「常に本質を見極める」不格好だった新規事業が、“予想以上”の成果を上げたワケ
不動産売却の一括査定サイト「イエウール」は2016年現在、提携不動産会社は1,500社、年間20万件の売却成立をサポートしています。2年で業界トップクラスの規模にまで成長したイエウールですが、立ち上げは決してスマートではありませんでした。「いま思えば不格好だった」――当時のメンバーがそう振り返る、立ち上げ秘話をお話しします。
社内表彰式でベストプロダクト賞を受賞した「イエウール」チーム
SpeeeはBizDevをコンセプトとし、創業当初から新しい分野へ挑戦し事業を創ることを強みにしてきました。現在は、Webマーケティング事業、そしてインターネットメディア事業を中心に数多くの事業を創り、育てています。
社内で頻繁に出てくる“不”という言葉。小さくはチーム内で誰も拾わないボール、大きくは社会で見過ごされてしまっている課題のことを指します。事業を創るには、こうした“不”を見つけ、解決まで導くことが重要です。
Speeeにはテクノロジーがあります。テクノロジーは社会が前に進む伸びしろだと考えています。テクノロジーが“不”を解決し新たな価値を提供していく下地、原動力にもなっていきます。
ライフスタイルメディア事業のひとつイエウールは、不動産業界で看過されていた課題を解決しようと立ち上げた中古物件取引の一括査定・支援サイト。売り手と買い手の架け橋になることで、中古物件のマーケットを活性化させることを目的にしています。
現在、日本では新築物件に対するこだわりが強く中古物件の取引は全体の13%程度。欧米では、約80%前後であることからも日本の市場が特殊であることがわかります(※参考)。売却されずに眠っている中古物件は、全国に数多く存在している。イエウールは、その課題に着目しました。
現在、イエウールは高い熱量を持ったメンバー40名が集まり、多くの方にご利用いただいています。しかし、立ち上げ当時のことを「とにかく不格好だった」とメンバーはよく語っています。
苦労の先にある新たな価値を信じて泥臭く走り抜けた「不格好だった立ち上げ
「イエウール」立ち上げメンバー:岡崎(左)西岡(中央)角(右)
立ち上げメンバーは、2012年に新卒入社した角高広、そして大手IT企業に2011年に入社し、2013年にSpeeeへ転職してきたエンジニアの西岡寛兼。そして、2012年に不動産業界から転職してきた事業責任者の岡崎直樹の3人でした。
全員が事業の立ち上げは初めて。20代という若さを持ち、野心にも溢れている。勢いのあるメンバーが張り切って年間計画を立てたのですが、3日目で修正しなければズレが生じることに気づきます。それから予想通りにいかないことばかり。
電話だけで受注できると目論んでいた営業もまったくうまくいかない。予算が超過し、経営陣に頭を下げて追加してもらってもまた足りなくなってしまう……。
西岡「100%以上の力で頑張っても100%の成果が出ない毎日が続きました。経験がないから不格好、スマートではない。でも、信じてくれた不動産会社様の信頼を裏切りたくない。社会に新しい価値を提供したい、そういう想いがメンバーの熱量になり、無事リリースできました」
上手くいかないとしても根性だけではどうにもならない。西岡と角はホワイトボードの前で、イエウールが提供する本質的な価値について時間を忘れて議論をしていたこともあります。向かうべき方向がズレれば、根性を発揮してもズレた方向に向かってしまう。
「不格好だった」、メンバーはそう語りますが、2年で大きく成長したイエウールの“スマートさ”はメンバーが常に本質を捉え、不足を見つけては補っていった泥臭さによるものかもしれません。
小さな積み重ねが生んだ“黒字化”への転機
「イエウール」立ち上げから2年
角「努力した先には世の中に対して価値を提供できるという“思い込みにも似た確信”がありました。計画通りに行かなくても、目の前のことに集中する。小さなトライ&エラーを泥臭く積み重ねていく。その姿を会社も信じてくれ、バックアップしてくれたんです」
実はイエウールは何度も予算追加が発生し、リリースした頃には当初メンバーが出していた1年の予想売上の10倍にも及ぶ赤字からスタートしています。しかし、計画ズレや赤字が生じていても本質的な価値を議論し、洗練させているなら世の中に新たな価値を提供できると確信を持つことができました。
西岡「リリース前に資金調達も絡んでいたらイエウールは世に出せなかったかもしれません。会社は私たちが出した“予想”ではなく、私たちが提供しようとしている価値を信じて任せてくれたんです」
結果、イエウールの18ヶ月目にして黒字化に成功しました。超過した投資分も回収。あるタイミングで大手の不動産会社5〜6社が一気にイエウールに参画してくれたことが黒字化への転機となりました。
角「特に大きな広告、マーケティング施策をとった訳ではありませんでした。しかし、あるご担当が『評判が業界内から聞こえてくる。勢いも感じるので、われわれも参画しないと乗り遅れてしまう』と参画の理由を話してくれたんです。お話しを聞いて、常に本質を見極めて積み重ねてきたことを評価していただけたように感じました」
立ち上げは計画通りに進まなかった。しかし、リリースした後は当初の予想を裏切る、良い意味で計画通りではない成果をあげていったのです。
支え合うのではなく背中を預けていく
現在の「イエウール」メンバー
角「西岡や岡崎は、私にとって背中を預けられる存在です。そして、会社も私たちの背中を守ってくれました。得意としている分野や領域がまったく異なるなかでも、お互いを尊重、信頼してひとつの事業を創っていける。Speeeが想いを信じる会社だったからこそいまのイエウールがあるんだと思っています」
イエウールを立ち上げているとき、角は「港区で一番不動産に詳しくなった」と語っていました。経験も実績もない、しかし「社会の不を解決する」という高い目標に向かって、自ら学習し成長していく。
西岡「角とは多くの議論をしました。『それは違う』と言い合って、イエウールを創り上げていきました。お互いの意見を論理的にぶつけあってきましたが、それが理屈ではない愛情に変わりました。イエウールはメンバーにとって自分の子どものような存在なんです」
西岡はイエウールだけではなく、「自分で創ったものを使って喜んで欲しい」とも語っています。社員一人ひとりにそんな“想い”がある。その想いはイエウールを利用する不動産会社様、ユーザーにもあります。社員の想いが事業や会社の原動力になり、周りの想いも巻き込んでいく。
イエウールは1,500社の提携企業、年間20万件の売却成立をサポートするサイトへと成長しました。しかし、メンバーはゴールに到達したと考えていません。立ち上げメンバーが創り上げた本質を常に意識し、大小問わず新たな不を見つけては、より多くの不動産会社様、利用者様に使っていただこうと改善をしています。
そんな社員たちの“想い”を信じて、Speeeは社員一人ひとりに今後も背中を預けていきます。