(旧)本気禁止制限決闘   作:阿音

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恋する乙女編終了


21話【恋する乙女……達? 終編】

 視点 レイ

 

 

んぅ……んぁ? 何かちょっと寒い……

暖かいのが欲しい……でも無い

真っ暗……あ、目を閉じてるからか。

 

目を開けると……誰も居ない?

確か昨日は瑞貴さんと一緒に寝たはず

瑞貴さんはどこに行ったのかな?

 

「ん? 起きたか小娘

顔を洗ってスッキリしてこい

もう朝飯の時間は過ぎてたからお前の分の朝食は持って来ておいたぞ」

 

んと……あ、いた

瑞貴さんはベッドから下りて床に座ってカードを弄ってた。

 

ボクはベッドから下りて瑞貴さんの組んでいた足に頭を乗せる

瑞貴さんは驚いた声を上げたけど頭を撫でてくれた

ふにゃぁ……気持ちいいよぉ。

 

そのまままた寝そうになるけど勿体ないような気がする

凄く寝たいけど寝ないように我慢我慢……あれ?

…………えっと、あれ?

 

「はぅぇ!?」

 

「うぐぉ!」「あだぁ!」

 

勢いよく頭を上げたら何かにぶつかって痛かった

いたぁ……頭打ったぁ……ボクったら何してるんだろ

寝ぼけてたのかな?

 

突然頭を掴まれた

何事かと思って後ろを振り返ってみたら瑞貴さんが……片手を顎を押さえて下を向いてる

あの……ボク、何かしました?

 

「ね、寝ぼけて俺の膝で寝てたのはいいとしよう

俺が頭を撫でてやったらまた寝そうになったのもまぁ構わん

しかしその礼が顎への頭突きか?」

 

「ごごご、ごめんなさい!

意識が覚醒したら吃驚しちゃってたんです!

あだだだだだだ! 頭が潰れちゃう!!!」

 

「謝って済むかぁ! かなり効いたぞ!

ついでに脳が揺れて体がフラフラしてるわ!

更にこっちも頭まで響いたから物理的に痛いんだよ!

貴様も、頭痛を感じやがれぇ!」

 

「いだだだだだだだ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

本当に謝りますから離してくだーーーだだだだだだ!

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいーーーだーーーいーーーだだだだだだだ!」

 

暫くアイアンクローを決められた

すっごく痛かったので完全に目が覚めました、もう二度とされたくない

力が無いのに何気に握力は強いんだね……本当に何で?

 

なんとか謝り倒して許して貰った

不機嫌になられてちょっと空気が悪かった……ごめんなさい

顔を洗って持って来てくれてた朝ご飯を食べる

瑞貴さんが怖くて味なんてわかんないよぉ……

 

瑞貴さんはずっと座ったままだったので訊いてみると……

 

「さっきので頭が痛い

脳も揺れたらしくて立ち上がったら倒れそう

危険だからこうやって座ったまま」

 

淡々と言われたので相当怒っていると思った

うぅ……ごめんなさい。

 

「嘘だ、別に立つ必要も無いから立たないだけ

別にもうそこまで怒ってない、不可抗力だからな」

 

「へ?」

 

「何? 態とだったのか?」

 

思いっきり首を横に振る

おかげで目が回ったけど信じてくれた。

 

「船の時間は昼過ぎだったな

後……4時間って所か?」

 

後4時間……それでお別れか

はぁ、寂しいなぁ。

 

「今日の相手は1時間後ぐらいに来るらしい

最終デッキ調整をしておけ」

 

そうだった! 新しいデッキで絶対に勝たないと駄目!

負けたらカードを返さないといけないもん!

せっかく思い出になるんだもん、絶対に持って帰らないと!

 

瑞貴さんと相談しながらデッキを調整する

相談とは言うけどボクが気になった事を言っているだけ

瑞貴さんは受け答えをしてくれている

自分でもカードを弄ってるのにボクの相手までして的確に教えてくれるって……

この人、脳が2つあるんじゃないの?

 

デッキを調整しながらも、当然時間は過ぎていく

約1時間後……扉が叩かれた。

 

「誰かなっと、来たか」

 

どうやらボクの対戦相手が来たみたい

誰だろう?

って、大体予想はできてるけどね。

 

「おはよう瑞貴、レイちゃんもね」

 

やっぱり貴女だよね、明日香さん

というか、瑞貴さんが事情も知らない人を呼ぶはずが無かったね

それでいて十代さんを嫌ってるみたいだから呼ぶとしたら明日香さんしかいない。

 

「それで、私に何の用?

どっちにしてもレイちゃんが帰る日だから後で来ようと思ってたけどね」

 

「小娘と決闘《デュエル》、命令

勝ったら借金1割減、負けたら1割増しな」

 

「今日も貴方は突然よね!?

でも変わるのは1割か……十代に勝ったから半分帳消しになってるし

いいわ、受けてあげる!」

 

相変わらず明日香さんって扱き使われてるなぁ

ボクもあんな感じにならないように注意しないと。

 

「表に出る、場所は誰にも見られないように森の中だ

が、その前に小娘は帰る仕度と身嗜みを整えてからだな

俺は出て行く、明日香も手伝ってやれ」

 

「あ、はい」「はいはい、もう諦めたわよ」

 

瑞貴さんはカードをさっさと片付け、適当に荷物を持って出ていった

えっと……あぁ! ボク、着替えもしてなかった!

パジャマのままずっと!? うわぁ、恥ずかしい……

 

明日香さんもそれに気付く

なんとなく空気が悪い……どうしよう?

 

「えっと……じゃあ私は後ろを向いとくから先に着替えてね」

 

後ろを向く明日香さん

今更気を遣われてもあんまり嬉しくない……

 

着替えて、急いで仕度する

あんまり瑞貴さんを待たせるのも悪いしね。

 

なんとか30分ぐらいで終わった

部屋から出ると瑞貴さんが扉の横でもたれて座ってた

何も考えないでボーっとしてたみたい。

 

「んあ? 早かったな

俺としては後30分ぐらい掛かると思ったんだが」

 

「まぁ2人でしたからね」

 

「そうか、荷物は持ってやる

さっさと森に入るぞ」

 

瑞貴さんに荷物を預けて決闘盤《デュエルディスク》を嵌める

明日香さんもボクと同じく決闘盤《デュエルディスク》を嵌める

どちらも戦意は十分、後は勝つだけだ!

