2022年2月2日 04:04

目次

Between Justice

シナリオ本編


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導入

導入は事件の真っ只中となっている。この事件はシナリオ本編とは何も関わりはなく、最後の犯人の自殺を印象付けるために描写している。いわゆるマスターシーンだ。(マスターシーンとは、GMがPLのロールプレイなしに描写を進める「一幕」のことを指す。)

警告音。緊迫した音、君たちは今、事件現場のど真ん中で立て篭もり事件に対応しているところだ。
銀行に押し入った強盗。犯人は複数人の人質とともに立てこもっており、警察の呼びかけにも応じない。
金銭目的か、はたまたテロ目的か______
SITの突入も考えられている中、君たちはインカムを手に今か今かと本部の指示を待っていた。
その時だった。
ドン!!という衝撃音が響く。捜査員たちがどよめきの声を上げる。SITの隊員が盾を構えてそちらを向く。衝撃音のところから、その身体をもたげ、血まみれでよろよろと立ち上がったのは、人だった。
それは、本部の指示で見た、立てこもり犯の男だった。
「抵抗するな!大人しく投降しろ!」SITの隊員が声を荒げる。しかし、立てこもり犯はケタケタと笑い出し、そして、自分のこめかみに銃を当てて言った。

「夢なる世界、夢見た世界!ゆめゆめ、夢終わるなこの世界!」

そう言って、男はこめかみに銃を当て、引き金を抜いた。
あたりに乾いた発砲音が響く。
倒れたその男に向かって、特殊警備隊が取り押さえに向かう。
まるで、白昼夢を見ているかのようだった。
これが、思えば最初の事件だった。

◆捜査開始

時間軸は現在に戻る。君たちは警視庁の捜査一課フロアにて本木と共にひとまずの安息の時を得ていることだろう。本木がこの間の事件について「犯人が自殺するなんて……」と複雑そうな表情を浮かべている。
会話を続けるうちに、【アイデア】に成功すればここ最近犯人が取り押さえられる瞬間に自殺する案件が徐々に増えているという。そのことを本木に話せば本木も「そういえば妙ですよね」と不審がる。
探索者がそうやって話をしていると、「少しいいか」と話しかけてくる人物がいる。それは、刑事部長の篠だった。
篠は探索者たちに昨今の「犯人が自殺する」案件について述べた後にそれとなく探索者たちに調べ始めてほしいとそれとなくいうことだろう。
篠が去った後、本木は「取り敢えず……今はそんなに忙しいというわけではないので、通常勤務の他に過去の事件調べてみますか?」と探索者に捜査を進めてくる。

探索者たちが何かしらの行動を起こそうとするところで、偶然廊下でとある人物に会う。【知識】に成功するか、ディールカーゲスからの継続探索者ならそれが帝都大学の冠英智教授であることがわかるだろう。また、彼がここにいるということはまたプロファイリングの依頼をされたのだろうかなど思うかもしれない。探索者を見ると笑顔で話しかけてくることだろう。彼は世間話を持ちかけてくるが、その中で「最近、おかしなことが起きていますよね。共通点……ありそうでなさそうな……ああ、いや!こちらの話です!」と言うことだろう。

◆捜査開始

探索者たちは最初に遭遇した事件について調べることになる。現場の確認や、今までの捜査に関しての情報を洗い出すこと、さらに被害者に聞き込みに行くことができるだろう。

◇現場
現場は小さな銀行だった。未だに閉鎖されていることがわかるだろう。ここを調べても特に出てくる情報はない。

◇情報洗い出し
情報を洗い出すには証拠保管室がいいだろう。図書館】で最初に遭遇した事件についての情報や過去の事件についてのものが出てくる。

●最初の事件について
◆◆区の某所で発生した立て篭もり事件。銀行の受付にていきなり銃を構える。要求も何もなく、ただ威嚇射撃を繰り返したらしい。銀行員の抵抗もあり、早めに警察が駆けつけることができたが、犯人は銀行員と客を数名に立て篭もる。
人質の話では、犯人は訳のわからないことを口走っていたそうだ。
その後、犯人は窓から飛び降りて、捜査員たちの前で拳銃自殺を図った。

