演奏曲、日時、場所

第何度目の定期演奏会かを選んでください。リンク先のない定期演奏会は詳細不明です。

第50回記念定期演奏会

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副指揮者ステージ 寺山修司による6つのうた「思い出すためにより」 2017.1.22(日)
開場16:30
開演17:00
日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
名古屋市
名古屋市教育委員会
愛知県教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
かなしみ
てがみ
世界のいちばん遠い土地へ
僕が死んでも
思い出すために
種子
   
作詩
作曲
指揮
伴奏
寺山修司
信長貴富
遠藤彗
杉野加奈
正指揮者ステージ 混声合唱アルバム「風にのれ、僕らよ」
訪れ
貝殻の歌
砂の子、星の子
果てしない助走
作詩
作曲
指揮
みなずきみのり
相澤直人
大崎南帆
アラカルトステージ ~あの頃に思いを馳せて~
ドレミの歌(女声合唱)



乾杯(男声合唱)
    

銀河鉄道999
    
    

作詞:オスカー・ハマーシュタイン2世
作曲:リチャード・ロジャース
編曲:北野 実

作詞・作曲:長渕 剛
編曲:源田 俊一郎

作詞:山川 啓介
作曲:タケカワユキヒデ
編曲:早川洋平
指揮:大崎南帆
OV合同ステージ 混声合唱とオーケストラのためのカンタータ「水脈速み」
たゆとう国々
その土地
野薔薇ではなく
水脈速み
作詩
作曲
客演指揮
客演演奏
山崎 佳代子
松下 耕
中村 貴志
愛知室内オーケストラ
副指揮者ステージ 寺山修司による6つのうた「思い出すためにより」

 副指揮者ステージでは、作詞:寺山修司、作曲信長貴富「寺山修司の6つのうた 思い出すために」をお送りします。この曲集に収められた6つの詩はいずれも寺山修司の孤独と、そして愛への情念が込められたものとなっています。そして曲はそれに呼応するかのように様々に色を変えていき、まるで自分の所在に苛まれる寺山修司の心を表しているかのようでもあります。
 若者が歌うには少し早いでしょうか。いえ、僕はそうは思いません。詩のもつ人間臭さは様々な事を経験し、精神的に成長していく大学生にとってぴったりだと思います。
 グリーンハーモニーには魅力的な「個」がたくさんあります。それはこの曲集をさらに光らせ、そして新たなのく面を発見させてくれます。そんなグリーンハーモニーが奏でる、少し大人びた魅惑的な詩と、それが染み込んでくるようなメロディをお楽しみください。

正指揮者ステージ 混声合唱アルバム「風にのれ、僕らよ」

 第2ステージでは 作詩 みなづきみのり 作曲 相澤直人 混声合唱アルバム『風にのれ、僕らよ』を演奏します。みなづきみのりによる書き下ろしの詩“訪れ”“貝殻の歌”“砂の子、星の子”“果てしない助走”に相澤直人が付曲した4曲のアルバムです。
 それぞれが違う世界観をもっている4曲です。グリーンハーモニーの奏でる音楽をどうぞお楽しみください。 

アラカルトステージ ~あの頃に思いを馳せて~

 第3ステージは「あの頃に思いをはせて」というテーマのもとドレミのうた、乾杯、銀河鉄道999の3曲をお送りします。  ドレミのうた(作曲:リチャード・ロジャース、編曲:北野実)は1959年に公開されたミュージカル映画「Sound of music」の挿入歌を女声三部合唱に編曲したものです。主人公のマリア先生がトラップ家の子供たちにドレミを教えるシーンで歌われます。
 乾杯(作詞作曲:長渕剛、編曲:源田俊一郎)は長渕剛の言わずと知れた名曲です。人生の節目を迎える人の応援歌です。源田俊一郎による編曲でシンプルながらも魅力的な響きを持っています。明快なメロディを男声4部合唱で堂々と歌い上げます。
 銀河鉄道999(作曲:タケカワユキヒデ、編曲:早川洋平)は名作アニメ「銀河鉄道999」の主題歌です。少年の旅立ちを爽やかかつスタイリッシュに歌い上げます。我が団の団員である早川洋平による編曲にてお送りします。

OV合同ステージ 混声合唱とオーケストラのためのカンタータ「水脈速み」

 混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『水脈速み』は、日本の合唱界を代表する作曲家の一人であり、指揮者としても活躍している松下耕が作曲を、静岡県育ちで1979年からかつてのユーゴスラビアの首都、現在はセルビア共和国の首都ベオグラードにずっと住んでいる山崎佳代子が作詩を担当し、「第24回国民文化祭しずおか2009合唱の祭典」で初演された。
 セルビアはヨーロッパ南東部に位置するバルカン半島にあるが、古代から様々な民族が流入して民族間の争いが多発する地域である。1929年からセルビアを中心としてユーゴスラビア(1943年からは社会主義連邦共和国となる)が形成されたが、1990年以降は社会主義陣営の崩壊と東欧の民主化の波を受けて、各民族が独立を宣言する。しかし、独立運動は泥沼化し、民族紛争に発展。その中でセルビアは独裁政権の下で強硬路線を取ったことから、西側諸国から長期間の経済制裁が科され、1999年にはNATO軍の爆撃を受けることとなった。2000年に独裁政権が倒され、2006年に全ての民族が独立を果たして、ようやくこの地域の民族紛争は収束したのだった。
 このカンタータは「国」という存在の危うさ、「戦」の無益さを切々と訴えつつ、平和を願う。民族間の争いとユーゴスラビアの解体を目の当たりにし、経済制裁による貧困を経験し、NATO軍の空爆をかいくぐり、生き延びた山崎だからこそ紡ぎ出せた詩だ。
 実は、私は2010年、11年と2年連続でセルビアに訪れた。首都ベオグラードの市街地にはNATO軍の爆撃を受けた政府の施設がそのまま残り、紛争の爪跡も随所に見られた。私は半分壊れたままの放送局でテレビに出演した。私の先入観もあるかもしれないが、経済制裁の影響はまだ尾を引き、貧しさが漂う。一方で、セルビアは親日で、当地の人々は非常に暖かく、親しく接してくれた。それにしても、そんなセルビア人がなぜあんなひどい紛争を起こしたのだろうか? 「人」という存在も危ういということか?
 名古屋大学グリーンハーモニーは本日50回目を記念する定期演奏会を迎えました。半世紀に渡る活動の歴史の重みを感じずにはいられません。今から50年前に熱き思いを抱いてグリーンハーモニーを結成された先輩方、その思いを脈々と受け継がれた代々の先輩方、その思いを次へと伝えようとしている現役生たちに、心から敬意を表します。私は2000年からこの団と関わりがありますが、大きな節目となる演奏会の指揮台に立てることを大変うれしく思います。出演者が一丸となり、今この時にこそ歌う意義のある『水脈速み』を、心を込めて皆様にお届けします。

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第49回定期演奏会

      
1st.無伴奏混声合唱のための『朝の交響』 2016.1.17(日)
開場17:00
開演17:30
三井住友海上しらかわホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
はかる
だいちのうた
樹木にささぐ
朝の交響    
作詩
作曲
指揮
田口犬男
田中達也
大﨑南帆
2st.『Missa O quam gloriosum est regnum』より
Kyrie
Gloria
Sanctus
Agnus Dei
作曲
指揮
Tomas Luis de Victoria
森 翔汰
3st.混声合唱組曲『まだ見ぬあなたへ』
たそがれ
言葉と呟きのはざま
なくならない
まだみぬあなたへのうた
問え、そして歩め
作詩
作曲
客演指揮
客演伴奏
みなづきみのり
北川 昇
中村貴志
重左恵理
1st.無伴奏混声合唱のための『朝の交響』

 第1ステージでは作詩 田口犬男 作曲 田中達也 無伴奏混声合唱のための「朝の交響」を演奏します。作詩者 田口犬男の詩集「二十世紀孤児」に収められた4編の詩“はかる”“だいちのうた”“樹木にささぐ”“朝の交響”によるものです。
曲がかわるごと、音がかわるごとに変わっていく世界、音楽と共に見える景色、色。まるで絵本をめくっていくように進んでいく音楽、そして詩。4曲それぞれの世界観を持っています。
 『朝の交響』の色とグリーンハーモニーの色が重なるとき。グリーンハーモニーの若くカラフルでパワーの溢れる『朝の交響』をどうぞお楽しみください。

2st.『Missa O quam gloriosum est regnum』より

 第2ステージではビクトリアによる、数多いミサ曲のうちの一つを演奏します。
  曲集のタイトルからも推測できることですが、これはビクトリア自身のモテット"O quam gloriosum"のパロディとなっています。なんという栄光であろうか、とも訳される"O quam gloriosum"ですが、原曲は歌詞に準じた華やかさを持っています。胸に蓄積された衝動があるとき、一瞬にして炸裂し、解放されるような曲調となっています。
 今回演奏する"Missa O quam gloriosum est regnum"にも、原曲に類似した華やかさを随所にみることができます。最も耳に残りやすい点は、あるソプラノパートの旋律でしょう。しかし私は次に挙げる、他の2点を重視します。それらはぜひ皆さんにも注目してほしい点です。1点目は各パートの下降音形。一般に下降音形は高揚から休息に向かい、あるときは次の旋律の準備として捉えられます。今回のミサ曲での下降音形も同様ではあるのですが、一方で常にある種の高揚を保ち続けているのが大きな特徴です。2点目は同じ音形の受継ぎ。この技法自体は、今日ありふれた合唱曲でもよく使われるものです。このような合唱曲に対し、ビクトリアのこのミサ曲は受継ぎが幾度となく繰り返されます。はっきりと記憶に残る旋律でなくとも、提示される度に既視感に似た感覚を無意識に得ることができると思われます。
 今からの演奏は、我が団の集大成の一つです。ご堪能ください。

3st.混声合唱組曲『まだ見ぬあなたへ』

 私が客演指揮者としてこの団のステージに上がらせて頂くのは今回で5回目となります。選曲の段階では学生はもちろんのこと、私もいくつか候補を挙げます。そのために曲を探すのですが、私が候補とする曲を選ぶポイントがあります。それは名古屋大学グリーンハーモニーの学生たちが「自分たちの今を歌えるもの」、「この時にしか歌えないもの」であるということ。「若者らしさ」を念頭に作り上げられた混声合唱組曲『まだ見ぬあなたへ』の楽譜を見た瞬間、私は「この曲だ!」と思い、迷いなく候補に挙げ、学生たちの賛同を得て今回の客演ステージの作品に選ばれました。
 この組曲の作曲者は北川昇。1983年生まれの若手の作曲家です。大阪音楽大学音楽学部作曲学科作曲専攻卒業、同大学院音楽研究科作曲研究室修了。作曲を下村正彦、千原英喜の各氏に師事。近年多くの団体から委嘱を受け、作品の演奏頻度も高い。また合唱指揮者であり、有名合唱団にも所属しており、そのことが合唱の深い理解につながっているでしょう。作詞者はみなづきみのり。関西を中心に活躍している合唱指揮者、伊東恵司のペンネームです。
 元気溌剌として突き進んだかと思えば、迷ったり惑ったりして塞ぎ込む。みなづきみのりはそんな若者特有の心情を巧みに言葉として紡ぎ出しています。そして、北川昇はみなずきの詩を的確に捉え、多くの者が共感できる合唱組曲に仕立て上げました。
 この組曲を通して、名古屋大学グリーンハーモニーの若者たちの「今」、「この時」をお届けします。

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第48回定期演奏会

   
1st.『Missa』より 2015.1.17(土)
開場17:30
開演18:00
大府市勤労文化会館 もちのきホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
Kyrie
Gloria
Sanctus
Agnus Dei    
作曲
指揮
Juha Holma
森 翔汰
2st.アラカルトステージ ~美しき日本語をうたう~
宿題
MI・YO・TA
木とともに 人とともに
古の君へ
作詩:谷川俊太郎 作曲:相澤直人
作詩:谷川俊太郎 作曲:武満 徹 編曲:沼尻竜典
作詩:谷川俊太郎 作曲:三善 晃
作詞:平元慎一郎・坂口愛美 作曲:千原英喜
指揮:長 琢也
3st.混声合唱とピアノのための組曲『夢の意味』より
朝あけに
川沿いの道にて
歩いて
夢の意味
夢の名残
作詩
作曲
客演指揮
林 望
上田真樹
中村貴志
1st.『Missa』より ~パンフレットより

 第一ステージではフィンランドの作曲家によるミサ曲を演奏します。もともとミサ曲は成果としてのものが主流でした。しかし時代を経るにつれて、芸術としての"新しい"ミサ曲が作られるようになってきました。今回演奏するものもその一つです。
 あるところではためらい、あるところでは喜び、さらには深い信仰…。多様な感情が見え隠れするのがこの曲集の"新しい"ところです。一聞、不気味ともとれる音楽の中でそれらを読み取ることができるでしょう。
 不思議な曲調と団員の織り成す素敵な歌声との調和をお楽しみください。

2st.アラカルトステージ ~美しき日本語をうたう~ ~パンフレットより

 最近、本屋さん等に立ち寄るとよく見かける「TOEIC」の文字。院試を見据えつつ焦りを感じると同時に、ふと思う。「英語圏の人たちは、どれくらい英語を勉強するのだろうか」と。僕等が普段話している日本語に目を向ける機械は、意外と少ないことに気づく。そして、その日本語の魅力は計り知れない。例えば、「八重桜」の花言葉の1つには、「淑やか」という意味があり、上品さ、雅さにも通じるところがある。
 第2ステージは、~美しき日本語をうたう~と題されたアラカルトステージ!谷川俊太郎の詩による3つの歌と、千原英喜作曲のピースの作品だ!4つの曲それぞれに世界観がある。
 目をつぶって考え事をしていると、想像力豊かな人は、もう止まらないだろう。見たこともない世界、宇宙の果て、もしくは神様の姿。でも、普段何気なく生活している時は、そんなこと考える暇もなく、目の前の小さな出来事に一喜一憂している。目をつぶってじっくり考えるから、想像が膨らむのだ。命のことを考える。人は自然の恵みを受けて生きている。そして、人と出会い、人とともに生きて、歓びを分かち合う。出会いがあれば、別れもある。そうやって、時は流れてゆく。いのちとは、儚くも美しい、まるで桜のようである。そんな、長い長い時の流れの中のほんの一瞬の輝き。それなのに、その一瞬の中で人は争い、悲しみに暮れる。終わりの見えない争いや悲しみが地平線に沈み、平和という太陽が僕らの街をてらしてくれる日を願っている。
 1つ1つの詩に込められた意思と、言葉の持つエネルギーを、「うた」という形でどのように表現し、どのように伝えるか。今宵、詩の世界観が込められた「音楽」から受け取ったメッセージを、僕等の歌声にのせて届けよう!グリーンハーモニーの織りなす様々な音楽をご覧あれ!

3st.混声合唱とピアノのための組曲『夢の意味』より ~パンフレットより

 混声合唱とピアノのための組曲『夢の意味』は東京混声合唱団の委嘱によって生まれ、2007年に同団の第209回定期演奏会で初演された。
 作曲したのは東洋都立芸術高等学校音楽科作曲専攻を経て、東京藝術大学音楽部作曲科を卒業し、同大学大学院音楽研究科音楽学専攻(ソルフェージュ)博士課程を修了した上田真樹。第12回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第2位と第18回朝日作曲賞(合唱組曲)の受賞歴がある。
 作詩は慶應義塾大学文学部国文学科を卒業、同大学大学院文学研究科博士課程を修了し、ケンブリッジ大学とオクスフォード大学で研究を行い、東横学園女子短期大学助教授、東京藝術大学助教授を歴任した作家で国文学者の林望による。イギリス滞在中の研究成果により、1992年度国際交流基金国際交流奨励賞を受賞した。作家としては1991年にイギリス滞在中の体験をもとにした随筆でデビューし、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、1993年には講談社エッセイ賞を受賞した。近年は『源氏物語』の現代語訳に取り組んだ『謹訳源氏物語』全10巻が毎日出版文化賞特別賞を受賞。
 上田が東京混声合唱団のために作品を書くことになり、林がそのために5編からなる『夢の意味』を書き下ろした。林はこの詩の根底には東洋哲学の思想があると語る。それは夢という視座を置くことによって、人間の存在や人生を相対化すること。この作品の表題となっている第4曲『夢の意味』にそれが端的に表れている。「いきていることの いみを だれもほんとうには しらない。 いきているとおもっているのは じつは ゆめ かもしれない」。
 夢を通して幼少期から老年期までの人生を描いた5編の詩を上田は見事な構成によって合唱組曲に仕上げた。選び抜かれた音は林の言葉とともに演奏する者、聴く者の心身に染み入る。
 名古屋大学グリーンハーモニーは私の指揮の下、どんな「夢」を紡ぎだしてくれるのだろう?楽しみである!

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第47回定期演奏会

   
1st.混声合唱のための 『うた』より  2014.1.19(日)
開場17:00
開演17:30
名古屋市青少年文化センターアートピアホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
島へ
○と△の歌
死んだ男の残したものは
明日ハ晴レカナ、曇リカナ
作詞
作曲
指揮
井沢 満 ほか
武満 徹
長 琢也
2st.混声合唱組曲 あなたにあいたくて生まれてきた詩
あなたにあいたくて生れてきた詩
雲は雲のままに流れ
あげます
丁度よい
四丁目の犬
きりん
風のうた
作詞
作曲
指揮
宗 左近 ほか
千原 英喜
川口 智子
3st.『Maior caritas Op.5』より
Pater noster
Memorare
In supremae nocte cenae
O magnum mysterium
Maior caritas

作曲
客演指揮
客演ギター

Jhon August Pamintuan
中村貴志
大矢修三
1st.混声合唱のための 『うた』より ~パンフレットより

第1ステージでは、武満徹作品を4曲演奏します。混声合唱のための「うた」は、武満徹が長年個別に作曲したものを、晩年に合唱曲へと編んだ作品集です。印象的な旋律と響きが言葉と絡み合い、1曲1曲が独自の世界観と訴求力を持っています。それは問いかけであり、若々しさであり、反戦の意であり、かすかな希望を信じる心であり…。言葉はどこからきて、何処へいくのでしょうか。湧き上がった感情は行き場を失い、心の外へ。それは響きとなり、声となり、「うた」となって人の耳へ届く。そしてまた、響きの中へと還っていく。グリーンハーモニーの歌声で包み込んだ曲に乗せて、私達の想いを、うたを、心を込めて届けます。人はなぜうたうのか…。私達と一緒に、その答えを探す旅をしませんか。

2st.混声合唱組曲 あなたにあいたくて生まれてきた詩 ~パンフレットより

―今日は、みなさん。ご機嫌いかがですか。― 印象深いこの問いかけから始まる混声合唱組曲『あなたにあいたくて生まれてきた詩』は、老若男女すべての人の心に響くような身近なテーマを持つ7曲から構成されています。思春期の胸のときめきをベルやチャイムの音に乗せて届ける「あげます」、芸術家の孤高をブルース調に歌い上げる「きりん」など、それぞれの曲のカラーは様々ですが、どの曲も親しみやすく、エネルギーにあふれていて、私たちに元気を与えてくれます。定期演奏会のステージに立ち、お客様に私たちの歌を聴いていただくことができる瞬間は、まさに”光る時間”そのものではないでしょうか。この”光る時間”のまんなかで、団員一同”おもいをつくして”きらきら輝きを放つ7つの歌を皆様にお届けしたいと思います。

3st.『Maior caritas Op.5』より ~パンフレットより

1972年にフィリピンの首都、マニラで生まれたパミントゥアン(John August Pamintuan)は近年、合唱指揮者として、また作曲家として世界的に人気が高まりつつある。合唱作品を数多く作曲し、世界的な合唱祭や合唱コンクールで取り上げられたことから広く認知され、世界各地で歌われるようになった。彼の代表作と言えるのが”Maior caritas Op.5”である。14曲から成るが、それぞれ別の機会に作曲され、後にまとめられた宗教曲集である。大半がラテン語によるアカペラ作品であるが、中にはパミントゥアンの母国語であるフィリピン語やスペイン語のもの、チェロのオブリガートが付いたもの、ギター伴奏のものもある。今回はこの中からラテン語の作品5曲取り上げる。”Pater noster"「われらの父よ」は作品5の第1曲。2007年2月にアメリカ合衆国で作曲された。典礼においては規範となる「主の祈り」に位置付けられ、ミサの中で歌われる。”Memorare"「思い出したまえ」は作品5の第3曲。2006年7月にフィリピンで作曲され、翌年12月にニューヨークで改訂された。聖母マリアへの祈りのひとつ。”In supremae nocte cenae"「最後の晩餐の夜に」は作品5の第10曲。2006年7月にフィリピンで作曲された。テキストは”Pange lingua"「舌よ、語れ」の後半である。フィリピンの土着的な音楽を感じさせる作風。”O magnum mysterium"「おお、大いなる神秘よ」は作品5の第7曲、ギター伴奏。2004年11月にフィリピンで作曲された。イエスの生誕を神秘、秘蹟として讃える。作品5の表題となっている”Maior caritas"「大いなる愛情」は、この曲集の最後を飾るに相応しい無伴奏三重合唱曲。2008年8月にフィリピンで作曲され、翌年1月に東京で初演された。この曲のテキストは典礼文ではなく、アクイナス(Thomas Aquinas)が13世紀後半に、神学の初心者向けの教科書として著した”Summa Theologica"「神学大全」の1章問12の6節である。ところで皆さんはこの作曲家の出身国、フィリピンのことをどれだけご存じだろうか?私は東南アジアに属する島国で、その位置ぐらいのことしか知らなかった。今回パミントゥアンの作品に取り組むのにあたり、フィリピンのことを色々調べた。この国がキリスト教国で、実に国民の90%以上がキリスト教徒ということに驚いた。三大宗教の一つでありながら、キリスト教徒が少ないアジア圏でキリスト教徒が圧倒的に多い国はフィリピンと、2002年にインドネシアから独立した東ティモールだけである。16世紀前半から19世紀の終わりまで続いたスペインの植民地時代に、ローマ・カトリックの布教が進んだ。1899年にやっとのことで独立を果たすが(1901年にはアメリカ合衆国の植民地となってしまう)、キリスト教を信じることは棄てなかった。それほどまでにキリスト教の教えがフィリピンの人々の心身に染み込み、精神となっていたのだ。パミントゥアンの宗教作品はヨーロッパのそれと匹敵する真実味がある。日本人の大多数は無宗教であるが、何かを願う気持ちは持っているのはないだろうか。それはキリスト教の祈りに通ずる。パミントゥアンの作品を借りて、名古屋大学グリーンハーモニーは歌う、歌が人の心を豊かにすると願って!

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第46回定期演奏会

1st.無伴奏混声合唱のための シャガールと木の葉  2013.1.20(日)
開場17:00
開演17:30
三井住友海上しらかわホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
歩く
あお
願い
シャガールと木の葉    
作詩
作曲
指揮
谷川俊太郎
北川昇
川口智子
2st.混声合唱曲集 かなしみはあたらしい
歌っていいですか
泣いているきみ
かなしみはあたらしい
未来へ
作詩
作曲
指揮
谷川俊太郎
信長貴富
山本真実
3st.混声合唱組曲 ティオの夜の旅
祝福
海神
環礁
ローラ・ビーチ
ティオの夜の旅
作詩
作曲
客演指揮
客演伴奏
池澤夏樹
木下牧子
中村貴志
重左恵里
1st.無伴奏混声合唱のための シャガールと木の葉 ~パンフレットより

第1ステージでお送りする「無伴奏混声合唱のための『シャガールと木の葉』」は、同名の谷川俊太郎の詩集から選ばれた四編の詩を題材にした組曲です。北川昇により作曲されたメロディが、それぞれの言葉やそこに込められた思いを、より説得力のあるものにしています。地を踏みしめる喜び、世界を彩る色への情憬、切実な願い、自然と芸術が生み出す美しさ。私たちが普段気づかないけれども、実は心のどこかで感じている"何か"を、この組曲は再発見させてくれます。思わず心を寄り添わせたくなるような詩の世界観と、団員のまっすぐでひたむきな歌声が織りなすハーモニーを、どうぞお楽しみください。

2st.混声合唱曲集 かなしみはあたらしい ~パンフレットより

第2ステージ「かなしみはあたらしい」は、谷川俊太郎の近作に信長貴富が付曲した4つの混声合唱曲からなる曲集です。その切実な詩は、日常生活を過ごしていく中で埋もれていってしまった感情、私たちが忘れてしまった感情を呼び覚ましてくれます。そしてそのメロディーはどこか懐かしく、あたたかさを感じるようなものとなっています。私たちは歌います。なぜなら、音楽を届けたいから。なによりも私たち自身、歌うことが大好きだから。そんなグリーンハーモニーの想い想いの音楽をお楽しみください。

3st.混声合唱組曲 ティオの夜の旅 ~パンフレットより

混声合唱組曲『ティオの夜の旅』は、今や大御所の域に達しつつある作曲家、木下牧子の合唱作品としての2作目にあたる。作曲されたのは1983年、彼女が28歳の時。全5曲からなる力作で、合唱曲としての処女作、混声合唱組曲『方舟』と並んで、若さあふれる初期の傑作と言える。初期の頃の木下は声楽作品を作曲する際、シュールな内容の詩をテキストに用いる傾向が強い。この組曲のテキストは池澤夏樹の最初の詩集『塩の道』から採られているが、非常にシュールである。心情的あるいは情景的なわかりやすさよりも、言葉そのものの響きの面白さや、連なる言葉から湧き起こる固定観念的でない想像力を追及しているように思われる。それは調性を感じさせつつも機能和声的でない作風と相まって、彼女独自の世界を作り上げている。私が『ティオの夜の旅』と出会ったのは高校1年生の時、今から21年も前の話である。当時は木下牧子の合唱曲は一大ブームで、特に大学合唱団の演奏会で盛んに取り上げられていた。その時の私はいつかこの作品を指揮したいと思っていたが、その機会はなかなか訪れず、その思いも薄まっていった。年齢を重ねていくと、青春時代の青臭い思いを記憶のかなたに追いやりたいものだ。今回の客演指揮をこの曲で依頼された時は心底驚いた。まさかこの曲を指揮する時が来るとは! そして、一気に蘇った。あの青臭くも熱い思いが! 今日、高校時代の夢を実現しようとしている私と、その時はまだ大半が生まれていない青春真っ只中の名古屋大学グリーンハーモニーの学生たちとが一体となって、熱い演奏を皆様にお届けする!

