絶対ドアを開けないで――東京への帰国者が体験 「隔離ホテル」厳戒の15泊ルポ

新型コロナウイルスの水際対策として、日本への入国者らに対して政府が行っている隔離措置。仕事で渡英し、帰国後に合計15泊の「隔離ホテル」滞在を経験したライターの鳴海汐さんがそのときの様子をリポートします。

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日に6度のアナウンスの苦しみ

 イギリスと日本は、冬時間では9時間の時差があります。現地出国のしばらく前から不眠症が始まっていたのですが、もしも自分が変異株ウイルスを持ち込んだらと考えると疲れているのにほとんど眠れず、朝を迎えました。

 この施設では、その日に退所予定の人の検査と回収がまず行われ、その後全体に朝食が配布されます。また朝は体温を測り、健康状態をチャットで報告する時間でもあります。

 朝食配布のスタッフとの接触がないよう、配布開始のタイミングでアナウンスが入り、絶対に廊下に出ないよう呼びかけられます。その後配布完了のアナウンスが入るまで、しばらく時間がかかりました。

 食事ごとにそれぞれ2回アナウンスが入るので、日中に寝付くことができても連続して眠ることは難しい状況です。

 お弁当は、朝はホテルのもの、昼と夜は機内食の工場がつくっていると思われるものです。ときに年配の人が好みそうな純和風メニューが続きます。味付けがかなり濃いのに焼き魚は味付けがほとんどなく、これは味覚障害なのかと、食事は戦々恐々とする場面でもありました。
 
 初日はおいしいと思ったお弁当も、冷たいせいか、味が濃いせいか、はたまた運動ができないせいか、眠れないせいか、日に日に食べられなくなっていきました。温かいものを食べるべきだとカップのみそ汁を飲むと、お弁当をだいぶ残してしまうという悪循環が発生。顔がむくみ続け、鏡を見ては落ち込んでいました。

ありがたいサービス

 食事については人によって好みがあるからか、ありがたいサービスが設けられていました。家族の差し入れ、出前などが可能です。お酒が健康状態を把握するために禁止になっていて、そのためかスタッフによる中身のチェックが入ります。

 筆者が利用したのは、スタッフが代行でコンビニに行ってくれるサービスです。本部に電話すると、スタッフが部屋番号を記入したジップロックをドアにマグネットで貼り付けます。そこに現金を入れると、入金を確認したスタッフが買いに行ってくれるというもの。その後電話連絡を受けたら、ドアの外に置かれた椅子の上にある商品とおつりをピックアップします。

 つまりスタッフと接触がない仕組みなのですが、お金を置いたときにふと見上げたら、離れた階段からこちらの様子をうかがっている学生バイトらしきスタッフと目が合ったので、頭を下げて感謝の気持ちを表しました。当初はヨーグルトや甘いものなど、頼むのはワガママかとちょっと悩みましたが、問題なく対応してもらえました。

宿泊所を「退所」

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【画像】「隔離ホテル」で提供されたお弁当(2枚)

画像ギャラリー

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