大使室より(ナガスクジラ漁の捕鯨船見学)

2021/7/6
Ambassador Suzuki with Mr. Loftsson 1
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ナガスクジラ漁の捕鯨船を見てきました!


クバルル社のCEOであるクリスチャン・ロフトソンさんのご案内で、捕鯨船「クバルル9号」を見学してきました。クバルル社は、アイスランドで唯一、ナガスクジラ漁をするライセンスを有する会社で、クバルル8号、9号の2隻の捕鯨船を保有しています。双方ともいわゆるキャッチャー・ボートで、発見したクジラを、起爆装置を先端に付けた銛で仕留める役割を担います。乗員は船長を含めて13名。この船で、レイキャビクから少し離れた沖合いの海域を回遊するナガスクジラを仕留めたあと、解体、クジラ肉の冷凍を行う基地まで船に横付けして運ぶのだそうです。
 
レイキャビクの港に係留されているこの船は、残念ながら、当面出港を予定していません。
 
ナガスクジラの肉はもっぱら輸出用。輸出先は日本です。
 
日本に鯨肉を輸出するには、実はさまざまなハードルがあるのだそうです。事前にPCBに汚染されていないかを確かめる品質の検査を受け、違法な手段で捕獲されたクジラの肉が混じっていないかを後日確かめるためのDNA検査などを受ける必要があり、その上で日本まで輸送することになりますが、海上輸送のために保冷コンテナに普通に積もうとすると、船会社が会社の評判を落とすリスクを恐れて、載せてくれないのだとか。
 
なお、クバルル社は元は4隻の捕鯨船を所有していたのですが、80年代、アイスランドの調査捕鯨に反対する過激な団体が、うち2隻の船腹に穴を開け、廃船を余儀なくされたのだそう。
 
クリスチャン氏によれば、アイスランド周辺の海域のナガスクジラの数は増えてきており、資源量は十分とのこと。問題は日本への輸出がスムースにできるかどうか、だということです。ちなみに、最後に鯨肉を日本に輸出したのは2019年。
 
そもそも捕鯨に反対、という人たちには「けしからん」話かもしれませんが、ナガスクジラの肉は日本でもなかなか手に入らない貴重品(のはず)。日本の周辺海域では捕獲されていません。ノルウェーからも、鯨肉が日本に輸出されているそうですが、そちらはミンククジラ、という鯨類としては小型のクジラの肉。
 
かつては捕鯨大国だった日本。昔は南極海で捕獲されたナガスクジラの肉がマーケットに出て、給食に供された時期もあるはずですが、国際捕鯨委員会で商業捕鯨が禁止になったのはもう80年代のこと。日本は、2018年には国際捕鯨委員会を脱退、200海里の経済水域内で行う商業捕鯨が再開されましたが、クジラの資源量が限られているため、そもそも捕獲許可数は少なく、ナガスクジラは日本周辺ではまだ捕獲できないはずです。
 
日本でも、アイスランドのクバルル社が提供するナガスクジラの鯨肉が食卓に並ぶ日が来ることを願っています。
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