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第45回記念定期演奏会

1st stage 無伴奏混声合唱のための カウボーイ・ポップ  2012.1.22(日)
開場16:30
開演17:00
三井住友海上しらかわホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
カウボーイ・ポップ
人さし指秘抄
猫はねむる 火のそばで
ある日
ヒスイ

作曲
指揮
寺山修司
信長貴富
山本真実
2nd stage 混声合唱とピアノのための すこやかに おだやかに しなやかに
こころの色
愛が消える
おだやかに
もっと向こうへと
作詩
作曲
指揮
谷川俊太郎
松下耕
酒井史人
3rd stage OV合同ステージ MAGNIFICAT
Ⅰ. Magnificat anima mea
Ⅱ. Of a Rose, a lovely Rose
Ⅲ. Quia fecit mihi magna
Ⅳ. Et misericordia
Ⅴ. Fecit potentiam
Ⅵ. Esurientes
Ⅶ. Gloria Patri
作曲
客演指揮
ソリスト
オーケストラ
John Rutter
中村貴志
武内朋子
愛知室内オーケストラ
1st stage 無伴奏混声合唱のための カウボーイ・ポップ ~パンフレットより

第ーステージは、信長貴富が、心に留めた寺山修司の詩を歌という形で表現した、遊び心満載の曲集である。その表現はジャズであったり、子守唄のような緩やかなメロディーであったり、様々です。ひとつひとつの曲に主人公が存在し、物語を展開してくれる。その中には恐ろしい情念や孤独、愛情などの、主人公の感情がある。そんな個性豊かな曲集を、個性豊かな団員でお送りいたします。

2nd stage 混声合唱とピアノのための すこやかに おだやかに しなやかに ~パンフレットより

第2ステージは、谷川俊太郎の自由な想像力によって広がった言葉の世界を松下耕のシンプルで美しいハーモニーで満たします。気持ちの伝わる喜び、手に入らない悲しみ、深く湧き出てる愛、重くのしかかる憎しみ、進み出せる希望、心を縛り続ける絶望……。4つの曲を通じて、美しいものにあこがれ、重いかなわぬ苦しみに打ちひしがれ、それでも前を目指して進む人間の心を素材に穏やかに綴られていきます。作詞家、作曲家の生に向き合う姿から生まれた作品に励まされて、団員一同心を込めて歌います。

3rd stage OV合同ステージ MAGNIFICAT ~パンフレットより

合唱界において人気のある作曲家のひとりにジョン・ラター(John Rutter)が挙げられる。    1945年ロンドンに生まれ、幼少のころからピアノを弾いて音楽に親しみ、イギリスの伝統校のひとつ、ハイゲイト・スクールの聖歌隊音楽を学んだラターは、ケンブリッジ大学のクレア・カレッジで音楽を専攻した。30歳にして同校の学長に就任するものの、作曲に専念するために離任。その後の活躍は世界中で彼の作品が演奏されていることでお分かり頂けるだろう。彼の作品は多岐に渡るが、とりわけ宗教作品が重要である。1990年にアメリカはニュー・ヨークのクラシックの殿堂、カーネギー・ホールで、作曲者自身の指揮によって初演された『マニフィカート“Magnificat”』もそのひとつだ。    カトリック教会ではミサと並行して修道僧が毎日行う聖務日課があるのだが、夜に行う祈り、晩課(夕べの祈り)でマニフィカートは演奏される。新約聖書のルカ福音書には、天使ガブリエルが聖処女マリアに対して聖霊によってひとりの男児を身ごもり、その子がのちに救世主(キリスト)となることを告げ、マリアはそれを喜んで受け入れ、主を讃えると記されている。その際に唱えた祈りの言葉がマニフィカートである。    通常はラテン語のテキストであるが、ラターはそれに15世紀の英語の詩やミサの“Sanctus”、“Sancta Maria, succure miseris”を挿入している。彼の『マニフィカート』の面白い点だ。いや、それだけではない。クラシック、ポップ、ロック、ジャズ、ミュージカル、民謡、あらゆる音楽の要素が混然一体となっている。そして彼の深い叙情性。それこそがラターの最大の面白さであり、魅力である。    私は2000年から名古屋大学グリーンハーモニーのヴォイストレーナーを務めていますが、今回は客演指揮者として初めて定期演奏会のステージに上がります。しかも記念定演のOV合同ステージであり、やりたかったラターの作品が指揮できるとあって、その喜びは一入。現役生、OVの方々、武内朋子さん、愛知室内オーケストラとともに弾けて、ラターの魅力をお届けします。
中村貴志

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第44回定期演奏会

1st stage 無伴奏混声合唱組曲「思い出の向う側」 2011.1.16(日)
開場17:00
開演17:30
三井住友海上しらかわホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
たんぽぽ
思い出の向う側から
私は傷を持っている
喜びは束の間のこと
むらさきつゆくさ
作曲
指揮
なかにしあかね
河野聡一郎
2nd stage 御伽草子 混声合唱のための3つのエチュード
浦島太郎
小町草子より歌よみのこころ
一寸法師
訳・作曲
指揮
千原英喜
玉腰美由紀
3rd stage Mass From Two Worlds
  作曲
客演指揮
客演伴奏
Ariel Quintana
羽根 功二
中谷真弓
1st stage 無伴奏混声合唱組曲「思い出の向かう側」~パンフレットより

第ーステージ「思い出の向う側」は作詞家星野富弘の詩を作曲家なかにしあかねが感じ取るままに創った組曲である。組曲の順番に春夏秋冬を感じさせる部分があり、喜怒哀楽などの様々な気持ちが込められている。曲によってまったく違う雰囲気を団員・指揮者がそれぞれの想いで奏でる演奏をお楽しみください。

2st stage 御伽草子 混声合唱のための3つのエチュード~パンフレットより

第2 ステージは室町時代に庶民にむけて描かれた絵入り短編小説「御伽草子」をテキストに用いた曲を演奏する。この「御伽草子」は空想的、説話的内容の中に様々な教訓を含んだものとなってしいる。また、物語の移り変わりが紙芝居を意識して書かれており、場面が変わるとまた違った印象を与えてくれる。一方、物語がもつ夢幻性や持情性、ユーモアを表現するのに古典的なニュアンスと現代的なニュアンスが折り混ざっている。それは表現におけるリリシズムやダイナミズムを変幻自在に駆使しているところからもおわかり頂けるのではないだろうか。今宵、私たちが表現する古典の世界へとあなたをお連れしましょう…。!

3st stage Mass From Two Worlds~パンフレットより

「2つの世界からのミサ」について 現代の合唱音楽を語るときアメリカ合衆国は大変重要な国です。バーバー、コープランド、アイヴスなど古くからの合唱における名曲を残した作曲家たち。いまや日本でも大人気のローリゼン、ウイテカー等の今、活躍中の巨匠たち。数えればきりがないほどの作曲家たちの大きな太い流れがあります。キンタナはそのような流れの中で、次代を担うことを期待される作曲家、ピアニストです。1965年アルゼンチン生まれの彼は、小さい頃からピアノ演奏の才能を発揮し、大学院までアルゼンチンで学んだあと、アメリカ・カリフォルニア州に居を移し、ロサンゼルスを中心に活動を続けています。 「2つの世界からのミサ」について作曲家自身は「音楽家としての人生が、私がこれまで大切にしてきた音楽様式が、断片となってそれぞれの曲に反映されている。特に「グロリア」にはラテンアメリカのリズムの数々、「サンクトゥス」にはフランスのロマン主義の特徴を見つけるとこができるであろう」と述べています。このことからも「2つの世界からのミサ」の意味はキンタナの生まれ故郷アルゼンチンと今の活動拠点であるアメリカの音楽の融合を意味しているのではないのでしょうか。またこの作品のもう一つの魅力はピアノパートに支えられて作られていることです。多くの宗教曲が、無伴奏かオーケストラとの曲として書かれているのにキンタナはあえてピアノを加えました。これは作曲者がピアニストであることと無縁ではないと思います。いずれにしても魅力的な作品に出会うことができました。きょうは「名大グリーン」のみなさんと精い引よいの演奏をしたいと思います。
羽根功二

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第43回定期演奏会

1st.MISSA BREVIS 2009.12.20(日)
開場17:00
開演17:30
アートピアホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋市
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
Kyrie
Sanctus
Gloria
Agnus Dei
作曲
指揮
Stephen Hatfield
玉腰 美由紀
2st.無伴奏混声合唱小品集「雲は雲のままに流れ」より
歩くうた
ほし
青空
雲は雲のままに流れ
たっけだっけの歌
逝く夏の歌
それじゃ
作詩
作曲
指揮
谷川 俊太郎ほか
信長 貴富
鈴木 瑠美子
3st.混声合唱曲『永訣の朝』
  作詩
作曲
客演指揮
客演伴奏
宮沢 賢治
鈴木 憲夫
羽根 功二
中谷真弓
1st.MISSA BREVIS~パンフレットより

 ミサ曲というとヨーロッパの教会でうたわれる荘厳な雰囲気をまとった典礼音楽をイメージすると思われるが、このMISSA BREVISではそれだけではなく雄大な自然や様々な国の音楽文化を感じることができる。
それは作曲者であるハットフィールド氏が世界各国の音楽文化に深く感銘を受けたことにかかわりがあるのだろう。彼の音楽世界にふれ生み出された作品の中には、様々な音楽文化が融合されている物が多い。
実際、このMISSA BREVISの随所には世界中の音楽文化が彼のセンスによって散りばめられている。だが、自由で軽快なメロディーの中にも神に祈る敬虔な心があらわれている。壮大なメロディーとともに紡がれる祈りの心…。
是非とも、私たちとともにひと味違うMISSA BREVISをお楽しみいただきたい。

<Kyrie>
スコットランドの葬送曲を基にしている。作曲者は、高く物寂しい塔の窓から歌う、王女の祈りをイメージしている。穏やかで流麗な旋律が一声、二声と次第に祈り重なっていく様が、この曲集の始まりを美しく飾っている。

<Sanctus>
モチーフとなるのは、アンデス高地のストリートミュージックや聖体節の祝祭。通常のミサ曲ではGloriaの次に来るが、ここに置くことで曲集全体の雰囲気を盛りたてている。この曲には荘厳な祝祭と宴の掛け合いを示すような対比が随所に表れる。

<Gloria>
ノルウェーの民俗音楽に由来する。序盤が古代の牛の呼び笛を基にしているのに対し中盤はフォークソングのメドレーであり、その幾らかは中世に遡る。シバの女王がエルサレムへ向かう壮麗なさまをイメージしている。

<Agnus Dei>
中央アフリカのイソンゴ族によるヨーデルをアレンジした曲。“qui tollis pecatta mundi(世の罪を除きたもう主よ)”の“qui(who)”に強勢をつけることで「誰が世の罪を除くのか」という非難を表している。Kyrieの主題の再現は深い悲しみからの解放を示し、穏やかにこの曲集を締め括る。

2st.無伴奏混声合唱小品集「雲は雲のままに流れ」~パンフレットより

 第2ステージは、信長貴富作曲の「雲は雲のままに流れ」より7曲を演奏します。この楽譜は2008年、委嘱作品など無伴奏の混声合唱曲8曲を集めて出版されました。小品集であるため、作られた経緯は各曲ともバラバラです。しかしそれ故に、一つ一つが異なる雰囲気を持ち、それぞれが独自の光を放っています。あたたかい曲や少しせつなさを感じさせる曲、雄紀をくれる曲など、本当に様々です。その一つ一つに、今を輝く新進作曲家の信長貴富による複雑で幻想的な和音と、独特かつ斬新なメロディーがたくさん詰まっています。そしてステキな歌詞によって彩られた曲は、聴き手にも歌い手にも‘何か’を伝えてくれるのではないでしょうか。1人1人にその光が届くよう、思いを込めて歌います。どうぞお聞きください。

<歩くうた>
生きていると、壁にぶつかる時がある。それでも人は歩き続ける。明日へ向かって、自分の足で。

<ほし>
いちばんぼしみつけた…。夜空に浮かぶ星の、何と美しいことか。宇宙が、私たちをよんでいる。

<青空>
目を閉じて耳を澄ます。さわやかなメロディが、夏の青空を思い出させてくれる。野原の風に包まれて、私はしずかに幸せになる。

<雲は雲のままに流れ>
全てのものは、あるべき姿でそこにある。人間も、自然の流れに身を任せれば、丸い地球の一部となる。

<たっけだっけの歌>
川で無邪気に遊んだあの日。全てのものが輝いて見えた。その記憶はいつまでも、私の大切な宝物。

<逝く夏の歌>
あの夏を忘れない。私が見て経験したものを今、語ろうと思う。

<それじゃ>
別れなければならないけれど、二度と会えないわけじゃない。また会えることを信じて、今は笑顔で手を振ろう。それじゃ、また!

3st.混声合唱曲『永訣の朝』~パンフレットより

 Ora Ora de shitori egumo ―わたしはわたしひとりでいきます―
 大正11年11月27日、一人の女性が息をひきとりました。国民的作家宮沢賢治の最愛の妹であり、「信仰を一つにするたったひとりのみちづれ」であった、宮澤トシその人です。享年24歳。結核によるものでした。
賢治は、その日のことを三篇の詩に書き表しました。その一つが「永訣の朝」です。
「あめゆじゅとてちてけんじゃ(あめゆきとってきてください)」とせがむ妹のために、みぞれの降る暗い空の下へと飛び出していく賢治。いつも見慣れたはずの岩手の冬景色の中で、悲しみにとらわれていた賢治は妹の思いに気付くのでした。
今回演奏する曲は、宮澤賢治の「永訣の朝」をもとに、1975年鈴木憲夫氏が私たちと変わらない21歳の大学3年の時に作曲したものです。時には激しく、ときには静かに、賢治の深い悲しみ、とし子への愛情、そして祈りの気持ちを、余すところなく表現した曲となっています。本日最後のステージで、賢治の深い想いを渾身の力を込めて歌いあげたいと思います。

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第42回定期演奏会

1st.Sechs Lieder im Freien zu singen Op.59 2008.12.28(日)
開場17:00
開演17:30
アートピアホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
Im Günen
Frühzeitiger Frühling
Abschied vom Wald
Die Nachtigall
Ruhetal
Jagdlied
作曲
指揮
Felix Mendelssohn Bartholdy
鈴木 瑠美子
2st.混声合唱のための5つの聖母賛歌「マリア・オリエンタリス」より
Ⅱ アヴェ・マリア
Ⅲ サルヴェ・レジーナ
Ⅴ 終曲:アヴェ・マリア
作曲
指揮
千原 英喜
松下 雅晴
3st.混声合唱とピアノのための『ふるさとの風に』
1 東京
2 雲
3 三ツ星さん
4 夜汽車の中で
5 海
6 白い雲
作詩
作曲
客演指揮
客演伴奏
竹内浩三
寺嶋陸也
羽根 功二
中谷真弓
1st.Sechs Lieder im Freien zu singen Op.59~パンフレットより

メンデルスゾーンといえば、ヨーロッパ音楽の巨匠の一人として誰もが知っているだろう。38歳という若さで亡くなってしまっているが、オラトリオ「エリア」など数多くの名作を残し、大バッハの『マタイ受難曲』の復活上演を果たすなど大業も成している。
ロマン派でありながらも古典派の傾向もみられるメンデルスゾーンの音楽は、ときにソナタ形式を用いて和声音楽的になりつつも、その和声は大胆で色彩的になり、転調も自由に、そしてリズムも複雑だ。この6曲でもそんな特徴が随所にみられ、かつその表現が詩と一体となっているため、曲の表情がとてもつかみやすい。このステージの曲は全て‘自然’に関する曲だが、それぞれが独立し、異なった魅力を感じられる。その魅力は、歌を通して言葉の壁をも越えて伝わってくる。もちろん、国や人種、時代までも…。
ぜひ雄大な自然を感じ、開放感を私たちと共に味わってほしい。

<Im Günen>
その曲名の通り、詩には緑の新鮮さや青々しさが書かれている。また、曲の爽やかなリズムと柔らかなメロディーは、野原で心地よい風に吹かれて過ごしている情景を思い出させる。

<Frühzeitiger Frühling>
ドイツ人にとって、春とは待ち遠しいものであり、詩からは春が来たという喜びが感じられる。また、軽やかな曲調は歌い手や聴き手の心までも暖かくしてくれる。

<Abschied vom Wald>
グリーンハーモニーの団歌の原曲。森や自然を慈しみ、そこから旅立って行こうとする心を歌っている。一曲の中で変化に富み、表情豊かな曲である。

<Die Nachtigall>
春に呼び寄せられた小鳥の歌。ナイチンゲール(サヨナキドリ)は美しい声でさえずることで有名であり、曲調もそのさえずりを意識したものとなっている。特に最初の女声の歌う部分がかわいらしい。

<Ruhetal>
比較的ゆっくりしたテンポで、壮大な山々に癒されるような穏やかな曲である。まるでそれは壮大な自然そのものを表しているかのようである。

<Jagdlied>
6曲中最もテンポが速く、生き生きとした力強い曲。序盤では狩りに出て行く時の風景が、中盤では狩人の視界を流れ行く景色が歌われ、そして終盤では、狩人の胸が高鳴っていく気持ちが歌われる。

2st.混声合唱のための5つの聖母賛歌「マリア・オリエンタリス」~パンフレットより

第2ステージは、マリアオリエンタリスの中から3曲を演奏します。作曲者である千原英喜は、日本・東洋の民俗(族)性や宗教性を主なテーマに、幅広く創作活動を行っています。
今回演奏する曲集は、「未来にあかるい希望の光のさすような新作合唱曲を」と依頼のもとに作曲され2002年6月に初演された曲集です。各楽章それぞれが異なる雰囲気を持ち、独立した世界観を感じられる曲集です。
それぞれの楽章は聖母マリアへの祈りの気持ちが込められた聖母賛歌です。私たちの奏でる賛歌をどうぞお聴きください。

Ⅱ アヴェ・マリア
Ave Maria,Ave Maria…
静寂の中から聞こえてくる、魂の奥深くへと染み入るようなメロディー。
聖母マリアへの祈祷を歌ったこのアヴェ・マリア。曲中にはグレゴりオ聖歌「Ave Maria」が引用されており、中世ヨーロッパのマリア信仰世界を感じさせます。
曲中盤では、alla danza medievale(中世の舞踊風に)と指示があり、加速するテンポ、高揚は激しく狂おしいまでのマリアへの歓喜の祈りが歌われています。
そして再び、旋律は終わりに向けて昇華され、美しく広がっていきます。

Ⅲ サルヴェ・レジーナ
第1回十字軍の士気を高めるため、アデマール・ド・モンテイユによって「Salve Regina(めでたし、天の元后)」は書かれました。マリアは時に勝利の女神として、戦いの精神支柱として讃美されています。
これらを背景とし、このサルヴェ・レジーナは力強く、情熱的にマリアを讃えます。テキストに挿入されている日本文(訳)は、キリシタンたちの魂の叫びを表したもの。
曲中盤から、最後にかけて14パートの多声の旋律が厚みを持ったハーモニーとなり、祈りは最高潮を迎えます。

Ⅴ 終曲:アヴェ・マリア
この曲集の終曲となる、終曲:アヴェ・マリア。Ave Maria,Maria!と何度も繰り返し、そのハーモニーは穏やかさ、悲しさ、美しさ、そして何より至福の喜びに満ちています。メロディー、そしてこの曲の美しい信仰世界は高みを迎え、フィナーレを迎えます。
また日本文テキストには長崎・生月のカクレキリシタンの祈祷文、オラショが用いられています。
“パライゾウ(paraiso:天国)とは天上の月や星にある世界。天使や聖人が喜びをうけるところ。インヘリド(inferno:地獄)とは大地の底にある暗いところ。天狗が棲み、人々の霊魂が永遠の苦しみを受けるところ。天国の喜びを甘受するため、そして三位一体の神から十字架の光を授けていただけるよう、祈りをささげます。”

3st.混声合唱とピアノのための『ふるさとの風に』~パンフレットより

寺嶋陸也「ふるさとの風に」について

寺嶋陸也の音楽を私は大好きである。それはかれの作品のシンプルさに魅力を感じるから。少ない音符で表現したいことを精一杯書く。決して大上段に構えたような大げさなことはしない。そのことが今日演奏する「ふるさとの風に」の詩を書いた竹内浩三の作風に見事に一致しているように思える。才能ある天才どうしが出会ったとき、すばらしい作品が生まれたのである。

竹内浩三は宇治山田市(現伊勢市)出身の人である。23才の若さで戦死をしたこの才能ある詩人は迫り来る死の予感を振り払い、精いっぱいの鋭い感性を詩に表現した。実は私も詩人と同じ伊勢市出身であるが、同じ街の空気を吸って生活していたことを誇りに思う。そして寺嶋さんは学生時代に私たちと伊勢の海で潮干狩りをしたことを覚えているだろうか。

羽根功二

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第41回定期演奏会

1st.Giovanni Pierluigi da Palestrina宗教作品 2008.1.20(日)
開場17:00
開演17:30
しらかわホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
Alma Redemptoris
Valde honorandus est
Ave Maria
作曲
指揮
Giovanni Pierluigi da Palestrina
西河 秀人
2st.混声合唱とギターのための組曲『クレーの絵本 第1集』
《階段の上の子供》1923
《あやつり人形劇場》1923
《幻想喜歌劇「船乗り」から 格闘の場面》1923
《選ばれた場所》1927
《黄色い鳥のいる風景》1923
作詩
作曲
指揮
客演伴奏
谷川 俊太郎
三善 晃
西河 秀人
大矢 修三
3st.混声合唱のための『地球へのバラード』
Ⅰ 私が歌う理由
Ⅱ 沈黙の名
Ⅲ 鳥
Ⅳ 夕暮
Ⅴ 地球へのピクニック
作詩
作曲
客演指揮
谷川 俊太郎
三善 晃
羽根 功二
1st.Giovanni Pierluigi da Palestrina宗教作品~パンフレットより

Giovanni Pierluigi da Palestrina は16世紀に活躍したイタリアにおけるルネッサンス後期の音楽家である。数多くの宗教作品を残し、「教会音楽の父」とも言われる。
その音楽は、ポリフォニーを基本として、各パートの旋律が魅力的に響き、その上で美しい和音が進行していく縦も横もバランスが取れたものである。人工的に意識して単純化され、簡潔・平穏・緻密で耳当たりがよく、言葉や抑揚が明確にきこえるように音が配置されている。
このステージでは、そんなPalestrinaの宗教作品の中でもヴァリエーションを意識して、単純なポリフォニーの作品ばかりではなく、1曲1曲がPalestrinaらしさに加え、それぞれの色を表現しているものを選んだ。宗教曲というと退屈なイメージを持つかもしれないが、華やかに折り重なる各パートの旋律や響き渡る和音などの立体感のある音楽と言葉で歌われる賛美はきっとあなたを楽しませてくれることと思う。