●過去の事件について
さまざまな過去に起きた凶悪犯罪についてが記されている。その中で犯人が自殺したものに絞って調べてみればいくつかそのような事例が存在していることに気がつく。

この資料に対して【アイデア】に成功すれば、犯人が自殺した案件が最近に集中していることに気がつくだろう。

◇被害者への聞き込み
被害者に話を聞くことができるだろう。被害者は警察にはもういろいろと話したと言いながらもため息混じりに当時のことを話してくれる。

●被害者の話
いきなり銃を突きつけたと思ったら、訳のわからないことを言い始めて壁にもたれかかり、自分達には何も危害を加えなかった。その様子がとても恐ろしかった。
具体的に何を言っていたのかは分からなかったが、「この世は現の夢」というワードが妙に引っかかったのを覚えている。

◇事件に遭遇

※必ず電車で移動させること。でなければこのイベントを起こせないからだ。
探索者たちが全ての情報を調べ終わり、本部に戻ろうとした時点でイベントが発生する。
探索者たちが電車に乗り込み、しばらくすると別の車両から悲鳴が上がる声が聞こえる。そしてその方向から逃げ出す多くの人々を目にすることだろう。
探索者たちが別の車両に向かえば、そこには錯乱した様子でナイフを振り回す男と血を流して倒れている______冠教授がいた。
「ああ!生きてる価値などない!お前らも!お前らも!この事実を知らないなんて!ああ!」と言いながら探索者たちに襲いかかってくることだろう。戦闘ラウンドに突入する。

HP11 DEX12
ナイフ45% 1d6
回避22%
※本木は基本的に組みつきを行おうとするが、探索者たちの指示に従う。
※倒れている冠はHP1として扱う。男はその冠も狙おうとするので、応急手当てで意識を取り戻させ行動可能にするが、【DEX*5】に成功して庇うかを選択しなければならない。冠は基本的にここでは基本的に能動的な行動ができない。
※殺してしまった場合は1/1d6のSAN値を喪失する。
男を取り押さえるか、もしくは戦闘続行不可能にした場合、男は最後の力を振り絞ったのか、自らの喉にナイフを突き立てる。
【DEX】×1の判定に成功すれば止められるものの止めたとしても男は放心したように一言も発さないだろう。そして失敗すれば男は勢いよくそのナイフを喉に突き刺しそのまま息絶えることだろう。1/1d3のSAN値を喪失する。
電車は緊急停止する。その場から脱出を図ろうと思えば、(冠が意識を取り戻しているなら)、糸が切れたように冠が倒れるのがわかるだろう。【聞き耳】に成功すれば、「……くみ」と小さく呟いたのがわかる。あれよあれよという間に応援の警官がやってくるだろう。
探索者たちはそのまま捜査を行うことになり、時間が過ぎていくことだろう。

◇喚起

探索者たちが戻ってくるなら、捜査一課ブース慌ただしいことに気がつく。【聞き耳】に成功すれば「犯人が目の前で自殺した」「犯人が自殺未遂を図って事情聴取はまた後からになりそう」などの言葉が聞こえるだろう。そして、他の刑事たちから話を聞いていた本木が眉を顰めながら「どうやら犯人が目の前で自殺する案件が多くなっているみたいです」と言う。
また、冠の件については本木から「無事だったみたいですよ、そんなに入院しなくて済むみたいです.よかった…………」と話される。
その時、刑事部長の篠がくることだろう。篠は刑事たちに自分に注目するように促すと、篠は「昨今、犯人が目の前で自殺する案件が増えてきている。」と話し出す。そして、「このような案件の他にも凶悪事件の発生率が増えてきている。あまりにも多く発生するようであれば、捜査本部を設置するが、今一度気を付けてほしい」と言われるだろう。探索者たちは今一度、異変が起きていることに気を引き締めることになる。