 

 

 

 視点 十代

 

 

昼寝後の体操でもしようと思って外に出てみると

瑞貴と明日香、それにレイが森に向かってるのを見つけた

腕には決闘盤《デュエルディスク》を付けてるし、決闘《デュエル》するのか?

 

明日香のあのE・HEROには驚いた

欲しいけど翔も隼人も知らないカードらしい

ジュンコにも訊いてみたが知らないって言われた

どうやら瑞貴が隠し持っているみたいだ。

 

隠れて3人に付いていく

時々瑞貴が振り返って警戒してたけど何とかやり過ごせた

めっちゃ危なかったぜ、危うく見つかる所だった。

 

森の深くまで、大原との決闘《デュエル》をした辺りまで来た

大原? 闇夜の巨人決闘者(デュエリスト)だよ、ブルー生徒からレアカードを奪っていた

実は小原が隠れて指示を出していただけっていうな、まぁそれは今はいいだろう

あそこで決闘《デュエル》するのか? 態々何でこんな遠くまで?

理由はすぐにわかった、レイが帽子を脱いだからだ。

 

できればもう少し近づきたいがこれ以上近づくと気付かれるかもしれない

声が小さいと聞こえないが、それなりに大声を出してくれればわかる

小声の声を諦めればこの距離なら大丈夫だろう。

 

なんかちょっと話してるが聞こえない

決闘《デュエル》さえ見れればいいから気にしないが。

 

「「決闘《デュエル》!」」

 

始まった始まった!

わくわくしてきたぞ!

 

「先攻は私が貰うわ、ドロー!

私は増援を発動! エトワール・サイバーを手札に加える

更に融合、手札のエトワール・サイバーとブレード・スケーターを融合し、サイバー・ブレイダーを召喚!

そして一族の結束を発動するわ

一族の結束は墓地に存在するモンスターの元々の種族と、場のモンスターの種族が同じ場合、攻撃力が800アップ

違う種族が混ざった場合は攻撃力は元に戻るけど、私のデッキには戦士族しか無いわ

カードを2枚伏せ、ターンエンドよ」

 

初っぱなからサイバー・ブレイダーか

しかも一族の結束で攻撃力が800アップして攻撃力2900

1ターン目からこんな強いモンスターを出すなんて、明日香はやっぱり強い

だけど今回はE・HEROデッキじゃないのか、ちょっと残念だ。

 

「そんな上級モンスターなんて怖くないもんねー!

ボクのターン、ドロー!

ボクは恋する乙女を攻撃表示で召喚!」

 

こ、攻撃力400を攻撃表示!?

何考えてんだよ!? 大ダメージを受けちまうぜ!

 

「更に永続魔法、つまずきを発動!

召喚したモンスターは全て守備表示で召喚される!

そしてカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

新しいモンスターは守備表示にできるけど、サイバー・ブレイダーは攻撃表示のままだ

このままだと大ダメージを受けないか?

 

「私のターン、ドロー!

…………そうね、私は異次元の女戦士を召喚するわ」

 

「異次元の女戦士……厄介だけど、そのモンスターは守備表示になる」

 

「邪魔なカードね、次のターンにならないと攻撃できないなんて

サイバー・ブレイダーで恋する乙女に攻撃!」

 

「罠カード発動! 体力増強剤スーパーZ!

2000以上の戦闘ダメージを受ける時、そのダメージを受ける前にライフを4000回復する

その後、戦闘ダメージを計算する!

一族の結束のおかげで効果を使える、感謝するよ!

更に恋する乙女の効果、攻撃表示のこのモンスターは戦闘では破壊されない

そして、戦闘を行ったモンスターに乙女カウンターを乗せる!」

 

サイバー・ブレイダーが恋する乙女を蹴り飛ばし、レイに2500のダメージ

だが体力増強剤スーパーZの効果でライフが8000になった後にダメージだから

残りライフは5500だ。

 

そしてサイバー・ブレイダーに乙女カウンターが……うえぇぇぇ!

 

『痛い、痛いわ』

 

『ご、ごめんなさい、大丈夫?』

 

『謝らないで、私と貴女は敵同士

戦う宿命にあるのよ……』

 

『か……可愛い……』

 

女同士で何やってんだお前らーーー!

しかも明日香もレイも瑞貴も気付いてないし、何が起こってるんだぁぁぁぁ!?

 

「面倒ね、このままターンエンドよ」

 

「ボクのターン、ドロー!

ボクは強欲な壺を発動! デッキからカードを2枚ドロー!

魔法カード、アースクエイクを発動!

相手のモンスターを全て守備表示に変更するね!

更に装備カード、キューピッド・キスを恋する乙女に装備!

このカードは恋する乙女専用の装備カード

乙女カウンターの乗っているモンスターと戦闘し、ダメージを受けた時

そのモンスターのコントロールを得る!」

 

そうか、サイバー・ブレイダーの攻撃力は2900と高い

だが一族の結束では守備力は上がらずにたったの800

これでダメージを大きく抑えるのか!

 

「恋する乙女でサイバー・ブレイダーを攻撃!」

 

『サイバー・ブレイダー様~、私の想いを受け取って~』

 

また何か変なのが……疲れてるのかな?

しかもサイバー・ブレイダーの奴、守備表示だからか一度受け止めて押し返したぞ

そして恋する乙女が転けてしまう。

 

『酷い、酷いわ~ん』

 

『ご、ごめんね?

痛かった? 私にできる事ならしてあげるからね?』

 

『ほんとに?』

 

『えぇ、本当よ』

 

『なら……私と一緒に戦ってくれる?』

 

『え? でも……』

 

『嘘だったの?』

 

『う……わ、わかったわ!』

 

……なんだ、これ?

 

「ライフは減ったけど、サイバー・ブレイダーが奪えたなら安いもんさ!

まぁ、このコンボの弱点は追撃ができない点なんだよね

ボクは更に、恋する乙女に重力の斧-グラールを装備する!

このカードが場に存在する限り、相手はモンスターの表示形式を入れ替えられない!」

 

「何ですって!? つまり私の攻撃は……」

 

「そう、ずっと守備表示で攻撃ができなくなる

そのデッキに絶対防御将軍が入っていれば話しは別だけど……入ってるとは思えない

明日香さん、貴女の攻撃は封じさせてもらったわ!」

 

攻撃できないって……レイの場のカードを除去しないと明日香は絶対に勝てないんじゃないか?

