蛇足。逆行したけど佐為がいない物語
いっぱいランキングに入れてもらえて嬉しい「逆行したけど佐為がいない物語」の本編にいれれなかった話とか後日談とかそんなん。豚がおだてられて書いたのはいいけど本気で蛇足。きちんとした続編って感じではないので続編希望されてた方々すみません。でも正直続編希望ってもしかして佐為の登場を期待されているのでは、と思うと土下座しかない。これ、佐為がいない物語なんすわ・・・。
短編集みたいだけど全部続いてる気がせんでもない。
あといわゆる「ちゃんねる形式」が嫌いな人は掲示板の話を飛ばしてください。
(プロ試験予選の年齢制限を30にするか22にするかすごく迷ったんですけど22にしてます。てことで椿俊郎22やね!捏造注意はもういわなくていいっすか?)
11/14女子14位男子44位色々ランキング入りありがとうございます。ブクマコメント評価、感謝感激。そして恐縮です。いいのか、こんな佐為狂いのヒカルでいいのか!
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●逆行したけど佐為がいない、の蛇足
●佐為ヒカ要素あり
●アキ→ヒカ要素がほんのりスパイス
●掲示板の話はちゃんねる形式
●捏造はいつものこと
●作者は囲碁は打てない
母親の話。
正直、うちの息子についていけない。
明日から夏休みだけど、どこか遊びにいくの?と聞いたはずだった。
「あ、棋譜審査通ったから明日は外来予選受けてくる」
「予選?きふ?一体なんのことなの」
「何って、囲碁だよ。囲碁のプロ試験」
「囲碁、でプロ?何、お母さんそんな話聞いてないわ。だいたい子供のあんたが」
「え、そうだっけ。子供ってもプロ試験の年齢制限は二十二だし、合格するのは大抵十代だぜ?
適齢期だよ、適齢期、もう山本の爺さんには言ったんだ」
美津子は口をぽかん、と開けたまま閉じることもできなかった。そんなことを気にした様子もなく棋譜審査料でお小遣い全部使っちゃった、予選受かったら受験料出してほしいなどと言い残してリビングから去っていく。
どうにも幼少期から奇天烈な行動をとることの多い子であったと思う。
祖父の影響かそれまで外でサッカーしていたのに急に囲碁にのめり込んで、その時は子供の気まぐれと思っていたがどうやら今も続けているようであるし、そもそも中学で美術部に入部したということさえ寝耳に水で、しかもコンクールで入賞もしているとの話だ。
さらにいえば去年はヒカルの画力をかってスポンサーとなりたいという人がいる、だなんていう話になり、首をかしげながら挨拶へ行けば壮大な邸宅へ招待され、ヒカルの才能、芸術とそのバックアップについて真摯に説得を受け、現在住み込みをしているのかというぐらい山本蒼元さんのお世話になっている。画材のお金を出さなくていいとかそういうレベルではない。華道に書道にとお金がかかるだろう習い事を教わっているらしく、所作や表情にもそんな知的な教養が見え隠れするようになって驚きが隠せないし山本さんにはもう頭が上がらない。ヒカルは老人の暇つぶしだ、なんていうがとんでもない、と思った。
それだけでも異例だというのに、このまま日本画家となるのだろうか、と頭を悩ましているうちにこれだ、囲碁のプロとはどういうことなのかさっぱりわからない。そんなに囲碁にのめり込んでいたなど初耳であるし、高校の受験はどうするのか、あかりちゃんとはどうなのか、山本さんに言ったというのは援助をやめるということなのか、問い詰めたいことはたくさんあった。
旦那に相談したり祖父の話を聞いてみたり、囲碁について調べてみたり、状況をなんとか把握しようとしているうちに、ヒカルはプロ試験全勝して受かった、などと平気な顔でいってくる。
式典のためにスーツが欲しいだの、山本さんが個展をしてくれるらしいなど信じられない事実をぽんぽんと新たに放り投げてきてもはや諦めの境地にたちそうだ。
そしてある日の新聞で一面に息子がいた。
美津子の悩みの種はつきない。