建築や不動産でよく使われる単位である「尺貫法」。1958年12月31日限りで取引や証明に用いることは禁止されていますが、「一坪」のように見聞きする機会も多いものです。とはいえ、馴染みのない単位なので、大きさのイメージがしにくいでしょう。

今回は、尺貫法の単位である「分・寸・尺・間」について具体的にご紹介します。尺貫法を理解することで、家の大きさをより具体的にイメージできるので、家づくりに役立てられるでしょう。

 

尺貫法

一分や一寸といった単位は「尺貫法」と呼ばれる単位によるものです。尺貫法(読み方:しゃっかんほう) とは、日本古来の長さや面積を測る単位のことをいいます。尺=長さ、貫=質量と定義され、中国を起源とし古くは大宝律令の頃から使用されていた計量法です。

尺貫法は、1891年の度量衡法の制定に伴いメートル法と併用されていましたが、徐々にメートル法が主流となりました。その後1951年に制定された計量法により1959年には尺貫法が廃止となり、国際単位系で統一されたのです。

尺貫法は廃止となったため、現在は公式な書類などでその単位の使用は禁止されています。
しかし、「一升瓶」やお米の「合」のように、日常生活に尺貫法の名残があるのです。

また、住宅などの建築では現在でもその使用が認められています。主に使われる単位は、面積を表す「坪」や長さを表す「間・尺・寸・分」です。これらは、「一坪の土地」や「三寸の柱」というように表現され、見聞きする機会も少なくありません。

 

一分とは

一分(読み方:いちぶ) とは、メートル法で換算すると約3.03ミリメートルです。アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと約0.119インチになります。50円玉の穴の直径が4ミリメートルなので、一分はそれよりも小さな長さです。

 

一寸とは

一寸(読み方:いっすん) とは一分の10倍の単位です。メートル法で換算すると約3.03センチメートル。アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと、1インチが約2.54センチメートルであるため、一寸は約1.19 インチになります。

寸は親指の幅の長さに由来すると言われ、親指の幅ほどのほんのわずかな長さという意味があります。有名なおとぎ話である「一寸法師」の「一寸」はこの長さを指しており、一寸法師はたった3センチメートルほどの身体だったことになるのです。

 

一尺とは

一尺(読み方:いっしゃく) とは一寸の10倍の単位です。メートル法で換算すると約30.3センチメートル。アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと約1フィートになります。尺と寸と分の関係は「1尺=10寸=100分」です。

一尺は親指と人差し指を広げたときの両指先間の長さが由来となっています。ちなみに、一尺と1フィートがほぼ同じ大きさなのは、どちらも身体の大きさをもとにしているからです。

アメリカのヤードポンド法が足のサイズを由来としており、一尺の由来である親指と人差し指を広げた長さは、足のサイズとほぼ同じ。そのため、一尺と1フィートはほぼ同じ長さとなるのです。

 

一間とは

一間(読み方:いっけん)とは一尺の6倍の単位です。メートル法で換算すると約1.82メートル。アメリカで使われている長さの単位であるヤードポンド法だと約5.97フィートになります。

尺や寸に比べるとあまり聞きなれない単位ではありますが、不動産ではよく使われる単位です。間は坪数にも関わってくる単位で、一間の長さは、畳の長辺の長さ。畳の短辺は長辺の半分の長さとなっており、畳を2枚並べると約182センチメートルの正方形になります。

この畳2枚分の正方形が「一坪」です。つまり、一間×一間が一坪であり、畳2枚分の広さとなるので、広さのイメージの目安とするとよいでしょう。

 

尺貫法の単位変換表

尺貫法は廃止され今ではメートル法を用いての表現が原則です。ただし、家づくりにおいては尺貫法で表現されることがあります。

家づくりなどでは不動産関係者もつい尺貫法で説明してしまう場面もあります。尺貫法とメートルの関係を知っておくことで、家づくりや物件探しなどの場面で便利です。

尺貫法の単位をそれぞれメートル換算・ヤードポンド換算した表は次の通りです。

単位

メートル換算(≒)

ヤードポンド換算(≒)

