2020.02.20 08:00
【森友学園問題】疑惑の本筋は未解明だ
国や大阪府、大阪市の補助金をだまし取ったとして詐欺罪などに問われた前理事長の籠池泰典被告と妻の諄子被告に対し大阪地裁は、それぞれ懲役5年の実刑と懲役3年、執行猶予5年を言い渡した。
裁判では、両被告は「補助金詐取の共謀や故意はなかった」と無罪を主張。補助金申請や契約書の作成などは業者が主導したとしていた。
これに対し判決は、国の補助金詐取については、夫妻が設計業者や建設業者も巻き込みながら手続きを進めたと認めた。「手口は巧妙かつ大胆で、泰典被告は犯行の中心的な立場だった」と指摘した。
森友学園問題は発覚から丸3年になる。判決からは異様な環境の中で建設計画が進んだことが改めてうかがえよう。
判決により一つの節目を迎えたとはいえ、一連の疑惑の全容は見えてこない。疑惑の本筋は別のところにあるからだ。
財務省が学校用地として売却した大阪府豊中市の国有地は8億円余りも値引きされた上、10年間の分割払いという特別扱いだった。開校予定の小学校の名誉校長には安倍昭恵首相夫人が一時就任していた。
問題の発覚後に、財務省の決裁文書から昭恵夫人の名前などが削除される改ざんも判明した。いったい誰がどのような判断で、大幅な値引きや改ざんを指示したり認めたりしたのだろうか。
国会では、昭恵夫人の関与や官僚の忖度(そんたく)も含め追及されたが、政府は交渉過程を記した公文書は「廃棄した」と説明。国民の納得を得られる説明はしていない。
籠池夫妻以外の刑事手続きによる真相解明の道も閉ざされた。
背任や虚偽公文書作成などの疑いで、佐川宣寿元国税庁長官や財務省職員らが告発されたが、大阪地検特捜部は全員を嫌疑不十分などとして不起訴とし、捜査を終えた。
本筋の疑惑はいまなお解明されていない。
一連の問題では、政府の公文書への意識の低さも浮き彫りになった。批判を受け安倍政権は公文書管理のガイドラインを改正し、文書は日常的な業務連絡や日程などを除き「原則として1年以上」保存することとした。
しかし、その後も加計学園問題など文書を巡る疑惑が浮上。首相主催の「桜を見る会」問題でも、安倍政権の公文書への不透明な扱いが浮き彫りになっている。
桜を見る会の名簿は、ガイドライン改正の経緯や会の規模の大きさからみても、1年以上保存すべき文書だ。それを安倍政権は1年未満の文書として「廃棄した」とする。
森友学園問題の反省が生かされていない。長期政権の「おごり」だと批判されても仕方があるまい。国会は引き続き疑惑の解明を続け、公文書管理の是正も迫る責任があろう。