遊戯王-孤独に巻き込まれた決闘者-R   作:秋風

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みなさんどうもお久しぶりです。秋風です
更新が10日以上空いてしまい誠に申し訳ありません…



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感想ありがとうございました。これからも感想、ご意見、ご指摘などお待ちしております

また、引き続き小説の評価もお待ちしております

というわけで29話となりました。10でアメリカ編は終わりにしようかな、と思っております。
では、どうぞ 


29「夏休み」⑨

フィールド 神縛りの塚

 

バンデット・キース LP1500 手札2枚 伏せカード2枚 場 オシリスの天空竜

 

武藤秋人      LP4000 手札0枚 伏せカード4枚 場 No.39希望皇ホープ

 

「くくく、2枚目の神の降臨だ。俺は更に手札から『強欲な壺』を発動! デッキからカードを2枚ドロー! 更に『貪欲な壺』を発動し墓地の『サイバー・ヴァリー』3体、そしてカードガンナー2枚をデッキに戻し2枚ドロー! これでオシリスの攻撃力は4000だ!」

 

オシリスの天空竜 ATK2000/DEF2000→ATK4000/DEF4000

 

 また攻撃力4000のオシリスが……もともと、オシリスがコピーカードとわかってはいたが、まさかデッキにまだオシリスが入っているとは思わなかった。コピー故にできる所業というやつか。このままではまずい……!

 

「俺は速攻魔法『ヒート&ヒール』を発動! 自分フィールド上のランクが一番低い「No.」と名のついたモンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力分だけライフポイントを回復…よってホープの攻撃力分、ライフを回復する! その後このカードをホープのオーバーレイユニットにする!」

 

武藤秋人 LP4000→LP6500

 

「構わねェ、バトルだ! 行け、オシリス! 希望皇ホープを攻撃しろ!」

 

「罠発動! 『ハーフ・アンブレイク』! このターン、選択したモンスターは破壊されず、バトルダメージを半分にする! 希望皇ホープを選択……ぐっ!」

 

武藤秋人 LP6500→LP5750

 

 その凄まじい攻撃。さすが神のカードというべきか。普通の攻撃であるのならホープのムーンバリアで防げるが、相手は神のカード。故に「モンスター効果」を受け付けない。よって、ムーンバリアは使うことが出来ない……さらに言えば、ヒート&ヒールで無理やりにでもオーバーレイユニットを付けていなければホープは自壊して負けていた。おまけにこのソリットビジョンとは思えない風圧は……直接攻撃なんて受けたら、どうなっていたかはわからない。

 

「しかたねぇ、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン! 俺は手札から『命削りの宝札』を発動! デッキからカードを5枚になるようにドローし、5ターン後、すべて捨てる! カードを5枚ドロー!」

 

 カードを引いたのはいいものの、オシリスはモンスター効果と罠カードを一切受け付けることのないカード……その効果がこの上なく厄介だ。だが、それならば同時に答えは出ている。その攻撃力を超えて殴ればいいだけの話だ。

 

「俺は装備魔法『ナンバーズ・フレーム』を発動! 自分のホープを対象に発動し、その攻撃力を1500ポイントアップさせる! 更に、このカードを装備した時、自分の融合デッキから「No.」と名のついたモンスター2体を装備モンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする! 俺は融合デッキの『No.39希望皇ホープルーツ』、『No.61ヴォルカ・ザウルス』を素材として加える!」

 

No.39希望皇ホープ ATK2500/DEF2000→ATK4000/DEF2000

 

 そのホープの腕にホープルーツとヴォルカ・ザウルスの力が宿り、ホープが雄叫びを上げる。これで再び、オシリスと攻撃力は並んだ。だが俺はこれで終わらせるつもりはない。

 

「俺は更に、ホープに手札から『ZW-雷神猛虎剣』を装備! これによりホープの攻撃力は更に1200ポイントアップする!」

 

No.39希望皇ホープ ATK4000/DEF2000→ATK5200/DEF2000

 

「またオシリスの攻撃力を超えてきやがっただと……!」

 

「2枚神が来ようが、突破する……! 行くぞ、希望皇ホープでオシリスを攻撃! 『ホープ剣スラッシュ』!」

 

「罠カード『八咫烏の骸』を発動してカードを1枚ドロー! これでオシリスの攻撃力は変動する!」

 

オシリスの天空竜 ATK4000/DEF4000→ATK5000/DEF5000

 

バンデット・キース LP1500→LP1300

 

 ダメージを減らすためにドローして手札を増やしたか。オシリスばかりに気を取られていたが、キースには手札が5枚残っている。それに、こんなにあっけなく2体目を倒させるあたり、まだ3枚目が入っていると考えてもいいだろう。

 

「ターンエンド!」

 

「俺様のターンだ! 魔法カード『天使の施し』を発動し3枚ドローして2枚捨てる……ククク、俺は手札から魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動!」

 

 オ、オーバーロード・フュージョン!? 何故キースがあのカードを持っている……いや、それ以前に今のところ神を出すことに特化しているように見えたデッキでいったい何を出すつもりだ!?