◇捜査

探索者たちは、今一度捜査をすることになる。
捜査を始める前に、本木が思い出したかのように「夢見がち………」と言う。【アイデア】に成功すれば、立てこもっていた犯人も、電車でナイフを振り回していた男も同様に同じワードを口にしていたことを思い出すことだろう。また、刑事たちに話を聞けば「そういえばそんなことを言って自殺した」と話す。さらに刑事たちに話をすれば、「そんなスローガンを掲げているなにかのボランティア団体があったような気がする……」と言う。本木は「何かあるかもしれない……調べてみてもいいかもです」と助言してくれる。
【コンピュータ】か【図書館】に成功すれば、「ドゥリーミーの会」というものが見つかるだろう。詳しく調べてみるならば、以下の資料が見つかる。

「ドゥリーミーの会」
・・・
あなたもこの世界に優しさを取り戻してみませんか?
私たちは慈愛の精神をもとに、恵まれない子供たちや生活に困窮している家族にフードミールなどの活動を通して支援をしている団体です!
誰でも大歓迎です!お問い合わせはこちら
・・・

ドゥリーミーの会についてさらに調べるならば、宗教団体が運営しているボランティア団体であることがわかり都内某所に本部があることがわかる。向かうことができるだろう。

◇ドゥリーミーの会

都内某所にある本部は、子供食堂が併設されているところだった。子供のにぎやかな声が外からでも聞こえてくるだろう。事前に話を通していてもいなくともインターホンを鳴らせば「……はい?」と担当者が出てくる。担当者はまず探索者たちを静かな室内に案内した後、お茶を出してくれるだろう。担当者に事件についての話を聞けば特に知ってることはないと言う。ただ、凶悪事件の犯人たちの名前を出せば、少し動揺することだろう。【対人技能】に成功すれば、その犯人たちがメンバーであることを話すだろう。そして、「そんな犯罪をする人たちには思えない」と悲痛そうな顔をする。宗教団体については、自分はそれを信じていないとした上で、「マグナマータ教団」という団体が運営していると言う。
話していると、「ごめんください」と誰かが入ってくる。その方向を見れば冠であることがわかるだろう。担当者は「冠さん!お怪我の方は大丈夫でしたか!?……あぁ、今ちょっと来客対応中でして……」と申し訳なさそうにしているが、冠は「ああ、いや。この人たちとは会ったことがあるから大丈夫だよ」と笑顔で話し、探索者たちに助けてくれたことへのお礼と挨拶をすることだろう。冠はそのまま子ども食堂のほうに向かっていく。担当者は彼がここの管理を手伝ってくれていることを話すだろう。
冠に話を聞けば、列車での事件については思ったより軽傷だったことと、逃げ遅れてしまったことについて話す。事件全般のことについては犯人の自殺率が増えていることに対しては奇妙だと感じていると話す。そして、「あなたがたはこの事件についてどう思いますか?」と問いかけてくるだろう。探索者たちの返答を待った後に、「もしかすると、マグナマータ教団が何か関連しているかもしれませんね」と低い声で呟くことだろう。【心理学】に成功すれば、彼が何か教団に対してよくない思いを抱いていることがわかるだろう。また、「教団関係者の那珂川は執行猶予の判決がくだっています。今なら会いに行けるかと」と言います。くみ、ということに関しては「……ああ、昔の友人ですかね?あはは……恥ずかしいところを聞かれました……」と話すことだろう。
(ディールカーゲスのシナリオを経験していない場合)マグナマータ教団について問うのであれば、「これをどうぞ」と資料を渡してくれるだろう。
●マグナマータ教団について
新興宗教。主に豊穣の女神と呼ばれるものを 信仰しており、農業を中心に勤しんでいる。 あまり過激なことは聞かないが、共同体を作 ってそこで自給自足の生活をしているらし い。

・マグナマータ教団は、主に豊穣の女神と呼ば れる酢婦荷鞍命(すふにくらのみこと)という神 を信仰している。
・小さな共同体を日本各所に作っており、そこ で自給自足の生活を送っている。
・1 番の長、というものは存在せず、「導き 手」というものがおり、その名は「那珂川容 子」という。
・大きな事件を起こしたことはないが、たびた び子供をさらっているのではないか、という噂 があり、なおかつ児童保護施設から子供がいな くなったため捜査をしたことがあるが、めぼし いものはなかった。
・かつて警察に対して監禁未遂事件を起こそうとした案件が発生し、那珂川は逮捕されたが、執行猶予の判決が下っている。

