「水族館の人気者」イルカが迎える恐ろしい結末

太地町のイルカ猟を毎日記録してわかったこと

そもそも、野生どうぶつの捕獲は生態系への影響が大きく、昨今の環境保護や持続可能性の観点からも、再考する必要があると考えます。これらのイルカには、国際自然保護連合 (IUCN)の絶滅危惧種レッドリストの観察対象となっている種類もおり、自然界への影響も心配されます。日本国内では、環境省が記録し始めた1986年から現在までの間に112種の動植物が絶滅しています。

人間は、今まで多くの野生どうぶつを絶滅に追い込み、自然を破壊し、気候危機への影響も指摘されています。この問題はイルカに限ったことではありません。野生どうぶつを人間の好き勝手に利用してきた時代を見直す時なのです。

「命の大切さを学ぶため」は大義名分でしかない

「命の大切さを学ぶため」「種の保存」といった大義名分のもとに、多くのイルカが捕獲されています。私は政府などに対して訴えをしてきましたが、現在の経済システムでは、イルカショーへの“需要が続く限り”この現実を変えることは困難です。チケットを買ってイルカショーを見に行く人が、ひたすらにイルカが捕獲され続ける、この悲しい構造を支えているのです。

2021年12月14日、子どもを守りながら逃げるスジイルカの家族。この後、屠殺されました(@Life Investigation Agency/Dolphin Project)

昨年12月だけでも太地町では多数のイルカが捕獲、屠殺されました。9日には子ども1頭を含む11頭のカズハゴンドウが、14日には赤ちゃん19頭を含む56頭のスジイルカが屠殺されました。24日にハンドウイルカ14頭以上が生体販売用に捕獲されました(LIAの監視と映像解析での独自調査による)。

19日にはハナゴンドウ16頭が捕獲され、そのうちの11頭が殺され、子どもたち5頭は海に捨てられました。イルカは哺乳類で母親の母乳を飲んで育つため、子どもだけ海に放しても生きていけません。すでに殺された母親を探しながら、衰弱して死んでいきます。

1月に入ってからも5日にスジイルカ19頭、7日にハナゴンドウ17頭、12日には子どもを含むスジイルカ41頭、25日にも同じくスジイルカ19頭が群れごと屠殺されました。8日にはハンドウイルカが6頭、9日に2頭、23日に12頭が生体販売用に捕獲されました。

イルカ猟を巡っては、さまざまな議論があります。しかしどんな理由であれ、命を蔑ろにし、人間の好き勝手に利用してよいという理由にはなりません。そもそも、すべての命が私たち人間と同じように、幸せに生きる権利があります。

ぜひこの記事をきっかけにみなさまが「どうぶつの尊厳(権利)」ということを軸にして考え、行動してくださることを願っています。一人ひとりの具体的な行動が、よりよい未来を作っていくのだと思います。

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