女性型モンスターの多い明日香のデッキに絶対防御将軍が入るのは難しいだろう

そもそも、明日香のデッキは確か攻撃主体だったはずだしな。

 

「ボクはモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンドだよ」

 

「私のターン、ドロー!

カップ・オブ・エースを発動! コイントスを行い、表なら私が、裏なら相手が2枚ドローするわ!

コイントス……表、よって私は2枚ドロー!

クッ(ドゥーブルバッセは私のモンスターが攻撃可能じゃなと発動できない

しかも、もう1枚の伏せカードは収縮、殆ど無意味じゃない)

私は荒野の女戦士を守備表示で召喚、カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

「ボクのターン、ドロー!

セットモンスターを反転召喚、ワーム・リンクス!

このモンスターがリバースした場合、毎ターン、お互いのエンドフェイズ時にドローする

見た目は……ちょっとアレだけど、効果は強力よ!

反転召喚に成功したからつまずきの効果で守備表示に変更される」

 

2つ頭の赤い変なモンスターだな

それにしてもドロー効果か、厄介だな

普通のデッキだったら簡単に倒せそうなんだが、あのデッキだったら凄く邪魔だ

倒したいけど倒せない、うわーめんどくせぇ!

 

「サイバー・ブレイダーを攻撃表示に変更

そして……いくよ! こいつがこのデッキ最強のキラーモンスター!

相手モンスター2体を生け贄に、溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムを特殊召喚!」

 

マグマのような体をした悪魔が姿を現した

攻撃力3000を相手の場に特殊召喚だと!?

 

「異次元の女戦士は戦闘を行ったモンスターを除外するモンスター

荒野の女戦士は戦闘破壊された時、攻撃力1500以下の地属性戦士族を特殊召喚するリクルーターモンスター

どっちも生け贄にすれば全く怖くない!

更に、ラヴァ・ゴーレムが存在している限り、そのコントローラーはスタンバイフェイズ時に1000のダメージを受ける!

早く除去しないと大変な事になるよ?」

 

確かに早く除去しないと大ダメージを受けてしまう

どうするんだ明日香!

 

「ボクはこれでターンエンド

エンドフェイズ時にワーム・リンクスの効果でデッキからカードをドローする」

 

「なら私もエンドフェイズに伏せカードを発動するわ

速攻魔法、神秘の中華鍋を発動!

ラヴァ・ゴーレムを生け贄に捧げ、その攻撃力か守備力分のライフを回復する!

私は攻撃力を選択、攻撃力3000分回復して私のライフは7000となるわ!」

 

「うわずっこい!

せっかく出したのにー!

まぁモンスターを3体も減らしただけマシかぁ」

 

「はぁ……ずっこいって思ったのはこっちよ

恋する乙女を見てコントロール奪取型デッキかと思ったらロックデッキ

かと思ったら回復やバーンまで持ってるのよ?

よくそんなに詰め込んだわね」

 

まったくもって明日香に同意だ

めちゃくちゃなデッキだな、あんなんで回るのか?

 

「えへへ、頑張ったからね

手伝ってもらったし」

 

「……瑞貴が手を出したのね、この嫌らしい戦法に納得したわ

納得した所で私のターン、ドロー!

魔法カード、命削りの宝札を発動!

デッキから手札が5枚になるようにドローし、5ターン後に全て捨てる!

私の手札は0枚、よって5枚ドローするわ!」

 

「また手札増強カード!?

しかも命削りの宝札ってすっごく高いしレア度も高いのに!?」

 

「…………おかげで借金よ」

 

「…………ご愁傷様です」

 

「ごほん、手札から速攻魔法サイクロンを発動!

相手の魔法、罠を1枚破壊するわ!

私はつまずきを破壊する!」

 

「そうはさせない! カウンター罠、魔宮の賄賂を発動!

相手の魔法、罠を無効にして破壊!

相手はその後、デッキからカードをドローする!」

 

「また邪魔を……でもどうして命削りの宝札を無効にしなかったの?

そうすれば私はサイクロンも使えなかったし、貴女が勝ってたかもしれないのよ?」

 

「このデッキにカウンター罠は少ないんだ

もしそのドローでサイクロンや大嵐を引かれてたらと思うとね

だったら手札ぐらい渡してでも除去カードを防ぐ!」

 

「(例え除去カードを引いても私の場には伏せカード1枚と一族の結束しか無かったんだけど……

ちょっと考えが固く、甘かったわね、それは完全にプレイミスよ!)

私はコマンド・ナイトを召喚するわ

つまずきの効果で守備表示に変更ね

カードを1枚セットしてターンエンドよ」

 

「エンドフェイズ、ワーム・リンクスの効果で1枚ドロー

そしてボクのターン、ドロー!

……よし、ボクはブレードラビットを攻撃表示で召喚!

つまずきの効果で守備表示に変更される」

 

妙にでかい歯を持った兎が現れたんだけど……目付きが悪くないか?

すっげぇ睨んでるぞ?

 

「ブレードラビットの効果発動

このモンスターが攻撃表示から守備表示に変わった時

相手の場のモンスターを破壊する!

この効果によりコマンド・ナイトを破壊!」

 

「そうはさせないわ!

速攻魔法、エフェクト・シャット!

相手モンスターの効果を無効にし、破壊する!」

 

コマンド・ナイトに噛みつこうとしたブレードラビットは破壊された

安心したって溜め息を吐くコマンド・ナイト

何気に芸が細かいな。

 

「チッ、サイバー・ブレイダーでコマンド・ナイトに攻撃!」

 

「速攻魔法、収縮を発動!

サイバー・ブレイダーの攻撃力を半分にするわ!」

 

サイバー・ブレイダーの攻撃力は1050に下がる

コマンド・ナイトの守備力は1900だからコマンド・ナイトの勝ちだ!

レイのライフは850減って残り4250

明日香のライフは7000だからそれなりにライフ差は大きいな。

 

「明日香さんだって邪魔ばっかりじゃない!

恋する乙女でコマンド・ナイトに攻撃!」

 

恋する乙女の攻撃力はグラールで500上がってるから900

ダメージは1000と少し大きめだ……って、またか!?

 

『コマンド・ナイト様~』

 

『おっと……ほら』

 

『あん』

 

サイバー・ブレイダーと同じように押し返すコマンド・ナイト

そのまままた倒れる恋する乙女

こいつら、本気で何してるんだ?