会話が終われば子供たちのところに冠は行くことだろう。その表情は本当に楽しそうだとわかるだろう。
探索者たちはマグナマータ教団に向かうことができる。

◇マグナマータ教団へ

午後になり、全員でマグナマータ教団本部に向かうことになるだろう。都会から外れた住宅街にその大きな家はあり、そこが本部だという。
インターホンを押せば教団関係者らしき声が聞こえてくる。警察だといえばかなり不愉快そうなため息をつきながらも中に通してくれるだろう。
那珂川は君達のことを迎えると、「事件のことですよね?冠から伺っていますわ」と答える。ディールカーゲスのシナリオを経験していない場合や探索者たちが戸惑っている場合は、那珂川は「冠はうちの教団の幹部ですわ♡」と笑って答えるだろう。
那珂川に対して事件のことを切り出すと、「私は「今回は」関わっていませんの」と言うことだろう。そして、「確かに、自殺ということはどこにも逃げられなかった犯罪者の最後の手段かもしれませんね?それとも夢から逃れるための最終手段だったりするかもしれませんね?」と言う。そして、「もし、あなたがたはこれが「誰かの見ている夢」だと思ったらどうおもいます?うふ、今に「わからせて」あげますわ」と言うことだろう。気がつけば、探索者たちは体に力が入り込まなくなり倒れ込んでしまう。那珂川は「大丈夫ですわ、目が覚めたらきっと新しい世界に……」と言う。その声とともに意識を失うだろう。

◇夢

描写だけのマスターシーンとなる。

「こんなこともわからないのかい?」
誰かの声、それはとても楽しそうな声で。
「バカにしないでくれる!?あたしこれでも刑事!刑事なの!」
誰かの声、それはとても楽しそうな声で。

「だから、目を覚ましてくれ」
「君の代わりはいない」

誰かの声、それはとても悲しい、苦しそうな声で

「………早くこんな夢よ、覚めてくれ」

冠英智のことを匂わす夢である。

◇集団自殺

探索者たちは本木の叫び声で目を覚ます。本木の様子を見てみるならば、その光景に釘付けになっているようだった。探索者たちもその光景を目の当たりにするだろう。それは、死体の山だった。死体、死体、死体____________全て安らかな顔で死んでいる、人間の死体だった。大量の人間の死体に対してSAN値を1/1d6喪失する。
そして、キッチンの方と見られるところから徐々に煙臭くなっていくことを感じるだろう。さらに、大きなボン!ボン!と言う音も聞こえてくる。探索者たちはこの家にいると直感的に危ないと感じるだろう。本木は顔を青くしながらも自力で「大丈夫、です」と言いながら、探索者たちになんとかついていく。
背後を見れば炎が見え始めている。【DEX*5】に成功すれば無事に脱出できるが、失敗すると、HP-1d2。家から出れば爆発音とともに火災が発生した。呆然とそれを眺めるしかないだろう。

◇病院にて

探索者たちはその後、駆けつけた消防や警察によって病院に運ばれることだろう。ただ、大した怪我はなく日帰りで警察に戻ることができる。

◇捜査一課の部屋にて

どっと疲れが押し寄せる中、本木がある資料を持ってくる。そこには、10年前の事件が中心にまとめられていた。青い顔をした本木はそれっきり「うっ……」となってしまい、突っ伏してしまう。
【図書館】に成功すればいくつか気になる事件をピックアップできるだろう。そして、そのどれもが「犯人死亡」であることがわかる。【アイデア】に成功すれば、犯人死亡と結論付けられた事件はある特定の時期に集中していることがわかる。また、【目星】に成功すれば、ピックアップされた事件の中のとある被害者の中に冠がいることがわかる。資料を詳しく見れば、詳細がわかるだろう。

●事件資料
××月××日 ○○駅通り魔事件
被害者は多数。・・・(省略)・・・重傷者は冠英智・・・(省略)
男が次々に通りがかりの一般人にナイフで切り付ける事件が発生。その際に重症者の冠さんにナイフを複数刺し、さらには拉致した模様。3日後、犯人は自殺した状態で発見された。被害者の冠さんは病院に運ばれ一命を取り留めた。

