「最初は睨みあいだったのですが、どこからともなく生卵が投げられ、続いてロケット花火、爆竹、投石とどんどんエスカレートしていった。報道では『約300人が集まった』とされていますが、もっと集まっていたと思います。夜中にはテレビやSNSを見て、500人以上はいました。熱気が高まってくると、警察署の壁はスプレーで落書きされ、鉄パイプを振り回す者も現れて、窓ガラスも割れていました。若者たちは暴徒と化して、どんどんエスカレートしていきました」(近隣住民)

【写真】「警察から少年が暴行を受けた」と拡散された動画。少年の目からは多量の血が流れている


暴動後の県警沖縄署の外観 読者提供

 1月27日深夜、沖縄県警・沖縄署の前に多数の若者が集まり、警察署に投石をするなどの暴動事件がおきた。警察署周辺には、石や空き缶など多量のゴミが散乱し、正面玄関のガラスをはじめ、警察車両のフロントガラスも割られていた。また、署の壁には赤いスプレーで「しね」と落書きがされていた――。

暴動の発端は少年と警察官との「トラブル」

 暴動の発端は27日未明におきた、17歳の少年と警察官とのトラブルだった。地元紙社会部記者が語る。

「県警によると27日の深夜1時ごろ、『複数の暴走行為がある』との通報をうけた警察官が市内路上をパトロールしていた際、バイクに乗った17歳の少年と接触。少年はその際に眼球破裂と眼底骨折の重傷を負ったと県警は発表し、地元メディアも『警察と少年の接触事故が起きた』と報じました。

 報道後、少年の知人たちが『少年は警察官から警棒で殴られた』『失明するかもしれない』などとSNSに投稿。それを見た若者たちが『これはやりすぎだ』と警察署の周囲にどんどん集まったんです」

 怪我を負った少年は自ら119番通報したという。少年の友人が撮影したとみられる動画には、救急隊員が介抱するなか、倒れた少年の目から多量の血がながれる様子が収められていた。

 少年の知人によると、少年は暴走族ではなくコンビニにたむろしていた地元の高校生だったが、補導されるのを恐れ、逃げ出そうとしたところを警察官から警棒で暴行を受けたという。

警察からの暴行? 接触事故? 食い違う証言

「救急車が駆けつけた際に仲間たちが動画を撮影すると、警官が『撮るな』と撮影を妨げ、スマホを地面に叩き付けたそうです。その時に警官から殴られた子もいて、その様子を収めた動画も残っている。

 警察が駆け付けた救急隊員に『事故だ』と話しているのを聞いた子どもたちが事件性を訴え、『警察の隠ぺいだ』という内容をSNSに書き込みました。それが一晩で拡散されたんです。子どもたちは最初の報道が『接触事故』として扱われたのにも違和感を覚えているようです」(少年の知人の保護者)

 SNSを通じ、警察署に集まった若者は27日午後11時の段階で200人を超えていた。子どもに付き添われ、様子を窺いに行った前出の保護者が話す。

「ほとんどが10代の少年少女で、現場の熱気は異様なものでした。このままだと2次被害がでると思い、まずは警察官に対して『少年との間に何があったのか、集まった子どもたちに少しでいいから説明してほしい』と相談したのですが『捜査中だから』の一点張りでした。バリケードを閉めて、こちらの話に聞く耳をもたなかった。そんな警察の態度を見て若者たちもしびれを切らしたのか、私の後ろから卵がどんどん投げこまれていきました」

 午前4時、暴徒と化していた若者たちは、ようやく鎮静化してそれぞれの帰路についた。集まった若者の中には、未成年で翌日に学校を控えた中高生も多かったという。

「文春オンライン」が沖縄県警本部に取材を申し込んだところ「(沖縄警察)署に問い合わせてほしい」と回答。沖縄警察署からは回答は得られず、今も署の門は閉ざされ、市民が気軽に立ち寄ることができない状態だった。

 現在、沖縄署は少年と警官との接触がどのようなものであったかについては「調査中」としている。また、接触と高校生のけがの因果関係についても調べているという。

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《沖縄警察署破壊事件》「失明した事実はまだ本人に伝えられていない」 “暴徒化原因”の被害少年叔父が語った「逃亡の理由」 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))