<Alma Redemptoris>
キリスト教の礼拝や集会などで歌われる、神をたたえる歌(聖歌)の一つです。キリスト教の聖職者(修道者)には毎日守るべき(教典礼状の)聖なる務めである聖務日課は8つの時課に分かれていて、そのうちの一番最後の「終課」で歌われる「4つ聖母マリアのためのアンティフォナ」のうちの一つです。アンティフォナとは、聖歌を歌う隊形の一つで、合唱を二つに分けて交互に歌う歌い方です。曲名のAlma Redemptorisはmater(母)が省略されていて、省略された部分を補うと「うるわし 救い主の母」という意味になります。イエス・キリストの母、聖母マリアを称える歌です。 曲の始めは、まずテノールだけが歌いだし、その後善パートがそろって入ります。曲中にでてくる、音の細かい動きに注目して聞いていただくとよりお楽しみいただけると思います。

<Valde honorandus est>
この曲は、第60回全日本合唱コンクールの課題曲の一つで、今年度わが団が出場した際に歌った歌です。曲名は「ヨハネは崇められよ」と訳されます。ここで出てきているヨハネはレオナルド・ダ・ヴィンチによる『最後の晩餐』にも描かれています。ヨハネはイエス・キリストに選ばれた12人の弟子たちである十二使徒の一人でその中で最も若い人物であり、ヤコブ、ペテロとともにイエスの一番弟子であり、常にイエスと行動をともにしました。聖書では「イエスの愛しておられたもの」と記されています。ヨハネが、十字架上のイエスから、母マリアを託され、引き取った場面がこの曲のテキストになっています。
パート間の掛け合いが多く、全パートのたてがそろうところもあります。

<Ave Maria>
Ave Mariaのテキストは、聖書において、大天使ガブリエルが聖母マリアにイエス・キリストの受胎を知らせた時のあいさつ「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられる。(Ave Maria, gratia plena, Dominus tecum.)」と、マリアの親類のエリサベトが聖母マリアに言ったお祝いの言葉「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています。(benedicta tu in mulieribus, et benedictus fructus ventris tui Jesus)」に、11世紀に祈祷文が加えられてできています。
全パートいっせいに歌い始めます。主題がどんどん入れ替わり、それを各パートが追いかけます。曲が進んでいくにつれて、主題の縦がそろっていきます。曲の後半に、全パート同時に休符が入り、そこから曲の終わりに向かって盛り上がっていきます。このときのソプラノの旋律が魅力的です。

2st.混声合唱とギターのための組曲『クレーの絵本 第1集』~パンフレットより

第二ステージの混声合唱とギターのための組曲「クレーの絵本第1集」はパウル・クレーが描いた絵に影響を受けた谷川俊太郎が詩をつくり、それに三善晃が曲をつけたものです。
谷川俊太郎はクレーの絵は”言葉になる以前のイメージ”、あるいは”言葉によってではなくイメージによって秩序を与えられた世界である”、としています。“そのような世界に住むことが出来るのは肉体ではない、精神でもない。魂だ。”ともいい、クレーの絵を魂の住む絵としています。
また、三善晃は次のように述べています。”「クレーの絵」のむこう側に「谷川さんの絵」が透かし見えるわけだが、透かし見えるそれは、時間を持って流れている「絵」である。それはきっと、「クレーの絵」を観たあとで目をつぶり、いま観た画像の全てが心象の契機としての「感覚の色」でしかなくなったときに立ち現れてくる「投企された世界」なのだろう。”
今日の演奏で私たちは皆さんにどのような絵を見せることができるのでしょうか。私たち「グリーンハーモニーの絵」をご覧ください。

《階段の上の子供》1923
軽やかで、躍動感のある男声のスキャットから曲が始まる。その後、女声が男声のリズムに乗りながらユニゾンで始まり、谷川俊太郎の詩を表現豊かに歌い上げる。
前半の山場である全パートの縦が揃う所での盛り上がりに期待してほしい。そして後半は「なまえがない」「きみはただ」「呼ばれるだけだ」といった深い詩の意味を私たちの音からかんじてほしい。

《あやつり人形劇場》1923
一曲目とはうってかわり、とても静かで優しい曲調である。8ビートに身を委ねながら谷川俊太郎の詩を綴ってゆく。途中に転調部分があり、そこから曲が徐々に動き出す。そして劇的なクライマックスをむかえ、終局に向かって再び静かに収束していく…。
この詩を、そこにいるあやつり人形の姿を、その心を感じていただけたら幸いである。

《幻想喜歌劇「船乗り」から 格闘の場面》1923
クレーの絵本の中で最も激しい曲である。アクセントやスタッカート等による歌の表現が激しさを強調する。ほかにもリズム、音、短調の響き、ギターの伴奏など様々なところからこの激しさを感じとってほしい。そしてそこで行われている戦いを詩を見ながら、聴きながら想像してほしい。

《選ばれた場所》1927
あやしげでどこか暗く静かな曲調。シンバルが伴奏としてついていて、この曲の特徴的なリズムを刻む。心のそこからじわじわと込み上がってくる、そんな何ともいえない雰囲気が印象的である。そしてもう言うまでもないが、詩が素晴らしい。この深い詩を何回もよみ返してほしい。必ず何かを感じ取ることができると思う。

《黄色い鳥のいる風景》1923
クレーの絵本の終曲にしてもっとも輝かしい曲。楽しそうにスキップをしている、そんな男声のスキャットから曲が始まり詩が語られてゆく。詩と曲の場面展開がとてもよくあっていて、盛り上がる所や収束する所を豊かに表現するのでそこをぜひ感じてもらいたい。
そして曲集の締めはtrionfole(勝ち誇ったように)で最後の和音を奏でる…。

<客演伴奏者紹介 : 大矢修二>
高校時代80年代ロックに多大な影響を受け、大学時代にロックバンドで演奏活動を開始する。その後クラシックギターを速水武志、寺本安江、野村芳生の各氏に師事。音楽理論を柴信次氏に師事。加藤政幸、ステファノ・グロンドーナ各氏のマスタークラス受講。
第2回ギターアンサンブルフェスティバル in OSAKAにて優秀賞受賞。2005年「愛知万博」、2006年「やまのて音楽祭」、2007年「長久手アートフェスティバル」等のイベントへの出演、歌との共演、ギター独奏、ギター二重奏など現在名古屋市内を中心に演奏活動をする傍ら、ミューズ音楽館講師、ギタースクール“DEEMUSIC”を主宰するなど精力的に活動している。

3st.混声合唱のための『地球へのバラード』~パンフレットより

『地球へのバラード』は東大柏葉会の委嘱により昭和58年三善晃が作曲し、同年十二月に初演された組曲である。この組曲が作られる際、柏葉会から三善に対し「人間を含む生命の星としての地球への愛を歌いたい」ということが要望として出された。
地球は、さまざまな生命を支えている。もちろん人間も、支えられている生命のうちのほんのひとつに過ぎない。ただひとつ、人間が他の生命と違うところは、他の生命の生の営みの過程に意味を見出し、共感することができる、ということだ。生命が惨めに死んでいく姿は、私たちのやり場のない怒りや悲しみをいっそう増幅させる。あるいは、生命が美しく輝きながら生きる姿は、私たちの喜びや幸福感をいっそう高揚させる。
深まった私たちの思いや感情は、やがてことばとなる。そしてことばはやがて、歌となる。こうして人間はその歌を通して、ひたすらに生きて死んでいく生命を、そして私たち自身をも支える地球の大きさに気づくのだ。歌はやがて、地球への愛となって昇華する。この曲集は、そんなことを私たちに感じさせる。
谷川俊太郎、三善晃の二人の天才による世界を、引き続きお楽しみいただきたい。

<Ⅰ 私が歌う理由>
男声の優しいヴォカリーズで始まり女声のユニゾンが語りかけます。
私が歌う理由はいっぴきの仔猫、いっぽんのけやき、ひとりの子ども、おとこ…そして一滴の涙。それらは決して大きくはない、ちっぽけで脆い存在。けれど確かにこの地球に「存在し続ける」彼ら。この歌はそんな彼らを時に厳しく、そして時には母のように暖かく包みこみます。

<Ⅱ 沈黙の名>
「ゆゆゆ…」ととても美しく、しかしどこか儚げなメロディーで始まるこの歌。全体を通して柔らかな聴き心地の和音で進行していきます。そしてこのメロディーに乗せ、心洗われるみずみずしい詩が静かに語られていきます。
名づけられなかった沈黙の名。その儚さ、寂しさ、そして美しさをこの曲の音楽、詩、全てから感じてみてください。

<Ⅲ 鳥>
「鳥は空を名づけない 鳥は空を飛ぶだけだ…」心に響いて語られてくるどこか哲学的な詩。この地球にはあらゆるものが生を受け存在しています。人はこの地球という遥かな世界を一体どれだけ知っているのでしょうか…。それでも地球はただいつも優しく、静かに私たちを見つめています。
静かなメロディーと共にこの心動かされる大きなメッセージを伝えたいと思います。曲中盤の語り Bass ソロにもご注目ください。

<Ⅳ 夕暮>
日が沈み、あたりが薄暗くなり夜が訪れるまでのあっという間の時間。夜の訪れは一体誰が連れてくるのでしょうか。
「誰が明かりを消すのだろう」と優しく始まり、「私」の気持ちと共に変化していくテンポや曲調。これらが作り出していく寄せては返す繊細なメロディーはまるで夕暮の鮮やかな情景のように感じられます。

<Ⅴ 地球へのピクニック>
リズムよく始まるヴォカリーズはまるでこれから始まる曲の大きさを物語っているようです。中盤の四声が揃うテンポの楽しさや女声の伸びやかなメロディーを経て最後の ffff(フォルティティティシモ)は圧巻です。
この曲集のラストを飾るにふさわしい壮大な曲です。私たちが生まれてきたこの地球への大きな愛を輝かしく奏でたいと思います。
私たちはうまれてくる限りきっとここへ帰ってくるのでしょう。この愛しい地球へ。

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第40回記念定期演奏会

1st.混声合唱曲集「夢みたものは」より 2007.1.13(土)
開場17:30
開演18:00
名古屋市民会館中ホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
株式会社インテリジェンス
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
夢みたものは……
秋風
作曲
作詩:夢みたものは……
  :秋風
  :鷗
指揮
木下 牧子
立原 道造
矢澤 宰
三好 達治
石間 早翔
2st.寺山修司の詩による6つのうた「思い出すために」より
世界のいちばん遠い土地へ
ぼくが死んでも
思い出すために
種子(たね)
作詩
作曲
指揮
客演ピアノ
寺山 修司
信長 貴富
川口 昂彦
金沢 昭奈
3st.FOR CHOIR, STRING ORCHESTRA AND PIANO「MASS」
01.INTROITUS
02.KYRIE
03.GLORIA
04.CREDO
05.SANCTUS
06.AGNUS DEI
作曲
客演指揮
客演ピアノ
客演弦楽
STEVE DOBROGOSZ
羽根 功二
渡部 真理
愛知室内オーケストラ
1st.混声合唱曲集「夢みたものは」より~パンフレットより

当代、最も有名な合唱作曲家の一人である木下牧子。その作品の中でも特に聴きやすい曲集「夢みたものは」よりアカペラを3曲。
この3曲はどれもシンプルなつくりになっており、比較的短い曲中において大きく場面転換することもない。また、とても印象的なメロディーを奏でていて、非常に聴きやすい。
だがそれだけではない。そこに描かれている幸福の形、いたずら好きな秋風、そして鴎の自由な姿などがとても立体感を持っているのだ。さらにメロディーだけでなく、和音や掛け合い、強弱やヴォーカリーズなどの駆使により、曲に確かな輪郭がもたらされている。
わずか10分足らずのステージだが、この立体感ある鮮やかな世界を感じてもらえればと思う。

01.夢みたものは……
理想の愛や幸福の姿をうたった作品。その姿は、ゆったりと安定したリズムと、柔らかく牧歌的な和音の広がりによって表現され、次第に具体性を増していく。
家族や友人、大切なひとがいつも近くにいること。その中で、こうして何事もなく今日という一日を過ごしていること。そんな当たり前の日常の中にある喜び、温もりに気づかせてくれる一曲である。

02.秋風
ともすれば見過ごしてしまいがちな「秋」という季節の持つ色を、独特の視点から捉え表現した曲。印象的な8分の9拍子のリズムと各パート交互に登場するヴォーカリーズが、秋風の持つ動感を引き立たせている。
子供のような無邪気さを見せる一方で、どこか大人っぽい遊び心を思わせるその姿によって表現される秋の情景を、ぜひ体いっぱいに感じていただきたい。

03.鷗
この曲の詩は、太平洋戦争終結後に書かれたものである。長かった束縛から解放された喜びと新たな末来への希望を、大空を自由に舞う鷗に込めて歌いあげる。
壮大で美しい旋律と、形を変えながらも曲全体を通して何度も繰り返される主題が、明るい未来への展望を予感させてくれる。
雄大な鷗の姿を、今を前向きに生きる私たちに重ね合わせ、大きく広がっていく世界を存分に表現すること。ここにこそ、この作品の真の魅力がある。

2st.寺山修司の詩による6つのうた「思い出すために」より~パンフレットより

劇作家、詩人、歌人、作家、映画監督…。寺山修司という人を物語ることばは数多い。時に評論家として、時に実践家として、奔放に生を送った人である。幼少時代を戦時下に過ごした彼は、病床に臥した青年時代を過ごしながらも、アバンギャルドに邁進した。その討論を紐解けば、常にことばの問題と向き合いつづけた、詩人の生き様が蘇ってくる。
活字の中に固定されたことばの意味(シニフィエ)の円環を、軽やかに跳躍すること。寺山にとって詩作とは、ことばそのものを生き生きと奏でゆく営みであった。
演劇、詩、歌、小説、映画…。書くこと(エクリチュール)によって後世に残された、寺山自身の作品である。ことばを紡ぎ出していくという行為の中で、寺山による生きることの探求は、壮大なまでの広がりを見せる。歴史や記憶の本性に迫るその洞察は、今日にあっても、輝きを失うことはない。
若くして世を去った寺山は、書くこと(エクリチュール)を通じて、次なる種子を追い求めつづけた。いのちを営み、それぞれの末来を志すこと。そして、それらを貫通する、人類の、愛の共同体を目がけて。

3st.FOR CHOIR, STRING ORCHESTRA AND PIANO「MASS」~パンフレットより

スティーヴ = ドブロゴスは、1956年米国ノースカロライナ州で生まれ、現在はスウェーデンのストックホルムを拠点に活動している作曲家・ジャズピアニストである。
彼が作曲した『MASS』は、従来のミサ曲と一線を画した、ジャズテイストの斬新な曲である。クラシカルな流麗さ、ポピュラー音楽のような美しい旋律。そして洗練された煌めく重厚なハーモニーを絶妙に織り重ねた名曲と言ってよいだろう。ジャズピアニストであることに加え、十代の頃にバークリー音楽院にてクラシック、現代ポピュラー音楽を学んだことも、その妙技の一因となっている。
『MASS』の素晴らしさは、1992年に作曲されて以来今日までに4大陸・25ヶ国で演奏されるほどである。それは、その聴き心地の良さから、ミサ曲というよりはむしろイージーリスニングのように感じられるかもしれない。しかし、この曲を深く見つめてみると、楽曲の煌めきや勢いの良さの向こう側に、深遠な蒼い世界が広がっているのが見える。まさにドブロゴス自身の純粋な’祈り’が、彼らしい形で表出した結果なのだろう。
今宵、ピアノと弦楽、そして合唱が美しくかつ重厚に、切なる祈りを鳴り響かせる。その響きに共鳴していただけたら幸いである。

INTROITUS
神とともにあること―キリスト教徒の永遠の願いである。ミサにおいて、パンと葡萄酒はキリストの体の血であり、それらを頂くことによって魂の栄養を得て、自らを救われた者だと自覚する。
静寂の中から響き出すピアノと深い底から湧き出るような弦楽の旋律が、崇高なる聖体拝領の儀式の始まりを告げる。

KYRIE
魂の奥深くから溢れ出す声は、高らかに、そして力強く神による憐れみを請い、祈っている。
軽やかなピアノ、重厚かつ繊細に折り重なる弦楽器は、神の前に立つ人の心の有様を奏でているようである。人々の声は折り重なりながら広がっていき、至高の天へと昇りつめ、罪を解き放つように空高く響く。

GLORIA
父であり、子であり、聖霊である神を人は終始穏やかに、そして荘厳に賛える。
流れるピアノソロは神への祈りにおける感情の昂ぶりを表すようである。キリストに対する深く厚い信仰を告白することによって、その想いは輝きとともに伸びやかに広がり、天から降り注ぐ光となって、優しく神への栄光賛美に満ちている。

CREDO
天地創造の主。そして、人類の罪を取り除き救う主。この絶対的な存在に対して、決然と信仰を宣言する。
早鐘のようなピアノの疾走感とともに流れ出す旋律は、神を崇める心そのものを表すかのような清らかな響きである。神の子の犠牲という、人類への永遠の愛を感じながら、神とともにあることを切望する。その願いを美しい旋律で歌い上げる。

SANCTUS
地上の人が口々に神への感謝を謳うように、次々と旋律が流れ出し、眩い光が駆け抜ける。楽曲中の様々なフレーズを含んで進行するこの曲は、神を全身全霊で賛美しているようであり、華やかな煌きに満ちている。地から天へ昇りつめるような旋律は、地上にいる人々が天高くにまします神を仰ぎ見ているかのようである。

AGNUS DEI
愛なる神と一体になる喜び、その心の平和は崇高なものである。あたたかい和音、所々に見える散りばめた光のようなピアノの瞬き、そして抱擁感ある弦楽の調べに深い愛が感じられる。人は罪を赦され、聖霊に満たされ、神の愛の中を歩むことを祈る。そして、その願いは穏やかに満たされ、昇華していく。

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第39回定期演奏会

1st.「Shakespeare Songs」より 2005.12.25(日)
開場17:00
開演17:30
アートピアホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
Hark! Hark! the Lark
Tell Me Where is Fancy Bred
When That I Was and a Little Tiny Boy
O Mistress Mine
When Daffodils Begin to Peer
作詞
作曲
指揮
W.shakespeare
Matthew Harris
近藤 和哉
2st.混声合唱曲「祈祷天頌」
アレ ヒキミ
ウム ウマヨ
マツリ マツル
作曲
指揮
客演伴奏
鈴木 憲夫
川口 昂彦
金沢 昭奈
3st.混声合唱のための「うた」より
恋のかくれんぼ
○と△の歌
島へ
死んだ男の残したものは
明日ハ晴レカナ、曇リカナ
作曲
客演指揮
武満 徹
羽根 功二
1st.「Shakespeare Songs」より~パンフレットより

Matthew harrisは1956年アメリカ生まれの音楽学者、作曲家である。合唱曲の他にオペラも手掛けている。
彼の作品の魅力-それは「聴きやすさ」にあるのではないかと思う。彼の曲はどれも演奏時間が2、3分とコンパクトで、構造もシンプルなものが多い。曲調は終始はっきりと、盛り上がるところは分かりやすいくらい盛り上がる、といった具合である。
しかし、シンプル過ぎてつまらないと言ったらそうでもなく、時にJazzyなテイストが盛り込まれていたり、突然16声部に分かれたりと変化に富んでいる。
他にも、オペラの1シーンを思わせるロマンチックなソロが突如として出現するなど、意外な展開をする。聴いていて新鮮な衝撃を覚えるものばかりである。それが曲中の良いアクセントとなり、聴くものを飽きさせない。メロディーラインも一度聴いたら耳に残るような印象的なものが多く、作曲者のセンスの良さが窺える。これらの曲には、聴くものを知らず知らずのうちに虜にしてしまう力がある。かく言うわたしも、彼の曲に魅せられたものの一人である。
彼の作品をより一層魅力的に見せているのは、その歌詞である。世界史上最大の劇作家と謳われる、Shakespeareの手によるものである。美しいメロディーに乗り、この詩が聴き手の耳を心地よく滑りぬけていく。ぜひ歌詞に注意して聴いて欲しい。ラップでよく耳にするrhyme(押韻)が楽しめるはずである。
また、時に優美であり、時に底抜けた明るさを見せる様々な詩の表現と音楽とのつながりにも注目して欲しい。詩が伝えんとする情景を、作曲者が見事に表現しているのである。詩のもつ世界がくっきりと浮かび上がっていて、その違いを楽しむことができる。
本ステージでは、そんな新鮮で楽しい音楽を、軽く明るい響きとともに楽しんでいただきたい。

Hark! Hark! the Lark 悲喜劇「シンベリン」より
静かなメロディーのソプラノと、その下でさざ波のように返すアルトから始まり、男声の登場により厚みと緊張感が加わります。ヒバリがさえずり、キンセンカの瞼が開く。次第に増す盛り上がりと和音に、美しいものが起き始める荘厳な夜明けの様子が浮かんでくるようです。

Tell Me Where is Fancy Bred 喜劇「ヴェニスの商人」より
全体を通して基本的な調子は変わらず、8分の6拍子の軽快なリズムに乗せて浮気心を歌う曲。中間部のポリフォニックな4声の掛け合いが印象的であり、「Ding,dong,」と弔いの鐘を鳴らし、繰り返される「do」のフレーズで、前半部のメロディーをなぞるように次第に音楽が収束していく…。浮気心の行く末が思われます。

When That I Was and a Little Tiny Boy 喜劇「十二夜」より
切なく寂しげな曲調であり、随所に散りばめられた「With hey,ho,」により、曲に生き生きとしたリズムが生まれています。階段を上がるように強くなる16声は次第に存在感を増し、迫りくるものが感じられます。

O Mistress Mine 喜劇「十二夜」より
やさしく甘い雰囲気を帯びた曲。
4声が奏でる静かな和音をバックにソロが恋について歌い、全体を通して一貫した柔らかでなめらかな曲調に、恋人を慕う気持ちが込められています。あなたにも届いていますか?