 

「俺はさっきの『天使の施し』で墓地に『リボルバー・ドラゴン』と『ブローバック・ドラゴン』を墓地へ送った。この墓地のカード2枚をゲームから除外し、現れろ、『ガトリング・ドラゴン』!」

 

ガトリング・ドラゴン ATK2600/DEF1200

 

「ガトリング・ドラゴン!?」

 

「まずは『大嵐』を発動! 互いのプレイヤーの魔法、罠をすべて破壊する!」

 

 しまった、これではホープの攻撃力が下がるうえ、ZW-雷神猛虎剣を代わりに破壊してホープを守ることもできない……! その上、伏せていたナンバーズ・ウォールとリビングデットの呼び声が潰された……!

 

「ガトリング・ドラゴンの効果発動! 3回のコイントスを行い、表の数だけカードを破壊する! さあ、ロシアンルーレットのスタートだ!」

 

 ガトリング・ドラゴンの頭部、右腕、左腕の銃身が回転を始める。おかしいだろ……ガトリングの時点でロシアンルーレットもクソもないだろ。そんなことを思っていると、その回っていた銃身が止まる。

 

結果 表 裏 裏

 

「希望皇ホープを破壊!」

 

 ホープに向かってガトリング・ドラゴンがガトリングを乱射し、その弾丸の雨を食らうことでホープが打ち砕かれる。

 

「ホープ!」

 

「モンスターの心配をしている場合かぁ? ガトリング・ドラゴンダイレクトアタック!」

 

「ぐっ……!」

 

武藤秋人LP5750→3150

 

「くくく、神なんざいなくてもここまでくれば追いつめたも同然だ……! カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 これでキースの手札は1枚。もう完全にオシリスを捨てて本来の機械族デッキで来ている。だがこれなら逆にチャンスだ。フィールドにオシリスがいないのなら召雷弾を食らうことはない。ならば、3体目が出てくる前に倒す!

 

「俺のターン! 俺は手札から『天使の施し』を発動! カードを3枚ドローし、2枚を捨てる! 装備魔法『ガガガリベンジ』を発動! 墓地へ送った『ガガガマジシャン』にこのカードを装備、ガガガマジシャンを特殊召喚! そして、『エクシーズ・レセプション』を発動! 自分フィールドの表側表示モンスター1体を選択し、選択したモンスターと同じレベルのモンスター1体を手札から特殊召喚できる! だが、効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0になる。俺はガガガマジシャンを選択し、手札の『アステル・ドローン』を特殊召喚!」

 

ガガガマジシャン ATK1500/DEF1000

 

アステル・ドローン ATK1600/DEF1000→ATK0/DEF0

 

「レベル4のガガガマジシャンと、アステル・ドローンでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、『ガガガガンマン』! この時、ガガガガンマンの攻撃力はガガガリベンジの効果で300アップ。そしてアステル・ドローンの効果でデッキからカードを1枚ドロー!」

 

ガガガガンマン ATK1500/DEF2400→ATK1800/DEF2400

 

 フィールドに現れる守備表示のガガガガンマン。しかし、そのガガガガンマンの攻撃力を見てか、キースは馬鹿にしたように笑っていた。

 

「けっ! 攻撃力1800だぁ? 届かねェな! しかも守備表示とは、次のターン、ガトリング・ドラゴンのいい的だ!」

 

「いいや、もう終わりだ、バンデット・キース! ガガガガンマンの効果発動! このカードが守備表示の時に効果を使った場合、相手に800ポイントのダメージを与える。やれ、ガガガガンマン!」

 

 俺の言葉と共に、ガガガガンマンがその守備状態から銃を構えてリボルバーを乱射する。これで、俺の勝ちだ……!

 

「あめぇな! 罠発動『天罰』! 手札1枚をコストにテメェのモンスターの攻撃を無効にし、そのカードを破壊する!」

 

「なに!?」

 

 無効にされた!? くそ、なんであんなピンポイントにモンスターの効果を無効にするカードを持っている。くっ……!

