基本編・GROWモデル編では、

コーチングのスキルとセッションの組み立て方(GROW モデル)を学びました。

 

それを習得することで一連のセッション運営が可能になります。

 

しかし、 実際のセッションでは、

特に「G:目標設定」が上手く機能せず、「」に直面し、

話が堂々巡りするケースがよく見られます。

 

クライアントがプロコーチを雇うのは、

自分一人で考えてもす ぐには解決策が見つからないテーマを抱えている

状況にあるからです。

 

そうでなければ、わざわざお金を払ってコーチを雇うことはしません。

クライアントがコーチに期待しているのは、直面 する「壁」を突破することです。

 

今回は、そんなセッションの「壁」の原因や対処法についてお話します。

 

 

目次

・セッションの壁

・セッションの「壁」の原因と対処方法

(1)「 ありたい姿」(目標)を明確にしないまま「何をすれば良いか」(プロセス)を質問している

(2)クライアントではなく、コーチが「答え」を見つけようと悩んでしまう

(3)クライアントに共感を示すあまり、クライアントのネガティブな感情に流されてしまう

(4)セッションが「一問一答式」となり、クライアントとの間に一体感がない

 

 

セッションの「壁」

コーチングでぶつかる「壁」には、次のようなものがあります。

① 新しい発想やアイデアが浮かばない

② 行動がいつまでたってもできない

③ 行動したが思うような成果が上がらない

④ これをやれば成功するという確信が持てず、行動に踏み切れない

⑤ 気持ちが落ち込み、新たな発想や行動への意欲が高まらない

 

 

セッションの「壁」の原因と対処方法

セッションの「壁」が発生する原因は大きく分けて9つあります。

前編ではそのうち(1)~(4)を解説します。

後編(5)~(9)はこちら。

 

( 1 )「 ありたい姿」(目標)を明確にしないまま「何をすれば良いか」(プロセス)を質問している

GROWモデルでは、セッションの最後にクライアントの行動を促します。

 

行動を意識してセッシ ョンを進めることは大切ですが、

その意識が強すぎると「ありたい姿」を明確にしないまま、

「何をすればよいか」を質問しがちです。

 

その結果、なかなか答えがみつからずセッションが堂々巡りに陥ってしまいます。

 

「クライアントの中に答えがある」ことを信じ、

徹底的に「ありたい姿」(どうなりたいのか、どうなったら良いのか)を質問していけば、

「何をすれば良いか」は自然にクライアントの中から湧き出てきます。

 

また、そのような質問は、クライアントのウキウキ・ワクワク感を高め、

アイデアを引き出したり、行動への意欲を高めたりするのにも効果的です。

 

 

 

( 2 ) クライアントではなく、コーチが「答え」を見つけようと悩んでしまう

クライアントの中に答えがある」が、コーチングの基本スタンスです。

 

クライアントの中に答えがあるので、

いくらコーチが自分の頭で考えても答えが見つかるはずがないのです。

 

コーチの中には答えがないことを常に意識してください。

 

「クライアントの役に立ちたい」という強い気持ちは尊いのですが、

コーチが答えを考えてしまい、

クライアントが自らの中にある答えを探す行為を妨げるような関わり方をしては、

良い効果をもたらすことはできません。

 

「答え」とは、問題そのものをズバリ解決するような妙案であるとは限りません。

 

その問題への向き合い方をどうす るかが「答え」であることも多く、

コーチングではそれを見出すことに価値があります。

 

そう考えれば、コーチ自身が悩む必要はないということがわかるはずです。

コーチングマインドの強さが問われる場面です。

 

 

( 3 ) クライアントに共感を示すあまり、クライアントのネガティブな感情に流されてしまう

コーチが感情を込めてクライアントに接し、

信頼していることをアピールしたり、相手の言葉を認めたり、

ペーシングしたりすることは必要です。

 

しかしクライアントのネガティブな感情に流され てしまっては、

クライアントをサポートするというコーチの存在意義が失われてしまいます。

 

セ ッションがネガティブな感情に支配されると、

前向きな行動へ向けてのアイデアを引き出しにくくなりますので注意が必要です。

 

コーチは、クライアントのネガティブな感情を否定することなく、

それをニュートラル(中立的)に受け止めた上で、

クライアントのポジティブな「ありたい姿」や「行動」を引き出すことに留意します。

 

コーチの自己基盤が問われる場面です。

 

 

 

( 4 ) セッションが「一問一答式」となり、クライアントとの間に一体感がない

クライアントとコーチとは、互いに同じ方向を見る必要があります。

 

しかし、「一問一答式」の セッションでは、

互いに対立するような関係ができあがってしまう危険があります。

 

その結果、 クライアントのモチベーションは下がり、

自分の中にある答えを探そうとする努力が失われてしまい、

コーチングが機能しなくなります。

 

これはクローズドクエスチョンや

提案が多過ぎるセッションによく見られる傾向です。

 

オープンクエスチョンに習熟すると共に、

提案の内容、量、タ イミングなどに注意するようにしましょう。

 

また、「承認」が不足していても「一問一答式」の セッションになりがちです。

 

クライアントの言葉に「承認」するなど適切に反応することで、

クライアントとの間に一体感のあるセッションを運営することができます。

 

この状況が深刻な場合は、

クライアントとの間に適切なラポールが築かれていないことが根本原因と考えられます。

 

「承認」「聴く」といった基本スキルを思い起こし、

セッションを立て直すことが必要です。

 


 

次回、応用編②セッションの「壁」~後編~

では、セッションの「壁」が発生する原因と対処方法

残りの5つを解説します。

作成者 : 渡邉 大介

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