法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

日本漫画の国内市場が4400億円あるとして、外国漫画の外国市場は1000億円よりずっと多いようだよ

電子配信やロビー活動に熱心な漫画家の赤松健氏と、電子配信を手がける会社で代表取締役をつとめる小林琢磨氏、東京漫画レビュアーズ編集長*1小禄卓也氏が、日本内外の漫画市場について語りあっていた。
logmi.jp
配信側の視点として興味深い鼎談ではあった。
しかし、ポリティカル・コレクトネスにカニバリズムが必ず反するかのような主張と*2、日本以外の全世界の漫画を合算して1000億円という情報、この論点ふたつへ異論が多いようだ。

小林:2019年だと日本の市場が4,400億くらいで、海外はいくらだと思います? 海外、全世界を合わせて1,000億円いってないんですよ。最近だとみなさんも縦読み漫画、つまりウェブトゥーンですね。ウェブトゥーンとかの縦読みフルカラー、めちゃくちゃ流行ってます。

ピッコマさんだと『俺だけレベルアップな件』とか、あれ「月1億売れてる」みたいな。

話題にもなりましたけど。すごいんです。確かに来てます。でも、それでも全世界の、韓国とか中国とかアメリカとか全部合わせても、1,000億なんです。つまり何が言いたいかというと、まだ……まだというか、日本が“メジャーリーグ”なんですよ。

赤松:そう。海外の漫画作家が何をしたいかというと「日本でメジャーリーガーになりたい」っていうことですね。

ここで話題になっているウェブトゥーンの市場だけでも、ちょうど先日のロイターコラム記事によると、2019年の時点で600億円ほどまで市場を広げていたという。
コラム:韓国ネット大手、ウェブトゥーンIPOで新展望開くか | ロイター

ウェブトゥーンの人気は急速に広がっている。韓国コンテンツ振興院によると、2019年の国内ウェブトゥーン市場は約6400億ウォン(5億7800万ドル)に上った。

同じ2019年の各国漫画市場を論じたWEBメディアの記事によると、中国の漫画市場は2600億円ほどあるという。以前は2割しかなかった電子配信が8割にのびたためという。
【市場比較コラム】日本・アメリカ・中国のマンガ市場比較 | オタク産業通信 :ゲーム、マンガ、アニメ、ノベルの業界ニュース

中国に関しては、2014年から右肩上がりに成長しており、2014年と2018年を比較すると1.75倍ほどに伸長。2018年の市場規模は2596億円と日本市場の半分ほどの規模に成長した。

前後してこの記事には、米国の漫画市場が1100億円という情報が時代ごとの変化とともに紹介されている。

アメリカにおけるマンガ市場の規模は、1100億円ほどと日本の3分の1程度であり、国土や人口の多さに比べて市場が小さいという特徴がある。

さらに日本の漫画市場が4400億円ほどという数字も、2018年の情報として示されている。小林氏らがあげていた数字とほとんど同じだ。

日本では「ワンピース(出版:集英社)」「進撃の巨人(出版:講談社)」などの長期連載作品をはじめ、「キングダム(出版:集英社)」や「僕のヒーローアカデミア(出版:集英社)」「はたらく細胞(出版:講談社)」など、アニメや映画化のメディアミックスがさかんに行なわれた作品が注目を集め、市場規模は4367億円に成長した。

あくまで想像だが、そもそもは日本と米国の市場規模を比較していた情報が、どこかで日本と外国の市場規模の比較という情報に混同されたのではないだろうか。
なお、この記事は下記のページを参考として提示しており、同じ情報源をつかって誤解をまねくような記事が他にある可能性もある。

全国出版協会・出版科学研究所
第43回中国インターネット発展状況統計報告
オリコンニュース公式サイト
Comichron(海外サイト:英語)
当当網(海外サイト:中国語)
快看漫画(海外サイト:中国語)

*1:なおかつ小林氏の会社ナンバーナインの取締役CXOという。

*2:たとえばゾンビ映画は『鬼滅の刃』と同じく吸血鬼物の流れをくんでいるが、始祖のロメロ作品からして人種や性別の役割りが当時のステロタイプを逸脱している。それゆえ時代を超えて楽しめる娯楽性をたもちつづけている、という感想はあっていいだろう。hokke-ookami.hatenablog.com