When Daffodils Begin to Peer 悲喜劇「冬物語」より
馬鹿騒ぎをしてるような、非常に明るくにぎやかな曲です。
Jazzyでテンポ感の良いリズムや、エネルギッシュなメロディーに楽しげな感じが良く表れています。テナーパートのソロや、後半のソプラノソロと合唱団がキャッチボールをするような掛け合いも聴き所です。

2st.混声合唱曲「祈祷天頌」~パンフレットより

太陽は、朝昇り、夕方沈む。そして翌日また昇る。人は生まれ、やがて死に、子孫が生まれ、生命が受け継がれていく。このような当たり前とも言えるめぐりに、はっとしたことはないでしょうか。
混声合唱曲『祈祷天頌』は縄文をテーマに作曲されました。作曲者の鈴木憲夫は、「原始の人々の天に向かって祈る素朴な姿を通して、生命力溢れる作品を描きたい」という思いを抱き、縄文時代の遺跡、博物館を渡り歩いたりして、5年もの歳月を費やしてこの曲を作曲したそうです。
縄文の思想において、すべては大いなる生死の循環の中にあります。太陽も朝生まれて夕方死ぬのです。死んだ太陽は、翌日よみがえり、めぐりを繰り返していきます。同じように、動物や人間の魂も天と地上の間も幾度も往来します。それはまさに無限の循環を繰り返しているのです。そうした循環に支えられながら、原始の時代より、脈々と生命は生かされ受け継がれてきました。こうして生命のめぐりは未来へ、永遠に続いていくことでしょう。
また『祈祷天頌』は、『地蔵礼讃』に始まり、『永久ニ』で完結した「祈り三部作」の2作目でもあります。めまぐるしく人々が活動する現代においても、素朴に願う「祈り」は太古と変わりなく人々の中にあります。生命が続いていくことへの「祈り」は、いつの時代にあっても普遍的なものではないでしょうか。今宵は、私たちの溢れる生命力とともに、そんな「祈り」をお聴きください。

第一章 アレ ヒキミ
アレ ヒキミとは、太陽への畏敬の念を込めた始原的な祈りの言葉である。日が沈み、夜を迎え、また日が昇る。このような太古から現在までずっと変わらない太陽のめぐりは、あらゆる生命の源ではないだろうか。そうして生命は、原始の時代から脈々と現代に受け継がれてきたのである。
曲中でも、日が沈んでまた昇るという太陽のめぐりが随所に表現されている。中でも、中盤の「天」の、叫びにも似たフレーズは圧巻。そして本章の最後では、前半の旋律が更に力強く繰り返され、聴く者を圧倒する。

第二章 ウム ウマヨ
いのちを育み、子孫を残す営みは永遠に繰り返される。この曲は、うまれる生命を包み込むような大いなる母の存在を感じさせる。時に押し寄せ、時に引く。波のようなうねりを伴って音と言葉が繰り返されることにより、生命の連環が表現されている。力強さの中に繊細な和音が美しく展開し、生命の深みが余すところなく込められている。

第三章 マツリ マツル
ウム ウマヨが女性的であるのに対し、マツリ マツルは男性的で力強い曲である。過去、現在、未来。生命を刻みながら、はるか彼方へと何ら変わることなく生命は未来へと受け継がれていく。太古から絶えることなく続く祈りとともに-。
各声部の旋律が混沌としながら「マツリ マツル」というフレーズに収束する。その後一転してゆったりとした後、大きな流れに乗って徐々に勢いを増していく様子は、次第に膨らむ人の歴史の潮流のようである。最後にはアレ ヒキミのモチーフが再びあらわれ、せきたてるような掛け合いにより、壮大なクライマックスを迎える。

3st.混声合唱のための「うた」より~パンフレットより

「人間は1つになっていく方が良いけれど、歌う時くらいは千差万別な方がいい」武満氏のコメントである。いみじくも個性豊かな我々グリーンハーモニーの団員は、9月初頭の夏合宿からこの“混声合唱のための「うた」”に取り組みはじめた。
うた」にはどの曲にもレトロな一面が感じられ、歌っている私たちは自然にその世界に感情移入することができる。そこに、今日まで多くの合唱団に「うた」が愛唱されてきた最大の理由があるのだろう。
「うた」には様々な要素が聞き取れる。デューク・エリントンからジャズの影響を受け、流行歌的で親しみやすい旋律を持つ自らの「うた」を石川セリに歌わせ、また、合唱曲を極上のクラシックギター曲に仕立て上げる…。そんな、世界中で愛されている現代作曲家・武満徹の合唱曲。まさに一級の音楽であり、一級の合唱曲である。
日本人独特の美意識を西洋音楽に取りこんだ、和音の美しさや繊細さ。そして、随所に見受けられるスウィングのリズム。これらを備えた「うた」に取り組むには、演奏する側にもそれなりの技術と姿勢が必要である。
「うた」を歌うには、一般的な合唱の方法論にとらわれてはいけない。ただ音を当てて強弱を付けていけばよいというのではない。楽譜に描かれた音楽を再現する技術を備えるよう努力することはもちろんだが、それ以上に、歌うことに集中する姿勢をもって取り組みたい。曲に触れるその時その時の自分たちの感性を最大限に使うことで初めて曲の味が出る、「うた」はそんな作品である。

恋のかくれんぼ
「うた」の中でも、特にテンポの揺れが多く見られます。寄せては返す感情の動きと比例していると思いませんか?柔らかい旋律とオシャレな和音から成る、とっても可愛らしい恋の歌です。

○と△の歌
私達の住む地球には、様々な形のモノが溢れています。当たり前過ぎて気付かない、それらの中には共通するモノを探してみて下さい。リズミカルな部分と大きなフレーズをたっぷり歌う部分が、ジャズ的要素を含ませ楽しく登場します。

島へ
あなたはめぐり逢いを信じますか?この歌は、まだ見ぬ誰かに恋い焦がれる想いを歌っています。美しい言葉と心に響くメロディー、そしてそよ風の様なテノールソロに乗せて、伝えたい気持ちを贈ります。

死んだ男の残したものは
ベトナム戦争に抗議する集会の為に作曲された反戦歌です。私達が今生きていること、明日が当たり前のように訪れること。これらは全て死んだ歴史が残したものなのです。短い短調の中に、明るい未来を表現したいと思います。2度と同じ過ちを繰り返さないと誓いましょう。

明日ハ晴レカナ、曇リカナ
短い歌詞の中から、鮮やかな情景が浮かんできます。多用されるスイングや弱拍アクセントによって、寂しさの中にある明日への希望を軽やかに表現します。明日はきっと晴れますように…。

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第38回定期演奏会

1st.無伴奏混声合唱のための組曲 子猫物語 2004.12.26(日)
開場17:30
開演18:00
アートピアホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
子ども

走る
守る
作曲
作詩
指揮
松下 耕
谷川俊太郎
近藤 和哉
2st.日本の民謡~松下耕合唱作品集~
秋田おばこ
狩俣ぬくいちゃ
俵積み唄
作曲
指揮
客演伴奏
松下 耕
有賀 康顕
大和田 千弘
3st.Quatre motets pour le temps de noel(クリスマスのための4つのモテット)
O MAGNUM MYSTERIUM
QUEM VIDISTIS PASTORES DICITE
VIDENTES STELLAM
HODIE CHRISTUS NATUS EST
作曲
客演指揮
Francis Poulenc
羽根 功二
1st.無伴奏混声合唱のための組曲 子猫物語~パンフレットより

子ども
いろんな色を持ち合わせた曲です。時にはリズミカルで歯切れの良い部分もあると思えばたっぷりと聞かせている部分もある。この型にはまらない曲の流れは、まさしく“子ども”の行動そのもの。いろんな表現を感じ、楽しめるのがこの曲の魅力です。


子どもが感じる夜の世界を歌っています。昼間とは違う、暗く不気味な世界に対する子ども達が抱く不安と恐怖心。しかし曲の流れは、次第に暗黒の世界から夜明けの瞬間へと変わります。夜と光の世界の対比、そして絶妙な和音の響きが一つの物語を演出しています。

走る
とにかく速いテンポとパートの掛け合いで、曲を織り成しています。“走る”と各パートがまるでキャッチボールしているかのように言葉を言い合う様は、ただひたすらに、そしてがむしゃらに走り続けているかのようにも聞こえますが、それは、なんの迷いもなく、感じるままに突き進む子どもの勢いを表しています。

守る
組曲の中で最も、親から子どもへの想いが歌われている曲です。曲を創っている包み込まれるようなフレーズ感は、まるで眠っている我が子を大事に抱きしめる母親のように、優しくそして暖かい響きを表現しています。この曲には愛するものへの強く、永遠に変わらない愛情が溢れています。

2st.日本の民謡~松下耕合唱作品集~パンフレットより

『日本固有の音素材の合唱音楽への投影』―作曲家松下耕のライフワークのひとつである。このテーマの下に作曲された数々の民謡作品に触れると、聴覚的な刺激だけでなく、心の奥底から沸き上がって来る言いようのないエネルギーに全身が揺さぶられる。なぜだろうか。民謡とは、祭りや労働の際などさまざまな場合に歌われるが、いずれにせよ、人々の生活に密着している。そこには、日々を生きる人々の魂が息づいているのだ。そういった魂が、私たちの根底に流れる何かに共鳴して、とても自然に身体を駆け巡る。
だが、松下耕の民謡はそれだけでない。そんな民謡にあえてメスを入れ、彼の持つ“非日本的”なハーモニーやリズム、ポリフォニックな構成などの要素を重ね合わせることにより、新しい、広大な世界を提示した。民謡という閉鎖的なものが、広大な世界を持つという、ある種の逆説に新しい命が生まれ、それが私たちを貫いていくのだ。
彼によれば、「この音楽は、“世界の中における日本伝統音楽”としてのアイデンティティーの確立を目指したものではなく、“日本伝統音楽の世界化(=普遍化)への実験”」であるのだという。また、前述したような「感覚をあじわえるのは、私たちが日本人であるからこその特権であるのだ」とも言っている。
今宵はそんな松下耕の民謡作品から3曲を選んだ。溢れんばかりのエネルギーを全身で感じ取っていただけたら幸いである。

秋田おばこ
おばことは18歳未満の生娘のこと。もともとは山形県の「庄内おばこ」が秋田化したもので、発祥地の秋田県仙北地域大曲市では毎年秋田おばこ節全国大会が開かれるほど有名な民謡であり、「民謡王国」と呼ばれる秋田県の最もポピュラーな民謡である。重なり合いながら上昇していくメロディーと軽快な節回しに加えて、展開部の松下耕独特の甘いハーモニーが印象的である。それに乗せて秋田弁で繰り広げられるおばことの対話を楽しんでいただきたい。

狩俣ぬくいちゃ
蒼く美しい海に浮かぶ、沖縄の最南端に位置する宮古島。その北部の海岸近くにある狩俣村でこの唄は生まれた。くいちゃ(クイチャー)とは、声を合わせて歌うという意味であり、この民謡は、本来は集団舞踊を伴う祭り歌である。沖縄の島々というと、様々な過去を持っているが、その中で人々の心を一つにするためにクイチャーが歌われたという話もある。その影響か、この曲の持つ、疾走感、変拍子、ポリリックな手拍子などの独特な魅力は、私たちを釘付けにする。

俵積み唄
青森県の新春を祝う門付け唄である。三戸郡周辺の門付け芸人が八戸近郊の家々を訪れて俵積みを演じていたのが、この民謡の原形であるという。重厚感のあふれるピアノとハーモニーに始まり、絢爛豪華に繰り広げられるピアノと合唱の対話が、この曲のスケールの大きさを物語っている。そして最も印象的なのは随所に見られる「ハッ」「コラ」「ソレ」といった合いの手である。ここにこそ、民謡の魂が凝縮されており、俵積みを行う人々のエネルギーが感じられるようである。

3st.Quatre motets pour le temps de noel(クリスマスのための4つのモテット)~パンフレットより

Francis Poulenc(1899~)は歌曲やピアノ曲を中心に様々な曲を世に送り出した作曲家である。また彼は作曲家だけだなくピアニストとしても知られ、彼の作り出す音楽の多くは非常に陽気で、軽妙な音楽であることが特徴である。そんな彼も1936年に友達の死によってカトリック信仰が強まり、以後は次々と宗教合唱曲を書くようになったという。
今宵に演奏する「Quatre motets pour le temps de noel」は1952年に作曲された無伴奏混声合唱のための曲集で、4つのラテン語曲から構成されている。キリストの誕生に対する人々の至福や歓喜だけではなく畏敬の念も込められている曲集である。

O MAGNUM MYSTERIUM
キリストがお生まれになった瞬間の様子を表している曲です。アルト、テナー、ベースの3声による非常に静かで神秘的な和音に始まり、ソプラノが合流し静かに響き、生まれた場所である暗い馬小屋の中の雰囲気が伝わってきます。後半の盛り上がる部分は、暗い馬小屋の中に突然強い光がさしこんで来た情景を表しています。主キリストへの畏怖と同時に、敬拝、歓びの念を歌っている曲です。

QUEM VIDISTIS PASTORES DICITE
天使たちが羊飼いに対し、キリストがお生まれになったことを人々に語りなさい、と告げる場面を表す歌です。天子の言葉であるメロディーと、星のまたたきを思わせるかのようなハミングによる和音の展開が印象的です。そして徐々に合唱は高揚していき、天使がキリストを高らかに讃えています。

VIDENTES STELLAM
「星を見て」という題の示す通り、夜の雰囲気を歌った曲です。東宝の賢者が夜空に輝く星を見て、キリストの生誕を知り、3賢者が持っている最も大切なものである、黄金と乳香と没薬をキリストに捧げに来る姿が描かれています。曲全体で各声部が揃って動き、計算され尽くした和音で音楽が展開されています。しかし、「myrrham(没薬)」という言葉には、キリストの死の予兆が表現されてもいます。

HODIE CHRISTUS NATUS EST
これまでの3曲とは違い、軽快で明るく躍動感のある曲によりキリストの生誕の喜びを表現しています。曲の最後には、「アレルヤ」と高らかに何回も歌われて、晴れやかに結ばれます。

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第37回定期演奏会

1st.そよぐ幻影より 2004.1.18(日)
開場17:30
開演18:00
名古屋市民会館中ホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
FM愛知
an学生援護会
名古屋市
愛知県
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
舞ひあがる犬
みづのほとりの姿
そよぐ幻影
作詩
作曲
指揮
客演伴奏
大手 拓次
西村 朗
有賀 康顕
為広 愛実
2st.IN TERRA PAX 地に平和を
知った
OH MY SOLDIER
花をさがす少女
ほうけた母の子守歌
IN TERRA PAX 地に平和を
作詞
作曲
指揮
伴奏
鶴見 正夫
萩久保 和明
水谷 優希子
江口 斗
3st.五つの願い
Ⅰ 春だから
Ⅱ 子ども
Ⅲ 願い 一少女のプラカード
Ⅳ 若さのイメージ
Ⅴ 空に小鳥がいなくなった日
作詩
作曲
客演指揮
谷川 俊太郎
三善 晃
羽根 功二
1st.そよぐ幻影より~パンフレットより

大手拓次の世界は、一言では語りづらいものがある。
彼は、19歳年下の女性に恋をして思いを告げることはないまま、生涯を独身のうちに46歳という若さで終える。そんな彼の詩は、自我の内側を常に見つめ続けており、主観の中で書かれた幻想的な世界を繰り広げている。どの詩にも、直接的な表現は全く無いにも関わらず、艶かしいエロティシズムが感じられる。女を知らない拓次が作り上げる世界の中では、女性の神秘性に対する強い幻想がそうさせているのだろう。
拓次の詩から編み出されたこの西村の組曲によって、拓次の世界が何倍にも広げられている。
「みづのほとりの姿」は絶えず音がぶつかっては寄り添うことを繰り返し、ぐるぐる延々と頭の中を巡る少女の姿の幻を浮かべては心をかき乱される。気が狂いそうになるほど胸が苦しくなってくる、内向きで美しく澄んだ世界である。
拓次へのレクイエムとして書かれた「そよぐ幻影」は、心の中にもやもやとしたものが絶えず存在して、心を揺らし続ける。その様は寄せてはかえす波のように、引いては押し寄せての繰り返しではあるが、その一回一回の持っている意味は違う。「さびしい心を抱いていけば抱いてくれる」という「あ」母音に対する拓次のイメージからもわかるように、曲の中に含まれる全ての情が詰まっているのだろう。
これら二曲とは対照的に、「舞ひあがる犬」は二匹の犬が疾走する姿がリアルに頭の中に思い浮かべられる。そこには、美しさと共に若き日の苦悩を含んだ躍動する生が感じられる。
今年も様々なことで紆余曲折した一年でした。その中でも多くの方々の力でこうして舞台に立つことができることを、幸せに思います。本日はご来場下さり本当にありがとうございます。

2st.IN TERRA PAX 地に平和を~パンフレットより

この組曲はベトナム戦争(1960初頭~1975)を舞台にしている。南ベトナムを支援したアメリカと、北ベトナムを支援したソ連、中国との政治戦略的な側面を持つ戦争だ。ベトナムの民間人犠牲者は400万人を超えると言われる。20世紀に起こった戦争の中でも様々な意味で忘れることの出来ない戦争の一つだ。
曲毎に戦争に巻き込まれた人の様子がひとつひとつ描き出されていく。様々な立場や視点から捉えた戦争の悲惨さ、残忍さ、人々が抱く悲愴感、哀悼、激昂、そして怨念を浮き彫りにしている組曲である。
「戦争を知らず、戦争は遠い昔の物語でしかない若者に、共感をもって歌えるような曲を」という作曲家と作詞家の想いのもと、この曲は誕生した。このステージ上の団員の中で、戦争を知る人間はいない。しかし、それまで知ることのなかった戦争を知ってしまった少年、遠い戦地で命を落とした若者、一瞬にしてすべてを奪われた少女、子の亡骸を抱いて自身の内側の世界で子守歌を歌う母親…。彼らの思いは詩や詩にのせられた音を通して、私たちに問いかけてくる。
戦争とは何か?
平和とは何か?
答えを出すために私たちが歌うことは無い。私たちが望むことは何かを感じることだ。

最初の曲、「知った」は「太郎は 知らない/戦争を 知らない…(中略)…だから 戦争への憎しみも 知らない」という印象的な言葉で始まる。
そう、私たちは皆「太郎」だ。真の意味での戦争の悲惨さを知る事は永遠に出来ないのではないか、この組曲を歌いながらそんな思いが頭をよぎる。たかだか歌を歌ったくらいで何が変わるのか、という人もいる。
けれども曲の問いかけに耳を傾けることは決して無駄なことではない。どんなに小さな形であれ、それは歴史の問いかけでもあるからだ。
最後に太郎は気付く。「あっ!」…ベトナムの空は日本の空に続いているのだと。そして私たちは知らねばならない。日本に続く空はベトナムの空だけではないことを。
どんな未来を築くにせよ、私たちは過去を見つめること無しに前へと進むことはできない。この組曲が、私たちの未来と過去とを繋ぐ絆となってくれることを心から願う。

「IN TERRA PAX 地に平和を」は、今年一年グリーンハーモニーが取り組んできた組曲です。昨年の8月に行いました、サマーコンサートでも演奏しましたが、今回は前回にも増してこの曲の世界を皆さんにお届けできたらと思っています。
この一年を過ごす中で、団の内外を問わずたくさんの方にお世話になりました。彼らの助力が無かったら、今日の演奏会をこのような形で迎えることは出来なかったかもしれません。感謝の気持ちも込めて、今日は存分に指揮を振り、グリーンハーモニーのみんなと歌いたいと思います。

3st.五つの願い~パンフレットより

作曲家三善晃は1933年に生まれた。彼は数多くの合唱作品を書いているのだけれども、「たくさんの死者を知っていた。戦争そのあとの戦後の徹底的な虚無感、根こそぎ喪失感といったようなものが、ぼくの中にもある。」と語っているように、彼の作品の根底には戦争体験がある。
「五つの願い」は混声合唱団ローレル・エコーの委嘱をうけて書かれ、1988年に初演された。ローレル・エコーの皆さんは三善晃とほぼ同年代の方々。そこには共通の戦争体験がある。思い出が重なる、夢が映り合う、悲しみが通じ合う、痛みが響きあう、願いが手を結ぶ……。“地球の同じ思いを歌いたい。”こうしてこの組曲は生まれた。
我々、若者がこの「五つの願い」を歌う。当然だが我々には戦争体験なんてないし、先に述べたような思いを抱くことも難しい。この詩は社会への批判に満ちている。だから同じ思いを抱けるわけではない我々がこの曲を歌うのは間違いだし、失礼なのではないかとさえ思うときもある。
しかし、そうではない。楽譜に三善晃はこう書いている。「愛の前と後ろに絶望があり、その向こうにもっと深い愛があった。流れていく、あてのない怒りと痛みを抱いて、優しさが流れていた。」と。この曲には未来への期待、希望が込められている。この批判の向こうには、期待が、この先こうあってほしくないという切実な願いがあるのではないか。そして、我々が歌うべきはその未来への期待なのではないか。
まるで詩そのものを朗読しているかのような旋律に、包み込まれてしまいそうな柔らかい和音をのせて、この組曲に込められた、絶望とその奥にある愛を歌いたいと思う。

Ⅰ 春だから
「春だから……我慢できたのに。」
新しい命に、希望に溢れる春をこんなにも悲しい気持ちで迎えなくてはならない。そんな、手放しには春の到来を喜ぶことができない気持ちが、明るくも、単純にうきうきでない音に表現されている。

Ⅱ 子どもは……
子どもへの限りのない愛情を歌った曲。親が抱く無限の愛情で満ち満ちた空間と、時がたつのが感じられなくなってしまうほどゆったりとした時間と、子どもの頬のように柔らかい和音が、この曲にはある。

Ⅲ 願い 一少女のプラカード
一人の少女の視点で戦争そのものへの純粋な思いを歌った曲。少女の純粋な感情が曲と共に高まっていき、そして最後に、素朴だが、大人には決して答えることができないであろう疑問にぶつかる。そしてまた静かに、純粋で、より切実な願いに戻る。

Ⅳ 若さのイメージ
若者特有のとんがった、まっすぐなイメージのする曲。若者を連想させる言葉が、次々と曲から飛び出してくる。夢、はだし、傷、埃、ジャンパー、仔犬、口笛…。
では、最後に飛び出してくる言葉にはいったいどんな意味が込められているのだろうか。

Ⅴ 空に小鳥がいなくなった日
同じような五連の詩で構成された曲。森、海、街、ヒト、そして空、一つ一つに静かに思いを巡らせる。そして最後に優しく「ヒトは」とだけ歌う。その続きは無い。しかしただ事実だけを並べたこの歌には、事実を並べたに過ぎないからこそ存在する重みが、確かに感じられる。

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第36回定期演奏会

1st.J.Rutter合唱作品集 2003.1.19(日)
開場16:00
開演16:30
しらかわホール
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
O calp your hands
It was a lover and his lass
Open thou mine eyes
Praise ye the Lord
作曲
指揮
客演伴奏
J.Rutter
大野 和徳
榊原 理恵
2st.混声合唱曲集「光と風をつれて」より
いっしょに

あいたくて
はじまり
作曲
作詩
指揮
伴奏
木下 牧子
工藤 直子
水谷 優希子
江口 斗
3st.混声合唱組曲「詩の歌」より
コスモスのうた
いちばんぼし
かいだん Ⅰ
やどかりさん
かいがらさん
作曲
作詩
客演指揮
三善晃
まど・みちお
羽根功二
1st.J.Rutter合唱作品集~パンフレットより

O calp your hands
古くから民衆の力は、不可能と思えることを可能にしてきました。歴史を紐解いてみると、数々の革命は民衆の力により成り得たものが多いことがわかります。この曲もそんな民衆のエネルギーにあふれています。冒頭で「共に手をたたけ!」と声をそろえて叫び、終盤では一部から始まった叫びが徐々に広がっていく様子により、曲のクライマックスを表現しています。ステージの最初を飾るにふさわしい、とてもダイナミックな曲です。

It was a lover and his lass
まるで昼下がりのラジオから流れてくるようなこの曲は、他の3曲とは全く違った印象を与えることでしょう。その秘密は歌詞にあります。第1ステージの曲はほとんどが聖書から歌詞を引用しているのですが、この曲だけは劇作家シェイクスピアの「お気に召すまま」という戯曲を元にしています。まるでゴスペルのようなノリの良いリズムの中に、うきうきするような春の匂いがこめられています。

Open thou mine eyes
賛美歌とは、祈りの言葉がまずあってそれに音がついたものです。つまり、祈りの要素の強い歌があるのではなく、あくまでも歌の要素の強い祈りなのです。この曲にも同じことが言えるのではないでしょうか。流れるようなメロディーは、人々の心を温かく包み込み、その心を神の元へと誘います。祈りのように静かに流れる旋律の中に、強い思いがこめられた曲です。

Praise ye the Lord
第1ステージの最後を飾るこの曲は、人々の神への賛美を呼びかけた歌です。ソロに導かれるように曲が始まり、そしてあらゆるフレーズに「Praise(讃えよ)」という言葉が使われています。何かを願うのではなく、讃えるということこそが聖書においての「祈り」なのです。曲中にいくつかの楽器の名前が登場するところもこの曲の特徴でしょう。歌詞は聖書詩篇の一番最後にあり、まさにこのステージの締めくくりにふさわしい曲となっています。

2st.混声合唱曲集「光と風をつれて」より~パンフレットより

いっしょに
淡々と過ぎる日常生活の中で、忘れかけていた何か、空の青さ、風の心地よさ、道端に咲く花の美しさなど、私の身近にあるかけがえのない全ての物をこの曲はそっと包み込みます。「ここでやすんでいきませんか」と優しく問いかける歌詞と、静かでゆったりとしたメロディーは正に「癒し」という言葉がぴったり当てはまります。一言一言、一音一音を大切に抱き締めたくなるような曲です。


時に冷たく、時に温かい、激しいけれど静かで、ひどく憂鬱な時間でありながら私たちの心に小さなゆとりを与えてくれる。この曲には、そんな雨の持つ神秘的な優しさが詰まっています。雨は大地を潤すと同時に、私たちの心も潤してくれます。騒々しい街並みの中で、人々の足をふと止まらせ、雨音や匂い、言葉では表せない独特の雰囲気で包み込んでくれる雨の不思議な魅力を感じることのできる曲です。

あいたくて
あいたい人はいますか?あって言葉にできない何かを伝えたい人はいますか?この曲では、そんなあいたいという願いや夢、なかなかあうことのできないもどかしさややるせなさなど、様々な気持ちを歌っています。やわらかく、静かで真っ直ぐな思い。くじけそうになったり、それを乗り越えようとする前向きさが感じられます。「あいたい」という思いの中に、迷いや不安が入り交じる、人間味に溢れた温かい曲です。

はじまり
この曲を一言で表すなら、それは「大きさ」でしょう。地球という星と、そこに生きるものたちの明日への希望、自然の偉大さ…。様々なものの大きさをひしひしと感じます。力強く、重厚なハーモニーには、限りなく広がる大地の上で、目に見えない、言葉にできない「何か」に決して背を向けることなく生きようという思いがこめられています。永遠に回り続ける地球と、生命の尊さを感じさせる曲です。

