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この作品「逆行したけど佐為がいない物語」は「ヒカルの碁」「進藤ヒカル」等のタグがつけられた作品です。
逆行したけど佐為がいない物語/からなぎの小説

逆行したけど佐為がいない物語

22,898 文字(読了目安: 46分)

タイトルのまんま。佐為でてこない。テーマはすれ違い勘違い。
相変わらず場面転換多めでブチブチ切れてて無駄になげぇっすすんません。どんどん長くなっていきモブキャラは増え一体私は何を書いているのかと自問自答しつつ(でも連載とかにすると途中で心折れてエタル人なんだよぉ)
腐った要素はいれてないつもりだけど佐為ヒカと言い張る。
オリキャラやら捏造やらひどいので無理かもとおもったら皆バックスペースを壊れるまで連打だ!

アキラくんってわりと気持ち悪いよね?アキヒカタグ入れたほうがいい?

11/7 2015年10月31日~2015年11月06日付の[小説] ルーキーランキング 23 位に入ったようで。ブクマやコメントも、大変ありがたいです創作意欲わきます。みんながまだまだヒカ碁好きみたいで嬉しい。(正直床をローリングしたわ)

2015年11月6日 10:04
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強くなる、うまくなる、それらに必要なものは才能だろうか、環境だろうか、意志だろうか、色々な答えがあるかもしれないが、最も必要なものは経験。練習。時間。体を自らがより自由にうごかすためには反復が必要であり、経験と勘、幾多の修羅場を潜ることで鋭さを頭脳に叩き込む。

進藤ヒカルは、おそらく同年代よりも稀有な人生を送り数多の戦いをくぐり抜けてきたといえる。純粋に才能と師匠に恵まれていたともいえるが、経験、それも極上の戦いを目の当たりにし続けていて、それゆえに彼が同年代よりも飛び抜けたセンスと強さを持っているのは、いっそ当たり前と言ってよかった。

「おーい塔矢」

「進藤っ、君はインタビューがあっただろう!」

何故ここにいる、と検討室にいた塔矢アキラに咎めるように尋ねられ悪びれることもなくヒカルは笑ってごまかした。塔矢以外にもヒカルの一局を見に来ていた人間は多く、狭苦しい検討室の椅子はすべて埋まっていた。机に並べられた先ほどの一局を覗き込み、相手が投了する寸前に碁石が並べられており、検討が聞きたいと言い出すヒカルに塔矢はため息を吐いた。

「まったく・・・おめでとうぐらい言わせたらどうなんだ」

「何いってんだよ!まだリーグ入りだぜ?」

「おいおい、今日の一戦で一気に七段に昇段しといて!」

本気で本因坊タイトルを取るつもりのヒカルに、祝いの言葉をかけようとした門脇がそういった。一緒にいた和谷は初タイトルで本因坊かよ!調子にのんな!と諌めるように、伊角はとりあえずおめでとう、とそれぞれ声をかけた。先ほどまでの張り詰めたような空気とは違い、賑やかになった検討室、テレビに近い奥の席にいた塔矢行洋は思わず顔を綻ばす。机をはさみ斜め前の席へ腰掛けていた緒方はどうかしましたか、と尋ねた。

「いや、進藤くんは本当に空気を変えるのが上手い」

「空気を読めないだけじゃ?」

「ストイックに碁盤に向き合えるのに一瞬でリラックスできる、彼の戦い方もそうだが・・・緩急の付け方が上手い、そしてそれに周りを巻き込める。そういう子は伸びるのが早いよ。アキラもうかうかしていては次の十段戦や碁聖戦でタイトルを奪われてしまうかもな」

「また、評価の高い・・・まぁアキラくんは肩の力を抜けないタイプですしね」

ワイワイと碁盤を囲み検討をしだした様子を眺めながら緒方はメガネを押し上げてから古臭いパイプ椅子から立ち上がり、ヒカルに絡みにいった。おい、俺たちに挨拶もないとはどういうことだ、なんていったものだからヒカルは変わらぬ子供っぽさで緒方に文句を言って、すぐ塔矢行洋のもとへと挨拶へいった。


塔矢行洋の言うとおり、三年後にはヒカルは碁聖と天元のタイトルホルダーとなり、そのさらに2年後には本因坊戦も奪取することとなる。







三大リーグに参加し名実ともに一流の棋士となって、そしてタイトルホルダーとなって、プロとなって、結構な時が経ったはずだが未だに小学生の頃を、中学生の頃を思い出すことが多い。たった三年と少し、あんなにも濃密で稀有な人生経験はこれからもないのではないかと思っている。

朝起きて、鏡をみればもうずいぶん大人となってしまった自分が映っていた。


(もしも、佐為が今もいたら)


いや、佐為はいない。そして、もしいたとしても、彼は変わらない。
記憶の中の佐為はいつまでも美しく涼やかだ。ヒカルは時折どこかで佐為を置き去りにしてきたような気持ちになる。少しずつ、少しずつ自分のなかの佐為が消えていくのがどうしようもない恐怖で襲ってきて、その度ヒカルは碁盤と・・・紙に向かうようになった。

ヒカルの記憶力は人並み以上ではあったが、所詮は人間、忘却は避けられるものではなく聞こえていたはずの佐為の声に関してはもはや朧げになりはじめ、その時ヒカルは絵を描き始めた。取りつかれたようにガリガリと鉛筆を画用紙に滑らせて、いっそ見事なほどの画力のなさに絶望した。

だがヒカルは、これ以上忘れたくなかった。佐為の顔も姿も優しさも、忘れないとは自信を持って言い切れない。そんな思いをもって習ったこともない絵を、同じ絵を何度も何度も記憶を頼りにかいた。最初は佐為とは言い難い、人とさえ言い難い、そんな落書きだったが記憶をなぞっていれば忘れることもないだろうと、ヒカルはいくら下手でも佐為を描くことはやめなかった。佐為との対局を思いだし、棋譜をつけたり、因島の風景を描きに行ったり、佐為との記憶をたどるのは囲碁とはまた違い、楽しかった。

幾千ものプロと戦い、しのぎを削る戦いを制し、成長してきたと思う。爪はずいぶん磨り減った。碁盤もずいぶん古くなった。塔矢アキラにも勝ち越すことが多くなった。緒方さんにも勝てるようになってきた。雑誌にでて、新聞にでて、テレビにでて、進藤ヒカルの名前が広がるたびに、思うことがあった。


「俺、強くなったんだけどなぁ・・・」


きっと、佐為を楽しませることができる。
今の俺と、打ってほしかった。

コメント

  • オララ

    さいっこうに面白いです!!! 何度も読み返しちゃいます! 素敵な作品ありがとうございます!大好きです!!

    2021年12月11日
  • あおじ

    なんか凄い作品に出会ってしまったと二週目を読んでます。 好きです

    2021年3月14日
  • 小駒
    2020年10月9日
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