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2018.11.29

【社会貢献特集:前編】社会貢献で儲ける時代へ。「社会のために」で企業も成長する

【社会貢献特集:前編】社会貢献で儲ける時代へ。「社会のために」で企業も成長するのイメージ

企業活動の最優先事項は目先の利益追求にある。長らく常識だったそんな考え方が最近変わりつつある。「社会貢献で儲ける」はどう捉えられているのか。

「社会貢献でお金を稼ぐ」という言葉に対し、あなたはどんなイメージを抱くだろうか。

「社会的弱者から搾取する」などあまりよくないイメージを想起された方がいるかもしれない。また、日本には「清貧」という言葉があるが、正しいことをする際に、無理に富を求めることを忌避する向きもあるかもしれない。

しかしそんな日本で今、「社会貢献で儲ける」ことに対する定義や理解が進み、社会貢献を取り巻く環境は大きく変わりつつある。

企業が経済活動を続けるにも社会貢献の視点は不可欠になり、またNPOなどの社会貢献組織も、その持続可能性を担保するための経済活動の視点が求められるようになっているのだ。

歩み寄る企業とNPO、社会貢献と企業活動の垣根がなくなった?

では、このような変化はなぜ起こっているのだろうか。企業の社員を途上国に派遣する「留職プログラム」などを運営するNPO法人クロスフィールズ代表の小沼大地さんに聞いた。

「『社会貢献で儲ける』という表現の是非は置いておいて、間違いなく変化は起きています。変化が起こったきっかけは二つの要因があります。一つ目は、企業がCSV経営を重視するようになったこと。二つ目はNPOなど社会貢献の世界からもソーシャルビジネスが台頭したことです」と小沼さんは解説する。

一つ目のCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)経営とは、2011年に米ハーバード大のマイケル・ポーター教授らによって提唱された概念だ。
「企業は『利潤という経済的価値』だけではなく、『社会への貢献度という社会的価値』を同時に追求することで、イノベーションを生み、新たな事業創造につなげられる、という考え方です」と小沼さん。

では、二つ目の社会貢献の世界で台頭するソーシャルビジネスとは何か。
「従来の社会貢献の担い手だったNPOは、企業や個人からの寄付金や、行政からの助成金で運営するのが一般的でした。ただ、社会課題の解決のためには健全な利益も必要だと考えるビジネス経験者がNPOにも多く参加するようになり、その結果、ビジネスの手法を活用した社会課題解決、逆に社会課題を目的としたビジネスという意味合いで、『ソーシャルビジネス』という言葉を使うようになりました」

こうした両者の意識の変化から、以前なら考えにくかった「企業とNGOやNPOのビジネスでの連携」が生まれ、今では会議室で一緒に協働関係を築くような仲になってきたという。

このように、経済活動を主に置いていた企業はより社会貢献の実現へと動き、社会貢献を目指すNPOは経済活動による自立を目指すことで、「経済活動と社会貢献」はその垣根を取りはらい、融合を始めているのだ。

「社会貢献でお金を稼ぐ」ことを悪いイメージでとらえていたのは、すでに過去のこと。今や「お金を稼ぐには社会に貢献すること」が求められ、「社会活動するためには、持続可能なお金を稼ぐこと」が必須な時代となっているのだ。

テクノロジーの進化で、途上国でのビジネスチャンスが社会貢献に

このような環境の中、社会貢献を模索する企業が注目するキーワードが「BOP(Base Of the Pyramid:ピラミッドの底辺)」と「テクノロジー」だ。

発展途上国での企業活動として注目されるBOPは従来、貧困層を「マーケット」としてのみ見ることが多かった。
そこでは製品やサービスの単価が安く、薄利しか得られないケースがほとんどだったが、「今や途上国ビジネスのスケールが変わってきている」と小沼さんは説明する。そのけん引役となっているのが、最新のIoT機器の普及である。

「たとえばインドのある農村部では、牛にIoTのデバイスをつけることで、搾乳の最適なタイミングを計ったり、市場価格と連動して自動的に値付けしたりしている。たとえ単価が安くても、こういうデバイスが普及すると、インドだと9億人の貧困層に一気にアクセスする可能性がでてくる。以前のように高価な機械を導入しないと大量生産できない時代では、もはやなくなっている」

テクノロジーの進化により、途上国での社会課題解決の余地が広がったことで、企業も「社会貢献と経済活動の両立」を実現できるようになったというのだ。

国連の「持続可能な開発目標」と、対応に動き出す企業の現場

もう一つ、企業を動かす大きな潮流がある。2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」だ。このSDGsは日本の文部科学省なども注目しており、公立小学校の授業で取り上げたという事例もあり、今後より大きな動きとなる可能性を秘めている。

こうした流れを受け、SDGsが掲げる「貧困をなくす」「飢餓をなくす」などの目標を、経営の中長期計画に組み込む企業が増加した。小沼さんの元には、企業の経営企画部や新規事業からの問い合わせが頻繁にくるようになったという。

「SDGsを取り入れるようにと言われたけれども、何から始めていいのか分からない。どのように掘り下げて考えればいいのか」という声に対応するため、途上国の社会課題を体験するフィールドスタディや研修を実施しているという。

「起業当初は、“留職”の価値もグローバル人材育成という形で打ち出していましたが、CSVやSDGsの流れで、いまはより本質的に『社会課題の理解』という側面を打ち出すことができています。企業側のニーズは間違いなく大きく変わってきています」と小沼さんは、現場の温度感を語る。

社会課題の解決に個人が寄与する方法は

企業の長期的な成長を考えるとき、もはや社会貢献の流れを避けて通ることはできない。さらに、近年は企業だけでなく個人にとっても、そうした社会貢献活動に手軽に参加する手段が出始めている。

後編では、その手段の一つとして今、世界的に注目されている「インパクト投資」を紹介する。

監修:小沼 大地(こぬま だいち)

一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。2011年5月、ビジネスパーソンが新興国で社会課題解決にあたる「留職」を展開するNPO法人クロスフィールズを創業。2011年に世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shaperに選出、2016年にハーバード・ビジネス・レビュー「未来をつくるU-40経営者20人」に選出される。国際協力NGOセンター(JANIC)の理事、新公益連盟の理事も務める。著書に『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)がある。

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