南京を助け、日本を助ける住職 | ||||
陳炳山、于英傑=文 この10年、真宗大谷派円光寺住職の大東仁さんは侵華日本軍南京大虐殺殉難同胞記念館(江蘇省南京市)のために1700点余りの資料を収集し、大部分を無償で寄贈してきた。このため日本の右翼勢力からは「裏切り者」とののしられているが、彼は全く動じていない。大東さんは「私がこの活動を続けているのは歴史の本当の姿を取り戻すためだ。これは中国と南京を助ける行為であり、日本を助ける行為でもある」と率直に語る。 初の国家追悼日前に資料寄贈 大東さんの表情はたくましい。眼鏡を掛け、黄色の僧衣の下には白いシャツとネクタイを身に着け、上品さも漂わせている。かばんの中には日本軍の中国侵略に関する新資料3点が入っており、うち2点は日本軍の南京占領と関わりがある。 1点目は「中山門攻撃」の絵はがきだ。イラストは油絵作品で、日本軍が南京・中山門を占領する場面が描かれている。彼の考証によれば、この絵はがきは1938年に発行されたものだ。裏面にはライオン歯磨き発行と書かれ、商標が印刷されていた。当時、歯磨きを買ってプレゼントされたのだろう。
2点目は1枚の写真だ。写真はすでに少し黄色くなっているが、硝煙に満ちた大通りと「南京所見」「南京南門の激しい炎」の文字が今もはっきりと見て取れる。日本軍が南京を占拠した時、中国側の守備隊の激しい抵抗に遭った。日本軍は大通りの建物をすさまじい勢いで砲撃し、占領後に放火・虐殺・略奪を行い、かつて栄えていた南門大街はがれきの廃墟になった。 3点目は1945年8月16日付の日本の新聞だ。紙面には日本の降伏や阿南惟幾陸軍大臣の自殺を伝える記事がある。この新聞が特殊なのは、毎日新聞と朝日新聞が共同で発行した「合同新聞」であることだ。大東さんによると、戦争末期の日本は物資が極めて乏しくなり、新聞社の紙も不足し、2社の新聞社は1枚の紙面で共同発行するしかなかった。 大東さんは今年の12月13日に初めて執り行われる「南京大虐殺殉難者国家追悼日」の前にこれらの資料を同記念館に贈るつもりだ。寄贈する資料はこれらだけではないが、数がとても多く、大きい物もあるため、名古屋の自宅に保管してあるという。 10年間で1700点を収集 2005年末から大東さんは正式に同記念館の委託を受け、日本で関連資料の収集を手伝っている。 日本軍の中国侵略に関する資料を集めるのは簡単なことではない。常に中古品市場やインターネットのオークションサイトをチェックする必要があり、価値があると思われた品については本物かどうかを確かめなければいけない。 一つ一つの品には価格がついているが、この数年でいくら使ったのか大東さんは計算したことがないという。1万円以下の資料であれば、彼は無償で同記念館などの組織に寄贈している。 大東さんの集めた資料には、日本軍側から出てきた詳細な戦闘の記録、兵士の日記や手紙、日本の書籍や新聞・雑誌、絵はがきなどのほか、戦中の日本で流行した子どものおもちゃまである。「日本は当時、『南京陥落』と関係のあるボードゲームをわざわざ開発した。子どもたちの文房具には、南京占領など中国侵略の戦果を宣伝するデザインが印刷されていた」。大東さんの考えでは、こうしたおもちゃや文房具は当時の日本政府が全力で子どもに進めていた軍国主義教育を大いに反映しているという。 日本から持ち込まれたこうした資料は日本軍による南京大虐殺の史実の有力な証拠になり、多くは非常に高い価値を持っている。 より多くの日本人に真相を 大東さんは真宗大谷派名古屋教区教化センター研究員だ。代々受け継がれてきた円光寺は現地で大きな影響力を持ち、大東さんは25代目の住職を務める。この10年、円光寺には高僧や檀家だけではなく、妨害目的の右翼勢力も訪れている。 大東さんは長年にわたって日本の中国侵略、特に南京大虐殺の証拠資料を収集してきた。このため、南京大虐殺への市民の関心を薄れさせ、ひいては消し去ろうと考える右翼勢力の怒りを買っていた。ネット上では彼を「中国の走狗」「裏切り者」とののしる者もいる。 名古屋の地元の右翼活動家は彼の元に押しかけ、「中国人にだまされている」と警告したことがある。大東さんは日本で集めた証拠を取り出し「これらは全て日本から出てきた資料だ。どうして中国人にだまされていると言えるのか」と反論した。資料を見た右翼活動家は答えに詰まった。数回の論争を経て、一部の右翼活動家は納得はしなかったものの、次第に大東さんへの態度を変えていった。「最初に来た時は私を『大東』と呼び捨てにしていた。これは日本では非常に失礼な態度だ。2年目には『大東さん』と呼んだ。3年目はまだ私と論争していたが、『大東先生』と呼び始めた」。大東さんは「右翼の見方は確かな証拠に基づいておらず、長い目で見れば絶対に理屈は通らない」と説明する。
一人の日本人として、なぜ多額の財産と体力・気力を費やし、南京のために日本軍の大虐殺の証拠を集めるのか? 大東さんは南京、中国のためであり、日本のためでもあり、さらには世界の平和のためだと語った。日本の一部の人々は南京大虐殺と侵略の事実を一貫して否定しており、証拠を基に反論し、言い逃れできないようにする必要がある。より多くの日本人に真相を理解させることは、中国と日本の平和的な共存にも役立つ。 しかし彼が心配しているのは、日本の小中学校が明治維新以降の歴史教育を軽視していることだ。大多数の日本人は「9・18事変(満州事変)」について全く知らず、7月7日を取り上げると「七夕」しか知らず、「7・7事変(盧溝橋事件)」があることをよく知らない。大東さんは「彼らは歴史をあまりにも理解していない。このため、侵略・暴行を否定し戦争責任を転嫁する日本政府のでたらめな言動に対し、周辺国家は非常に大きな問題だと感じているが、日本国民の多くは問題とは感じていない。彼らが歴史を理解していないからだ」と指摘する。 「政府が民衆に歴史の真相を理解させないのなら、私たちがやらなければいけない」。大東さんはよく日本の仏教徒の集会で「戦争と仏教」をテーマに講演している。また南京を毎年訪れ「中日僧侶平和法会」に参加し、南京大虐殺の犠牲者のために祈っている。「私たちの努力を通じ、1人でも多くの人に歴史の真相を理解してもらえればうれしい」。絶え間ない努力でしか日本の歴史認識の誤りをただすことはできないと彼は考えている。(新華報業伝媒集団提供 人民中国共同企画)
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