違う。好きになるのは俺じゃない。主人公はあっち!俺は脇役でいいんだよ!
幼馴染の男は勇者だった。勇者となるべく、女神によって異世界に転移された。
なんでも邪神が復活して世界を脅かすから、その危機を救ってほしいんだと。そういう設定なんだと。俺? 俺はあくまで付き添い。一緒に死んだから、あいつの幼馴染だってことで、サポート役を女神様に押し付けられて一緒に飛ばされたんだ。
伝承では、邪神が目覚めた時に勇者が現れ、女神から選ばれた4人の巫女と共にそれを打ち倒し、世界を平和と繁栄に導くらしい。で、その設定どおりに話を進めないと世界が消滅するんだと。俺の役目は影ながら幼馴染をサポートして、4人の巫女との恋愛を成就させた上で邪神討伐への道を整えていくことだ。
正直に言って、死んでまでもあいつのお守をしなきゃならないのは嫌だが……こうなった以上、四の五の言っても始まらない。こうなったら裏方に徹するさ。ろくな能力を与えられなくても、周りの連中から馬鹿にされても構わない。やる事やって、女神様からご褒美をもらうついでに世界を救ってやろう。脇役として。
だから、頼む幼馴染よ。早くその腐った性格を直してくれ。
取り返しのつかない事になる前に。俺の理性がまだ働いているうちに。というか、俺の胃に穴が開く前に。
ほら、また四つの足音が……。