前回、コーチングの基本的な手法である

【GROWモデル】

の基本とセッションの大まかな流れを説明しました。

 

GROWモデル編 第二回のテーマは、

セッションの導入部である

セットアップ【ラポールを築く】。

 

あなたはこれまでに

「安心して何でも本音で話せた」

という経験はありますか?

また、その時、相手の言動や周りの状況など、

どのような条件や環境がそろっていましたか?

 

今回は、そのような

相手に安心して何でも本音で話してもらうための

【ラポール】について解説します。

 

 

目次

「ラポール」とは

ラポールモード

「ラポール」を築く具体的方法

「ラポールを築く」上での留意点

まとめ

 

 

「ラポール」とは

「ラポール」とは、主として2人の人の間にある

相互信頼の関係のことを指します。

すなわち,

「心が通い合っている」

「どんなことでも打明けられる」

「言ったことが十分に理解される」と感じられる関係です。

 

カウンセリングや心理テスト、教育などの場面で重視されます。

 

 

*[ 参考 ]「 ラポール」の語源について

ラポール(rapport)は、臨床心理学で

セラピストとクライアントとの間の「信頼関係」を意味する用 語で、

元々はオーストリアの精神科医フランツ・アントン・メスメルが

使い始めた言葉とされていま す。

すでに英語の単語になっていますが、

語源と思われるフランス語では「関係」を意味し、

さらにラテン語にさかのぼると「架け橋」「絆」という意味があると言われています。

 

 

ラポールモード

ラポールモードでは、

コーチはクライアントを「承認」し、話を「聴く」ことで

クラ イアントに安心感・解放感を抱かせ、

二者間の信頼関係を築きます。

 

クライアントがコーチに抱く安心感解放感信頼を「ラポール」といい、

コーチングが機能する際 の大切な要素となります。

 

そして、コーチがクライアントへ「ラポール」を抱かせることを、

ラポールを築く」といいます。

 

人は、相手に対する警戒心を解くことができると、

本音で話せるようになります。

 

クライアントがコーチに対して安心感を抱けば、

クライアントは、本音(=本当のこと) を話しやすくなり、

コーチはクライアントからより多くの課題や気づきを引き出すこと ができます。

 

また、クライアントは「失敗しても受け入れてもらえる」という安心感から、

引き出されたことを「行動」に移すことが容易になります。

 

「行動」そのものがウキウキ、ワクワクする楽しい体験となることで、

より大きな成果をあげることができるのです。

 

しかし、 一度「ラポール」を築いても

セッションのテーマがクライアントのデリケートな部分に触れるといった事情等により、

安心感・解放感・信頼が揺らいでしまうことがあります。

 

その場合は「ラポール」を再構築すべくラポールモードに戻ります。

 

このように、コーチはクライアントとの間に信頼関係を築くことにより

クライアントが安心してコーチの支援を受けられる環境を持続的につくり出します。

 

 

「ラポール」を築く具体的方法

( 1 ) 安心して話せる環境をつくる

セッションを対面で行う場合は、互いが座る位置に配慮します。

正面から向き合うよりも、 90度の角度で遠すぎず近すぎず、

適度な距離を保って座った方が安心して話すことができます。

 

どちらの側に座るかについては

クライアントにとって心地よい方を選んでもらいましょう。

 

心理学者のロバート・ソマーの実験によると、

人は相手との関係性の違いに応じて、座る場所や距離を調節している

ということが分かりました。

コーチングセッションにおいても、

上図のAまたはDの位置関係を選ぶと、

クライアントは安心して話すことができます。

参考)ロバート・ソマー『人間の空間』

 

また電話やSkypeなどでセッションをおこなう場合は、

通話設備に不具合が生じていないかを確認します。

 

音声が聞き取りづらいなどの不具合が発生すると、

クライアントは安心して話すことができず、セッションに集中できません。

 

( 2 ) クライアントが話しやすい話題から開始する

いきなりセッションの本題に入るのではなく、

季節的なことやクライアントが関心を抱いていることなどの会話から始めることで、

クライアントはセッションを

明るくリラックスした気持ちでスタートすることができるようになります。

 

( 3 ) クライアントを応援していることを言葉と態度で示す

コーチはクライアントを信頼し受け入れ、

100%味方であること、クライアントの全てを認め ていることを言葉と態度で示します。

例) 「私は、●●さんを全力でサポートしますので、

    安心して何でもお話しください。」

   「 私は、●●さんを心から応援していますので、

    何でも遠慮なくお話しください。」

 

( 4 ) 適度に相手の名前を呼ぶ

人は自分の名前を呼ばれることで、

「尊重されている」「認められている」と感じ、

安心感を得 ることができます。

 

また、名前を呼んでくれた相手に対して好意や親しみを感じるので

信頼関係の構築にも役立ちます。

 

一般的には、ニックネームや「下の名前」で呼ぶ方が

ラポールを築きやすいと言われていますが、

クライアントに「呼んでもらいたい呼び名」を確認するように しましょう。

例) 「お名前は、何とお呼びしたらよろしいですか?」

 

