【1月16日付編集日記】懐かしい風景
訪れたことのない土地なのに、なぜか懐かしく感じる風景がある。例えば広島県尾道市がそうだ。海を見下ろせる坂道や細い路地裏、にぎわうアーケード街といったノスタルジックな景色は、大林宣彦さんが監督した数々の映画にも登場する
▼尾道市は、大林さんの古里だ。大林さんが尾道シリーズの第1作目となる「転校生」のロケ地に地元を選んだのは、地方活性化の名の下で古い町並みがなくなっていく前に、愛する風景をフィルムに残したいと考えたからだという(「映画監督50人」東京新聞出版局)
▼大林さんの映画がヒットして尾道に多くの観光客が訪れるようになり、その名は全国区となった。結果として、古い町並みが残っていたことが地方活性化につながったというわけだ
▼郡山市は映画などの撮影の誘致に活用しようと、同市とその周辺で撮影した写真を募っている。写真のテーマは「何げない路地」や「昭和の風景」などで、映画関係者がロケ地を選ぶ際の参考にしてもらう
▼都市の姿は刻々と変化していく。当たり前のように眺めていた風景も、カメラのレンズを通してあらためて見てみれば、かけがえのない宝物がすぐ近くにあったことに気付けるかもしれない。