3st.混声合唱組曲「詩の歌」より~パンフレットより

作曲家は後戻りできないわけで、最近の三善晃の作品は私には音が厚くなりすぎて難解になりすぎたか、という印象が強かった。
きょう演奏する「詩の歌」について、作曲家自身が虚子の『正格』という言葉を引用し、つぎのようにのべている。「虚子の言った『正格』の心は平易で品があり、虚飾と無駄のないこと。それなら僕も自分なりにまどさんの『正格』を学んでみよう。合唱をする人々が平易で深い歌を求めている。僕も同じところに立っているのだから。」
私は、天才三善晃がこんなにも正直に自分の心境を吐露していることに、非情に感銘を受けると同時に、おこがましいがわが意を得たりという気がしている。
まどみちおの限りなく優しい詩に、三善晃の限りなく優しい曲がつけられる名曲が誕生した。きょうはこの名曲を名大グリーンのみなさんと限りなく優しく演奏することができるだろうか。

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第35回記念定期演奏会

1st.遥かな時の彼方へと 2002.01.20(日)
愛知県芸術劇場コンサートホール
開場:17:00
開演:17:30
【後援】
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.遥かな時の彼方へと
2.やがて虹がかかる
3.この愛を II
作曲
作詩
指揮
ピアノ
高嶋 みどり
片岡 輝
大野 和徳
榊原 理恵
2st.Javier Busto合唱作品集
1.O magnum mysterium
2.Ave verum corpus
3.Axuri beltza
4.Praise the Lord
作曲
指揮
Javier Busto
藤森 徹
3st.Missa Brevis
1.INTROITUS
2.KYRIE
3.GLORIA
4.CREDO
5.SANCTUS
6.BENEDICTUS
7.AGNUS
8.ITE,MISSA EST
作曲
指揮
オルガン
Zoltan Kodaly
羽根 功二
渡部 真理
1st.遥かな時の彼方へと~パンフレットより

この組曲の根底に流れるテーマは、さまざまなかたちをもつ「愛」。そしてそのテーマを通して歌いあげられる、思春期を生きる現代の若者への強烈なメッセージ。作曲者・高嶋みどりは、技法に凝らないシンプルな音の中に、非常にわかりやすく巧みにそれらを埋め込んだ。今を生きる次の世代の担い手たちに、大きく成長して欲しい-そんな願いがこの組曲を通してひしひしと伝わってくる。作詩者・片岡輝の、エネルギー溢れる生き生きとした世界を持つテキスト。それに見合う流麗かつ壮大なピアノ伴奏、そして合唱のハーモニー。すべてが最高のバランスで混ざり合い、形容しがたい甘美な暖かさを醸し出すのだ。

01.「遥かな時の彼方へと」では、ふとした瞬間、自分の心、に自身の 生き方を問いかけ、それを探しながら力一杯「生きる」若者の姿をス トレートに歌いあげる。前半は落ち着いたテンポで自分の内面の不安などを見つめ、そこから気持ちを盛り立てて力強く解放する後半へとつなげていく。

02.「やがて虹がかかる」では、思春期の若者のエゴイスティックな愛の有り様を表現する。前半、周りに対して常に注意を払いながら生きる姿は、短調から始まるメロディで歌われる。そして後半に入りその若者に愛が差し伸べられると、彼はそれに戸惑いながらも受け入れ自らを成長させていく。

03.「この愛を II」では、前の2曲を受けて、それらの実現を明るく豊かに歌いあげる。今日の世界に存在する様々な問題を、人類愛の観点から見つめて書かれている。詩は曲の中にそのまま反映され、 非常に暖かみのある楽想となっている。この曲は、これから広い世界へ向かって羽ばたいていこうとする若者たちへのエールとも言えるだろう。             、

愛がある事への喜びや安心、それを伝えていくことの大切さ。こ の組曲を通して「愛」というテーマの途方もない暖かさを伝えたい。 私たちのうたを通してそれらが伝えられたらなんて素敵なんだろう。 遥かな時の彼方に向け、私たちはメッセージを発信します。

2st.Javier Busto合唱作品集~パンフレットより

ハビエル・ブスト(1949~)はスペインのバスク地方に生まれた、若く、エネルギーに溢れる作曲家である。

彼は、学生時代に医学を学んでおり、音楽について専門的な勉強をしていない(こういった作曲家が斬新な音楽で歴史を切り開いていった例も少なくない)。そんな彼の曲は、とても人間味のある、あたたかい音が響きわたり、とても心地よい。

作曲方法は、古典派的なホモフォニック(4声が縦の線をそろえて一緒に歌う)を基本としており、そこにオスティナート等の技法を効果的に用いることによって、一つ一つの音に意味をもたせている。彼の曲は、ハーモニー・音階が、出来得る限り一つ一つの言葉に意味を与えているかのように書かれており、音楽と言葉の意味とが常に類似している。この響きが聞く人に感動を与えるすばらしい音楽を創りだすのだろう。

01.O magnum mysterium (おお、大いなる神秘)  冒頭のミステリオーソから、神秘的に曲のイメージが広がり、キリストの誕生を賛美していく。様々な場面展開をしていくが、曲全体は一貫として神秘性を表しているように感じられる。Tempo 1から終結部に向かって徐々に盛り上がっていき、高らかに「アレルヤ」が歌い上げられていく。

02.Ave verum corpus(めでたし、まことの御体)  テキストは教会の聖体賛歌による。同じ旋律から始まる3つの場面からなり、キリストの受難とキリストへの賛美の言葉が、ソプラノの流麗な旋律と下3声の伴奏によって歌われる。そして、終結部の「アーメン」の旋律では、天使が降りてくるかのように静かに下降していく。

03.Axuri beltza(黒い子羊)  スペインのバスク地方に伝わる女の子の踊りの歌を編曲したもので、バスク語で歌われる。印象的なテノールからはじまり、踊りの情景を表したような音を織り交ぜ、バスクの香りを漂わせていく。

04.Praise the Lord(主をほめたたえよ)  テキストは詩篇113番を英訳したものによる。高くして低き神の、尊厳と親愛の情が見事に表現されている。神を讃える力強いフォルテの響きで始まり、言葉の流れにそって場面展開をしていく。そして、曲頭で歌われたテーマをもう一度繰り返し、力強く、そして高らかに曲を締める。

3st.Missa Brevis~パンフレットより

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第34回定期演奏会

1st.かみさまへのてがみ 2001.01.14(日)
しらかわホール
開場17:00
開演17:30
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.かみさまへのてがみ
2.わたしは あんしんです
3.てんごくって どんなかんじ I
4.てんごくって どんなかんじ II
5.終曲
訳詞
作曲
指揮
伴奏
谷川 俊太郎
高嶋 みどり
藤森 徹
高石 加奈子
2st.しゅうりりえんえん-みなまた海のこえ-より
1.しゅりがみやま
2.ふるさと(故郷)
3.はかい(破壊)
4.うたげ(宴)
5.たんじょう(誕生)
6.ゆうきすいぎん(有機水銀)
7.ばんか(挽歌)
8.ひかりのたき(昇天)
作詩
作曲
指揮
ピアノ
石牟礼 道子
荻久保 和明
河野 藍
榊原 理恵
3st.Quatre motets pour un temps de penitence
     ~悔悟節のための四つのモテット~
1.Timor et tremor
2.Vinea mea electa
3.Tenebrae factae sunt
4.Tristis est anima mea
作曲
指揮
Francis Poulenc
羽根 功二
1st.かみさまへのてがみ~パンフレットより

高嶋みどりの初期作は、歌もピアノも非常に凝って作曲されており、「一つ一つの音から何か表現したい」というエネルギーのすごさを感じる作品が多い。今回演奏する「かみさまへのてがみ」も、彼女のそのような初期作に相応しい作品となっている。この曲のテキストは、アメリカの子供たちが神様へ宛てた手紙を谷川俊太郎が翻訳した「かみさまへのてがみ」「かみさまへのてがみ もっと」という名の絵本から採られている。それらの絵本に書かれている詩は、純粋で素朴な心を飾り気のない素直な言葉で表した、素敵なものである。そして、その詩から生まれたこの組曲は、テキストのもつこどもらしい世界がそのままに表現されており、ジャズを思わせるリズムとメロディーによって楽しくノリのいいものになっている。

1.「かみさまへのてがみ」は調の違う男声と女声の不思議な鐘の響きで始まる。そしてかみさまへの質問や注文、激励の言葉をリズミカルに軽いノリで歌い、最後にそっと神様に愛の告白をする。

2.「わたしはあんしんです」はこの曲で唯一のア・カペラ曲で、かみさまによる静かで満ち足りた心の安らぎを、落ち着いた柔らかな響きで表現している。

3.「てんごくって どんなかんじ I」は、天国によせた素朴な思いを、憧れたっぷりの大きなゆらぎと期待と不安を織り交ぜたような音で表現し、美しい天国がイメージされる。

4.「てんごくって どんなかんじ II」は、これまでとうって変わって、現実的でユニークな詩を全体がシンコペートされたメロディーで表した、明るく軽やかな曲になっている。

5.「終曲」は途方もなく大きい全能のかみさまを讃えている詩を、壮大で勇壮な楽想で表現してあり、まさしく終曲にふさわしい。

子供の感性は天才的だ。大人にはない素晴らしい世界を持っている。そこから生まれた各曲の印象的なメロディーと、子供の様々な感情を素直に表した音を楽しんでもらえれば幸いである。そして私たちがこの曲を楽しんで歌っている雰囲気を伝えたい。私たちの「うた」というおてがみを届けたいと思います。

2st.しゅうりりえんえん-みなまた海のこえ-より~パンフレットより

一冊の絵本があった。水俣病をテーマに、2組の祖母と孫娘の穏やかで平和な暮らしに訪れる惨劇と魂の昇天をえがいた、「みなまた 海のこえ」(絵:丸木位里・丸木俊 文:石牟礼道子)である。昭和57年、作曲家荻久保和明は熊本を訪れた際、この絵本と偶然出会い強烈な感動を覚える。荻久保はこの出会いについて次のように語っている。「1ページ1ページ、絵の持つ異様な有り様に強く引かれ、なかでも最後のページの『ひかりのたき』の鮮烈なイメージは僕の裡に縄文なるものを呼び醒まさせた」。そして、一冊の絵本と一人の作曲家の出会いから2年の時を経、昭和59年「しゅうりりえんえん」はこの世に生を受けたのである。

荻久保は言う。「決して水俣病を告発するために書こうとは思わなかった」。私たちも告発するために歌うわけではない。水俣病によっておこった混乱を、狂気を、そういった曲の持つ激しいエネルギーが伝わればいいと思っている。

この歌のもつ生々しさを追求していくために、「歌うという行為の中で演技する」ことを目標に、音の1つ1つ、詩の1つ1つが何を表現しようとしているのかを模索しながら取り組んできた。「しゅうりりえんえん」が私たちの祈りをこめて、みなさんの目に鮮やかな映像となって映るよう歌いたい。

01.しゅりがみやま・・・01から04までの主人公、きつねの「おぎん」と その孫娘「おちゃら」の目を通したストーリーとなっている。しゅうりりえんえんの幕開けは、深い闇に包まれた水俣の海と、神のおつかい「おぎん」が、ミステリアスに登場してくる。

02.ふるさと(故郷)・・・水俣の美しく平和な春の海を歌った曲である。 そよ風のような男女のかけあいで、「おぎん」と「おちゃら」がじゃれあいながら海の周りをあちこち駆け回る様子を描く。女声の素直なハーモニーが、透明感あふれる幸豊かな海を連想させる。

03.はかい(破壊)・・・平和であった海に起きる悲劇の幕開け。水俣病の元凶、チッソ工場を作るために破壊されていく山の混乱を描く。「しゅうりりえんえん」のモチーフである繰り返しが、迫りくる「何か」を表現している。きつねたちの「けお-ん けお-ん」という悲痛な叫び。ピアノの激しいタッチが山のパニックによりいっそう拍車をかけている。

04.うたげ(宴)・・・偽りの繁栄が生み出した物の怪たちの、妖しくて不気味な宴を歌う。6連狩と16分を重ねて歌うことで、不思議なリズムが生まれている。

05.たんじょう(誕生)・・・ここから語り手が「ばばさま」に代わる。女声の、どこか霞がかった切ない曲調で始まり、途中、孫娘の誕生を書んで成長を心待ちにする、祖母の愛情に満ちた男声ソロに変化する。すべては思い出の中・・・。はかなげな印象の曲である。

06.ゆうきすいざん(有機水銀)・・・凄惨としか言いようのない、激しいエネルギーを持った曲。オワオワとBassがうたう、苦しげにうめく「ちよ」。それに驚愕するばばさま。「目ぇあけたまんま死んでしもうた」「空をつかんで、背なかでぎりぎり」その悲惨な有り様が胸をうつ。語り手のばばさまのみならず、水俣全体の狂乱を描き出す。

07.ばんか(挽歌)・・・亡くなった「ちよ」へのレクイエムで、組曲唯一のアカペラ曲である。女声のvocaliseで始まり、同じメロディを繰り返すことで、空虚な哀しみを表わす。ちよの魂の浄化を願う、祈りの和音で終わる。

08.ひかりのたき(昇天)・・・鮮烈なうたいだしで始まる。現実の世界を描くというよりは、水俣病によって亡くなった魂が天へ昇っていく様子を幻想的に描く。現世に残された着たちが、海にさまよう魂の浄化を願い、物語を締めくくる。

3st.Quatre motets pour un temps de penitence
     ~悔悟節のための四つのモテット~パンフレットより

この組曲は1938年から39年にかけて作曲されたラテン語の無伴奏混声合唱曲で、テキストに「Timofet tremor」は旧約聖書詩篇第54(55)章と第30(31)章を、「Vinea mea electa」「Tenebrfactasunt」「Tristis est anima mea」の3曲はキリスト教信者の朝課の詩を用いている。また、歌詞に即した音楽を注意深く添えた作品で、宗教的件 曲家プーランクの、逞しくはないがより劇的な表現が用いられている。この曲を支配するのは穏やかさではなく、畏敬と恐れ、悲しみと苦しみであるが、表現は明快で、旋律線はあくまで清らかである。また、この曲に用いられる声部の配分は、オルガンの音色のようで、プーランクの宗教曲の中でも和声的に難易度が高いが、表情豊かでとても心地よい。

01.Timor et tremor ~恐れとおののき~  この曲だけは旧約聖書詩篇から詩が取り上げられていて、個人のために書かれたものである。時に神を裏切り、迫害まで する人間だが、迫りくる恐怖と戦懐に直面した時、神に対しての絶対的な信仰を露わにし、救いを求める。ソプラノとテナーの力強いユニゾンで始まり、タテの線での動きや、"miserere mei Domine"のわずかなかけあいからは透明感があふれている。最後は祈るように静かに消えていく。

02.Vinea mea electa ~わが選びし葡萄の園~  この曲のストーリーは、"神から選ばれしVinea=葡萄(ユダヤ人)に対し、神は生育に障害をもたらす石を取り除き、環境を十分に整えた。しかし、Vineaからは苦い汁(不誠実の象徴)しかでなかった。本来ならば甘い汁が出るはずなのに。そしてその不誠実は神の子であるイエスにも向けられ、彼らは罪人であるバラバを解放し、何の罪もないイエスを刑に処した。というものである。始めこそ、きれいなフレーズで落ち着いた感じを持っているが、途中からの三声のかけあいはやりきれない心情をのぞかせ、"et Bafrabam dimitteres"では激しい感情がうかがわれる。同じ音階が2回繰り返されていて、なにか強く訴えるものが感じられる。1曲目とは対照的に強く不条理を訴えて終わる。

03.Tenebra facta sunt ~地の上あまねく闇に満ちて~  イエスが救世主(ユダヤの王)と自称した廉で、群衆の前で十字架の刑に処せられることになった場面を曲にしている。4曲中最も暗い雰囲気を持ち、荘重さが曲を包んでいる。音量を抑制した、ごくやわらかい弱音での始まりは、嵐の前の静けさを表しているかのようであり、イエスの悲痛な叫びが女声の荒々しい動きや幅の広い重厚な和音で描写されている。そして、最後、イエスが神への従順な哀願ともに息絶えていく場面が、弱音の連続で静かに表現されている。

04.Tristis est anima mea ~わが心いたく憂いて~  悲しみに身をゆだねた穏やかなソプラノソロで始まる。裏切り者のユダと祭司長らに逮捕される直前の弟子たちを逃がすイエスの心情が、静かなかけあいや、この曲集にはあまり見られないリズミカルな技法で表現されている。特に"Ecce appropinquat hora"からはイエスの諦めさえ感じられる音である。9パートからなる"et ego vadam"は、慈愛の気持ちが精巧に作曲されていて、プーランクの曲の中でも最も美しい音といわれている。最後は祈るような和音で終わる。  

この組曲は、人間が罪を犯したならば、その罪を犯した本人 が当然罰せられるべきなのに、あろうことか人間の手によって、人間のために尽くしてきた罰せられるはずのない神の子イエ スがその罪人(人間)の代わりに処刑されてしまった、という歴史的事実を思い出すことで、人間の愚かさを改めて肝にめいじ、また、人間としてあってはならない姿であると憾悔する要素を含んだ曲である。そして、そのことを日常生活での大きな精神的教訓とするべくうたわれている。

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第33回定期演奏会

1st.混声合唱曲集「空に、樹に…」 2000.1.10(日)
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.生きる
2.天に昇った川
3.聞こえる
作詩
作曲
指揮
ピアノ
谷川 俊太郎ほか
新実 徳英
河野 藍
高石 加奈子
2st.混声合唱のための「うた」より
1.小さな空
2.島へ
3.死んだ男の残したものは
4.明日ハ晴レカナ、曇リカナ
5.翼
作詩
作曲
指揮
武満 徹
武満 徹
田中 大樹
3st.混声合唱とピアノのための「はだか」
1.むかしむかし
2.ひとり
3.はだか
4.きみ
作詩
作曲
指揮
ピアノ
谷川 俊太郎
鈴木 輝昭
山本 太一
森 名津美
1st.混声合唱曲集「空に、樹に…」~パンフレットより

この曲集は、組曲として作曲されたのではなく、それぞれ違う時期に作曲されたものが集められ、それが曲集として誕生したものです。

誰もが一度は悩む「自分」という存在。この曲集ではそんな「自分の中の自分」と向き合うことをテーマとしています。作曲者、新実徳英の取り上げた三篇の詩は、どれも人間の心の問題を含んだ重たい詩です。私たちが生きていく中で、ふと立ち止まって考えてみた「自分」。その時に生まれた苦しみ、悲しみに悩み傷ついても、それでも私たちは生きていく。何回も転んでは起き、少しずつ力強さを手に入れていく。私たちが生きている「青年期」はそういった時期ではないでしょうか。

掴めないながらも、おぼろげに見える未来への希望。私たちはそんな想いを込めてこの曲集を歌いたいと思います。そして聴き手の方に、私たちの若々しい力強さ、うたに込めた想いをお伝えできたら、と願っています。

2st.混声合唱のための「うた」より~パンフレットより

武満徹は、日本だけでなく、世界中で愛されている現代作曲家の一人である。現代作曲家は一般的に、「難解」と敬遠されがちな中で、武満徹が異例なほど知名度が高いのは、流行歌にも通じる、親しみやすい旋律にある「分かりやすさ」と、日本人固有の美意識を西洋音楽に取りこんだ和音の「美しさ・繊細さ」にある。また父親の影響から、ジャズを好み、その影響は楽曲の随所に感じることができる。

「混声合唱曲のためのうた」は、合唱の編曲の練習用に、肩のこらない娯しみのために作曲したと作曲家本人は言っているものの、どの曲にも私たちの心をつかんでやまない素晴らしい音楽がある。また、どの曲にも随所に作曲家の人間臭い一面が感じられ、歌っている私たちが強く親近感を憶えるところに、今日まで多くの合唱団に「うた」が愛唱されてきた理由があるのだと思う。

今宵の演奏会では、「うた」から五曲を選曲した。今の我が団を表現するのに最も適した選曲であると自負する。哀愁漂う「小さな空」は、甘く切なく昔の自分を振り返り、「島へ」は、素適な出会いを探している心の情感が映し出されている。「死んだ男の残したものは」は、反戦歌として作られたものであり、多くの歌い手によって歌われているが、作曲家曰く「決して政治的に歌うのではなく、例えば゛愛染かつら"の歌をうたうように歌って欲しい」とのこと。内面に戦争に対する悲しみを秘めながらも淡々と語られる音楽に武満の戦争に対する想いが感じられる。「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」の自分の心に問い掛けるような歌詞は、作曲家の人間臭さ、父親から受けたジャズの影響が強く伺える。それは、短いセンテンスの中にも、悲しみや不安、そして希望が入り交ざった複雑な思いが素直に表現されている。「翼」は、夢を運ぶ翼のように自分を照らし合わせながら、希望に満ち溢れている未来へ向けて歌う。

今宵のステージでは、気張ることなく、飾ることなく、ありのままの自分たちで歌いたい。そして、私たちにある「うたごごろ」を感じていただければ幸いである。

ほんのひとときですが、忙しい現世から離れて私達と一緒に「うた」を楽しんでみてはいかがでしょうか?

3st.混声合唱とピアノのための「はだか」~パンフレットより

谷川俊太郎の詩集『はだか』は二十三篇からなる、全てひらがなで書かれた詩集である。「むかしむかし」と「きみ」は「ぼく」という子供の立場から、「ひとり」と「はだか」は「わたし」という子供の立場から社会を、大人を、そして自分自身を鋭く見つめ、訴えかけてくる。これらの四篇とも、個の内面をリアルに描き出しており、現実的でありながら同時に時空を越えた広がりをもち、そしてまた、大人が忘れかけたひそかな独特の官能を漂わせている。

一曲目の「むかしむかし」は、最初の主題において幻想的なコラール調のア・カペラで始まる。その後、一転してピアノが加わり、Allegroで次々と様々なドラマを展開していく。やがてそれはクライマックスをむかえ、主題の再現部の静かな叙情のなかで、「ぼく」は、「いまここにぼくはいる」と自己の再認識をして曲を閉じる。

二曲目の「ひとり」は、冒頭ですすり泣きにも聞こえる合唱のハミングとともに、ソプラノソロによっていじめられている孤独感からくる寂しさを感じさせる。中盤の展開部ではそれまで内に向かっていた感情がむき出しになる。しかし、それは「わたし」にはどうすることもできず、「しぬ」代わりに「ひとりでもくせいまでいく」ことによって、ひとときの救いを求め、曲は終結する。

三曲目の「はだか」は、今回の曲集の中心となる作品である。淡々と無機的にピアノが旋律を奏でている上で、女声によるmonologue(独白)に男声が絡み合っていき、はだかになっていくさまをポリフォニックに描写していく。一秘(ひそか)な「わたし」の未知なる性への目覚め。しかし、新たな世界を知ってしまったことへの羞恥や背徳の意識からか、「かじりつき」「とけて」しまいたいという衝動に駆られ、艶やかな浮遊感を漂わせて終わっていく。

四曲目の「きみ」は、冒頭で「ぼく」が「きみ」を求めても掴みきれない、そんなさまが明るい色調の旋律の中に表現されている。展開部におけるピアノの半音のぶつかり合い、低音の激しいせめぎあいに「ぼく」の鬱屈(うっくつ)した思いが表れ、再び前半のモチーフが繰り返される。その後、ベースパートから、「ぼく」の夢の中での重苦しい情景が語られ、「きみ」への憧憬を募らせていき、「ただきみがすきなだけだ」と告白して決然と終わる。

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第32回定期演奏会

1st.混声合唱組曲「幼年連祷」 1999.1.10(日)
しらかわホール
開場17:00
開演17:30
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.花
2.不眠
3.憧れ
4.熱
5.喪失
作詩
作曲
指揮
伴奏
吉原 幸子
新実 徳英 
浅井 勇樹
栗下 みどり
2st.混声合唱組曲「太海にて」
1.トンビ
2.仁右衛門島
3.春のうた
4.とんがり山
5.坂
6.蒼き巌の行進
7.桃いろの貝
作詩
作曲
指揮
間所 ひさこ
多田 武彦
横山 奈穂
3st.シューベルト合唱曲集
1.Chor der Engel(天使の合唱)
2.23.Psalm(詩篇第23番)
3.Der Tanz(ダンス)
4.Gott im Ungewitter(嵐の中の神)
5.Gott der Weltschopfer(世界の創造主としての神)
作曲
指揮
ピアノ
F.Shubert
永友 博信
田辺 美砂子
1st.混声合唱組曲「幼年連祷」~パンフレットより