 

( 5 ) コーチの体験・考え・思い等を自己開示する

コーチ自身が自己開示することにより、

クライアントはコーチの人間性を理解したり、共感を覚えたりします。

 

それにより、クライアントの中で安心感を得ることができます。

またコーチ が自分自身のことを話すことで、

クライアント自身も話しやすくなります。

 

コーチが緊張していたりクライアントに警戒心を抱いたりすると

クライアントもそのように反応します。

 

コーチ はクライアントの“鏡”のような存在ですが、

同様に、クライアントもコーチの姿勢を“鏡” のように反映させます。

このような場面でも、コーチに確固とした自己基盤が求められます。

 

 

( 6 ) 守秘義務があることを告知する

コーチングセッションを始める際は必ず、

コーチには守秘義務があり、

セッションの内容は決して第三者に口外しないことを伝えてください。

 

 

安心して話せる信頼関係を築く上で、最低限のルールです。

例) 「コーチには守秘義務があり、

    セッションの内容は決して他人にお話ししませんので、

     ご安心ください。」

 

 

( 7 )「 聴く」スキルを駆使する

「聴く」ことをしっかり行うことで、

クライアントは安心して何でも話せるようになります。

 

クライアントの話を途中で止めたり、否定したりしないように注意しましょう。

 

*安心感を築く効果的なアイスブレイクの手法

「アイスブレイク」(ice break)とは、

初対面の時などに生ずる緊張感を和らげ、

話しやすい雰囲気を つくるための手法、

またはそれを行う時間のことを指す言葉です。

 

この手法を「ラポール」時に取り入 れることは、

クライアントに安心感を得てもらうのに大変効果的です。

 

①汎用性のあるアイスブレイクの例

「お名前はなんとお呼びしたらよろしいですか?」

「自己紹介をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

② 季節感や時期を意識したアイスブレイクの例

「一番好きな季節はいつですか?その理由は?」

「一週間の始まりですが、どのような一週間にしたいですか?」

 

③ モチベーションを上げるアイスブレイクの例

「最近ワクワクしたことは何でしたか?」

「(クライアントの話した内容に関して)また色々と教えていただけますか?」

 

 

「ラポールを築く」上での留意点

( 1 ) コーチとしての姿勢や態度、服装にも配慮する

コーチングはコミュニケーションのスキルであり、

基本的には言葉を介して行なうものです。

しかし、安心感を築くためには、

コーチの態度やセッションを実施する環境についても

十分に留意する必要があります。

 

コーチは相手の話に真摯(しんし)に耳を傾ける態度を示します。

電話や Skype でのセッションでも、コーチの態度が相手に伝わるものです。

プロコーチであれば、ふさわしい服装であることも留意したいところです。

 

 

( 2 ) コーチとしての自己基盤を整える

クライアントに真の信頼感と安心感を得てもらうには、

単なる口先のテクニックでは不十分で あり、

確固とした自己基盤を含むコーチの人間性品格包容力が大きく影響します。

 

例えば、 下記の事柄について、常に自分自身をチェックしておくことが大切です。

 

  1.  クライアントの幸せや未来について、真の関心を示している。
  2.  個人としての高潔さや正直さ、誠実さを絶えず示している。
  3. コーチとしてふさわしい倫理基準及び行動規範を理解し、それに基づいて行動している。
  4. クライアントに対して適切かつ敬意を払った言葉づかいをする配慮をしている。(性差別・人種差別・専門用語や隠語を避ける等)。
  5.  クライアントとの間の合意事項を明確にし、約束は必ず守っている。
  6.  クライアントが持っている認識や学習スタイル、個人としてのあり方に敬意を示している。
  7. デリケートで未踏の領域を扱う場合は、クライアントの了解を得ている。

 

一方、コーチとしてクライアントの100%味方になるという点では、

あまり堅苦しく考えず、 自由さや柔軟さを併せ持った

関わり方をすることも求められます。例えば次のような事柄です。

 

  1. 開放的かつ柔軟で自信にあふれる姿勢を示し、クライアントに対して意図的かつ主体的に関わっていく。
  2. リスクや失敗の恐れがあるものも含め、クライアントが新たな行動を起こすことを継続的に支援・擁護する。
  3. 軽快さや活力を生み出すために、時には効果的にユーモアを用いる。

 

 

まとめ

いかがでしたか?

 

クライアントに安心して本音で何でも話してもらうためのラポールを築くことは、

あなたがコーチングを行うにあたっての大前提。

 

これには、アイスブレイクや会話などのテクニックはもちろん必要ですが、

まずはあなたがコーチとしての基盤や態度が確立していることが

最も重要となります。

 

コーチとしてクライアントに向き合う際には

あなたがそれにふさわしい人間力を備えているかを常に確認するようにしましょう。

 

 

☆★今回の内容を動画でさらに詳しく!★☆

LINE登録はこちら!

作成者 : 渡邉 大介

>  記事一覧はこちら