日本大百科全書(ニッポニカ)「瓶詰」の解説
瓶詰
びんづめ
ガラス、磁器、セラミックスなどの瓶に、ゴムやプラスチックなどのパッキングをはり付けた蓋(ふた)を用い、中に食品や料理を詰めて密封し、加熱殺菌したもの。または殺菌した食品を、殺菌した瓶に無菌充填(じゅうてん)して密封した長期保存が可能な食品。単に密封してあっても、殺菌していないものは瓶入りとして区別する。
瓶詰は、缶詰の発明者とされているフランスのニコラ・アペールが1804年に初めて完成したもので、瓶詰の方法の発明者といえる。その後、この原理を利用して缶詰がつくられるようになった。原理的には、瓶詰と缶詰は材質が瓶か缶かによる違いだけで、殺菌密封、長期保存についてはまったく同じである。ただし、瓶詰は光が透過するので、光による中の食品や調理品の変色などがある反面、缶詰のように金属を使用しないので、その影響による味の変化はない。また、内容が外から見ることができるので、商品価値として、きれいな色などを見せたいジャムやフルーツソースといったものは、瓶詰がよく使用されている。また、酸性の強いもので、金属缶では影響が出やすいピクルス、ラッキョウの酢漬けなどは、瓶のほうがよく利用される。
[河野友美・山口米子]
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瓶のキャップの形態により、アンカー、ケーシー、ハネックスなどに分類される。アンカーはコップ状の容器を用い、ゴムまたはプラスチックのリング状の輪を周辺にはめたブリキの蓋を用いて内容を密封し、このリングが気密を保つのに役だっている。単に王冠状に締め付けるものと、ねじ式になっていて、蓋をねじって締めるものとがある。この形のものは加圧殺菌に弱いので、どちらかというと、低温殺菌のできる酸味を含んだ果物のシロップ漬けや、ジャム、フルーツソースなどによく使用される。ハネックスは、蓋の構造はアンカーと同様であるが、金属製の帯状バンドで締め付け、高温殺菌が可能なような構造になっている。ケーシーは、液体飲料のように、王冠にパッキングを装着したもので密封するもので、液状のものや、粘性があるが半液状のものを詰めるのに便利である。家庭用としては、貯蔵品用といわれる、密着できるパッキング入りの蓋と、ばねを利用して蓋が密封できるようになった特殊な形態の瓶がある。
[河野友美・山口米子]
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工業的につくられたものは、缶詰よりやや保存期間が短いが、あまり大きな差はない。とくに、光に当てないような注意をすれば、数年は保存できる。しかし、光が当たると、内容の色の変化とともに、味にも影響が出るから、注意が必要である。家庭では、酸味のあるものは、殺菌が十分であるから、比較的保存が長くできるが、高温殺菌を要するような野菜や豆、肉類、それに調理品などでは、あまり長期の保存は好ましくない。理由は、十分に殺菌したつもりでも、完全滅菌がしにくいことと、酸には弱い菌類も、中性に近い状態ではかなり高温でも死滅しないで、芽胞として残ることがあり、これが腐敗や、場合によってはボツリヌス菌中毒のような危険な食中毒の原因となることがあるからである。
なお、瓶詰ではなく、瓶入りに属するが、ホームリキュールのような濃度の高いアルコールに浸したものや、糖分濃度の高いもの、あるいは塩漬けにしたものなどは、殺菌しないで瓶に密封し、貯蔵することができる。酢漬けなども同様で、こういったものは貯蔵瓶を利用して家庭でもつくることができる。
[河野友美・山口米子]