あなたの愛を思い知る。
佐為ヒカ風。
ふとヒカ碁好きだったなぁ、スミヒカ好きだったなぁとじんわり再熱しはじめた。
需要もブームも関係ないこの抑えられない衝動。冷めないうちに書いとかんと。
だらだらと長い。
ヒカルは勉強がイマイチなはずですが、佐為の話を書こうと思うとどうしてもある程度の知識がないと小説ではうまく伝わらないし、完全な第三者視点じゃ面白くないし、と色々考えて(まぁ十二単と書くか女房装束と書くか迷うレベルだけれども)ヒカルは佐為のおかげで日本史はそこそこいけるよ、という感じになってますよ。まぁ書いてる私が日本史イマイチなんでそれ以上にはなれないんですけど。
北斗杯をまるっと無視してます。たぶん北斗杯はええ感じに参加してええ感じに終わったんや。
さて、佐為のいた平安とはいつのことか、ということに関しては千年というワードとともに単純に連載開始1998年から千年引いて長徳から長元あたりかなぁと考えているのですがそれって藤原氏摂関政治の時代かぁ平安っぽさは後白河ぐらいまで欲しいわぁということで佐為に関しては千年まるまる意識があったという風な設定してます。色々捏造注意ですので無理やわ・・・思ったらすぐこの窓を閉じて君のお気に入りの同人誌を棚からそっと引き抜くんや。
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あなたの愛を思い知る。
佐為に扇子を手渡された夢をみてから、幾らか経っただろうか。
もともと夢を深くみるほうではなかったはずなのだが、とても頻繁に夢を見るようになった。その夢に佐為はいない。だがわかるのは、それはみたこともない景色だということで、教科書の絵であった水干や女房装束などを身につける人々が映っていた。歴史は佐為に頼りきりだったことを反省し、また佐為のことをきちんと知りたいと思った時期があり、昔よりも日本史に詳しくなったと思ったが驚くほど見慣れない風景にぼんやりとして目を覚ました時、寝てた気がしないと同時になんの感想も浮かばなかった。
佐為が、恋しいのかな。
御簾のかかったその奥に長く重苦しい女房装束と髪の毛が見えた。時代劇でもそうそう平安の衣装など見ないというのに、まるで見てきたかのような鮮明な映像だった。不思議な夢だ。もしかしたら平安時代にタイムスリップしていたのかも、と疲れの取れない体を起き上がらせた。
その日の手合いも調子よく勝てた。日に日に感覚が研ぎ澄まされるようで、思考は冴え渡るばかりなのだが、碁盤から離れて考えることは夢のことばかりだった。平安時代と思われる光景はどんどんと見える範囲が広くなっていき、それはゆっくりと成長しているかのようだった。一瞬悪霊にでも憑かれてるんじゃ、と思ったものの今までがそうだったじゃん、と悪霊ではなくとも犬っころのような幽霊を思いだし笑みがこぼれた。むしろ夢を見ているときは佐為の生きた時代をもっと知りたいと思うあまり集中するのか、寝ても寝ても起きたときは疲れが取れていない。
今日も夢をみる。
少し目線が高くなり、十二単と俗に言われる女房装束が覗いていた部屋からは遠く離れた部屋でいることが多くなった。どこかはわからないけれど、なんとなく自室という感覚が伝わる。 畳が二枚敷かれたそこでおとなしく座っていると直衣姿に烏帽子をかぶった男が入ってきた。おお、平安っぽい、とそこで思ったのだがその男は意味不明なことを言い出した。この夢ではじめて誰かが喋っているのだが、言葉がどうにもなまりが強いのか聞き取りづらい。しかしどんなご都合主義なのか、意味はなんとなく理解できるのだからすごい。この男は「お前も七歳だから、漢字を習い始めようか」そう言っているのだ。
(え、七歳?)
なんだそりゃ。小首をかしげたくなったが男は続ける。「真面目に頑張れば、囲碁と双六を教えてやろう」そうしてはじめてわかったのは、この映像の持ち主が「はい」と頷いたことだった。
(おい、まさか)
七歳の子供はパタパタと外へ行き、心なしかワクワクとした様子で周りを見回している。今まで気づかなかったことが不思議なぐらい感情が流れてきて、これは俺が見ている映像、ではなく他人の視界なのだと理解した。小さな足で苔むす石を踏みつけながら遣水にかかった小さな橋からちぎったスミレの花を落として流れる様を見るために覗き込んだ。はらりと黒い美しい髪が視界へ入った。
(佐為?)
水面に映るその頑是無い顔は、はじめてみる幼さだった。