冠に話を聞くべきだと探索者は思うことだろう。

◇冠の元へ

冠は帝都大学に行けば会える。冠は「災難でしたね」と出迎えてくれるだろう。追及したとしても彼は飄々とかわすだけだが、10年前の事件について問えば、ぴたりと表情が固まることだろう。そして、「死にかけただけです」と言うだけにとどまる。
ただ、「事件資料は残ってます。そこで洗い直しとかすれば何かわかるんじゃないんですか?」とぶっきらぼうに言うかもしれない。
【心理学】に成功すれば、普段飄々としている彼が顔を歪めたことに気がつくだろう。嫌なことを思い出したと推測できるかもしれない。

◇事件の洗い出し

再び事件の洗い出しをすることになる。
探索者は××駅や冠が発見された場所、そして証拠保管室で事件のことを詳細に調べることができるだろう。

●××駅
警視庁からほど近い駅となる。駅員などに10年前の事件のことを聞けば、とある男が「この世は夢なのだ!ゆめゆめ、うつつの世界だ!」と駅構内で叫び、ナイフで通行人を斬りつけたことを話してくれるだろう。

●冠が発見された場所
都内の廃墟であるが、ここに一見目ぼしいものはなさそうに見える。【目星】に成功すると何かの紙が落ちていることがわかる。

●紙
この世は夢
うつつの夢
神が目覚めし時
この世は白痴の混沌に満ちる

さあ救いをすふらのみことに
さあ救いを豊穣の女神に

いあ いあ

この紙を見てから【アイデア】に成功すれば、マグナマータ教団の「豊穣の女神」のことについて言及されていることがわかる。

●証拠保管室にて
事件についての資料をあらためて調べることになる。【図書館】に成功すると、その5〜6年後にまた同じような凶悪事件の犯人が自殺することが発生していることがわかる。また、刑事に話を聞けばその事件を執拗に追いかけていた刑事がいたことも聞けるだろう。そして、その刑事の名が「佐武久美」であることもわかる。佐武久美についてもっと聞くのであれば2年ほど前にとある事件に巻き込まれて昏睡状態に陥っていることも聞けるだろう。
2年前の事件について調べるのであれば、【図書館】に成功すれば資料が出てくるだろう。
その資料には、佐武久美が屋上から落下して全身を強く打ったことによる昏睡状態、ということが書かれていた。また、転落事故とされているが事件性もある可能性がありいまだに捜査が細々とされているものだとわかる。
佐武久美は面会謝絶ではなく、病院にお見舞いに行くことができる。

◇病院にて

病院に向かい、【対人技能】に成功し、警察であることを明かせば佐武の様子を聞き出すことができる。佐武は2年ほど前の事件で全身を強く打ち、そしてなおかつ治療が遅れてしまったせいで昏睡状態に陥ってしまったことを医師は話してくれるだろう。病室に医師に連れられて向かえば、そこには機器に繋がれて眠っている佐武の姿とその母親に出会えるだろう。事件について調べていることを明かせば、母親は快く協力してくれ、佐武の部屋の住所を教え、なおかつ鍵を渡してくれるだろう。そして、「あの子の部屋は手付かずにしてありますので、何かあるかもしれません」と付け加えてくれる。

◇本木離脱

ここで、本木が青い顔をしながら「すみません、ちょっと……」と切り出す。本木は自分の精神が結構参ってしまっていることと、これ以上迷惑をかけられないからこそ一旦休ませてほしいと言ってくるだろう。探索者がどう反応するにせよ、ついていけないことは確かであり、探索者たちとは離れ別行動することになる。

◇佐武の部屋へ!

佐武の部屋は都内某所のアパートにあった。鍵を使って中に入ればそこは一般的な女性の一人暮らしとも思えるところだと感じられる。【目星】に成功すれば、彼女の机の上に置かれた日記を発見することができるだろう。また、【図書館】で気になるところをチェックすることができる。

●日記1

××月××日
本当に痛ましい事件が発生した。
事件に対して何の証拠も上がってこない。

××月××日
事件のプロファイルをしてくれるという人を上司が見つけてきた。その人は嫌味しか言ってこない嫌な人だった。ちゃんとやることはやるからそこだけ気に入らない

××月××日
本当にあの人はムカつく!なんかちょっかいかけてきたと思ったら、「この事件の犯人わからないんですね?」とか言ってくるの!ひどい!