 

『酷い、痛いわ……』

 

『す、すまない、大丈夫か?』

 

『大丈夫よ、でも私の心配なんてしないで

私達、敵なのよ?』

 

『ぅ……し、しかし子供を助けるのも指揮官の役目だ

気にするな』

 

『コマンド・ナイト様……』

 

『うぅぅぅ……そんな純粋な目で見ないでくれぇ……』

 

……俺って確か決闘《デュエル》を見てるんだよな?

ドラマとか見てるんじゃないんだよな?

 

「コマンド・ナイトに乙女カウンターが乗るよ!

ボクはカードを2枚伏せてターンエンド

ワーム・リンクスの効果でカードドロー」

 

「私のターン、ドロー!

ふふ、表示形式を入れ替えて効果を発動する

そのカードを使うのは貴女だけじゃないわよ!」

 

「ど、どういう意味?」

 

「こういう事よ!

ドリーム・ピエロを攻撃表示で召喚!

このモンスターの効果は貴女がさっき使ったブレードラビットと同じよ」

 

「ブレードラビットと同じって事は……表示形式によるモンスター破壊効果!?」

 

「その通りよ!

つまずきの効果が発動され、ドリーム・ピエロが守備表示になる

そして効果発動! 私は恋する乙女を破壊するわ!」

 

「ただで破壊されてなるもんか!

相手モンスターが守備表示に変更された事により罠カード発動! 断頭台の惨劇!

相手モンスターが守備表示に変更された時、相手の場の守備表示モンスターを全て破壊する!

更に速攻魔法、非常食を発動!

断頭台の惨劇、キューピッド・キス、グラールを墓地に送って3000ポイントライフを回復する!」

 

一進一退って感じだな、でもサイバー・ブレイダーが奪われている分明日香が不利か?

それに召喚も終了してるし、ちょっと不味いよな?

 

「私だって破壊されるだけで終わるもんですか!

速攻魔法、サモンチェーン!

このカードはチェーン3以降に発動可能!

私はこのターン、3回通常召喚できるわ!」

 

召喚回数増加のカードだって!?

明日香は既にモンスターを召喚してるが、更に後2回も召喚できるのか!

だが明日香の手札は2枚、両方モンスターの可能性は高くないから1回しかできそうにないが……

 

「私はX-セイバーアナペレラを召喚し、更にアナペレラを生け贄に捧げ……

剣《つるぎ》の交差、剣音を交えし戦場に立つは一閃の閃き、切り伏せなさい! XX-セイバーヒュンレイ!」

 

おぉ! 瑞貴が時々する召喚口上じゃねぇか!

という事は瑞貴から譲って貰ったのか!?

いいなー、俺も欲しいなぁ……

 

「このモンスターは戦士族を生け贄にした時、召喚可能よ

このモンスターが生け贄召喚に成功した時、場の魔法、罠を3枚まで破壊する

レイちゃんのつまずきを破壊するわ!」

 

「ぐぅ、破壊されるけど効果の発動前につまずきの効果で守備表示になる!」

 

「つまずき自体を破壊できただけマシよ

これで次から普通に攻撃できるわ」

 

「手札も無い上、守備力1300のモンスターと伏せカードだけで守りきれる?

エンドフェイズ、ワーム・リンクスの効果でドロー!

そしてボクのターン、ドロー!

きたぁ! このモンスターでボクは勝つ!

元々相手のコントロールしていたモンスター、サイバー・ブレイダーを生け贄に捧げ……

見やがれぃ、これが権力だぁ! であえ、ゴヨウ・ガーディアン!」

 

け、権力?

 

「け、権力?」

 

あ、ハモった

権力ってどういう意味だ?

 

「このモンスターは元々相手がコントロールしていたモンスターを生け贄にした時のみ召喚できるモンスターなんだ

召喚条件は厳しいけど、ボクのデッキなら相性抜群!

そして効果はこのモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時

そのモンスターを守備表示で自分の場に特殊召喚できる効果を持つんだ!」

 

「LV6で生け贄が1体の上、攻撃力2800、更に相手モンスターを奪う効果ですって!?

何よ、その巫山戯たモンスターは!? しかも戦士族? 戦士族ですって!?

どういう事よ瑞貴! 私にもあのモンスターを売って頂戴!」

 

「お前のデッキには刺さらんだろうが

それに、コントロール奪取型デッキじゃないと手札で腐る可能性が高い

コントロールを奪うカードが来ないと召喚できないからな

(しかし、元の世界ではエクストラデッキに必ずと言ってもいいぐらい入るカードなんだがな

どうしてこんなに扱いにくい召喚条件になった事やら……凶悪効果で制限だからだろうな、うん)」

 

それでレイのデッキに入ってるのか

しかし、LV6で攻撃力2800って本当に巫山戯てるとしか思えないな

一応、俺も死者蘇生やミラーゲートのカードを使えば召喚できるけど

それしか無いのにデッキに入れても邪魔だよなぁ……

 

「ちなみに、権力って?」

 

「ゴヨウ・ガーディアンは御用、つまり昔の言葉で逮捕って意味なの

このゴヨウ・ガーディアンは警察のモンスターで、警察の権力によってモンスターを奪う効果なんだ

だからこのモンスターが権力、だからこれが権力、権力って怖いね」

 

「警察って何故か怖いよな」

 

「それは貴方が悪さをしてるからじゃない?」

 

「……気にするな、さぁ、決闘《デュエル》を続けろ」

 

「あ、逃げた」「逃げたわね」

 

……逃げたな。

 

「まぁそれはともかく

ゴヨウ・ガーディアンでヒュンレイに攻撃!

ゴヨウ・ラリアットォ!」

 

ゴヨウ・ガーディアンが紐を投げつけ、ヒュンレイの首を締めて破壊する

そしてヒュンレイは輪になった紐の中に再び現れた

これがコントロールを奪う効果か!

 

「これでヒュンレイはボクのモンスターだ!

ヒュンレイは召喚条件が付いてるけど、それさえ満たせば蘇生条件も満たされてる

だから奪うのも可能なのだぁ!

ボクはカードを2枚セットしてターンエンド

ワーム・リンクスの効果でドロー!」

 

でもE・HEROは召喚制限が有るから無理だよな

俺なら……勝てるか? 難しいな……悔しいな、くそっ!

 

「私のターン、ドロー!

天よりの宝札を発動! お互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにドローするわ」

 

「最強のドローカード!?

