、服のままでも寝慣れてるからいいけど

しかし寝る時まで縛られたままか？　肩が凝りそうだ。

風呂に入ってくると出ていった明日香

しかし俺は絶対に逃げないようにと体中縛られている

更に色んな場所に繋ぎ止められているから殆ど動けない

俺はどれだけ警戒されるべき存在なんだ！？

帰ってきた明日香の手にはパジャマが……どこで着替える気だ？

そう思っていると一部解かれてベッドの上に転がされ、また縛られた

明日香は上のベッドに上がって着替えるらしい

んな事しなくてもお前の着替えなんぞに興味無いわ！

その後、顔をタオルで拭かれ、歯磨きもされた

何でもしてくれて楽なのは否定しない

だが俺は自分の事は自分でしたい

つまりやっぱり嫌だという事だ。

またベッドに寝かされた

明日香は上のベッドに上って寝始める

俺は……縛られた上にまた繋ぎ止められるのかよ！

軽く身動ぎするぐらいしかできねぇ！

やっぱり借金１割増し程度じゃ気が済まん！

約束なので説教はできんが、絶対に違う事で報復してやる！

逆恨みに近い気がするが豆腐にも必ず仕返しをしてやる！

豆腐《カイザー》じゃないのかって？　あいつはもう豆腐だけで固定だ！

明日香、十代、豆腐、その１、その２

全員楽しみにしておけよ……絶対に仕返ししてやるからな！

ついでに昼間ので思い出したが

学園対抗試合の相手って万丈目じゃなかったっけ？

あいつが１年代表になったから悪いんだ……完全に逆恨みだと理解しているが報復決定。

今度怨み手帳でも書こうかな？

今後、何かされた時に書いておく

絶対にその分の仕返しをすると誓う為にも

なんかのゲームのキャラがしてた気もするが……思い出せんな。

言い掛かりだと理解しているが明日香の兄も怨みに追加しておくか

明日香の性格の一端だしな、怨んでもいいよな？　多分。

校長も怨むべきか？

明日に延期しないで今日で終わらせておけばよかったのに延期を許可しやがって

考え出したら止まらないじゃないか！

もう止めよう……切りが無い

寝よう、おやすみ。

……寝苦しいなぁ。