刀装具の修復

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鍔の修復です。



この鍔は、江戸時代の名品です。
数百年かけて良い色に育った古色が、作品に趣きと気品を漂わせていたことでしょう。
ところが、素人さんの手により、完全に錆が除去されてしまっています。

元来日本人には、時代を帯びて美しさを纏った美に対する尊敬や敬意の念がありました。
それらを愛でることは最高の贅沢の一つとされ、そこに古美術品を大切にする日本人独特の文化意識が育まれてきたのです。その意識は、刀剣や刀装具にいたっても同じです。
特に錆を鑑賞する文化は、日本独自といってもよいのではないでしょうか。

時々、古美術品の価値をご理解いただけず、刀身の茎や刀装具の錆を鏡面仕様に磨き上げてしまう方がいらっしゃいますが、これはただの文化財破壊行為に他なりません。くれぐれもご用心下さい!

今回の鍔も、誤った扱われ方をされて、本来の価値が損なわれてしまっています。
ここ数ヶ月、付きっきりで面倒を見て、古色の再現を試みてきました。
やっと、錆が付いてきましたが、まだまだ本来の美しさを取り戻せていません。

今日までカタチを留めてきた古美術品には、必ず現代まで残った理由があり、大変貴重な価値を内包しています。
くれぐれも、ご自身の独断や自己解釈で、数百年の時代を経た日本人の心を傷付ける事のない様、お願いいたします。
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