2022年1月25日
シンガー・ソングライターの吉田拓郎さんが20代のころの曲を聴くと、何かに毒づいているものがたまにある。1970年代半ばのアルバムに収録された「ペニーレインでバーボン」という曲もその一つだ。
歌詞の一部を要約するとこうだ。「テレビでは政治家たちが勝手なことばかり言い合って、見ている者は蚊帳の外」―。もちろん当時の時代背景や若さ故の反骨精神もあったに違いない。そんな中で拓郎さんは、腹立たしく思うような国会中継を見たのだろうか。
国会が中継されるようになって、今年でちょうど70年になる。初めての中継は1月23日。このときはまだ、ラジオである。そのおよそ3カ月後の4月28日には、サンフランシスコ平和条約の発効によって連合国の占領が終わり、日本は主権を回復する。そんな時代だった。
翌53年の2月にはテレビの本放送が開始。これに伴いテレビでも中継されるようになった。以来、歴史的な法案の採決はもちろん居眠りから乱闘、さらには「牛歩戦術」といった”奇手”まで、いろんな議員の姿がリアルタイムで伝えられてきた。質問中の野党議員に対しヤジを飛ばす首相の姿も…。
国会での論戦がスタートした。課題は山のようにある。中継の有無に関係なく真摯(しんし)な議論をしてもらいたい。コロナ禍、貧困、孤独、希望を見いだせない老後など、さまざまなものにあえぐこの国の誰もが決して「蚊帳の外」などに置かれることのないように。