そんなカードまで持ってるの!?」

 

「…………おかげで借金地獄よ」

 

「…………ごめんなさい、そしてご愁傷様です」

 

「「…………」」

 

なんか急に声が小さくなって聞こえないな

どうかしたのか?

 

「えっと、私は装備魔法、再融合を発動

ライフを800払い、墓地の融合モンスターを復活させるわ

現れなさい、サイバー・ブレイダー!」

 

おぉ、無理矢理テンションを上げてまたサイバー・ブレイダーを出すとは!

だが、ゴヨウ・ガーディアンは攻撃力2800、サイバー・ブレイダーでは勝てない!

……あぁ! 確か一族の結束が有った!

ならこれで攻撃力は2900、ゴヨウ・ガーディアンに勝てる!

 

「更に私は融合回収《フュージョン・リカバリー》を発動!

墓地のエトワール・サイバーと融合を手札に加えるわ!

そして戦士の生還を発動! 墓地のブレードスケーターを手札に加え、融合!

エトワール・サイバーとブレードスケーターを融合し、サイバー・ブレイダーを召喚!」

 

「同じ融合モンスター!?

しかも同じモンスターを使ってよくできたね」

 

「この程度で褒められても嬉しくないわ

次よ、場の戦士族、再融合で召喚されたサイバー・ブレイダーと再融合を生け贄に捧げ……

高速より生まれし肉体よ、革命の時は来たれり、勝利を我が手に! きらめけ、フルール・ド・シュヴァリエ!」

 

花のような頭をした女の戦士……というよりも聖騎士という感じのモンスターが姿を現した

これも口上……また瑞貴のモンスターか

それにしても、モンスターと魔法カードを生け贄ってどうなってるんだ?

 

「シュヴァリエは戦士族、または機械族1体と自分の場の魔法、または罠1枚を生け贄にして召喚できる

このモンスターが存在している限り、私のターンに1度だけ魔法、罠の発動を無効にして破壊できるわ」

 

「で、デメリットは!?

その効果にデメリットは無いの!?」

 

「残念だけど無いわ

伏せカードは2枚、必ずどちらかは無効にさせてもらうわよ!

バトル、シュヴァリエでヒュンレイに攻撃!

フルール・ド・オラージュ!」

 

花の騎士が高速でヒュンレイを剣で突く、突く突く突く突く突く

最後の一撃を決め、ヒュンレイは破壊された。

 

「相手の場のモンスターが2体に減った事により、サイバー・ブレイダーの攻撃力は倍になる!

攻撃力2900のサイバー・ブレイダーの攻撃力は5800よ!

サイバー・ブレイダーで、ゴヨウ・ガーディアンに攻撃!」

 

「そんな攻撃、素直に受けるわけないでしょ?

罠カード、ドレインシールド!

戦闘を無効にし、その攻撃力分ライフを回復するわ!」

 

「でもシュヴァリエの効果で無効よ!」

 

「そんなの、わかってるよ!

カウンター罠、天罰を発動!

手札を1枚捨て、モンスター効果を無効にして破壊する!」

 

これでフルール・ド・シュヴァリエは破壊され、ドレインシールドは使用された

攻撃力5800分ライフを回復したレイのライフは……13050!?

明日香は再融合を使ったから残りライフは6200

初期ライフより多いのに明日香のライフがレイの半分以下!?

 

「クッ、相変わらず……まぁいいわ

私はカードを1枚伏せ、ターンエンドよ」

 

「エンドフェイズだからワーム・リンクスの効果でドロー

そしてボクのターンになり、ドロー!

手札が悪い……くそっ!

いや、そういえばサイバー・ブレイダーって相手のモンスターの数だけ効果が変わるんだっけ?

という事は今の攻撃力はまだ5800?」

 

「そうね、ゴヨウ・ガーディアンじゃ勝てないわよ?」

 

「う……でも、実はあんまり関係無かったりして

ボクは手札から魔法カード、洗脳-ブレイン・コントロールを発動!

相手モンスターのコントロールを得る!」

 

「ちょ、またコントロールを!

貴女、何回私のモンスターを奪えば気が済むの!?」

 

「何回奪っても気が済まない

サイバー・ブレイダーとゴヨウ・ガーディアンで直接攻撃《ダイレクトアタック》!」

 

これを受けたら明日香は4900の大ダメージだ!

そうなれば残りライフは1300、十倍以上のライフ差になる!

明日香はサイバー・ブレイダーの攻撃で残りライフは4100

でも初期より多いんだな。

 

「片方は通したけど、もう片方はさせない!

罠カード、ガード・ブロック! このカードでゴヨウ・ガーディアンの攻撃を防ぐわ!

戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローできる!」

 

「あらら、防がれちゃった

ならボクは最後にサイバー・ブレイダーを生け贄にしてカタパルト・タートルを守備表示で召喚

カードを2枚伏せて、ターンエンド、ワーム・リンクスの効果でドロー!」

 

「私のターン、ドロー!

手札から強欲な壺を発動! デッキからカードを2枚ドローするわ!」

 

「どうでもいいけど、明日香さん」

 

「何?」

 

「さっきからドロー系カード引きすぎじゃないですか?」

 

「…………おかげで借金塗れよ」

 

「…………愚痴を言って本当にごめんなさい」

 

「……まぁいいわ、私は死者蘇生を発動、この効果でフルール・ド・シュヴァリエを特殊召喚するわ

更に私は浅すぎた墓穴を発動、お互いのプレイヤーは墓地のモンスターを裏守備表示で特殊召喚する

私はエトワール・サイバーをセットするわ」

 

「ならボクはさっき天罰で墓地に送ったブレイン・ジャッカーをセットするね」

 

「……それって確かリバース効果のコントロール奪取モンスターよね?」

 

「うん、装備カードになって相手のモンスターのコントロールを奪うんだ

相手のスタンバイフェイズ時に500回復させちゃうけど

見た目は悪いけど、強いでしょ?」

 

見た目が悪いって……そういう問題か?

 

「あの、貴女のデッキって恋する乙女をメインにしたデッキじゃないの?」

 

「そうだけど、色々としてたらごっちゃごちゃになっちゃった

あはは、コントロール奪取特化した上、上級モンスターも出せるパワーも持って

更にバーンやロックまで使うようになったんだ」

 

「それでよく回るわね、普通無理よ?」

 

「大丈夫、攻撃を防ぐカードやロックカードはそれなりに入ってるから

ドロー系カードはあんまり無いけど、ワーム・リンクスが上手く動いてくれてるしね

攻撃を防ぐカードとロックで簡単にドローできるって強いよ

見た目は悪いけど」

 

見た目の悪いモンスターが多くないか?