一分

3.03ミリメートル

0.119インチ

二分

6.06ミリメートル

0.238インチ

三分

9.09ミリメートル

0.357インチ

四分

1.21センチメートル

0.477インチ

五分

1.52センチメートル

0.596インチ

六分

1.82センチメートル

0.715インチ

七分

2.12センチメートル

0.835インチ

八分

2.42センチメートル

0.954インチ

九分

2.73センチメートル

1.07インチ

一寸

3.03センチメートル

1.19インチ

二寸

6.06センチメートル

2.39インチ

三寸

9.09センチメートル

3.58インチ

四寸

12.12センチメートル

4.77インチ

五寸

15.15センチメートル

5.97インチ

六寸

18.18センチメートル

7.16インチ

七寸

21.21センチメートル

8.35インチ

八寸

24.24センチメートル

9.54インチ

九寸

27.27センチメートル

10.74インチ

一尺

30.3センチメートル

0.994フィート

二尺

60.61センチメートル

1.99フィート

三尺

90.91センチメートル

2.98フィート

四尺

1.21メートル

3.98フィート

五尺

1.52メートル

4.97フィート

六尺

1.82メートル

5.97フィート

七尺

2.12メートル

6.96フィート

八尺

2.42メートル

7.95フィート

九尺

2.73メートル

8.95フィート

一間

1.82メートル

5.97フィート

二間

3.64メートル

11.93フィート

三間

5.45メートル

17.9フィート

四間

7.27メートル

23.86フィート

五間

9.09メートル

29.83フィート

六間

10.91メートル

35.79フィート

七間

12.73メートル

41.76フィート

八間

14.55メートル

47.72フィート

九間

16.36メートル

53.69フィート

 

曲尺と鯨尺の違い

尺には、大きく「曲尺(読み方:かねじゃく)」と「鯨尺(読み方:くじらじゃく)」の2種類あります。ここまで説明してきたのは曲尺です。

曲尺とは、一般的に建築関係で利用される単位です。大工が使用する指矩(さしがね)と呼ばれる、金属製で直角に曲がったものさしで測っていたことに由来されると言われています。

それに対して、鯨尺とは、主に和服を仕立てたり布団を作ったりする「和裁」で生地を測るときに使われる単位です。生地を測るときのものさしが鯨の髭からつくられていたことに由来されていると言われています。

曲尺も鯨尺も同じ尺を表すものではありますが大きさが異なり、それぞれの一尺は次のようになります。

・曲尺…約30.3センチ
・鯨尺…約37.8センチ

鯨尺は曲尺の約1.25倍となり、同じ一尺でも7.5センチも異なるのです。

曲尺と鯨尺の換算表は以下の通りです。

尺貫法の単位

曲尺

鯨尺

一分

約0.303センチメートル

約0.378センチメートル

一寸

約3.03センチメートル

約3.78センチメートル

一尺

約30.3センチメートル

約37.8センチメートル

一間

約181.82センチメートル

約227.27センチメートル

 

尺には曲尺と鯨尺以外にも古くは享保尺(読み方:きょうほうじゃく)や折衷尺(読み方:せっちゅうじゃく)などさまざまな単位がありました。しかし、1875年に曲尺が制定されて以来、メートル法が導入されるまでは曲尺が公式の単位として採用されたのです。

そのため、尺といえば基本的には曲尺の尺を指しており、和裁に関してのみ鯨尺を用いるようになりました。

 

尺貫法を活用した内見テクニック

尺貫法は身体の大きさをもとにしている

もともと尺貫法とは、人間の身体の大きさをもとにして使われていた単位でもあります。そのため、大まかな長さを把握するのに優れているのです。

たとえば「坪」について見てみましょう。
昔の日本人女性の親指と人差し指の両指先間の長さは5寸と言われていました。さらに、5寸を10倍した150センチメートルが平均身長でもあったのです。150センチメートルの身長では両手を広げた長さも150センチメートルとなり、これに少し余裕を持たせた180センチメートル×180センチメートルが一坪となるのです。

ちなみに、一坪である3.3平方メートルは畳2枚分(180センチメートル×180センチメートル)の広さとなります。おおよそ大人が一人寝そべったときに必要なサイズが畳1枚であり、その2倍が一坪となるのです。

 

尺貫法での大きさの目安

尺貫法を理解することで身体に対しての大きさがわかり、直感的にイメージしやすくなるでしょう。

尺貫法での大きさの目安は次の通りです。

・五寸… 手を広げたときの親指から人差し指の両指先間の長さ(約15センチメートル)
・一尺… 肘から手首までの長さ(約30センチメートル)
・一間… 両手を広げたときの長さ(約180センチメートル)
・一坪… 2畳(3.3平方メートル)

 

尺貫法を理解しておくと、家づくりや物件探しのときに家の大きさのイメージを掴みやすくなります。実際の物件を見学できる内見でも、尺貫法を理解して内覧に臨むと具体的にどれくらいの大きさなのかが直感的にイメージできるという点がメリットです。

 

まとめ

一分や一寸といった尺貫法での表現は、現在でも家づくりで見聞きする場面が少なくありません。センチメートルに換算すると中途半端でわかりにくく感じるかもしれませんが、由来や基準を知ると大きさの目安がわかりやすくなります。

尺貫法でのサイズ感を理解しておくと、間取りなどの大きさのイメージを直感的にしやすくなり家づくりや内見などで便利です。ぜひこの記事の換算表などを活用して、尺貫法の大まかな数字を押さえておき、家づくりに役立てましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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