家族感染を防ぐ「家庭内別居」実践ルポ 待ち受けるのは自由気ままか、ギクシャクか
外出自粛の要請が続くなか、「家庭内感染」の問題が取り上げられるようになりました。家族同士の感染を防ぐために家族がバラバラに生活する「家庭内別居」をすると、どのようなメリット・デメリットがあるのか? ライターの鳴海汐さんが実践した体験を報告します。
つい相手を避けてしまう無意識の振る舞い
両親と入れ替わりに台所に入ると、筆者は窓を開けて(相手には換気をお願いしていたのですが、窓は閉まったまま!)、次亜塩素酸水で消毒。テーブル、冷蔵庫、ポット、電子レンジのハンドル、クッキングヒーターのスイッチ、蛇口のハンドル、テレビやリモコンのスイッチ、さらに冷蔵庫内の、家族が触ったであろうヨーグルトのケースなどを拭いていきます。これを毎食時前に行います。
筆者はもともと清潔を好み、除菌ティッシュも日常的に使うのですが、「時間差」を取り入れたことにより家族との「心の距離」が生まれ、彼らが触るもの全てをきれいにしなくてはという意識が生まれてしまったのです。当初は、たとえ筆者が感染したとしても、重症化しかねない両親にだけは絶対うつしてはいけないと、そう思う気持ちの方が強かったのに、です。
そんななか、ふいに父と距離が近づいた際、ついサッと身をかわしてしまい「そんなに避けなくてもいいじゃない……」と悲しげに言われてしまいました。
これは、役割通りに演じることが心理にも影響を及ぼしたという米スタンフォード大学の心理実験のようです。日常に決められた振る舞いが、知らぬ間に自分の感情にも強い影響を及ぼしていました。
世界で最も感染者数の多い米ニューヨークでは「人を見たらコロナと思え」というムードがまん延していると、現地在住の女性ライターが報告していましたが、そうした意識が気づけば家族相手にも向くようになり、また他人ではなく家族であるだけに「建前」のないあけすけな態度を取ってしまっていました。
「別居」によって、家族のコミュニケーションも減ります。これまでは夕食時に家族皆でニュースを見ながら1時間以上会話をしていたのが、基本的に、会話はドア越しに必要事項を話す程度になりました。
孤独を感じつつ、ついつい両親を避けてしまう自分の冷たさにも落ち込む日々。家庭内感染の予防のために「別居生活」をするのなら、事前の取り決めや信頼関係が大切だと痛感しました。
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