瑞貴の趣味か? それとも強さや効果重視か?

 

「さて、続けましょうか

私はフルール・ド・シュヴァリエとセットされているエトワール・サイバーを生け贄に捧げ……

力を司る巨人、破壊を魅せよ! 立ち上がれ、ギガンテック・ファイター!」

 

上級モンスターを生け贄にしてまでの召喚だと!?

そこまでして出すモンスターなのか!?

 

「ギガンテック・ファイターは場の戦士族を生け贄にしたとき召喚可能よ

このモンスターの攻撃力は墓地に存在する戦士族の数×100上昇する

墓地の戦士族は10枚、よって攻撃力は1000上昇して3800

更に一族の結束の効果により800上昇してるから4600よ!」

 

「4600!?

でもサイバー・ブレイダーより弱いよね」

 

「言わないで頂戴、私だってそう思うわ

けど、サイバー・ブレイダーは相手の場によって効果が左右されるから安定しないのよ

私のデッキは戦士族統一デッキだからギガンテック・ファイターの方が安定するわ

ギガンテック・ファイターで先ほどセットされたブレイン・ジャッカーを攻撃!」

 

ブレイン・ジャッカーは生き残らないと効果を発動できない

戦闘破壊すれば問題無く倒せる!

 

「うーん……そこまで頑張って出したモンスターなのにごめんね?

罠カード、和睦の使者! 戦闘ダメージを受けなくなり、戦闘ではモンスターは破壊されない

そして攻撃された事でリバースされる、ブレイン・ジャッカーの効果が発動!

このモンスターは装備カードとなり、相手モンスター1体のコントロールを得る!」

 

えげつねぇ! 戦い方が酷すぎる!

相手のプライドがズタズタに引き裂かれるんじゃないか!?

 

「…………カードを1枚セットしてターンエンドよ」

 

残りライフ4100で耐えられるのか?

 

「エンドフェイズ、ワーム・リンクスの効果で1枚ドロー

ボクのターンになってドロー

恋する乙女を召喚するよ、そして装備魔法、ハッピー・マリッジを恋する乙女に装備

このカードは相手からコントロールを奪ったモンスターの攻撃力分、恋する乙女の攻撃力に足すんだ

ギガンテック・ファイターの攻撃力3800分上昇して攻撃力4200だね」

 

レイの場には攻撃力4200の恋する乙女

3800のギガンテック・ファイター

2800のゴヨウ・ガーディアン

守備表示のカタパルト・タートルとワーム・リンクスか

……オーバーキルだな。

 

「一応サイクロンを発動しておくね

ボクが破壊するのはさっき伏せられたカード」

 

サイクロンで破壊されたのは聖なるバリア・ミラーフォース

明日香はこれで防御手段を失った

最初から伏せてあるカードを使わないという事は攻撃反応型じゃないんだろ。

 

「行くよ?

カタパルト・タートルの効果発動!」

 

「へ?」

 

え?

 

「ギガンテック・ファイターも生け贄に捧げ、攻撃力の半分である1900ダメージを与える!

そしてゴヨウ・ガーディアンを生け贄に捧げ、攻撃力の半分、1400のダメージを与える!

最後にカタパルト・タートル自身を生け贄い捧げ、攻撃力の半分の500ダメージを与える!

これで合計ダメージは3800、残りライフは300

恋する乙女で直接攻撃《ダイレクトアタック》だぁ!」

 

恋する乙女が明日香に向かって走っていき、転けた

ハッピー・マリッジで持っていたブーケが飛んでいき……明日香の手の中に収まる

そして……爆発したぁ!?

 

明日香は黒こげ、そしてライフは0

……なんか屈辱そうだな、明日香。

 

「最後の最後で……これはアレかしら?

私はお嫁に行けないって言われてるの?

いや、落ち着きなさい明日香、相手は子供よ、怒ったら駄目よ」

 

「瑞貴さん! ボク勝ったよ!

言われた通り、恋する乙女の元々の攻撃力で、直接攻撃《ダイレクトアタック》をして勝ったよ!」

 

レイが瑞貴に勝った勝ったと嬉しそうに抱きついてる

瑞貴はよかったなって言って頭を撫でてやってるな

レイはなんだか嬉しそうだ。

 

「瑞貴ぃ! 貴方ね、私を馬鹿にしたいの!?

そうなんでしょ? 絶対にそうよね!?」

 

「その通りだ、何か問題でも?

負けたお前が、何か言い訳でもす・る・つ・も・り・か・な?」

 

うわ! 平然と言い返しやがった!

しかも最後のが超嫌味っぽい!

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ……お、覚えてなさいよぉぉぉぉぉ!!!」

 

明日香は逃げ出した

なんというか、小物っぽい逃げ方だったな。

 

「えっと……やっぱりあの勝ち方は拙かったかな?」

 

「ほっとけ、別にオーバーキルしても結果は変わらん

どっちにしろ、お前の勝ちは決まってたんだし構わんだろう

俺の指示ってのも明日香だって分かってるだろうし、そこまで気にせんよ」

 

よし、ここは俺も逃げた方がよさそうだな

一応レイに近づくなって言われてるし、会ったら何を言われるか……

 

「ところで、俺の後ろで覗き見している馬鹿

とりあえず出てこい」

 

ギクッ! 気付かれてたのか!?