無邪気さ、純粋さ、かわいらしさ―あなたの幼年時代にはどんな言葉が当てはまるでしょうか。この「幼年連祷」は大学卒業間近の筆者が、自分の幼い頃を振り返り、それを再体験し、それによって大人への1つの区切りをつけていく、そんな心情が言葉に表されています。

i「花」--組曲に先立って作曲されており、この曲だけで一足早く初演を迎えています。冒頭のメロディーはこの組曲中を通して流れており、一種の淋しさを感じさせます。

ii「不眠」--幼い頃のどうしても寝つけなかった夜を、時計の「かちかち」から始まる音と言葉のたたみかけで表現します。

iii「憧れ」--すきとおったものが欲しい―あなたも一度は思ったことがあるのではないでしょうか。幼い頃のそんな素直な憧れを美しいメロディーで歌います。

iv「熱」--熱にうなされて見える幻影―それはどんなものでしょうか。ここではそれを“巨大ななめくぢ”に例えて一種の不気味さ・重苦しさをまじえて表現します。 

v「喪失」--幼い頃がたとえどんなに良い日々であったとしてもそれはもう還らぬ日々。色々なものを失って「大人」になった自分がそこに区切りをつけ組曲の幕を引きます。

ちょうど作者がこの詩を書いた年代に私達は当てはまります。この歌を機会に私達も本当の「大人」になる区切りをつけ、そして会場全体で幼い頃の思い出を思い出すことができるような、そんな演奏をしたいと思います。

2st.混声合唱組曲「太海にて」~パンフレットより

詩、絵画、写真・・・・・・人は、美しい風景をありとあらゆる方法でもって表現します。

「太海にて」 この歌は房総半島に位置する太海浜へ訪れた人々の、目に映った情景やその心情を「歌―音楽」によって表現したものです。太平洋が目前に大きく大きくひらけた太海浜。吹きよせる風、その風に乗って、悠々と飛ぶトンビ。その風景は、疲れた心を癒し、なぐさめ、またその果てしなく広がる海と果てしなく高く広い空から、無限に広がる自分の可能性を示し与えてもらえたのか・・・解放された自由な心を取り戻させてくれる。そんな風景を私たちは「合唱」で表現します。

作曲者、多田武彦は男声合唱曲を多く手がけており、混声合唱曲は曲数が少なく、この作品は三作品目です。彼はこの曲について、太海に訪れた人々の心にうつった情景を表現して作曲したと述べています。旋律、和音は大変親しみ易く、歌い易くつくられています。それだからこそ、私たちの味付けの工夫が求められるのです。細部にわたって表現方法を考え、何よりもその情景、心情を伝えるべく「表現力」を磨いてきました。

歌は、その音の中に歌う側の伝えたい意志があってはじめて、きいている方へ伝わります。私たちはみなさんとに交流がそうしてはじまったらと切に願っています。

この曲をききながら、その情景を思い浮かび上がらせていただけたら・・・こんなに嬉しいことはありません。絵でもない、写真でもない、「合唱」という芸術によって表現したこの情景を、心を、皆様へ。

3st.シューベルト合唱曲集~パンフレットより

フランツ・シューベルトといえば、いわずと知れたロマン派の先駆者、歌曲王として誰でも知っている作曲家ですが、声楽作品においては、あまり有名なリート(歌曲)やミサ曲の影に隠れて、彼が生涯にわたる創作活動を通じて合唱曲に取り組んできたことはあまり知られていません。シューベルトによって130もの合唱曲が作曲され、それが彼の作品に占める割合というのが全くもって見過ごせないものであるにも関わらず、わずかにごく限られた男声合唱しかほとんど取り上げられませんでした。しかし、昨年のシューベルト生誕200周年記念で、混声合唱の名曲も数多く取り上げられ、注目され始めたことは評価に値するでしょう。

実はここにあげた曲はひとつのまとまった曲集ではなく、シューベルトの合唱作品の中から5曲を取りあげたものです。5曲中4曲が宗教的な題材を扱った作品であるのに対し、3曲目に世俗を扱った合唱曲を1つまぜることで、シューベルトの混声合唱の世界をより的確に紹介できるのではないかと思い、このような構成にしました。

「天使の合唱」はア・カペラの曲です。『キリストは蘇られた!死すべきものたちによろこびあれ!ひとしれずしのびより、避けられぬ破滅に突き落とす原罪にがんじがらめに縛られたものにも。』というシューベルトと同時代の文豪、ゲーテの傑作「ファウスト」からとられた詩の内容を、合唱が厳かに、美しく歌います。導入にふさわしく、聴き手を引き込む深さを表現できれば、と思います。「詩篇第23番」からは、混声四部合唱にピアノが加わります。『主はわが飼い主』という別名もあるほどの、シューベルトの合唱曲の中でも最も有名な作品といっても過言ではないでしょう。旧約聖書の詩篇の中のイスラエルの王ダヴィデによる、神への感謝に満ちた、静かで優しい曲です。もともとは女声合唱曲としてのほうが有名な曲なので、きれいな和音が聴かせどころな曲です。「ダンス」は5曲中唯一の世俗を扱った曲です。『シューベルティアーデ』と名付けられたシューベルトを囲んだサークルの楽しい様子を生き生きと歌った軽やかな作品です。1番2番の繰り返しが全く同じ旋律という有節歌曲という形式をとっているのですが、この有節歌曲の形式もシューベルトに特有な傾向として大変興味深いところです。「嵐の中の神」は一転して激しい曲調で、神の存在の凄まじさと、それに対する人間の存在など無に等しいということ、そしてそれにもかかわらず、そのような人間を慈しんでくれる『神の愛』の巨大さを歌います。「世界の創造者としての神」は、5曲中、最も長く、盛り上がります。バロックや古典派の影響をも受けたと思われるフーガの部分などは、とりわけ圧巻です。『神のもとへ飛んで行くのだ、天高く響く私の歌よ!』という内容の厳か、かつ喜びに満ちた賛歌です。私たちの希望と愛を歌に乗せて聴き手に届けられるように、そのような思いを込めてステージをしめくくりたいと思います。

ロマン派というひとつの大きな時代を切り拓いた作曲家の一人であるシューベルトの、しかしロマン派でありなりながら技巧を感じさせない若々しい情熱のほとばしりと、一見単純な音型であるようで飽きさせない奥の深さとを併せ持った曲のよさを伝えられれば幸いです。

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第31回定期演奏会

1st.QUATRE MOTETS sur des themes gregoriens pour choeur a cappella 1998.1.10(土)
開場17:30
開演18:00
しらかわホール
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.Ubi caritas(4 voix mixtes)
2.Tota pulchra est(3 voix de femmes)
3.Tu es petrus(4 voix mixtes)
4.Tantum ergo(4 voix mixtes)
作曲
指揮
Maurice Durufle
田中 大樹
2st.混声合唱曲「永訣の朝」
  作曲
作詞
指揮
ピアノ
鈴木 憲夫
宮沢 賢治
浅井 勇樹
森 名津美
3st.混声合唱組曲「ティオの夜の旅」
1.祝福
2.海神
3.環礁
4.ローラ・ビーチ
5.ティオの夜の旅
作曲
作詩
指揮
ピアノ
木下 牧子
池澤 夏樹
田中 大樹
栗下 みどり
4st.Magnificat and Nunc Dimittis
  作曲
客演指揮
客演伴奏
Paul Patterson
永友 博信
渡部 真理
竹内 理恵
1st.QUATRE MOTETS sur des themes gregoriens pour choeur a cappella~パンフレットより

モリス・デュリュフレは、1902年1月11日にフランスのノルマンディー地方に生まれた。彼はオルガン奏者として活躍しながら、フォーレ、ドビュッシー、デュカスらの伝統を受け継いで、特にオルガン音楽や宗教音楽の領域で優れた作品を残した作曲家である。慎ましやかな彼は、生涯を通じてカトリックの音楽家としてグレゴリオ聖歌に強い親近感を持ち、彼の作品にも、聖歌の旋律がしばしば引用されている。

デュリュフレが合唱を用いて残した作品は3つで、そのどれもがグレゴリオ聖歌とのつながりを何らかの形で持っているが、この作品が最も明確に表れた作品である。どの曲においても、グレゴリオ聖歌の旋律の美しさが十分に生かされており、また、透き通るような和音が神に対する崇高さを表しているようである。

<Ubi caritas>Solo:五十嵐 祐(Tasuku Igarashi)

聖木曜日のミサの中で執り行われる洗足式で歌われる8曲の最後の聖歌を用いて作曲されたものである。男声が3つのパートに分かれて創り出すやわらかく透明なハーモニーの上に、アルトが第1,2コーラスと分かれて主旋律を交互に奏でている。静かで柔らかい旋律が耳に残るであろう。

<Tota pulchra es>Solo:横山 奈穂(Naho Yokoyama)

聖マリア無原罪の御やどりの祝日のグレゴリオ聖歌をテーマにしており、マリアの美しさが女声3部合唱で讃えられている。随所に出てくる半音階による音の緊張がマリアの汚れのなさを表している。

<Tu es Petrus>Solo:後藤 研誠(Kensei Goto)

混声4部で重層的に声を重ねて人々の声が湧き上がるかのように作曲されていて、(動→静→動)の動きで展開し、最後はシンコペーションによって盛り上がっていく。

<Tantum ergo>Solo:小山 美樹(Miki Koyama)

聖体の祝日の讃歌として大変有名である。神秘感や平安に満ちた音楽を漂わせている。ポリフォニックな動きで各パートが掛け合いながら、静かに曲が流れていく。

2st.混声合唱曲「永訣の朝」~パンフレットより

この「永訣の朝」は、詩人、宮沢 賢治(1896~1933)によって、その最愛の妹、とし子が亡くなるその日に書かれた三作の詩のうちの一作で、詩集 「春と修羅」 の中のとし子を悼んだ一連の詩 「無声慟哭」 の最初に位置する作品である。この詩は賢治にとって当時、唯一の理解者であった、ももはや単なる妹という存在を超えていたとし子への賢治の愛、そしてそんなとし子との ”永遠の訣別” に対する賢治の湧き出るような深い悲しみが切々と詩いあげられた、無類の美しく雄大な抒情詩である。その賢治の 「愛」 そして 「悲しみ」 は過剰も不足もない言葉を用い、もはや 「祈り」 にまで浄化されたといっても決して言い過ぎではないこの詩に、 「地蔵礼賛」、「祈祷天頌」 などで知られる作曲者、鈴木憲夫によって、合唱曲として音がつけられ、荘厳さを更に加えた、とし子へのいわばレクイエムともいえる 「祈り」 となっている。

3st.混声合唱組曲「ティオの夜の旅」~パンフレットより

作曲者、木下 牧子にとっての二作目の合唱組曲 「ティオの夜の旅」 は、詩人、池澤 夏樹 の 「塩の道」 の詩集から五篇が抜粋されて組曲になった作品である。福永 武彦、原篠あき子 という、類い稀な資質を備えた文学者を両親にもった詩人の豊かな創造性は、この作品に十分感じられる。詩は、男性的な規模・奥の深さを感じさせて、また、周りの風景の色彩が鮮やかに目に浮かぶようである。

この作曲者の作品は、新鮮なハーモニーの中に、単に新しいというだけでなく、歌う者の一人一人の心をつかむものがあり、組曲としての構成の確かさの中に、各曲それぞれの個性がお互いを照射し合い、そこにこれまで聴かれなかった合唱作品としての未知の世界がある。そんな木下 牧子 独自の世界が、この 「ティオの夜の旅」 にも十分にうかがえる。

無伴奏による厳粛な雰囲気を表す 「祝福」 は、これからの物語を展開させていく何かを予言しているようである。まるで、海の神秘感があふれているようである。 「海神」 は、実在していたらという観点からの詩が滑稽であり、その歌の中にはユーモラスな感情が含まれる。 「環礁」 では、無味乾燥している雰囲気を、海の恒久的な時の流れを感じさせてくれる。重量感あふれる音が深海の懐の深さをしるし、 「ローラ・ビーチ」 は人のいない海の平穏で暖かな風景に案内してくれるであろう。女声が最初に歌った旋律が途中、転調して男声のハミングによって再び表れるところに、何か安心感、穏やかな感じを受ける。 「ティオの夜の旅」 は詩の斬新な面白味を出していき、言葉をたたみかけるような物語を展開する。作曲者が斬新な詩の裏にある言葉からのニュアンスを音で見事に表現している曲である。

4st.Magnificat and Nunc Dimittis~パンフレットより

マニフィカト、ヌンク = ディミティスというのは、それぞれ<崇め奉る>,<今こそ(主のしもべは安らかに)去らせていただきます>という意味のラテン語であるが、これらはともに聖書ルカ福音書のエピソードに基づく聖歌の一つで、教会では晩歌、終歌と呼ばれる聖務日課において歌われている。イギリスの現代作曲家のポール = パターソンは、英国国教会の流儀にのっとって英訳されたものをテキストに用いて1986年にこの曲を発表した。

聖母マリアが神の子をみごもった喜びと、神の為すわざの偉大さを高らかに歌う 「マニフィカト」 は、アップテンポに変拍子の連続で、現代曲らしさ、例えるならポピュラー音楽に近い感じさえ出して合唱と伴奏の掛け合いがリズムよく進んでいくのに対し、救世主を目にするまでは死ぬことはない、とのお告げを受け、その出現を切に待ち望んでいたシメオンという老人がついにイエスに巡り合い、歌う讃歌 「ヌンク = ディミティス」 では雰囲気が全く変わり、ゆっくりと終わりを感じさせる静かで敬虔なハーモニーで終始する、という曲の作りになっている。

1970年代には、ペンデレツキやリゲティなどの音楽と接し、前衛的な手法を特徴としていたパターソンの音楽ではあるが、1980年頃から伝統的な手法に回帰する傾向を見せており、この曲も比較的オーソドックスでなじみやすい部類に入るといえよう。

イエスが生きた時代は、外圧、民族内対立、極度の社会不安などで世紀末的絶望に覆われていた。そういう意味では、救世主を求める彼らの声は、今の時代に生きる私たちにも共感できる。

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第30回記念定期演奏会

1st.混声合唱組曲「IN TERRA PAX」-地に平和を- 1997.1.12(日)
開場16:30
開演17:00
愛知県芸術劇場コンサートホール
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.知った
2.OH MY SOLDIER
3.花をさがす少女
4.ほうけた母の子守唄
5.IN TERRA PAX
作曲
作詩
指揮
ピアノ
荻久保 和明
鶴見 正夫
田中 大樹
川添 美紀子
2st.Lauluja Sekakoorille
1897 vuoden promotiooni kantaatista 作曲
作詩
指揮
Jean Sibelius
A.V.Forsman
石原 健太郎
3st.Messe C-dur
1.Kyrie
2.Gloria
3.Credo
4.Sanctus
5.Agnus Dei
作曲
指揮
オルガン
オーケストラ
Sop.
Alt.
Ten.
Bar.
練習伴奏

Ludwig van Beethoven
永友 博信
渡部 真理
ナゴヤシティ管弦楽団
佐藤 多美
山口 美智子
手島 孝教
水谷 俊二
渡部 真理
竹内 理恵
1st.混声合唱組曲「IN TERRA PAX」-地に平和を-~パンフレットより

作詩者鶴見正夫がべトナム戦争の頃に書いた詩 「太郎は知った」 を作曲者荻久保和明が合唱曲のうたにしたのをきっかけに、この曲をべ-スに戦争と平和をテーマにした混声合唱組曲が作られた。

私達、今の若者や少年少女にとって戦争はいわば遠い昔のものがたりでしかないであろうということ。戦争それ自体を身近に感じることもなく 「平和」 という言葉さえもピンとこない、実感がわかない私達でも、共感をもって歌うことができるように比較的平易な言葉で書かれていて、またこうしたうたはシュプレヒコ-ルのようにも成りがちだが、作詩者の意図から努めてそれが避けられている。何よりも少年少女から大人まで誰もが歌えることを願って書かれたこの組曲は全篇にわたって静かな “祈り” がこめられている。

この組曲は5曲から成り立ち、「知った」 は1枚の写真を見て戦争の恐ろしさ、むごたらしさ、憎しみを知る。それはこの組曲の戦争という遠い昔のものがたりへの始まりであり、「OH MY SOLDIER」は戦争という不幸な時代に生き、親よりも先に死んでいく若者のどうしようもない思い、悔しさ、悲しみが伝わり、戦争で散った世界中の無数の若者の命へのレクイエムでもある。「花をさがす少女」では美しい花に命への愛を託し、一瞬にしてそれを奪い取るその無惨さを、「ほうけた母の子守歌」では、母親が繰り返す子守歌に戦争に対する消え去ることのない怒りと怨念を歌う。そしてこの地球に生きるもの、すべての命のための「IN TERRA PAX」---“地に平和を”である。

組曲の題でもある「IN TERRA PAX」 とはミサ通常文の中の言葉であり、“地に平和を”という意味からもこの言葉に世界的な梼り・願いがこめられ、地球讃歌をうたっている。

2st.Lauluja Sekakoorille~パンフレットより

1865年、北欧の国フィンランドに生まれたジャン・シべリウスは、その生涯において、フィンランドの民族色の強い作品を数多く書いており、祖国を愛する心の強い作曲家です。代表作には、フィンランドに古くから伝わる叙事詩「カレヴァラ」を題材として作曲されたものが多く、管弦楽曲では ”トゥオネラの白鳥” を含む「4つの伝説」や交響詩「フィンランディア」、交響曲三番、五番、七番など、声楽曲では「愛人」、「大地の歌」、「五つの歌」などがあり、ロマン派最後の巨匠とも言われています。

さて、今回私達が演奏する“ラウルヤ・セカケーリッレ” ですが、残念ながら彼の作品の中でも演奏されることが少なく、(未確認ですが)日本で演奏されるのも今回が初めてかもしれません。この曲集はもともとは1897年に発表されたソロ中心の声楽曲をアカぺラの合唱曲に編曲されたもので、特にIV(感謝の甘い歌をうたおう)や、V(そよ風よ優しく吹いておくれ)は、フィンランド唱歌にも取り入れられ、本国では広く親しまれています。

この曲集のすべての曲にはシべリウスが得意とする民族への讃歌が込められており、北欧の国に特有のクールだけれども、心に深く、暖かく響くメロディーが印象的で、終曲は、かの名曲フィンランディアを連想させる力強い曲です。

サンタクロースやムーミン谷などおとぎ話の国。森と白夜とオ-ロラと、雄大な自然を持つ国。そんなフィンランドへの20分間の小旅行にご案内いたしましょう。

3st.Messe C-dur~パンフレットより

1807年に発表されたこの曲は、おそらくベートーヴェンの最初のミサ曲であると思われる。彼はこの頃、「第五交響曲」、「第六交響曲」を書いており、彼の作曲活動の中で最も創作力旺盛な中期の作品として分類される。

このミサ曲はもともと(べートーヴェンの師であったハイドンが長年楽長をつとめた) エステルハージ侯の夫人の誕生日のために作曲されたものであったが、侯爵家楽団が練習に不熱心であったことや、伝統から離れた革新的な作曲様式であったため不評を買い、初演後の講評会では侯爵自身から直接冷評を浴ぴせられたというエピソードがある。

この「ハ長調のミサ」は伝統的なミサ曲の概念にとらわれず、一語一語のテキストの意味に立ち入って性格表現されている。また各章が自己充足した独立した曲構成となっているが、全章が連なることにより、神に対する敬虔な祈りを捧げ、より強い信仰を深めていく働きを持つよう意図され作曲されている。

このミサ曲は大曲であるにもかかわらず「ミサ・ソレムニス」や「第九」といった他の声楽作品に比べあまり親しまれていない。しかし明るく素直な美しさと、随所に見られるベートーヴェン特有の繊密かつ劇的な音楽構成により、ミサ曲としての完成度は非常に高いといえる。

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第29回定期演奏会

1st.混声合唱のための組曲「蔵王」 1996.1.7(日)
開場17:30
開演18:00
名古屋市芸術創造センター
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.蔵王讃歌
2.投げよう林檎を
3.苔の花
4.どっこ沼
5.おはなし
6.雪むすめ
7.吹雪
8.樹氷林
9.早春
作曲
作詞
指揮
ピアノ
佐藤 眞
尾崎 左永子
石原 健太郎
川添 美紀子
2st.フォスター名曲集
1.My Old Kentucky Home
2.Old Black Joe
3.De Camptown Races
4.Ring, Ring, duh Banjo
5.Beautiful Dreamer
作曲
編曲
指揮
Stephen Foster
Roger Wagner
Salli Terri
猪岡 薫
3st.Meesa a quattro voci da cappella
1.Kyrie
2.Gloria
3.Credo
4.Sanctus
5.Agnus Dei
作曲
指揮
オルガン
Claudio Monteverdi
猪岡 薫
鈴木 朝子
4st.混声合唱とピアノのための「動物詩集」
1.子猫のピッチ
2.ひとこぶらくだのブルース
3.ゴリラのジジ
作曲
作詞
指揮
ピアノ
三善 晃
白石 かずこ
永友 博信
渡部 真理
1st.混声合唱のための組曲「蔵王」~パンフレットより

混声合唱組曲「蔵王」は昭和36年度芸術祭合唱部門参加作品として作曲されました。当時佐藤眞は東京芸大の大学院に在学しており、その才能を発揮した「蔵王」は彼の代表作品の一つと言えます。日本の合唱曲の中では比較的古い部類に入る組曲ですが、その若々しく美しい和音と唱歌や童謡を連想させる親しみやすい旋律により、現在でも多はの合唱団て歌われています。その後「蔵王」は1991年全編にわたって改訂され、現在の混声合唱組曲となっています。

「万緑充てる 蔵王」から始まるこの物語は「山」 というものが我々に対して魅せてくれる自然の美しさ、優しさ、厳しさ、静けさを語っています。「蔵王」 という山は山形県と宮城県との県境にそびえ立つ東北地方を代表する山で、その変化に富んだ地形と雄大な自然で、来る者に大きな感勤を与えるといいます。

この曲集を構成する9つの曲は、それぞれが初夏、盛夏、厳冬、初春などの蔵王の四季の様々な場所を表現しています。大きな視野て雄大な自然を歌う曲と、小さなものに注目して自然の繊細さを歌う曲との対比、そして夏の爽快さと冬の厳しさとの対比がこの組曲「蔵王」を変化ある面白いものにしています。―つ一つの曲は小粒なものとしてまとまっていますが、そこに込められた歌詩や旋律は豊かな自然を表現するのに十分なものばかりです。この「蔵王」の自然を今日お聴きのみなさんに余すところなく伝えることが出来る様、練習に励んできました。

みなさんが「山」 というものに対して持つイメ-ジはどのようなものでしょうか。私達は今日このステージて「蔵王」に代表される「山」の新しい春の訪れの喜びをみなさんにお伝えすることが出来ればと思います。

2st.フォスター名曲集~パンフレットより

フォスター(1826~1864)はアメリカ・ぺンシルヴェニア州生まれの作詞・作曲家である。当時アメリカの日常生活の中て歌われていた民謡の影響のもとに、親しみやすい歌曲を作曲した。今回歌うのは、それをロジェ・ワーグナーとサリー・テリーが合唱用にアレンジしたものである。

フォスターは中流家庭の客間での団らんのための、英国風バラ-ドを模した小歌曲を書くかたわら、当時流行していた、黒人の即興的な歌や踊りを白人芸人が真似る、「ミンストレル・ショー」のために作曲をしていた。このステージでは「Beautiful Dreamer」以外の4曲がこれに当たるが、黒人を歌ったその曲は大きな人気を得て、世間で大いに愛唱されるに至った。しかし、黒人のための曲を作ったことを上流階級の白人に非難され、中流階級のフォスターは両者の板ばさみにあい、作曲家としての立場に苦しむことになった。この状況から脱すべく、彼は妻子を残し、ニューヨークへ旅立ち、貧困にあえぎながら新しい曲作りを続けた。そして1864年1月、志半ばにして淋しくこの世を去ったのである。

<My Old Kentucky Home>

CMソングとしても有名な曲だが、他家へ売られていく黒人の悲しみを歌っていることから、この歌は黒人霊歌に近い感情を持っていると言える。また、この曲はケンタッキー州の州歌でもある。

<Old Black Joe>

この歌はフォスターが子供の頃に家で使われていた黒人のおじいさん、ジョーを歌ったものだと言われている。年老いたジョーの孤独なわびしさを歌った感銘深い曲である。

<De Camptown Races>

フォスターは、黒人が多くの労働に従事していた南部の生活を実体験しなかったようだが、自分の周囲にいた黒人たちから情報を得て、黒人に関わる歌を作ったと伝えられている。この曲は黒人民謡風の曲調を持ち、休日に草競馬で一喜一憂する人々を活写している。

<Ring,Ring,duh Banjo>

跳びはねるようなリズムて歌われる陽気な曲だが、「つらいことがなければ、黒人だって泣きはしない。でも音楽があれば気も晴れるさ」と言うような、一抹の黒人的哀愁のある作品となっている。

<Beautiful Dreamer>

ニューヨークで作曲されたフォスター最後の作品。流れるような3拍子の、美しい珠玉の愛の歌である。

原題を見てどんな曲かわからなくても、実際曲を聴いてみて、「ああ、あの曲か」とピンと来る人も多いだろう。それだけフォスターのメロディは世界中の人々に愛されている。アメリカ人でない我々も歌っているとアメリカの広大な自然や人々の生活が思い起こされる。皆さんも草原で寝ころんだ気分になって、このステ-ジを楽しんでみて下さい。