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 フィールドには上級モンスターが2体。それに加えてこっちは伏せカードが2枚のみ。

 

「俺のターン! やれ! ガトリング・ドラゴン! ダイレクトアタックだ!」

 

「まだだ! 罠発動『ピンポイント・ガード』! 相手モンスターが攻撃するとき、自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象とし、そのモンスターを守備表示で特殊召喚する! 俺は墓地の『アステル・ドローン』を特殊召喚! この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない!」

 

アステル・ドローン ATK1600/DEF1000

 

「悪あがきを……ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から2枚目の『アステル・ドローン』を召喚し、レベル4のアステル・ドローン2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ『No.55ゴゴゴライアス』!」

 

No.55 ゴゴゴライアス ATK2400/DEF1200→ATK2400/DEF2000

 

 現れるのは巨大なゴゴゴのモンスター。このカード、アニメと漫画には出てこなかったんだよなぁ……個人的にイラストとか結構好きなんだけど。OCGオリジナルNo.というカードのカテゴリではあるが、別に悪いカードではない……が、他のランク4の性能が良すぎる故に日の目を見ないカードの1枚であることは確かだろう。そう言うカード、結構あるけど

 

「アステル・ドローンの効果でカードを2枚ドロー! そして俺は伏せていた『エクシーズ・ソウル』を発動! 自分の墓地のエクシーズモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスター1体のランク×200ポイント、攻撃力をエンドフェイズまでアップさせる! 俺が選択するのはホープ・ザ・ライトニング! そのランクは5……よって、攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

No.55 ゴゴゴライアス ATK2400/DEF2000→ATK3400/DEF2000

 

「バトルだ! ゴゴゴライアスでガトリング・ドラゴンを攻撃!」

 

「速攻魔法『突進』を発動! ガトリング・ドラゴンの攻撃力を700アップ!」

 

「なっ!?」

 

ガトリング・ドラゴン ATK2600/DEF1200→ATK3300/DEF1200

 

 ま、またピンポイントにダメージを軽減してきた!? ゴゴゴライアスがその拳で叩き潰そうとガトリング・ドラゴンに迫るも、その突然の突進でゴゴゴライアスの威力が弱まってしまう。ゴゴゴライアスはガトリング・ドラゴンを撃破したものの、バンデット・キースに与えるダメージはごく僅かなものになってしまった。

 

バンデット・キース LP1300→L1200

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「俺様のターン! 早すぎた埋葬を発動してガトリング・ドラゴンを蘇生、効果発動!」

 

バンデット・キース LP1200→LP400

 

 その言葉と共に再び現れるガトリング・ドラゴン。その両腕、そして頭部のガトリングが回転を始める。させるか……!

 

「この瞬間、罠発動『エクシーズ・ブロック』を発動! 自分フィールドのエクシーズモンスターのオーバーレイユニットを1つ取り除き、相手モンスターの効果を無効にし、破壊する!」

 

 ゴゴゴライアスがその周囲に漂うオーバーレイユニットを掴みとり、そのままそれをガトリング・ドラゴンへと投げつける。そのオーバーレイユニットはそのままガトリング・ドラゴンに激突し、爆散した。その光景を見たバンデット・キースの顔が苛立っていくのが判る。それもそのはず。時間はもうすぐ10分……海馬コーポレーションの社員がこちらへと辿り着くころだ。リアルファイトになればグールズと海馬コーポレーションのエージェントでは結果は火を見るよりも明らか。その行く手を阻むグールズはすでにお縄になっていると、耳に装着していたイヤホンからも情報が来ている。恐らくそれは向こうも同じだろう。

 

「クソがっ……どいつもこいつも使えねェ!」

 

「終わりだ、バンデット・キース……もうすぐ、お前の仲間を捕らえたKC社のエージェントがここにくる」

 

『武藤秋人様。後2分ほどでそちらに到着します。それまでキースへの時間稼ぎをお願いしたい。後はそこにいるキースと、2人の部下のみです』

 

 俺の耳にKC社のエージェントの声が響く。これでゲームエンド……本当なら、デュエルにもちゃんと決着をつけたかったところだが、今回はそれが目的ではないからな。フィールドにカードは無くキースの手札は1枚……これで決着は……

 

「ククク、ククククク!」

 

「……? 何がおかしい」

 

「どいつもこいつも使えねェ、さらには俺様の邪魔ばっかりしやがってよぉ……ふざけやがって! ネオ・グールズは……! 俺様はこんな所で終わるわけにはいかねぇんだよ! 手札から魔法カード『命削りの宝札』を発動! カードを5枚になるようにドローし、5ターン後にすべて捨てる! そして……『死者蘇生』を発動!」

 

 この局面で死者蘇生!? またガトリング・ドラゴンを蘇生され、効果でゴゴゴライアスを破壊でもされたらジリ貧になる……そう思った直後、俺の体へ寒気が走る。途方もない巨大な恐怖を俺は感じ取った。そのフィールドに出された死者蘇生の光が妖しく光っている。まさか、バンデット・キースは……!

