枯山水とは、どのように生まれたものでしょう?
日本庭園の歴史は、まず公家たちが雅な文化の一環として、自分たちの邸宅をととのえるところから始まりました。つぎに武家文化の力強さが加わり、そして応仁の乱によって荒廃した中から、禅寺の中で庭園全体を枯山水で作庭する手法が確立しました。自然景観のミニチュア化と同時に、精神性も追い求めた形態が確立したのです。
庭の見方を教えてください。
「間(ま)」を楽しんでほしいと思います。空間構成は、禅の教えなど宗教的なものに基づいていますが、石や樹木をどう置くかには作庭家の個性が表れます。軸線に対して石がどう配置されているのか、石と石がどう関係しているのか、石や樹木は独特のリズムで連携しています。石と石がたっぷりと間をもつ龍安寺の石庭は、音楽に例えるなら、ジャズのピアノソロといったところでしょうか。
庭を鑑賞するベストの位置はありますか?
ベストポジションは、一般的に部屋の中からといわれますが、それだけではありません。たとえば書院に至る廊下を歩いていると、角度によって石が姿を変えたり、見え隠れし、庭の表情が変化します。自分だけのベストポジションを探してみるのも面白いと思います。
冬の京都の楽しみ方は?
冬の京都は、庭園を鑑賞するのに最適なシーズンで、私も一番好きな季節です。樹木の葉が落ち、下草が枯れると、化粧を落とした庭そのものの姿を見ることができます。とくに早朝は、朝露が樹木の先端にしたたり、庭全体がうっすらと霧に包まれます。そこに太陽がさすと、庭が輝き、えもいわれぬ美しい姿を見せてくれます。庭は、その人の年齢や好みなどによって見え方が異なります。庭の鑑賞が、自分自身を見つめなおすきっかけになれば、身も心もととのうのではないでしょうか。
作庭家
重森庭園設計研究室主宰
京都工芸繊維大学非常勤講師・広島市立大学非常勤講師
■作品/松尾大社瑞翔殿庭園、長保寺庭園、重森三玲記念館庭園、今村病院庭園、真如堂庭園、東福寺一華院庭園、台湾高雄市景中泱庭園、長野ホテル犀北館庭園など
■著書/『京の庭』(ウェッジ)、『NHK美の壺・枯山水』(NHK出版)、『図解雑学日本庭園』(ナツメ社)、『日本の10大庭園』(祥伝社)、『京都和モダン庭園のひみつ』(ウェッジ)など
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