××月××日
事件解決。でもあの人はムカつく、気に入らない!

××月××日
捜査はうまくいっていない。しょうがないからあの人の力を借りるしかない。は?

××月××日
プロファイルだけはできる人だ、そう思う。でも頼りたくない。

××月××日(※10年前、××駅通り魔事件の日である)
早く見つかりますように

××月××日
よかった
無事だった
涙が止まらない(文字が滲んでいる)

××月××日
あの人のことは嫌いだ。
でも、悪い人ではないと思ってる。

●日記2

××月××日(今から4年前の日付けである)
とある事件の資料を見つけた。1年前に起こった犯人死亡の凶悪事件
いや、なぜかこの事件にきな臭さを感じる。
なぜこんなに短期間に「犯人死亡」が相次いでいるんだ?
冠さんの事件と被ってる

××月××日
資料を精査する
冠さんは嫌そうだけど、やっぱりプロファイルだけは役に立つから連れて行くに越したことはない

××月××日
きな臭い、マグナマータ教団?
すごい、こんなことを短期間でわかるなんて

××月××日
ボランティア団体ドゥリーミーのメンバーが関わっている
動機?わからない
冠さんもお手上げみたいだ
もう少し、調べてみる価値はありそう
でも、別の事件の捜査を優先しなければ

●日記3
××月××日(今から2年前の日付けである)
やった!わかった!冠さんよりも先にわかった!
でも冠さんがいたからわかった

私、あなたとならどんな事件だって解決できる気がするんです。

日記はここで終わっている。

探索者たちは確実に2年前にマグナマータ教団のメンバーにより佐武が襲われたのかもしれないと考えるかもしれない。また、佐武と冠がバディを組んでいたこともおおよそわかるだろう。
しかし、ある程度ロールプレイが進んだところで探索者のある1人に電話がかかってくる。それは、冠からであり「あなたたちの大切な人をお預かりしています。彼を殺されたくなければ……10年前に私が発見されたあの場所に来てください」ということを言われ、一方的に電話は切られるだろう。

◇廃墟へ

指定された場所に向かえば、そこにいたのは縛られて転がされている本木と探索者たちをじっと見つめている冠がいた。探索者たちが来れば本木は解放できるだろう。本木は泣きながら「すみません、隙をつかれて攫われました、ごめんなさい〜〜!!!!」と謝る。

冠は「佐武さんの……久美のところに行ったのなら強引に話に応じてもらったほうがいいかと思いまして」と飄々と話すことだろう。目的が何かなどを問いかけると、彼は笑いながら「取引です」と話すだろう。そして彼はやがて話し始める。

「私はこの場所でとある真実を教えられました。この世界が夢であること、白痴の王が目覚め、やがてこの世界は滅ぶと。そして私は強制的に魔術書を読まされた。そして全てを知ってしまった。そう、ここはただのゆめなる世界なのです。マグナマータ教団は私に一つの道を示しました。それは、新しき世界に豊穣の女神を信じて進むこと。白痴の王の目覚める前に祝福の元に我らがあたらしき世界に向かうことを。それは、とても甘美な響きでした。本当に、本当に……だから私は幹部となり人々を導いたのです。」

彼は淡々と話し続けることだろう。狂気的な内容にSAN値を0/1喪失する。
この時点で【心理学】に成功すると、彼の声が震えており本心ではないことを話していることがわかる。
彼は話し続ける。

「しかしながら、私はこの新世界に行けないことが分かったのです。自殺しようとしましたがダメでした。殺されたくても殺されず。死を持ってしか新世界には行けないのに、私は新世界には行くことが出来ない。私はあることを思いつきました。それは、凶悪事件を起こし、「死刑」になることでした。」