 

「甦れ……『オシリスの天空竜』!」

 

オシリスの天空竜 ATK XX00/DEF XX00→ATK4000/DEF4000

 

 バンデット・キースの言葉と共に現れる写し身のオシリスの天空竜。だがそのオシリスの姿は先程2度に渡って出てきたオシリスとは異なっていた。その真紅の体にはどす黒い瘴気が渦巻き、周囲が暗雲に包まれる。対面している俺だからこそ分かる……オシリスが今、“敵”と認識しているのが誰なのか……!

 

「よせ! “神縛りの塚”で制御していない神のカードのフェイクを出したらどうなるか知っているはずだ……!」

 

「黙れ! これで俺の勝ちだ! いけ、オシリス! ゴゴゴライアスを攻撃しろぉ!」

 

 俺の言葉に耳を貸さず、バンデット・キースが叫ぶ。もはや苛立ちで正常は判断が出来ていないのだろう。そこに、かつて「プロフェッサー」と呼ばれた男の姿はなかった。本来ならば、その宣言とともにオシリスが攻撃体制に入り、ゴゴゴライアスをサンダーフォースで吹き飛ばす……が、その時はいくら待っても訪れなかった。

 

「何をしてやがるオシリス! とっとと攻撃を……」

 

 そこまで言いかけて、バンデット・キースは言葉を止めた。いつの間にか、オシリスの長い体がバンデット・キースを囲み、サンダーフォースを発射しないままバンデット・キースを睨み付けていたのだから。そしてだんだんとその身が黒く染まっていき、その夜の空と一体化していくオシリスの天空竜。その怒りを宿した目は二度も神縛りの塚によって自身を押さえつけていたバンデット・キースに向けられていた。

 

「っ……!? やばい!」

 

『―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!』

 

 ミラに結界を頼もうとする俺の言葉はオシリスの咆哮によって遮られ、そのオシリスの攻撃が発射される。本来ならソリッドビジョンから攻撃を受けることはない。が、このカードは神のカードであるがゆえに、現実にも影響を及ぼす。地面へと着弾するサンダーフォース。その着弾地点は勿論バンデット・キースがいた場所……オシリスの放ったサンダーフォースによってバンデット・キースは見えなくなった。さらに、その衝撃がそこから地面へと響き渡る。たかがソリッドビジョンのはずが、その攻撃が地面に衝撃を生み、立っていられないほどの揺れを生み出していた。その衝撃で近くにあった公園の外灯が俺の方へと倒れてくる。突然の事に反応できないし、ミラたちの結界も間に合わない……やばい!

 

「ぐっ……!? しまった……!」

 

「秋人! 危ない!」

 

「っ!?」

 

 倒れてくる外灯を避けられない、そう思った時だった。その言葉と共に、俺は公園の草むらから飛び出してきた誰かに突き飛ばされ、その突き飛ばしてきた人物と共に地面へと倒れこむ。そこにいたのは白いデュエルアカデミアの制服に身を包んだ1人の女子生徒の姿……それは

 

「レジー!?」

 

「あ、秋人、大丈夫……?」

 

 俺を庇うかのように、俺の上に覆いかぶさるレジーの姿がそこにはあった。

 

「レジー、どうしてここに……」

 

「秋人が、アメリカ校の制服を着て、こんな遅くに出ていこうとするから……何かと思って後をつけていたの……そうしたら、秋人がグールズと闘っていて……」

 

 震えるような声でそう俺に言うレジー。そうだ、オシリスは……!? 俺はそう思いその空を見上げる。しかし、そこにすでにオシリスの姿はなく、デュエルをする前と変わらぬ星空が広がっていた。俺の視線の先にあるのは倒れたバンデット・キースのみ……あれは、生きているのだろうか。

 

「オシリスは、消えた……か、レジー、もうすぐKC社のエージェントが来てくれるからそれまで……」

 

「……っ! うっ……うぅ……」

 

「レジー!? どうした!?」

 

