応用編⑤セッションの戦略~具体的方法~
2019年10月31日 04:58
前回、セッションの
長期の戦略と短期の戦略を解説しました。
戦略を実行するには具体的に5つの方法があります。
(1)戦略を確認・共有する
(2)クライアントのリソースやポジティブな面に焦点を当てる
(3)クライアントがコーチングに期待しているものを知る
(4)クライアントのセッション運営に対する要望を知る
(5)クライアントのウキウキ、ワクワク感を喚起する
今回は、その5つの具体的方法について詳しく説明します。
(1)戦略を確認・共有する
クライアントの望む方向にセッションを進めることを踏まえれば、
長期・短期に関わらず、コーチングの開始時あるいはセッションの冒頭や途中で、
コーチとクライアントとが互いに戦略 を確認・共有することが極めて重要となります。
コーチは直感を用いてセッションを進めることができますが、
コーチ自身が勝手に解釈することなく方向性をクライアントに都度確認し、
クライアントとの間で共有した上でセッションを進める必要があります。
このようにコーチ ングはコーチとクライアントとの協働関係の下に進められます。
質問例
「今日は何について話したい(考えたい)ですか?」
「その中でも、特に何について話したいですか?」
「今回のセッションではどこまで決めることができれば良いですか」
「まずは何から話したいですか?」
「(セッションの途中で)この後は、どこにポイントを置いて話をしたいですか?」
「もっと話したいことが他にあるように感じますが、いかがですか?」
「別の方向で話を掘り下げたいように聴こえますが、どうでしょうか?」
「話したいことは話せていますか?」→ △(クローズド・クエスチョン)
( 2 ) クライアントのリソースやポジティブな面に焦点を当てる
クライアントとの間での確認・共有ができていれば、
何に焦点を当ててセッションを進めてもかまわないと言えるかもしれません。
しかし、クライアントの中にあるものを引き出していくにあたっては、
次の事柄に焦点を当てる(当てない)と効果的です。
現在の問題を抱えた状況にではなく、
→ 将来、どうなりたいかに焦点を当てる
問題が解決した状態に焦点を当てる
過去の成功体験に焦点を当てる
「何をすれば良いか」に焦点を当てる前に、
→どうあったら良いかに焦点を当てる
現在、どうなっているかに焦点を当てる
リソースに焦点を当てる
物事の成果にだけではなく、
→プロセスで得た「学び」や「気づき」に焦点を当てる
クライアントの感情に焦点を当てる
物事のネガティブな面にではなく
→ ポジティブな面に焦点を当てる
物事の取り組み方にだけではなく
→ 取り組むにあたっての環境に焦点を当てる
このように、何に焦点を当てるかの選択肢は数多くあります。
また、「視点を移動する」で学ん だ事柄も、
何に焦点を当てるかを決めるヒントになるでしょう。
しかし、忘れてはならないのは、 「クライアントに焦点を当てる」ことです。
セッションを運営する際は、視点を移動させるなどにより、
さまざまな事柄に焦点を当てることになるとしても、
最終的にはクライアントに焦点を当てることに立ち戻る必要があります。
( 3 ) クライアントがコーチングに期待しているものを知る
通常、人は自分の目標達成のサポートを受けるためにコーチングを依頼します。
どのような形で のサポートを受けるかについては、人により期待が異なるものです。
コーチングの開始に先立ち、 クライアントがコーチングに何を期待しているかを明確にしておきます。
クライアントの期待はセッションを重ねていくうちに変化することもあります。
コーチングはクライアントのために行なうものです。
常にクライアントの期待に応える姿勢と努力が必要ですので、
「何を期待しているのか」はセッションの節目ごとに確認すると良いでしょう。
クライアントの期待に応えることが、 クライアントの満足やあなたのコーチとしての評価に直結します。
クライアントは必ずしも自 分がコーチングに期待しているものを正確に把握しているとは限りません。
セッションを重ねていくにつれ、本当に期待するものが明確になっていくこともあります。
それを引き出し明確化することも、コーチとしての大切な役割です。
クライアントのコーチングの成果に対する期待としては、例として以下のものがあります。
これらのうちの一つではなく、複数にわたるのが通常ですが、優先順位はクライアントに確認しておきましょう。
① 自分の目標を明確にしたい
② 目標達成へ向けての意識の集中を継続したい
③ 新たな発想やアイデアを引き出したい
④ 具体的な行動へと一歩踏み出したい
⑤ 心身のストレスを軽減したい
⑥ 怠けないで行動できるようになりたい
⑦ モチベーションを高めたい
( 4 ) クライアントのセッション運営に対する要望を知る
コーチングに対する期待のほか、
セッションの運営の仕方についてもクライアントはさまざまな要望を持っています。
目標達成のために厳しくセッションを運営してほしいと願っているクライアントもいれば、
自分自身を認め、誉めることに重点を置いたセッションを望んでいるクライアントもいます。
コーチはそれぞれの要望に対応するのが基本ですが、
同じクライアントでもその時の状況や精神状態によって対応を変える必要も出てきます。
要望を引き出す質問例
「どのようなセッションを希望されますか?」
「コーチの私にどのようなことを期待されますか?」
( 5 ) クライアントのウキウキ、ワクワク感を喚起する
ウキウキ、ワクワク感を持って物事に取り組めば、大きな成果を上げることができます。
コーチはクライアントのそのような感情を喚起するようにセッションを進めます。
そのためには、物事のネガティブ(消極的、否定的)な面にではなく、
ポジティブ(積極的、肯定的)な面に焦点を 当てる必要があります。
① ポジティブに焦点をあてた質問例
「それを達成すると、どのような気持ちになると思いますか?」
「その問題が解決されると、どのような状態になるでしょうか?」
「それを成し遂げるためには、何があればよいでしょうか?」
② ネガティブに焦点をあてた質問例
「このまま続くとどうなるでしょうか?」
「それを成し遂げるために何が足りませんか?」
次回は
セッションの戦略を実行にするにあたって
コーチに求められることに関して解説します。
作成者 : 渡邉 大介