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21世紀の戦記から読み取るパースペクティブ

Perspective read from 21st century war record written by soldier in World War II

篠原真史 佛大社会学 44号 1-11 2020/03/20

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抄録

戦後50年が過ぎ21世紀を迎えたころ,戦争体験者による手記,戦記の出版が増加するようになる。この戦記の特徴は,下士官や兵だった者が事実を「ありのままの戦場の現実を伝えることが慰霊であり,追悼であるという意識から戦争の現実の姿が記されるようになっていく。本稿は2016年に提出した修士論文をもとに,戦場や部隊を「規範の内面化を通して生じる」準拠集団としてとらえ,その根底にある「人間の,自らの世界に体系化されたものの見方」であるパースペクティブを読み取ることを課題とした。これはシカゴ学派のタモツ・シブタニが1955年『パースペクティブとしての準拠集団』としてまとめたものを理論の支えとしたものである。そして,指導者への不信と怒りに支えられた平和主義と非人道的な行為の自省という2点を改めて確認した。これらのパースペクティブは,著者のみならず過酷な経験を経た戦争体験者の多くに通ずるものであり,戦後の社会の世論を形成するものであると考える。

この論文について

G0000019ronshu_BS004400010651
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