 どこかに座って待とう、そう言いかけたところで、レジーの目には大粒の涙が溢れていた。どこか怪我をしたのか、そう思った俺だったが、レジーはすぐに俺に抱き着いてきた。

 

「うあああああああああああああああああああああああん!!!! 怖かった、怖かったのよ! 秋人が、あんな化け物みたいなカードと闘っているのが! あの化け物みたいな神のカードが! 秋人が死んじゃうと思って私……それが何より怖くて……!」

 

「レジー……」

 

「秋人が、無事で……よかった……!」

 

「……助けてくれてありがとう、レジー」

 

 こうして、KC社のエージェントが来るまで助けてくれたレジーに感謝をしながら、泣きじゃくる彼女をあやすことになるのだった。

 

 

 

 

デュエルアカデミア アメリカ校 宿舎

 

「ねえ秋人? 私やっぱり自分で……」

 

「気にしなくていい。その足は俺のせいでそうなったんだ……これくらいさせてくれよ」

 

 そう言いながら、俺はレジーの座る車椅子を押してその寝静まった夜のアメリカ校の宿舎へと戻ってきた。結局あの後、KC社のエージェントに保護された俺達。無事にバンデット・キースをはじめとしたネオ・グールズの面々は捕まったが、オシリスの怒りを受けたキースがどうなったのかはわからないし、あの男が使っていたデッキも全てコピーカードということでKC社のエージェントが厳重に保管して持っていった。社長から後日連絡が来るというのでその報告を待つほかない。で、何故レジーは車いすなのかというと、レジーは俺を助ける時にその足に倒れてきた外灯が直撃していた。骨が折れてこそいないようだが、明日精密検査をする必要がある。こうなった原因は俺にあるので、俺は彼女の車椅子を押して、彼女を部屋まで送ることにした。

 

「ありがとう秋人、ここが私の部屋よ。ここまでで十分」

 

「……レジー、本当にすまなかった。俺は「秋人」……」

 

「もう何回も貴方の謝罪は聞いた。それに、貴方の命は助かった。そして私はこの程度の怪我で済んだ……秋人、貴方言っていたじゃない。神の写し身を使ったもの、戦ったもの、そのどちらも最悪は死に至るって……なら、私はいい結果だったと思っているわ。だからもう謝らないで?」

 

「……わかった、訂正する。ありがとうレジー。俺を助けてくれて」

 

 俺の言葉に満足をしたかのように笑みを見せるレジーは「よろしい」と言って俺の腕を引く。そして、彼女の唇と、俺の唇が触れた。数秒の沈黙の後、レジーがゆっくりと車椅子を後ろに引いた。

 

「レジー……?」

 

「うふふ、お休み…また明日ね? 私の旦那様(マイダーリン)。私は諦めてないからね」

 

 そう言ってレジーいたずらな笑みを浮かべると、扉を閉めて鍵をかけた。数秒の沈黙の後、正気に戻った俺はその場を後にすることにした。レジー諦めていないといった。つまり、俺達の関係にはすでに気付いているということになる。

 

「どうすればいいんだ、俺は……」

 

 そうため息を吐き、俺はようやく自分の部屋へと辿り着きドアを開けた……が、そこで待っていたのは、明らかに不機嫌な様子で仁王立ちをする2人の少女たちの姿。言わずもがな、雪乃とツァンである。

 

「「お帰り秋人」」

 

「……ただいま」

 

「就寝時間を過ぎてまでどこに行っていたのかしら? そんな恰好で」

 

「ボクたちにちゃーんと、説明してくれるわよね?」

 

「……了解」

 

 どうやら、俺はまだ眠れそうにないらしい……

 




リメイク前にはない完全オリジナルの為変更についてはなし

VSキース決着
キースについては次回。そしてまさかのデュエルは中断という

オシリスの怒り
そら、2回も神縛りされればキレもしますわ。イメージ的には漫画のコピーラーみたいな感じになったとイメージして頂ければ

キースの奇行
最早、お薬漬けな上に追い詰められた故の行動。いわゆる「カッとなってやった」

レジー大活躍
この役目、本来は雪乃たちでした。が、レジーへ変更

神の写し身と闘った者の末路軽くね?
GXだとなんかマイルドっぽかったのでいいかな、と

レジーの恋の行方
ツァンが両サイドを固めると言っていましたが、まだ前と後ろが空いてる。つまりはそういうことです

Next 30「夏休み」⑩

次回、ノース校編は……

  • 十代と万丈目のデュエルが見たい
  • デュエルよりも修羅場が見たい
  • レジーを付け狙う生徒と秋人がデュエル!

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