3st.Meesa a quattro voci da cappella~パンフレットより

15,6世紀の代表的な教会音楽にミサ曲を挙げる人は多いだろう。確かに3分程度のモテットよりも30分程度のミサ曲の方が内容的にもボリューム的にも重要であると一般的には考えられている。当時の作曲家にとっても、ミサ曲は彼らの作曲技術を大きなスケールで映し出すことのできる重要な媒体であった。イタリアの作曲家クラウディオ・モンテヴェルディ(1567~1643)はこの時代に活躍した最も重要な作曲家の一人である。

今回演奏するミサ曲は、音色や音量などの曲の要素を対照的に扱い、その効果を有効に導き出すことに重点が置かれており、これはバロック音楽の時代の新しい様式の一つである。彼の音楽のもう一つの特徴は、そのドラマ性にある。彼は言葉を伝えることを重要視して曲を作った。言葉の抑揚やアクセントに合わせた旋律とリズムを用い、歌詞をより明瞭に聴かせたい部分では、全てのパートを同じリズムで歌わせた。ここに「言葉のための音楽」という、彼の思想がよく表れている。

<Kyrie>

3部構成の曲。1部は、テナーから静かに始まり各パートのかけ合いが続き、比較的静けさを保ったまま終わる。2部も静かに始まるが、短い音符で作られた旋律に乗って盛り上がり、後半の和声進行部分て頂点に達する。3部は、2部の勢いに乗って、軽快なかけ合いが終始続く。

<Gloria>

ホモフォニックにゆったりと、かつ静かに進むが、アルトから始まる速度のある旋律が他パートとかけ合いを繰り広げる。最後のアーメンコーラスは曲のスケールを更に大きくして曲を締めくくる。

くCredo>

ミサの中核を成す曲。基本的に、長い音符で構成された和音進行と、短い音符てできた旋律のかけ合いが繰り返されるが、後半に2度現れる4分の6拍子の変拍子が印象的である。その中では、曲はホモフォニックに進む。

<Sanctus>

2部構成の曲。両方とも終わり方は全く同じで、Credoに似た変拍子がある。1部はポリフォニーで、2部はホモフォニックに進行するが、共通部分での盛り上がりが強いため、比較的静かに進む。

<Agnus Dei>

全音符中心の長い音符が流れる中で、Gloriaの冒頭に出てきた旋律が静かに受け渡されていく。ミサの終曲らしく静かに終わる。

モンテヴェルディは古い様式と新しい様式を融合させて新しい音楽を作り出した。彼の自由な作風とドラマ性を感じとっていただけたら幸いである。

4st.混声合唱とピアノのための「動物詩集」~パンフレットより

この曲は、作詩者白石かずこの「動物詩集」による組曲で、昭和58年、日本合唱協会創立20周年記念演奏会(増田順平指揮)により初演されました。ちなみに女声編もあり、それは昭和59年、相愛学園大学合唱部にて、初演されています。

一曲目の「小猫のピッチ」では、独り者の小猫のピッチが、張り詰めた緊迫感の中、天性ともいえる狩猟の才能を発揮します。非常にテンポの早いリズムが、ピッチの性格を、また「-瞬の神技」 にふさわしい狩猟を忠実に再現しています。

二曲目の 「ひとこぶらくだのブルース」では、動物園にいるひとこぶらくだが、遥か昔にさかのぽって、まだ故郷の砂模にいて自由であったころのことを思い出し、悲しんでいる姿が見られます。一曲目とは全く変わって、スローなテンポによるリズムが、何もすることが無く、ただ故郷のことを思い出すことしか出来なくて、時の移り変わりが「永遠」とも感じられそうならくだの心情を表現しています。

三曲目の 「ゴリラのジジ」では、人間に恋をするゴリラと、それを知ってしまった人間の心理変化が描かれています。「ジジがゴリラでなかったら……」 と思いながら、つい出てしまうソプラノの 「ため息」 にも注目して下さい。

詩からも分かるように、この曲は身勝手な人間を皮肉った曲でありますが、一方その音楽は遊び心を持ったコミカルなメロディとリズムで歌われています。しかし、そのコミカルさは、都会に取り込まれてしまった動物たちの悲しみや人間に対する諷刺を偽装している衣のように思えます。

作曲者である三善晃は次のようにいいます、「文明という虚構の中で生かされているだけの我らニンゲンには、ピッチの野生も、ラクダのハレムも、ジジの純愛も、手の届かない記憶の底に沈んているダイヤモンドのようなものでしょう」 と。今回の演奏で、私達人間も持っている筈である純粋な心に、もう一度目を向けていただければ幸いです。

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第28回定期演奏会

1st.Zigeunerlieder-ジプシーの歌 1995.1.7(土)
開場17:30
開演18:00
愛知県勤労会館
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
  作曲
指揮
ピアノ
J.Brahms
三嶋 隆
工藤 玲子
2st.混声合唱のための「うた」より
  作曲
指揮
武満 徹
猪岡 薫
3st.From the BAVARIAN HIGHLANDS
  作曲
指揮
ピアノ
E.Elger
永友 博信
渡部 真理

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第27回定期演奏会

1st.やさしい魚 1994.1.9(日)
開場17:00
開演17:30
愛知県勤労会館
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
  作詩
作曲
指揮
ピアノ
新実 徳英
川崎 洋
三嶋 隆
川添 美紀子
2st.TEN SONGS
  作曲
指揮
D.Shostakovitch
長橋 一寿
3st.エルガー作品集
  作曲
指揮
ピアノ
バイオリン
E.Elger
永友 博信
渡部 真理
小林 加代子
鈴木 洋子

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第26回定期演奏会

1st.混声合唱曲「三つの不思議な仕事」 1993.1.10(日)
開場16:30
開演17:00
名古屋市民会館中ホール
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
FM愛知
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.空みがき
2.明日つくり
3.夢売り
作曲
作詞
指揮
ピアノ
池辺 晋一郎
池澤 夏樹
戸上 慎一
貝吹 祐子
2st.混声合唱のための「あなたが歌えと命じる時に」
    ~詩集「ギタンジャリ」より~
  作曲
作詞
訳詞
指揮
高嶋 みどり
R.Tagore
山室 静
石塚 徹
3st.FOUR MOTETS
1.Help Us, O Lord
2.Thou, O Jehovah, Abideth Forever
3.Have Mercy on Us, O My Lord
4.Sing Ye Praises to Our King
作曲
指揮
Aaron Copland
戸上 慎一
4st.Quatre Motets pour le temps de Noel
    ~クリスマスのための4つのモテット~
1.O magnum mysterium
2.Quem vidistis pastores dicite
3.Videntes stellam
4.Hodie Christus natus est
作曲
指揮
Francis Poulenc
永友 博信
1st.混声合唱曲「三つの不思議な仕事」~パンフレットより

「空はどうして青いの?」

こんな事を幼い子供に聞かれたことはあリませんか。そしてあなたならどの様にして子供に教えてあげますか?

私達はだんだんと大人になっていくうちに新しい知識を学んでいきます。そして小さい頃に持っていた疑問をひとつひとつ科学的、論理的に解決していきます。しかし私達はそれと同時に、昔お父さんやお母さんに教わった小さなファンタジ-を忘れ去ってしまうのではないでしょうか。

今日は皆さんにもう一度そんな遠い記憶を思い出していただけるようにこの「三つの不思議な仕事」を選びました。自然の雄大さ、そして神をも思わせる時の流れ、無限の創造の世界、これらのいずれをとっても私達人間の意志で自由になる物はあリません。その世界に包み込まれて流されてゆく私達人間の無力な姿にふと気付いてしまう瞬間 --- 自分が小さく見えてしまう --- そんな経験はありませんか。

今日はそんな自分を見つめながら三つの不思議な仕事をする「大男」に少しの間、気付いてあげてください。

2st.混声合唱のための「あなたが歌えと命じる時に」
    ~詩集「ギタンジャリ」より~パンフレットより

「あなたが歌えと命じる時に」この “あなた” とはすなわち神のことです。

作詩者ラビンドラナ一ト・タゴール(1861~1941)はインド国歌 「ジャナ・ガナ・マナ」 の作詩・作曲家でもあリ、詩集「ギタンジャリ」(歌のささげもの)はノーべル文学賞を東洋で初めて受賞しています。この邦訳であるテキストに、作曲者高嶋みどリは美しいア・カぺラの音楽を贈リました。

タイトルを率直に受けとると、とても受動的なもののように感じられますが、このうたの本意は全く逆のものです。ここでの神は、宗教的象徴としての崇高な存在というよりは、むしろ身近で自然な、人間の心に根付いた存在であるといえます。うたを歌うことは精神を開放することです。人間の心に沸き上がるうたを押さえることなくのびのびと歌う、それは人間の心の奥の神の声ともいえる気持ちに素直に従うことであリ、神に一歩近づくことでもあります。うたを歌うことはいわば自発的な啓蒙の所為なのです。

テキストと共にこの曲の魅力を高めているのはヴォカリーズです.ヴォカリーズによリ提示されるモチーフはこの曲の世界の象徴です。ヴォカリーズの響きは、うたというもの、或いは歌うことの喜び、を象徴しているようにも思えます。そして、テキストと音楽とが融和して明るい神への賛歌を歌い上げてゆくのです。

私達は、神という存在に対する感覚は希薄であるかも知れませんが、今日こうして皆様の前てうたを歌う立場にあることは喜びであリます。そして、様々な現実的な問題を身近に感じつつも、うたを歌うという素敵な機会に恵まれていることに感謝したいと思うのです。

3st.FOUR MOTETS~パンフレットより

コープランドは1900年にアメリカのニューヨーク、ブルックリン地区に生まれた現代アメリカの指導的作曲家です。15歳から作曲を志し18歳で高校を卒業後ひたすら音楽を学び、1921年から1924年までフランスに留学、フランスのフォンテンブロ-で、アメリカ人のための高等音楽学校で教師をしていたブランジュ女史に師事し大きな影響を受けました。

作風は初期に近代フランス学派の影響が強く、新古典主義を目指すと共にアメリカの民族主義的傾向を志向し明るいダイナミズムを示しました。ジャズの手法も豊富に取リ入れ、映画音楽などにも数々の名作を残しました。三代バレー音楽「ビリー・ザ・キッド」、「ロデオ」、「アパラチアの春」などがポピュラーになっています。

本日演奏する 「Four Motets」は1921年にコ-プランドがフランスに留学中に作曲したもので、コ―プランドの初期の作品といえます。この4曲は弱強弱強で並んでおリ、そのコントラストを明確にすることによリコ-プランドのフランス的な繊細な感覚と、アメリカ的ダイナミックな所を対比させます。宗教曲であリながらそれとは思わせないような親しみやすい明るいメロディーが多<使われ、様々な技法とうま<調和し、聴いていても飽きのこない作リになっています。

本日の第4ステージのプーランクがフランス生まれのフランス音楽であるのに対して、アメリカ生まれのコ-プランドの音楽を対比しながらお聞きいただくとまた違った楽しさが増えるのではないでしょうか。

4st.Quatre Motets pour le temps de Noel
    ~クリスマスのための4つのモテット~パンフレットより

フランシス・プーランクは1899年にフランスのパリに生まれました。彼の音楽は5歳の時から母親にピアノの教育を受けたことに始まリ、若干18歳で印象主義に対する反動として結成された 「6人組」 の最若年メンバーとしてデビューしました。プーランクの父親は信仰心の厚いカトリック信者でしたが家族にそれを押しつけようとはせず、プーランク自身はそれほど信仰心の厚い人ではあリませんでした。しかし彼が36歳の時、彼の最大の親友が事故で若い命を落としてしまい、生涯独身であったプーランクに衝撃的な悲しみを与えました。それ以来プーランクは宗教曲を多く書くようになリ、その最大のテーマは 「我々人間の条件のもろさ」 である、と本人も書き残しています。

本日演奏する「クリスマスのための4つのモテット」はキリストの誕生を祝う典型的な宗教曲ですが、この作品は1954年(No2,3)、1952年(No1,4)の作品で、プーランクが52,53歳の時のものです。題材は私達のよく知るクリスマスですが、普段私達が目にしているクリスマスとは少し違う、感動と喜びの感極まった世界が描かれています。

1曲目の「おお、大いなる神秘」は静かな下3声に始まリ、その中に、ソプラノが細く高い音から入ってきます。混沌とした世の中に光が差し込み、救世主キリストが天から授けられた瞬間、人々が喜びに胸をはずませる様子が描かれています。

2曲目の「羊飼いたちよ、汝ら見しものを語れ」は Allegretto のはやいテンポで、羊飼いたちがキリストの生まれた飼い葉桶のあるところへ急いで駆けていく姿がわかリます。

3曲目の「星を見て」は東方の三博士が星を見てキリストの誕生を知リ、主に黄金・香乳と薬草を捧げる姿が描かれています。プーランクの曲のタッチは控えめで終始ホモフォニックで仕上げられています。

4曲目の「今日しもキリストは生まれぬ」は何度も繰リ返される「Gloria」賛歌に代表されるように喜びを素直な形で表現したものになっています。

プーランクの曲は近年各地の演奏会でも多く演奏されるようになり目新しさは薄れつつあリますが、今一度パリジャン気質たっぷりのプーランクの都会的、官能的な曲をお楽しみください。

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第25回記念定期演奏会

1st.混声合唱とピアノのための「木のうた」 1992.1.12(日)
開場16:00
開演16:30
名古屋市民会館中ホール
【後援】
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会、
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
  作曲
作詩
指揮
ピアノ
林 光
木島 始
戸上 慎一
飛井 雅子
2st.混声合唱曲「邪宗門秘曲」
  作曲
作詩
指揮
ピアノ
木下 牧子
北原 白秋
石塚 徹
米田 郁子
3st.REQUIEM K626
1.Requiem aeternam
2.Kyrie
3.Dies irae
4.Tuba mirum
5.Rex tremendae
6.Recordae
7.Confutatis
8.Lacrymosa
9.Amen
10.Domine Jesu
11.Hostias
12.Agnus Dei
13.Lux aeterna
14.Cum sanctis
作曲
指揮
オーケストラ
Sop.
Alt.
Ten.
Bas.
オルガン
W.A.MOZART
永友 博信
ナゴヤシティ管弦楽団
松村 智子
大橋 多美子
山田 正丈
牛島 正隆
渡部 真理
1st.混声合唱とピアノのための「木のうた」~パンフレットより

「木のうた」(1980年)はハンガリー生まれ、ドイツ在住の画家ジョールジュ・レホツキーの絵、木島 始の詩による絵本「木のうた」に触発され、林 光が作曲したものです。

この曲は全15曲から成っており、各曲が絵本の各ページに相当するようになっています。元来、この絵本はレホツキーが孫のムキのために描いたもので、詩はついていませんでした。しかしこの絵本を見た木島始はレホツキーのゆるぎない画面から次々と言葉が出てきたといいます。各曲につけられた詩は他の合唱曲の詩に比べると1曲というにはあまりにも短く、しかしながらその一言にこめられた言葉の意味は深く、なおかつ視覚的であると言えます。

私達が普段生活をしている中に、木は常に存在し、常に私達を見守っています。なのにその存在に気がついている人間ははたしてどれだけいるのでしょう。なかなか人間の目の届かない所で動いている命、目には見えないが確実に動きつづける命、それが木なのではないでしょうか。人間よりも何十年、何百年もの長い時間を同じ所で見守り続ける木は、いわば人間の大先輩であり、自然の象徴とも言えるでしょう。私達人間は本来自然の一部であるはずなのにいつのまにか自然を自分とは全く違うもののようにして扱い、自分達の手で自然との間に “壁” を作ってしまったのでしょう。---- この「木のうた」の1番の「きこえるかしら」という問いかけは、この “壁”についた扉を開けようとする少年にむけられたもののような気がしてなりません。

本日は皆様もこの扉を開けて木の世界、自然の世界に足を踏み入れてみて下さい。様々な不思議や小さな命の鼓動に木の存在を再確認されることと思います。

2st.混声合唱曲「邪宗門秘曲」~パンフレットより

邪宗門秘曲 --- この曲のタイトルを見て、皆さんはどんな情景を思い浮かべますか。

作曲者 木下牧子の作品は広く親しまれており、私達もこれまで何回かとりあげてきました。この曲は彼女のかなり最近の作品(1988年12月初演、1989年12月改訂版初演)ですが、これまでの作品とはかなり趣きを異にしています。

彼女自身、この作品について次のように書いています。

『神戸大学混声合唱団 「エルデ」 から新曲委嘱があった時、私は、それまで多用していた組曲形式でなく、単一楽章による新しいタイプの作品を書こうと決心した。テキストも、使い慣れた口語詩は除外し、呪文、ヴォカリーズ、外国詩などを中心に検討した。最終的に私の求めるイメージと一致したのは、耽美派象徴詩として有名な、北原白秋の「邪宗門秘曲」であった。異国情緒と官能に染められた饒舌の美学は、私に新鮮な刺激を与えてくれた。』

詩集「邪宗門」は明治42年刊行の北原白秋の処女詩集、その派手な官能的な詩風で一世を驚かした有名な詩集です。「邪宗門秘曲」は詩集「邪宗門」の巻頭の一篇で、集中でも最も秀れた作品と言えましょう。詩を読むとまずその難解な言葉の怒涛の応酬に圧倒されます。目や耳にどぎつい言葉、だがそれは白秋の滾(たぎ)る情熱をうけとめています。彼は頗る大胆に、それでいて注意深く言葉を選んでいます。邪宗門とはもちろん、キリスト教のことですが、ここでは正邪の観念は全く問題ではありません。キリスト教が禁教とされ邪宗とされた時代の人々の謎めいた西洋文化に対する驚異、その時代、その雰囲気そのものに対する白秋の強い好奇心、或いは憧憬、そのような鮮やかな気持ちが込められているのです。一般には耳遠い言葉を重ねて一気呵成に歌い通されている様は正に饒舌の美学と言えましょう。

詩に相応しく音楽も途切れなく筋の通った勢いのある曲となっています。それが大雑把に終わらず、細やかな動きがそこかしこにちりばめられているのは木下牧子一流のところです。しかしやはりこの曲の魅力は一貫した骨太な意志の力のようなものでしょう。北原白秋は詩壇の新しい流れを築こうとし、木下牧子も又新しいタイプの合唱曲を作ろうとした、その情熱が全編を流れているのです。

3st.REQUIEM K626~パンフレットより

昨年は没後200年ということで、モーツァルトが大きく脚光を浴びた一年でした。彼の数多くの作品の中でも、レクイエム.K.626はある種独特の位置づけがなされているのではないでしょうか。

レクイエム --- 死者の為のミサ。モ-ツァルトは、名を告げなかった作曲の依頼主をあの世からの使いだと思いこみ、自分の死期は近く、従ってこのレクイエムは自分の為に書くのだと思ったのでした。果して、作曲半ばにして彼は本当にこの世を去りました。未完の遺作としてレクイエムは残されたのです。彼自身の手によるのはラクリモサの8小節目まで、その後は弟子のジェスマイヤが引き継ぎ未完のままだったオーケストレーションや続く数曲を完成させました。通常レクイエムと言えばこのジェスマイヤにより完成されたものを指します。

今回演奏するモーンダー版は、これまで暖昧だった点、音楽的にどこまでがモーツァルトでどこまでがジェスマイヤかをつきつめ、ジェスマイヤの要素を排除し純粋にモーツァルトの要素だけに基づいたレクイエムに生まれ変えさせたものです。リチャード・モーンダーはイギリスの音楽学者で、彼はモーツァルトの作品やスケッチまでも徹底的に研究してモーツァルトの手法の分析をし、十分な客観的証拠をもとにまずジェスマイヤだけの部分を洗い落としジェスマイヤ的な誤りをモーツァルトの手法で訂正加筆するという方法を採って行いました。モーンダーの版が従来の版と最も異なるのはラクリモサで、ここでは9小節目以降のジェスマイヤの作をカットし代わって入祭文の一部をはめこみ最後にモ-ツァルトがスケッチのまま残したアーメンのフーガを補作してここにつけています。サンクトゥス、べネディクトゥスの各章もカットされています。オーケストレーションの変更も含め、全体にモーツァルトらしいシンプルな清潔感がただよっています。

モーンダー版は1986年に出版された、新しいレクイエムです。いままで聴き慣れたレクイエムとは一味ちがった魅力をお楽しみ下さい。

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第24回定期演奏会

1st.混声合唱による日本抒情歌曲集より 1991.1.11(金)
開場18:30
開演19:00
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.早春賦
2.お菓子と娘
3.鉾をおさめて
4.荒城の月
5.箱根八里
6.この道
編曲
指揮
ピアノ
林 光
石塚 徹
安藤 仁美
2st.無伴奏混声合唱曲「おてわんみそのうた」
1.おじぎの前に…
2.くわいが芽だした
3.でこ坊やかえろうよ
4.いちねん○○
5.清水の観音様
6.でんでれずんば
作曲
指揮
三善 晃
北島 剛司
3st.FESTIVAL TE DEUM Missa Brevis
1.FESTIVAL TE DEUM
2.Kyrie
3.Sanctus and Benedictus
4.Agnus Dei
5.Gloria
作曲
作曲
指揮
オルガン
Benjamin Britten
William Walton
永友 博信
渡部 真理
吉川 朗

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第23回定期演奏会

1st.混声合唱組曲「夢のかたち」 1990.1.13(土)
開場18:00
開演18:30
愛知県勤労会館
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.虫の夢
2.夢
3.夢のうた
4.夢の結果
5.風船乗りの夢
作詩 大岡 信
吉行 理恵
三木 卓
竹中 郁
萩原 朔太郎
作曲
指揮
ピアノ
木下 牧子
北島 剛司
竹島 恵里
2st.子供の心を忘れない人たちのための
    ポール・バンヤン 合唱版
  作詩
作曲
指揮
ピアノ
青島 広志
青島 広志
木下 陽児
海老 原由美
3st.Requiem c-Mollより
1.Intoroitus
2.Dies irae
3.Sanctus
4.Pie Jesu
5.Agnus Dei
作曲
指揮
ピアノ
Luigi Cherubini
永友 博信
渡部 真理

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第22回定期演奏会

1st.混声合唱組曲「動物たちのコラール 第1章」 1989.1.11(水)
開場18:30
開演19:00
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.小さいあひるの祈り
2.ちょうの祈り
3.のみの祈り
4.小鳥の祈り
5.おうむの祈り
原詩
訳詞
作曲
指揮
C.B.デ.ガストルド
宮澤 邦子
萩原 英彦
木全 敏幸
2st.混声合唱組曲「内なる遠さ」
1.飛翔――――白鷺
2.崖の上―――かもしか
3.合掌――――さる
4.燃えるもの――蜘蛛
5.己れを光に――深海魚
作詩
作曲
指揮
ピアノ
高野 喜久雄
高田 三郎
河津 史彦
田中 香里
3st.Schicksalslied-運命の歌-
  作曲
指揮
ピアノ
Johannes Brahms
永友 博信
渡部 真理

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第21回定期演奏会

1st.Ave Maria ルネッサンスから近代へ 1988.1.9(土)
開場18:00
開演18:30
愛知県勤労会館
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
     
2st.立原道造の詩による混声合唱曲集‐2‐「優しき歌」より
  作曲
作詩
川島 博
立原 道造
3st.アトラクションステージ
     混声合唱のための唱歌メドレー「ふるさとの四季」
  編曲 源田 俊一郎
4st.Liebes lieder‐愛のワルツ集‐
  作曲
客演指揮
客演伴奏
Johannes Brahms
永友 博信
田辺 美砂子
渡部 真理

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第20回記念定期演奏会

1st.混声合唱組曲「海の童話」 1987.1.11(日)
開演15:30
愛知県勤労会館講堂
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.砂山の夜
2.海の童話
3.ぐみの実は ひとり
4.冬の海
5.夕映えの海
6.船出
作曲
作詩
指揮
ピアノ
中田 喜直
中村 千栄子
坪井 秀格
田中 香里恵
2st.混声合唱組曲「まぼろしの薔薇」
1.まぼろしの薔薇
2.薔薇の誘惑
3.ばらのあしおと
4.孤独の薔薇
5.ひびきの中に住む薔薇よ
作曲
作詩
指揮
ピアノ
西村 朗
大手 拓次
河合 達巳
佐藤 律子
3st.REQUIEM OP.48
1.Introit et KYRIE
2.OFFERTOIRE
3.SANCTUS
4.PIE JESU
5.AGNUS DEI
6.LIBERA ME
7.IN PARADISUM
作曲
指揮
オーケストラ
Sop.
Bar.
オルガン
GABRIEL FAURE
内藤 彰
ナゴヤシティ管弦楽団
松村 智子
永友 博信
吉田 徳子