俺は素直に瑞貴の前に出て行く

レイが瑞貴の後ろに隠れて俺を警戒してる

別にもう何もしないんだけどな……

 

「確か俺は、小娘の件で干渉するなと言ったはずだな

随分熱心に決闘《デュエル》を見てたが……これは干渉してると言わないか?」

 

「そ、それはそうだけどよ……」

 

「まぁいい、さっさと帰れ

俺は今からこいつの見送りだ」

 

そう言って瑞貴は後ろに隠れているレイの頭を撫でる

くすぐったそうにしてるけど嬉しそうだ

邪魔するのも何だし、素直に帰った方が良さそうだ。

 

「わかった、俺は帰る

一応、レイの事は誰にも言わない方がいいか?」

 

「言わない方がいいな

最悪、監督責任を取らされてこの学校の教師の半分以上が首だな」

 

「マジか!?」「そんな大事なの!?」

 

レイの件ってそんなにやばかったのか……そりゃ干渉するなって言うか

俺が下手な事をしたら教師の半分以上が首、想像しただけでも恐ろしいな。

 

「わかった、絶対に言わない

じゃあ俺は帰るな、また会おうぜ、レイ!」

 

「あ、うん、またね十代さん

……瑞貴さん、十代さんにボクが中学生になったらここを受験するって言ったっけ?」

 

「あの馬鹿に教えるわけ無いだろうが

単に言っただけだろ、決闘者《デュエリスト》は絆で繋がっているとか言いそうな奴だ

その内会ったら、俺と決闘《デュエル》しようぜって言いたいんだよ」

 

「そっか……でも煩そうでやだ」

 

「俺も嫌だ」

 

 

 

 視点 レイ

 

 

船着き場、瑞貴さんと明日香さんが見送りに来てくれた

明日香さんは亮様にも声を掛けたらしいんだけど……

 

「振ったばかりの俺が行っても気まずいだろう、だって

はぁ、来た方が良いに決まってるじゃない」

 

「思い知らせた方がいいんじゃないか?」

 

「ボクの為にしてくれるのは嬉しいけど……あんまり酷い事しないでくださいね?」

 

物騒な話しになっちゃった

怒ったりしてくれるのは嬉しいんだけど、やっぱり酷い事はしてほしくないな

喧嘩なんかしてほしくないもん。

 

「あの……」

 

「どうかした?」「ん?」

 

「もう少し……残ってるのは駄目なんですよね?」

 

「駄目だ、諦めろ」

 

切り捨てられた、やっぱり瑞貴さんならそうするよね

ちょっと落ち込みそうになるけど、いつも通りでなんか安心した

瑞貴さんが緊張してたりするのって見てて変な感じなんだもん。

 

それに、ボクは瑞貴さんが見送りに来てくれるだけでも嬉しいもん

……あれ? いや、明日香さんが来てくれるのも嬉しいよ?

でも、なんで瑞貴さんしか名前が出なかったのかな?

 

「ちょっと瑞貴、もう少し気を遣ってあげたらどうなの?」

 

「無駄な事はしない主義だ

まぁ……可能か不可能と言えば可能だが」

 

「できるの!?」「できるんですか!?」

 

「校長を脅せばなんとか

だが後で色々と都合が悪くなるし、小娘を隠し通すのも面倒

素直に中学で入って来てくれた方が助かる」

 

「「脅す!?」」

 

校長先生を脅す為の脅迫材料持ってるんだ!?

どうやって手に入れたんだろう……ちょっと怖い。

 

「一応、小娘を残した場合の事も考えたんだがな

不都合とか、面倒とか、厄介事とか

考え出すと増える一方で難しいと判断したんだ

俺が付きっきりで調整すれば後1週間ぐらいは残せそうだが、疲労が半端無い

悪いが諦めてくれ(はぁ、せっかくの極上の抱き枕が……)」

 

「ぼ、ボクの為にそこまで考えてくれただけでも嬉しいですよ!」

 

本当……嬉しい、あんなに迷惑を掛けてばっかりだったボクの為に

また大変になるかもしれないのに残す方向にも考えてくれたんだもん

嬉しくないはずが無いよ。

 

「(なんとなくだけど……ちょっと擦れ違ってる気がするわ、気のせいかしら?

でも言ったらレイちゃんが可哀想な予感がするから黙ってましょう)」

 

船の汽笛の音が聞こえる

もうすぐ出向か……寂しいなぁ。

 

「そんなに悲しそうな顔をするな

お前がミスをしない限り、また会える

悲しみは次の楽しみの為に取っておけ」

 

そう言って頭を撫でてくれる

やっぱり怖いけど、優しい人だ。

 

でも、自分で言って恥ずかしかったのか目を逸らしてる

ボクの頭を撫でるのは止めない

恥ずかしくても言ってくれるのが嬉しいな。

 

「(ここで何か言ったら空気を壊すわよね……黙って見てた方が良さそう

それに……恥ずかしがってる瑞貴を見てるのも楽しい

瑞貴ったら可愛い……珍しい物を見たし、来てよかった)」

 

「瑞貴さん瑞貴さん」

 

「なんだ?」

 

嬉しくなったからちょっとだけ悪戯

だって瑞貴さんが悪いんだよ?

あのカードをボクに見立てたって言ったから

悪戯好きになっちゃったんだよ?

 

瑞貴さんを呼んで手招き

身長が違うから膝を曲げて頭を下ろす瑞貴さん

そうやって顔が近くになったから……

 

「そんな不意打ちは残念ながら俺には通用しない

大事な唇だ、俺なんかには使わずにもっと大事に取っておけ」

 

突然抱きついてキスしようとしたけど

その前に手のひらで口を押さえられて止められた

暫く頑張ったんだけど離してくれないから諦める

諦めた事に気付いた瑞貴さんは手を離してくれた。

 

「むぅ……どうして邪魔するんですか?」

 

「ファーストキスはもっと大きくなってからにしろ

後で後悔するかもしれない、もっと好きな人ができた時

それまでその可愛らしい唇は大事にしておけ」

 

「好きな人……」

 

「(どう見てもレイちゃんは瑞貴の事が好きにしか見えないんだけど?

というか、瑞貴もそれを分かってて言ってるわよね?

多分、長い時間を会えないんだから早まるなって言いたいんじゃないかしら?

レイちゃんの事を考えているのか、想いを無下にしてるのか判断に困るわ)」

 

好きな人かぁ……瑞貴さんが言うと違和感を感じるなぁ

そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと悔しい

多分、ボクの事を考えてくれている

だけど今はまだ想いを受け取ってくれないみたい。

 

長い事離ればなれだからよく考えて行動しろって言いたいんだと思う

きっと離れている間に、また別の好きな人ができるかもしれない

そう考えてるのかな?

 

だったらボクは何も言わない

次、また会っても好きだったら言おう

ボクは……瑞貴さんの事が好きだって!

 

「そろそろ時間だ、行ってこい」

 

「うん、迷惑をかけてごめんなさい瑞貴さん、明日香さん

でもボクの為に色々としてくれてありがとう!」

 

「したくてした事だ、気にするな」「気にしないでレイちゃん」

 

そう言ってくれてると嬉しいな

ボク、絶対にまた来るからね!

 

「ボク、絶対にまた来るからね!