「まず最初に私は1年ほど前にとある事件を「セッティング」致しました。とある男をそののかして、女を嬲らせ、殺し、鹿の頭部をかぶせ、豊穣の女神の生贄を作る______ディールカーゲスを。ただ……そうですね、私が実行犯になっても良かったんですがいかんせんうまくいかず、私は殺人教唆のみにとどまりました。」

「次に、私は凶悪事件を次々に「セッティング」すればいいとたどり着きました。それが、今回の事件______いえ、事件ですかね?凶悪事件を増加させ、そして……私も殺してもらおうかと。あの列車の事件でそうなる予定だったのに……でもうまくいきませんね、何かに守られているのか、それとも……」

「あなた方にお願いがあるんです。私を_____僕を殺してくれませんか。」

【心理学】を探索者たちが成功すれば、「殺してくれ」という願いだけは本当のことを言っているように感じる。そして、【アイデア】に成功すれば、飄々とした彼の表情から疲れ切ったものを感じることができるかもしれない。
探索者たちは刑事である。殺すことではなく、罪を暴くことが役目である。そして真実を暴くことが探索者たちの役目である。
ここで「佐武久美の名前を出す」ことや、「佐武久美の日記を話題に出す」ことで冠は大きく動揺し目を見開くことだろう。さらに【対人技能】に成功すれば、「私は______僕は、くみを助けられなかった。僕はこんなことをしたくは____________」とポツリポツリと話しはじめようとする。
しかし、その瞬間冠は倒れる。その後ろにいたのはナイフを持って穏やかな笑みを浮かべている那珂川の姿が目に入るだろう。

◇最終決戦

那珂川は倒れ伏す冠の姿を見ると穏やかに笑みを浮かべて「佐武久美の安否を題材に出せば私のものになると思ってたのに」と話すことだろう。そして臨戦態勢をとる探索者たちに「そんなに怖い顔をしないで?」と話すことだろう。
※この時点で戦闘ラウンドに突入することができる。その場合、那珂川は自分のラウンドで語り始めるだろう。
「セッティングはこの坊ちゃんがしたこともありますが、半分は私も加わってますの。皆様お気づき?だって犯人はほとんどは「ドゥリーミー」のメンバーでしたから。ちょっと洗脳しただけでこんなに動いてくれるなんて!……ああ、そこの坊ちゃん……冠は比較的精神力が高いからこそ人質を使わせていただいたのですよ?10年前にこの方は真実を知り、それでも耐え切ったのですから。からこそ親切心で我々が大切な人を新世界に導いて幹部になって動いてもらったのに」

那珂川の話すことに、冠は息も絶え絶えに睨みつけていることがわかる。冠は「久美、は……大切な、友人だった……そして、この方々は、何も関係ないじゃない……………か……」と苦し紛れにいうだろう。

「あら、その虚勢もいつまで貼れるかしら?ここに白痴の王が目覚めるというのに!」と那珂川は狂気じみた叫び声を上げる。探索者たちは床がまるで光り始めたことに気がつくだろう。そして那珂川は何か呪文めいたものを唱え始める。
探索者たちはそこに何かを視認する。クスクス、クスクスという笑い声のようなものが辺りに響き始める。那珂川はそれを確認して口角を歪めた後に何かの粉を空間に巻き始めた。
そこに現れたのはゼリー状の体を持ち、触手のような吸入口を無数に生やしたイソギンチャクめいた胴体に大きな鳥のような鉤爪を生やした球体のような化け物を視認するだろう。星の精を見た探索者たちはSAN値を1d6/1d10減少する。
戦闘ラウンドに突入する。

※本木は基本的に組みつきを行おうとするが、探索者たちの指示に従う。
※倒れている冠はHP2として扱う。能動的な動きができないので基本的に探索者が庇うことになるが放置しても良い。なお、4ターンが経過するごとに冠のHPが減っていく。HPが0になった瞬間に冠は手遅れになるだろう。これを探索者たちはに最初に伝えること。
※那珂川は基本的に回避や攻撃をしない。8ターン後にアザトースを召喚するだろう。その場合、世界が滅びて探索者たちは全ロストとなる。つまり、那珂川を倒そうとすれば冠は自動的に助かる。