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第19回定期演奏会

1st.MARIENLIEDER Op.22より 1986.1.10(金)
開場18:00
開演18:30
愛知県勤労会館
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー


1.Der englishe Grums
2.
3.Marias Wallfahrt
4.Der Jager
5.Ruf sur Maria
6.Magdalena
7.Marias Lob
作曲
指揮
J.Brahms
河合 達巳
2st.混声合唱組曲「愛のプロローグ」
     詩集「空に小鳥がいなくなった日」より
1.ひとりぼっちの裸の子ども
2.かなしみについて
3.からだの中に
4.じゃあね
作曲
作詩
指揮
ピアノ
高嶋 みどり
谷川 俊太郎
水野 倫之
渥美 真人
3st.REQUIEM Op.9より
1.Introit
2.Kyrie
3.
4.Agnus Dei
5.
6.
7.
8.Libera me
9.In Paradisum
作曲
指揮
オルガン
Marice Dulfle
永友 博信
渡部 真理

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第18回定期演奏会

1st.混声合唱組曲「心象スケッチ」 1985.1.12(土)
開場18:00
開演18:30
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.水汲み
2.森
3.さっきは陽が
4.風がおもてで呼んでいる
作詩
作曲
指揮
宮沢 賢治
高田 三郎
水野 倫之
2st.混声合唱曲「季節のまなざし」
1.ひらく
2.のびる
3.みのる
4.ゆめみる
作詩
作曲
指揮
ピアノ
伊藤 海彦
荻久保 和明
所 敬二
水野 京子
3st.GLORIA
1.Gloria
2.Laudamus te
3.Domine Deus
4.Domine fili unigenite
5.Domine Deus, Agnus Dei
6.Qui sedes ad dexteram Patris
作曲
指揮
伴奏
独唱.
Francis Poulenc
永友 博信
長谷 順二
松村 智子

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第17回定期演奏会

1st.混声合唱曲集「六つの子守唄」 1984.1.7(土)
開場18:00
開演18:30
愛知文化講堂
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.風の子守唄
2.空と海の子守唄
3.いつもの子守唄
4.思い出の子守唄
5.おさかなの子守唄
6.眠っちゃいけない子守唄
作詩
作曲
指揮
伴奏
別役 実
池辺 晋一郎
所 敬二
桜井 麻紀子
2st.ブルックナーのモテット集より
1.Pange lingua
2.Graduale
3.Ave Maria
4.Vexillia regis
5.Graduale(Lydish)
作曲
指揮
A.Bruckner
三輪 毅
3st.わらべうた
1.通りゃんせ
2.ずいずいずっころばし
3.花いちもんめ
4.かごめかごめ
5.あんたがたどこさ
指揮 所 敬二
4st.混声合唱組曲「優しき歌」
1.爽やかな五月に
2.さびしき野辺
3.また落葉林で
4.また昼に
作詩
作曲
指揮
立原 道造
小林 秀雄
水谷 昌平

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第16回定期演奏会

1st.混声合唱組曲「風のうた」 1983.1.9(日)
開演18:00
名古屋市市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー

1.春の風
2.夏の風
3.秋の風
4.冬の風
作詩
作曲
指揮
伴奏
中村 千栄子
大中 恩
南部 美穂子
村山 知恵
2st.マザー・グースのうた(1977)混声版より
小序曲
1.にわのことりが
2.ミルクよバターに
3.おかあさまがわたしを
4.ゆくゆくあるいてゆくとちゅう
5.ねんねんころりよ きのこずえ
6.ほねとかわのおんながいた
7.10人のニグロのこども
8.ゴータムむらの
訳詩
作曲
指揮
ヴァイオリン
チェロ
フルート
ピアノ
谷川 俊太郎
青島 広志
三輪 毅
大音 徳
雨宮 有
平田 隆
水野 京子
3st.Messe A‐dur op.12より
1.Kyrie
2.Gloria
3.Sanctus
4.Panis Angelicus
5.Agnus Dei
作曲
指揮
オルガン
チェロ
ピアノ
Ten.
Bas.
Sop.
Cesar Franck
水谷 昌平
林 和泉
栗田 正幸
大田 聡美
井原 義則
川口 豊
五十嵐 泰子

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第15回記念定期演奏会

1st.風のいざない 1982.1.17(日)
開演14:00
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.三月
2.雨と風の中に
3.ああ、どうしよう
4.風になって
5.さようなら、秋
作詩
作曲
指揮
伴奏
蓮月 マリ
大中 恩
中野 俊哉
南部 美穂子
2st.マトラの風景
  作曲
指揮
Z kodaly
玉崎 秀人
3st.魅惑のスクリーンミュージック
1.慕情
2.雨にぬれても
3.シャレード
4.追憶
5.ロッキーのテーマ
編曲
指揮
伴奏


小野崎 孝輔
玉崎 秀人
橋本 明実(ピアノ)
阿部 浩幸(ベース)
神庭 誠(ドラム)
4st.混声合唱組曲「幼年連祷」
1.花
2.不眠
3.憧れ
4.熱
5.喪失
作詩
作曲
指揮
伴奏
吉原 幸子
新実 徳英
水谷 昌平
高橋 寛樹

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第14回定期演奏会

1st.混声合唱とギターのための組曲「クレーの絵本」 1981.1.17(土)
開演18:30
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.階段の上の子供
2.あやつり人形劇場
3.幻想喜歌劇「船乗り]から
  格闘の場面
4.選ばれた場所
5.黄色い鳥のいる風景
作詩
作曲
指揮
伴奏


谷川 俊太郎
三善 晃
龍神 邦男
鈴木 寛(Gui)
伊藤 雅彦(Gui)
小林 晃(Cym)
2st.Messe Es‐dur ミサ曲第6番変ホ長調より
1.Kryie
2.Sanctus
3.Gloria
作曲
指揮
伴奏
Franz Shubert
雨森 文也
稲垣 洋美
3st.West Side Story
1.Maria
2.America
3.Tonight
4.I feel prentty
5.Quintet-Tonight
6.Somewhere-Tonight
作詩
作曲
指揮
伴奏
Stephen Sondheim
Leonard Bernstein
雨森 文也
渡辺 恭子
4st.混声合唱曲「島よ」
  作詩
作曲
指揮
伴奏  
伊藤 海彦
大中 恩
水谷 昌平
小沢 孝子

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第13回定期演奏会

1st.合唱組曲「日曜日-ひとりぼっちの祈り-」 1980.1.11(金)
開演18:30
愛知県勤労会館
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.朝
2.街で
3.かえり道
4.てがみ
5.おやすみ
作詩
作曲
指揮
伴奏
蓬莱 泰三
南 安雄
小島 勝
加納 篤子
2st.Mottete“Jeus, meine, Freude"
  作曲
指揮
J.S.Bach
朝倉 和俊
3st.民謡「日本の四季」
1.十三の砂山
2.南部牛追唄
3.筑子唄
4.北海盆唄
5.五木の子守唄
6.大漁唄い込み
7.佐渡おけさ
指揮
協力
小島 勝
民謡 山崎会
4st.混声合唱組曲「海の詩」
1.海はなかった
2.内なる怪魚
3.海の子守唄
4.海の匂い
5.航海
作曲
作曲
指揮
伴奏 
岩間 芳樹
広瀬 量平
水谷 昌平
小沢 孝子

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第12回定期演奏会

1st.混声合唱組曲「太海にて」 1979.1.12(金)
開演18:30
愛知県勤労会館
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.トンビ
2.仁右衛門島
3.春のうた
4.とんがり山
5.坂
6.蒼き巌の行進
7.桃いろの貝
作曲
作詩
指揮
Ten.
Sop.
多田 武彦
間所 ひさこ
山岡 耕春
増田 元彦
石川 由美
2st.混声合唱組曲「光る砂漠」より
1.再会
2.恋の詩でも読んだように
3.早春
4.秋の午後
5.さびしい道
6.ふるさと
作曲
作詩
指揮
伴奏
萩原 英彦
矢澤 幸
佐々 哲郎
小沢 千佳子
3st.Sound of Musicより
1.サウンド・オブ・ミュージック
2.朝の賛美歌
3.ハレルヤ
4.もうすぐ17才
5.ドレミの詩
6.エーデルワイス
7.すべての山に登れ
作曲
作詩
指揮
演出
R.Rodgers
O.Hammerstein II
佐々 哲郎
3st演出委員会
4st.Drei Motetten -三つのモテット-
1.Ich aber bin eiend
2.Ach, arme Welt
3.Wenn wir om hochsten Noten sein
作曲
指揮
J.Brahms
水谷 昌平

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第11回定期演奏会

1st.雨のファンタジア 1978.1.13(金)
開演18:30
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.うぶ毛いろの雨(春)
2.銀いろの雨(夏)
3.山肌いろの雨(秋)
4.鉛いろの雨(冬)
作詩
作曲
指揮
伴奏
結城 ふじを
渡部 節保
谷村 郁之
出射 雅美
2st.おかあさんのばか
1.じんちょうげ
2.すきやき
3.おかあさんのばか
4.おにいちゃんの成績
5.白いカーネーションはいや
6.バイオリン
7.雨のふる日
8.知能テスト
9.七夕
10.シーツ
11.おくり火
12.教会の神様
作詩
作曲

指揮
伴奏
古田 幸
中田 喜直
磯部 俶
佐々 哲郎
小沢 千佳子
3st.外国民謡
1.懐かしき我が家
2.おおスザンナ
3.むぎばたけ
4.そらをうずめて
5.またたく星くず
6.あるあさはやく
7.ローレライ
8.サンタルチア
9.母なるヴォルガを下りて
10.学生歌
指揮 谷村 郁之
4st.杉の木のうた
第1章 杉の話
第2章 碧い湖底
第3章 杉の木のうた
作詩
作曲
指揮  
中村 千栄子
石井 歓
石井 歓

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第10回記念定期演奏会

1st.イギリスルネサンス世俗曲 1977.1.16(日)
開演13:30
名古屋市民会館中ホール
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.Is love a boy?
2.Now is the month of Maying
3.Come again
4.Fine knacks for ladies
5.Fair Phyllis I saw
6.The silver Swan
  William Byrd
Thomas Morley
John Dowland
John Dowland
John Farmer
Orlando Gibbons
2st.ダムサイト幻想
1.孤独な征服者
2.黒のオブジェ
3.桜の回想
4.現代のピラミッド
5.神秘なるダム
作詩
作曲
指揮
伴奏
小林 純一
中田 喜直
増田 元彦
梶原 緑
3st.Requiem op.48
1.Introit et Kryie
2.OFFERTORIE
3.SANCTUS
4.PIE JESU
5.AGNUS DEI
6.LIBERA ME
7.IN PARADISUM
作曲
指揮
Sop.
Ten.
管弦楽
オルガン
G.Faure
碓井 士郎
加藤 典子
洞谷 吉男
名古屋大学交響楽団
近藤 明美

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第9回定期演奏会

1st.遥かなものを 1976.1.16(金)
愛知文化講堂
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.野道で
2.霧の中で
3.峠
4.夜
5.山頂
作詩
作曲
指揮
伴奏
伊藤 海彦
大中 恩
舟橋 正巳
藤井 一子
2st.ちいさな昇天
1.母ノ日ニオカアサンヘ
2.トンデミタイノ
3.ワタシハ天国ニイキマス
作詩
作曲
指揮
村田 めぐみ
平吉 穀州
増田 元彦
3st.日本の四季の歌
  指揮
伴奏
舟橋 正巳
藤井 一子
4st.Liebeslieder-愛の歌(ワルツ集)- op.52
  作曲
指揮
伴奏
   
J.Brahms
碓井 士郎
新貝 耀子
藤井 一子

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第8回定期演奏会

1st.さとじ 1975.1.14(火)
名古屋市民会館中ホール
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.桜
2.ふるさとにて
3.洗い場
4.雲はどうしてわがままをいわない
5.手結の浜
6.仙台地方の子守唄
7.ふるさとのないわたし
作詩
作曲
指揮
宮地 良和他
宮地 良和
小川 康男
2st.MOTETUS-ヴィクトリアのモテット集より-
Gaudent In Coelis Animae Sanctorum
O Magnum Mysterium
O Vos Omnes
Vere Languores Nostros
作曲
指揮
Victoria
小川 康男
3st.心の四季
1.風が
2.みずすまし
3.流れ
4.山が
5.愛そして風
6.雪の日に
作詩
作曲
指揮
ピアノ
吉野 弘
高田 三郎
舟橋 正巳
河路 規久子
4st.ドイツロマン派より
森にわかるる歌
うぐいす
憩いの谷間
狩猟の歌
二人の擲弾兵
野ばら
流浪の民
作曲



作曲
指揮
ピアノ
Mendelssohn



Shumann
角田 誠
藤井 一子

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第7回定期演奏会

1st.マザーグース・メロディ 1974.1.19(土)
名古屋港湾会館
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
(詳細不明) 作曲
指揮
林 光
佐野 裕嗣
2st.風紋
風邪と砂丘
あなたは風
おやすみ砂丘
風紋
作詩
作曲
岩谷 時子
石井 歓
3st.混声合唱のためのカンタータ第1番 「原爆小景」より“水ヲ下サイ” による
  合唱のためのコンポジションIより「祭り」
(詳細不明) 作詩
作曲
作曲
指揮
原 民喜
林 光
間宮 芳生
内藤 彰
4st.GLORIA in D-dur
(詳細不明) 作曲
指揮
Sop.
MS.
管弦楽
オルガン
Antonio Vivaldi
内藤 彰
西田 和代
内田 理栄子
名古屋大学交響楽団有志
佐藤玲子

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第6回定期演奏会

1st.三つの無伴奏混声合唱曲 1973.1
名古屋市民会館中ホール
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
(詳細不明) 作詩
作曲
指揮
北原 白秋
柴田 南雄
高木 秀一
2st.岬の墓
(詳細不明) 作詩
作曲
指揮
伴奏
堀田 善衛
団伊 久磨
角田 誠
(不明)
3st.子どもの季節 (子供の詩による)
(詳細不明) 作曲
指揮
三善 晃
増田 順平
4st.ゴールドラッシュ
(詳細不明) 作詩
作曲
指揮
伴奏
岩田 宏
林 光
高木 秀一
ジャズバンド?

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第5回定期演奏会

1st.“優しき歌”より 1972.1.11(火)
愛知県勤労会館
開演18:30
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
爽やかな五月に
さびしい野辺
また落葉林で
また昼に
作詩
作曲
指揮
立原 道造
小林 秀雄
山田 明
2st.煉瓦色の街
(詳細不明) 作曲
作曲
指揮
阪田 寛夫
大中 恩
高木 秀一
3st.Messe C Dur Beethoven Op. 86
(詳細不明) 指揮
ピアノ
遠山信二
鈴木 美根子
4st.世界の民謡から
(詳細不明)
フルート、ギター、ベースの伴奏付き
編曲
指揮
増田 順平
高木秀一

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第4回定期演奏会

1st.水のいのち 1971.1.10(日)
愛知県勤労会館
開場18:00
開演18:30
【後援】
朝日新聞社
愛知県合唱連盟
【主催】
名古屋大学グリーンハーモニー
1.雨
2.水たまり
3.川
4.海
5.海よ
作詩
作曲
指揮
伴奏
高野 喜久雄
高田 三郎
内藤 彰
根河 由美子
2st.マトラの風景
1.狩人ヴィドロッキ
2.別れ
3.文使い
4.夏
5.家畜ぬすっと
作曲
訳詞
客演指揮
Z.kodaly
清水 脩
増田 順平
3st.筑後川
1. 水上
2. ダムにて
3. 銀の魚
4. 川の祭
5. 河口
作詩
作曲
指揮
伴奏
丸山 豊
団 伊玖磨
山田 明
辻下 啓子
4st.ウィンナポルカ集
ピツィカートポルカ
アンネンポルカ
トリッチ・トラッチポルカ
作曲
編曲


指揮
伴奏
   
J.strauss
中村 仁策
菅野道雄
L.Lene
山田 明
川口 しづえ
富永 啓子

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第3回定期演奏会

1st.黒人霊歌 1970.1.10(土)
愛知文化講堂
開演18:50
【主催】
NUGH
【後援】
愛知県合唱連盟、朝日新聞社
Go down Moses
Swing low, sweet chariot
Keep a inchin’ along
Sometimes I feel like a motherless child
Soon ah will be done
指揮 小栗 正裕
2st.みんなで歌おう (Folk Songsを聴衆と共に)

(詳細不明)
3st.愛の歌 作品52
(詳細不明) 作曲
指揮
伴奏
J. Brahms
川島 博
辻下 啓子
4st.岬の墓
(詳細不明) 作詩
作曲
指揮
伴奏   
堀田 善衛
団伊 久磨
小栗 正裕
辻下 啓子

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第2回定期演奏会

1、千曲川の水上を恋ふる歌(小山章二)
(詳細不明)
2、レクイエム(フォーレ)
(詳細不明)
3、童謡
(詳細不明)
4、土の歌(佐藤眞)
(詳細不明)
アンコール ゆこうふたたび(佐藤眞)
(詳細不明)

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第1回定期演奏会

1st.日本民謡
島節
谷茶前の浜
北海盆唄
ソーラン節
指揮 内藤 彰
2st.邦人作品
わたりどり
かごに乗って
花によせて
蹄鉄屋の歌
指揮 内藤 彰
3st.MISSA BREVIS
KYRIE
GLORIA
CREDO
SANCTUS
Benedictus
AGNVS DEL Ⅰ
AGNVS DEL Ⅱ 
指揮 清田 健
4st.焔の歌
プロローグ
焔の歌Ⅰ
焔の歌Ⅱ
火の山
指揮
伴奏
内藤 彰
鈴木 美根子
1st.日本民謡

  日本の合唱曲で、意外に底のあさいものが日本民謡であるのは、合唱活動をやっているものがだれしも感ずる所である。今日とこにとりあげた4 曲は、原曲の持ち味をそのまま生かしたというよりは、ヨーロッパ音楽を通した、新たな創作曲である。 といえよう。
・島節 伊諸島民謡 作曲:宮地良和
伊豆諸島に伝わる民謡を、各声部が競いあうという形でまとめあげたもので、それぞれの音のぶつかりあう時、なんともいえ素朴でのびやかた島の情緒がうかびでる。
・谷茶前の浜 作・編曲:金井喜久子
漁村風景をスケッチ風に描いた沖縄民謡で、いかにも南国らしい健康で透明な小品である。
谷茶前の浜に、小さなスルルがよってきたそうな
いや、やまとミジュンだということだ。兄さんたちは、それをとりに、
姉さんたちは、それを頭にのせて売りに出たぞエ。
・北海盆唄 北海道民謡 編曲:小山清茂
いわゆる新民謡であるが、まったくの創作というものではなく、東北地方の盆歌が北海道に渡り昭和15年、現在の名でレコード化、定着したもの。新民謡の歴史的意義には疑間もあるが、単純左明るさを賞味していただければ……と思う。
・ソーラン節 北海道民謡 編曲:清水脩
合唱曲として編曲された日本民謡の、最も有名なもののーつである。清水脩のソーラン節は、北海に働く若者の遅しさを、力強いかけごえで、その広大さをたくみな転調からの展開で、余すとこ ろなく歌っている。

2st.邦人作品


・わたりどり
大中恩の昭和18年の作品。彼がしばしば用いる6/8のリズムと独特の半音階の移動によるハーモニーのうごきが、この小品の生命である。 グリーンの発足当時とりあげたおもい出深い曲。
・かごにのって
これはもう説明を要しないほど知れわたった佐藤真の組曲「旅」の中のーつ。山道をひとりきりで歩いている時、ぼんやりと昔のことを想う。かどかきのかけ声と、その上にのる女声のナレーシ ョンあたりはだんだんくらくたってゆきます。
・「花によせて」
若い労働者が、自分達の理想とする生き方を野生のそれにたくし、堅い決意を持って書いた詩で現実の社会という、 あらゆるものを押しつぶしてしまう大きた歯車の中で、自分をしっかり見つめ、頑強な信念をどこまでも、つら抜き通すたくましい人間になりたいとひたむきに願う姿が、私達の生き方にーつの示唆を与えてくれます。 花なら、苦しいたたかいの中できたえ上げら九 どんな早魅にも ビクともしたい、強靭な根をはった野生の花がいい。
・蹄鉄屋の歌
現代音楽に活躍している林光の1959年の作品。 彼の音楽は交響曲をはじめとして、社会主義的思想のおり込まれたものとして注目されているが、合唱作品においては、東京混声合唱団のためにつくった「水ヲ下サイ」(原爆小景より)と、昭和のプロレタリアート詩人、小熊秀雄の詩に作曲したシリーズが特に有名である。 この蹄鉄屋の歌は後者の代表的なもので アマチュァ合唱団のために作られたためもあって声域的には何ら問題なく、思想にも単純明訣である反面、素朴な愛清を表現するためにさまざまた構成 上の課題不協和音による感情の移行、テンポフェルマータの使用等が多い。 たお原詩には最後に「共に同じ現実の苦しみにある」という一節があるが、曲においてはこれを省略している。

3st.MISSA BREVIS GIOVANNI PIERLVTGI DA PALESTRINA

パレストリーナの音楽は伝統的様式、それに内容と形式の理想的結びつきに、その特質を見出せる。そしてカトリックの精神は彼の音楽以上に適切な芸術的表現を持ったことはなかった。 ところでミサは本来音楽形式でなく宗教上の儀式であったが、後に音楽形式としても理解されるようにたった。 それはミサ固有文とミサ通常文の二つのタイプに別れる。 11 世紀ころ、キリエ・グロリア・クレド・サンクトゥス・アニュスデイの今日の形態になった。 ミサ・ブレビスは1570年出版の、 スベイン王フィリップ二世に棒げられた「ミサ曲集第Ⅲ巻」にふくまれている。 これは文字通り「短いミサ」と解釈してよいでしょう。 そしてそのモティーフはグレゴリオ聖歌のミサ曲などからとられ、同時に「キリエ」の章のモティーフを「グロりア」の章にシルエットのように用いるというような技法も見られる。 ところでパレストリーナの曲は、 ポリフォニーの線の動きの微妙な表現が必要ですが、はたして我団の実力では………。清田先生だけが、頼りです。

4st.組曲 焔の歌 作詞:薮田義雄 作曲:清水脩

1965年、この雄揮な組曲は芸術祭参加作品として作られ、同年N HK名古屋合唱団により初演される。作詩者、薮田義雄は、誠実な人柄とダイナミックな作風で知られ、清水脩は現代日本最大の合唱曲作家、オペラ作曲者として高名である。清水の作品の多くは、組曲月光とピエロ、交声曲若者の歌(詩、薮田義雄)、朔太郎の3つの詩(後に緑色の笛を加える)等と、現代人の疎外感、孤独感をモチーフとし、その意味で「焔の歌」もこれら作品群を受けつぎ、人間性の喪失による人間の孤独(疎外の一形態としての人間の孤独化)を歌い込んだ、彼らしい傑作である。科学万能時代は終り、原水爆時代への突入により、今や人間(とその文化)不信の時代である。 自然物人間を蝕む現代。そこに生きる我々に、何かを語りかける作品である。
・プロローグ
人間の得た「火」の素晴らしさ、その意味の重大さ。
・焔の歌Ⅰ
ピアノは飛びはねる火を、合唱は、人間の明るくなった生活を表わしています。科学の光は、誤謬の雲を吹き払いこの世は楽土となるでしょう。科学の勝利に酔い、輝く未来に目も眩む人間を、変ホ→ホ→へ→変トと移調し同時にcresc、することで見事に表出しています。
・焔の歌Ⅱ
Ⅰの変ホ長調から、ホ短調に変わり、発達しすぎた(?)文化、未来への不安をかくす為の強がり的パカ騒ぎとその後に来るいいようのない虚しさが感じられます。世紀末の爛熟、頽廃、そんな ものでしょう。最後のff>ppと複雑な転調が、Ⅰと対照的に使われ、嵐の前の静けさ(精神分析で言う自由連想と考えてもいいでしょう)を導入しています。
・火 の 山
「火の山」は、戦争、噴火、個人の内部に於ける知識欲と徳性の戦い、なんでもいいのです。自らの心の鬼におびえる人間。その不安の原因に気づく時、すべてが解決されます。意識されない深 層の不安、それを意識される世界に引き出す時、すべてが解決されます。(とフロイトは申しております)男性と女声の聞くからに清純でやさしい8va.のカノン。 あんなにはげしくリズムを刻んでいたピアノ。合唱に対立して進行し、合唱に対して自然を表わしていたピアノが、影の様にピッタリ添って、美しい夜明を迎えます。荒れはてた人の心に、平和が蘇ったのです。

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