だから待っててね!」

 

「あー……まぁ待っててやるから失敗するな

適当に頑張れよ」

 

「(もっと素直になればいいのに……)

私も待ってるわ、だから頑張ってね?」

 

「ありがとう、またね!」

 

ボクはそのまま走って船に乗り込む

振り返ったら足を止めちゃいそうだもん。

 

船に乗り、瑞貴さん達を見れる場所まで行く

ちゃんと待っててくれた……凄く嬉しい!

 

そして出向する船

段々と船着き場から離れていき、遠くなっていく2人の顔

泣きそうになる、悲しくなる、だけど……絶対に泣かないんだ!

その為に大声で宣言しておく!

 

「絶対にまた来るからーーー!

だから、それまで待っててねーーーーー!」

 

瑞貴さんは明日香さんに何かを言っていた

そしてこっちを向いて、大声を出してくれたんだ。

 

「待っててやるから必ず来いよ!」

 

あの瑞貴さんが大声を出してくれた

面倒事とか嫌うし、静かな方が好きだって言ってたのに

声を出すとかも嫌とかも言ってたのに大声を出してくれた

ボクの為に出してくれた……もう、瑞貴さんは酷いよ、すっごく嬉しいじゃんか。

 

2人が見えなくなり、船室まで戻る

そしてポケットから写真を取りだした

即席のだけど……明日香さんが撮ってくれたんだ。

 

ボクが前に立ち、瑞貴さんは後ろに立ってボクの頭を撫でてくれている写真

ボクは嬉しそうに、瑞貴さんは困ったような顔になってた

これだけで……ボクは想いを忘れないはずだよ。

 

明日香さんに勝ったから貰ったカード

このデッキはずっと使い続ける

大好きな人と一緒に作ったデッキ、絶対に崩さない。

 

また会おうね、瑞貴さん!




※旧後書き
頭突きって……大丈夫なの?
そうとう効いたらしいです、お互いに。

何故十代視点!?
あの恋する乙女の戦闘シーン、精霊の馬鹿を思い出したので
もの凄く楽しかったです
……内容が凄まじく薄くなってしまったのは非常に残念ですが
十代は本当に無理です
単純だから書き難くて書き難くて仕方有りません、もう嫌です。

レイのデッキ構造が意味☆不明!
コントロール奪取を主軸とし、恋する乙女はメイン
しかしサブカードが充実し過ぎたのでちょっとサブメインに降格
作中でも言ってますがかなりごちゃ混ぜですね
基本は回復ロックです、ドロー加速とバーンも使ってライフ差とボードアドバンテージを奪います
弱点は除去カードへの耐性が少ない事
大嵐やサイクロンで半分ぐらい崩壊する可能性有りです
なお、実はアルカナフォース0-THE FOOL(ザ・フール)とアルカナフォースⅩⅣ(フォーティーン)-TEMPERANCE《テンパランス》も入っています、登場してませんが。

サイバー・ブレイダーにコマンド・ナイトーーーーー!!!
これがしたかったんです、この為だけにこの決闘《デュエル》を組みました
できればもっと恋する乙女を活躍させたかった……

ワームとか……
似合わないのは十分承知の上です
しかし、ロックに丁度良い上、ドロー加速として使えるモンスターが少なかったんです。

魔宮の賄賂……
明日香の言う通り、考えが固かった結果です
というのは言い訳、忘れてた作者のミスです
作者のミスによってレイはちょっとお馬鹿に……申し訳無い。

明日香がドリーム・ピエロ?
戦士族でそう多くないモンスター破壊効果です
明日香のデッキには重力解除も入っているので使えるかと思いました(登場してませんが)
……正直、明日香には似合わないと思ってますので今後登場するかは不明。

レイのデッキが拷問系のカードで……
ラヴァ・ゴーレム、断頭台の惨劇などですね
瑞貴の趣味です、効果が強いので勧めたらレイは自分から入れました
特にラヴァ・ゴーレムは詰め決闘《デュエル》でも出たので更に入れようと思ったそうです。

何故サモンチェーンを?
明日香のデッキには除去カードや罠カード、速攻魔法が多いので
よってサモンチェーンはそこまで難易度が高いカードではありません。

ヒュンレイとギガンテック・ファイターの口上は?
思いつきで書きました、今回は難しかったのでそれなりに悩みました
明日香とレイが口上を言ったのは瑞貴からの指示です
言わないと返せと言われていたので言う他ありませんでした。

何故瑞貴はそんな指示を?
自分が最初のロード・ウォリアーの時にしてしまってから吹っ切れました
良いストレス発散になったらしいです
でも自分だけなのは気に入らないので言わせる事にしたそうで。

ゴヨウ・ガーディアンの召喚方法が……
この凶悪モンスターを戦士族の生け贄なんて楽な方法は危険と判断しました
コントロールと奪わなければ召喚できないようにしました
更に相手モンスターを蘇生させた場合は召喚できません
召喚方法が相手のコントロールしていたカードを生け贄に捧げるので
墓地に送られた時点でプレイヤーとコントロールの関係が切れているので無理なんです
ついでに召喚制限が掛けられ、正規召喚しても蘇生できません
なお、ヒュンレイとギガンテック・ファイター、シュヴァリエには召喚条件はありますが制限はありません
ですので蘇生は可能です。

明日香のチートドローに俺が泣いた……
戦士族は手札の消費が激しいのでドロー系カードは大量に入ってます
6枚か7枚ほどです、普通のデッキにはそんなに入りません
値段とレア度が原因です。

フルール・ド・シュヴァリエは何故そんな召喚条件に?
魔法、罠破壊カードなので
あの場では他の召喚条件が思いつきませんでした。

レイが毒されて……
気にしたら負けです。

明日香まで……
今更でしょう
でも明日香は空気を読める子。


原作オリジナル、アニメオリジナルカード効果について

エフェクト・シャットの効果は?
手札を捨てない速攻魔法の天罰です
OCG化したら高確率で即制限か禁止入りですね。

洗脳-ブレイン・コントロールのコストは?
OCGは洗脳-ブレインコントロールなのでカード名から違います、微妙ですが
原作ではコスト無しなので問題有りません
払っても問題ありませんが。


✩感想
恋する乙女は精霊とかじゃないですよ?
レイも精霊のカード持ちじゃないですよ?
でもこのノリは楽しい……しかし今後は無い。
……このノリの要望が有れば新の方で延々とこのノリでする事も考えておきます。

★反省
ヒュンレイとゴヨウ?
……まぁ、うん。

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