都の新型コロナ「無料PCR」に不満を募らせる検査事業者「承認まで時間がかかり過ぎ」

東京都の無料PCR検査政策に対し、返事がなく承認まで時間がかかると検査事業者が不満

記事まとめ

  • 東京都は1月31日時点で、334ヵ所で無料のPCR検査や抗原検査を実施しているという
  • しかし、整理券は1人につき1枚しか配布されないと都民が嘆いている
  • 検査事業者側も、まったく返事がなく承認まで時間がかかりすぎると不満を漏らしている

都の新型コロナ「無料PCR」に不満を募らせる検査事業者「承認まで時間がかかり過ぎ」

都の新型コロナ「無料PCR」に不満を募らせる検査事業者「承認まで時間がかかり過ぎ」

東京都新宿区にある予約がいらない無料検査場では、都民が列を作っていた

■首相「検査も抜本的に拡充したい」


 全国の新型コロナウイルス新規感染者が1日あたり8万人を超え、なお感染拡大は収まる気配が見えていない。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は昨年11月、第6波に備えて病床や宿泊療養施設の確保、医療体制の強化といった対応策を発表した。中でも、「検査も抜本的に拡充したい」と岸田文雄首相が力を入れたのが、無症状者でも予約することなく、無料で受けられるPCR検査や抗原検査の導入だった。

 これを受け、昨年末ごろから各自治体は、無症状の希望者にも無料でPCR検査や抗原検査を受けることのできる会場を設置し始めた。東京都でも12月23日から〈ワクチン・検査パッケージ制度又は対象者全員検査及び飲食、イベント、旅行・帰省等の活動に際して、陰性の検査結果を確認する必要がある無症状の方〉(東京都福祉保健局ホームページ)、12月25日から〈発熱などの症状のない無症状の都民の方〉(同)を対象とし、現在は334ヵ所(1月31日時点)で無料検査を実施しているという。

 だが、〈「オミクロン株」感染急拡大で自治体による無料のPCR検査や抗原検査を希望する人が殺到している〉(1月25日付産経新聞)、〈自治体の無料検査には感染の有無を調べたい人たちが殺到し、予約が取りづらい状況だ〉(1月27日付毎日新聞)と報じられている。


■まったく返事がない


 濃厚接触者ではないものの、職場内で感染者が出たため無料の検査を受けようと思った都民もこう嘆く。

「自宅近くの薬局でも検査を受けられるというので行ってみると、混雑緩和のため先着順で整理券を配っていると言われました。しかし1人につき1枚しか配布されないので、家族4人が受けようと思ったら全員で出向かないといけません。さらに、検査キットが不足しているそうで、1日10人までしか受けることはできないそうです」

 こうした状況に対し、上記の産経新聞は都の担当者の声として、「会場を増やしたり、検査数も可能な限り上積みしたい」と紹介している。しかし、これに疑問を呈しているのが、都が募集する検査事業に申請を行ったA社である。同社はすでに厚生労働省の認可を得て、現在、1日700~800人のPCR検査を行っており、スポーツ団体や公共団体などのPCR検査を請け負う実績もある。都から要請があれば、1日400人程度の検査が可能だという。

「感染症対策本部がPCR検査などを完全無料化するという方針を打ち出した後、神奈川県などは早くから事業者を募集していたので、東京都の案内を見逃さないようホームページなどもこまめにチェックしていました。結局、12月17日から募集が始まり、申請書類を用意して24日にはメールで東京都PCR等検査無料化事業事務局に送付しました。ところが、受理したのかどうかも含め、しばらく返事がありませんでした。1月4日にこちらから連絡をすると、『申請の申し込みが殺到しているので、承認には1週間前後かかります』と言われました」(A社の広報担当者)


■委託を受けているのでわからない


 当初、無症状の都民に対しての無料検査実施期間は1月31日までとされていたため、A社は「これは間に合わない」と思ったという。

「その後、7日に事務局から書類の修正を求められ、その日のうちに再申請しました。その返事が来たのは1週間後の14日のことです。さらに追加資料の提出、書類の修正を求められました。1つ直せば、次の日にはまた違う箇所の修正依頼が来る。17日までに4回も再申請しました。修正があるならば、何度も修正を繰り返すのは時間の無駄なのでまとめて伝えてほしいし、あらかじめ追加の必要書類などはないかどうか確かめたいと伝えると、事務局でも書類の審査を行っているはずなのに委託を受けているのでわからない、東京都に確認すると言ったまま連絡が途絶えてしまった。何度も連絡し、必ずお電話ください、と伝えてようやく連絡をもらっても要領を得ず、また他の箇所の修正を求められます。25日になって、初めて都の福祉保健局感染症対策本部の担当者から連絡がありました。しかし、また書類の訂正を求められました」(A社の広報担当者)

 申請書類に不備があれば、訂正を求められるのは当然のことである。だが、「可能な限り会場を増やしたい」と言う一方、承認までこれだけ時間がかかっているようでは話にならない。さらに事業者の選定にも不明な点があった。

「知り合いの同業者にも承認されたのかどうか聞いてみたのですが、やはり書類の訂正ばかりを求められて、一向に進まないと話していました。都のホームページを確認しても、追加承認されるのはクリニックや薬局が主体で、民間のPCR検査センターは増えていません。これだけ民間の検査会社の承認には時間がかかっているのに、なぜ木下グループ、J-VPD、MSJ、ピカパカ、ウェルシア薬局などはすぐに承認されたのでしょうか。以前、木下グループのURLだけが都のホームページに掲載されていました。このことからも、特定の業者を優先的に案内していたと言われても仕方がないと思います」(A社の広報担当者)


■年末の特殊な事情で


 こうした疑問に対して、都のPCR等検査無料化事業事務局に取材を申し込んだ。なかなか進まない審査の状況について聞くと、「審査のフローに沿って進めてはいますが、おっしゃるように修正点はまとめて一度に指摘した方が効率的だと私も思いますが……」と話しつつ、正式な回答は改めて行うと言う。

 後日、東京都福祉保健局感染症対策本部の担当者から「申請したものの承認されるまでに時間がかかるという声は、多くの事業者からいただいています」と回答があった。

「言い訳がましくなってしまうのですが、11月下旬に無料検査を行うことが決定し、準備期間が短いうえに、新しい事業ゆえに不慣れな点も多く、お叱りをちょうだいしています。現在は審査体制を強化し、迅速に対応できるよう努めています。

 無料検査は当初、木下グループ、ウェルシアなど180ヵ所で始めましたが、12月17日に事業者募集を広報した後、申請していただいた事業者から順次、審査、承認を行った結果ですので、事前に打診や選定をしているということでは決してありません。

 木下グループのURLを掲載したのは、年末の特殊な事情がありました。もともと総理の発言を受けて予約なしで検査を始めたのですが、帰省のために検査を受けたいという方が殺到し、検査場に大行列ができてしまいました。行列が原因で感染拡大となれば本末転倒です。やむを得ず木下グループでは予約制を導入しましたが、予約なしで検査ができると思っている方に誤った情報を与えないよう、都として周知したいと同社のURLを記載しました。現在は他にも予約制をとっている事業者もあり、削除しています。あくまで予約が必要だというアナウンスで、利益誘導や特定の事業者へ配慮したということではありません」

 検査場はこれからも順次拡大していく予定だという。かつてない感染拡大で、今もまた予約なしの検査場には大行列ができている。突貫の事業とはいえ、東京都にはしっかりとした対応をしてもらいたい。

デイリー新潮編集部

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