那珂川 DEX12
HP10 装甲1
ショックロール80%

◇正義の狭間

那珂川を止めることができたならば、那珂川が倒れ伏したその瞬間にその身体に大量の星の精が吸い付き、その身体はみるみるうちに見窄らしくなっていくだろう。そして、乾いた悲鳴を上げながら探索者たちに何事かを喚きながら息絶えた。凄惨な光景を目の当たりにした探索者は1/1d6のSAN値を喪失する。
冠は戦闘を見届けると目を閉じて「……もういい
です。これで、これでいいんです……」と探索者たちの治療を拒む。すると、探索者たちのスマホに着信が入り、佐武久美が奇跡的に意識を取り戻したことを聞くだろう。それを冠に話すならば彼は驚いた後に静かに涙を流して「……夢でも、それを願った未来が叶うのなら、なんでもいい…」と言って意識を手放すことだろう。そのタイミングで警察や救急車が来て探索者たちは病院に運ばれることになる。探索者たちも疲労からか眠ってしまうかもしれない。

事件の諸々の手続きが終わったのち、冠のやったことが立証できずに不起訴処分になりそうであり、那珂川が全ての元凶として処理されることを聞くだろう。冠の病室には面会に行くことができ、冠は窓の外を眺めているものの探索者たちに気付けば表情の抜け落ちた顔で会釈することだろう。探索者たちと他愛のない話をするならば、途中から冠は本当のことを話し始める。
「僕は、ただ久美を助けたかったんです。久美は昏睡状態でも、生きてて、それで頑張ったら目覚めてくれるんじゃないかっていう淡い希望を抱いていた。……叶うわけないと悟って途中からあんな行動に出ましたが。でも僕に会う資格はありません。ねえ、皆さん。正義ってなんだと思いますか?」
探索者たちの答えを聞いたのち、冠は「僕にも答えは分かりません。」と返したのち、静かに「あなた方はその正義を大切にしてくださいね」というだろう。
だが、探索者たちが帰ろうとした瞬間に「英智さん」という女性の声が聞こえることだろう。そこには、点滴を杖にして引きずりながら病室に入ってきた佐武久美の姿があった。冠によろよろと近づけば佐武は「よかった、無事でよかった、意識を取り戻して最初に聞いたのが病院に担ぎ込まれたって」と泣き出し、冠は照れ臭そうにしながらも佐武のことを愛おしそうに眺めていることがわかるだろう。

探索者たちが立ち去ろうとするのであれば、佐武が「ありがとうございました」と頭を下げにやってくるだろう。そして冠と同じように「あなた方の心には正義というものがありますか?」と問いかける。そして佐武は探索者たちの返答に笑顔でうんうんと頷いた後に答える。
「ここにあるのは、あたしたちのこの心にあるのは、正義もクソもありませんでした。一つの執着と愛でした。これが私の正義というのなら、そうなのでしょう。きっと、個々人の正義の狭間には誰かの愛があるのかもしれませんね」彼女はそう言って笑うことだろう。

◆インタールード

続編シナリオの匂わせである。この続編シナリオでこのシリーズは最終作となる。公開までしばらく待ってほしい。読まなくとも良い。蛇足的な部分だ。
「正義とは」

正義は必ず証明されなければならない。
その痛みさえも全てなかったことにはできない。
だからこそ、我々は正義を遂行し、犯罪をなくすのだ。

「鍵は我が手の中に」

この鍵は我が手の中に。
腐敗した世界をもう一度やり直すために。

ペトロは神に天の国の鍵を託された。
ケファ_____私の信仰心は硬い石です
この心は揺らぐことはないでしょう。

____________罪に手を染めたものは、必ず殺すのみ。

Between Justice
生還報酬
SAN値回復+2d6

※NPCたちはどうなる?
冠は不起訴処分となるものの仕事を辞し、しばらくは佐武のところに顔を出す日々が続くだろう。
佐武は徐々に回復し職場復帰は難しいものの、警察の助けになることが何かないかを模索し始める。
本木は望むのであれば探索者たちにまたついていくことになるだろう。いずれにしろ、生きているNPC達は明るい未来が待っている。