作家で東京都知事や運輸相(当時)を務めた石原慎太郎氏が亡くなりました。89歳でした。追悼の意を込めて、2018年3月29日に掲載したインタビューを再掲します。謹んでご冥福をお祈りします。
(日経ビジネス電子版編集部)
東日本大震災の発生から7年が経過した。石原慎太郎氏は当時、東京都知事として東京消防庁ハイパーレスキュー隊の派遣を指示したり、震災がれきの受け入れをいち早く表明したりするなど、被災地の復旧に大きく貢献した。一方で、いわゆる「天罰発言」で批判も浴びた。当時の自分の言動を、石原氏本人は今、どう総括するのか。自宅を訪ねた。
(聞き手 坂田亮太郎)
震災の直後、石原都知事は東京消防庁のハイパーレスキュー隊を現場に派遣しました。
石原:きっかけは、当時の菅直人総理の補佐官を務めていた阿久津(幸彦氏、現立憲民主党衆院議員)くんからの電話だった。彼は、私が代議士をしていた時代に公設秘書を長く務めていたこともある。その彼から、「福島第一原発の原子炉を冷却するために、一刻も早く注水しなければならない。(東京都の)警視庁には強力な放水機能を持つ車両があるから、動員してほしい」と要請があった。
1932年兵庫県神戸市生まれ。52年一橋大学入学、在学中に「太陽の季節」で芥川賞を受賞。68年参議院全国区に出馬しトップ当選。72年参議院議員を辞職。衆議院選挙に旧東京2区から無所属で出馬して当選。76年環境庁長官に就任。87年竹下内閣で運輸大臣に就任。95年議員勤続25年の表彰を受けたその日に辞職を表明。同年、芥川賞選考委員になる。
99年東京都知事選挙に出馬し初当選。2003年史上最高の得票率で再選。07年三選。11年四選。12年に都知事を辞職。
12年「日本維新の会」代表に就任し、衆議院議員とし17年ぶりに国政に復帰。14年「次世代の党」最高顧問に就任。14年政治家を引退(写真:村田 和聡)
それを聞いて怪訝に思ったね。確かに、警視庁は強力な放水機能を持つ放水車を持っている。でもそれは、暴徒を蹴散らすために水を水平に飛ばすようになっている。そのような車両が、原子炉を冷却するような任務に向いているのか、甚だ疑わしい。それで「冷静に判断してほしい」とたしなめたんだ。
それを聞いて官邸も考えたんでしょう。その後、高層ビルの火災の際に使うような、高いところに放水できる能力を持つ消防車を動員してほしい、と再度要請された。
そう言われて、私は重い決断をしなければならなかった。
当時、現地の状況は全く分からない状況だった。壊滅した原子炉から、どれほど多量の放射能が漏れているかも分からない。そんな危険な現場に、レスキュー隊を派遣したら、死者がでるかもしれない。若い隊員が被爆したら、その人の子孫にまで影響が出てしまうかもしれない。しかし、自分が行くわけにもいかない。過酷な現場できちんと任務を遂行するためには、訓練された隊員に任せるしかない。とにかく、戦地に赴く兵隊さんを送り出すような心境だった。
苦渋の決断だった、と。
石原:原発事故は東京だけの問題じゃない。日本全体の問題だった。東京は日本の「要」であるし、東京にしかない能力も備えている。
実は、私のところに様々な情報が入ってきていた。アメリカ政府が東京の大使館員に関東から退避するよう命令を出していたことも(報道が出る前から)耳に入っていた。福島第一原発は、容易ならぬ事態に陥っていた。だからこそ都知事として、私が逃げ出すわけにはいかないと覚悟を決めた。
10件のコメント
するめ
やるべき事や信念を持って、それを語れるリーダーだったと思う。国民にいかに伝えるかメッセージの出し方、が秀でていて、小説家って政治家と親和性があるんじゃないかな。加えて実行力も他の政治家に比べて高かった気がします。新たな石原慎太郎は出てくるの
だろうか。...続きを読むお悔やみ申し上げます。
codeblueline
原発だ、放射能だ、コロナウイルスだと、何か起きる度にコワいコワいと言い出す一部国民というのが居て、その国民に恐怖を炊きつけ煽りまくるマスコミによって常に悪者に仕立て上げられてきた与党の政治家には同情を禁じ得ない。政治家が真に公共的なことを行
おうとすればするほど世間からは叩かれるばかりで、正当な評価どころか、氏が文中で述べてるような「最低限の尊厳」すら毀損された状況で、一体何をやれると言うのだろうか?
...続きを読む更に言うなら、マスコミが本当に最悪なのは、単にその報道姿勢に偏りが見られるから(偏ったまま煽るから)ではなく、そうではなくて、その政治家が実際にどのような仕事をしているのかということを、一切無視して報道しない、その一点に尽きると思う。そのことの最大の犠牲者が昨年道半ばにして退任を余儀なくされた菅首相であって、彼の1/10も仕事を行わない現首相が高支持率で支えられているという今の現状は果たして何を意味するのか。現職の政治家がこぞってSNSを利用し、恐らくは石原氏があと20年も若ければ間違いなくYOU TUBEをやっていたであろうと思うのは、単に自分の宣伝を行うということにあるのではなく、自らが日頃やっている仕事を国民に伝えたいから(マスコミが伝えないから!)であろう。
残念ながら、自分は既に国民国家というものに希望も幻想も持てずにいる。資本主義が限界なのではなく、民主主義や国民国家自体が限界を露呈していると考えているため、今までその枠の中で活躍してきた氏の逝去を、真っ直ぐ受け止めることが出来ない。
同時にそれは、私自身からして既に、石原氏の言う「利己的な国民」の一人に過ぎないということであり、そのことを静かに自覚することだけが、氏に対する最低限の礼儀のように思う…。
AMG.uno
東京消防庁のレスキュー隊へのスピーチは感動しました。そこまで腹をくくって指示していたとは。今の世にこのような政治家が欲しい。
たぬ子
自然界
レスキュー隊の放水は必要なかった。あの時必要だったのは関係者を含むすべての人の撤退、避難。
人命が一番大事です。それは軍人だろうが公務員だろうが最高責任者だろうが同じ。生命の危険が及ぶことを簡単に考えてはいけない。
z
海江田氏がヒステリーを起こして批判されていたのはなんとなく覚えていたのですが、自分たちの指揮下にある人員ではなく、借りてきた人員に八つ当たりしていたんですね…。
佐藤優氏が「大きな組織に所属したことがない人間の限界が見えた」と言っていたのを
思い出しました(菅直人は特許事務所、海江田は経済評論家と、いずれもフリーランサー出身)。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細日経ビジネス電子版の会員登録
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