ロシアに侵攻されるらしい国の日常【虚構日記】

オデッサ/ウクライナ/ロシア

このウクライナという国は間もなく隣国ロシアの侵攻を受けるのだそうだ。そんな中にもしかし、生活がある。歴史的事象が生起しつつあるかもしれない国で在住者が何を思いどんな暮らしを送っているか綴ってみる。(要するに日記)

1月25日(火)

オデッサ15㎝の積雪。フワッフワの新雪を太郎と妻と3人で踏み分け、中庭で戯れた。……筈だ、もしオデッサに留まっていたならば。

ニュースを見ていると、不思議に、米国は侵攻の危機を声高に叫び、ウクライナはむしろ早期侵攻の線を否定する。そこが一枚岩でないのが不思議。それぞれどういう利益を追求した結果この乖離が生れるだろうか。後者のモチベーションとして、今ウクライナから外国資本がどんどん引き上げていっていて経済危機の兆候があるらしいので、国民向けと見せかけて実は諸外国向けに、事態が急迫してないことをアピールして資本流出をとどめたい、ということがあるのかもしれない。知らない。

ニュース①ウクライナ安全保障会議書記「ロシアがウクライナに大規模侵攻をかける条件は整っていない」(24日晩)
ニュース②米大統領府報道官「(上記声明に対し)否、ロシアはウクライナ侵攻の準備を整えつつある」(25日晩)
ニュース③ゼレンスキー大統領、国民向けビデオメッセージで「米国をはじめとする一部外国の大使館職員退避命令は繊細複雑な外交ゲームにおける一現象に過ぎずただちに状況の悪化を示すものではない、恐慌をきたすには及ばない、EU諸国の大半は大使館の稼働を続ける」(25日晩)

私らは侵攻が行われないことに賭けて当地に留まるのではない。仮に侵攻が行われても、そこからくる衝撃が私らの、言ったら縦深性……昨1/25の項に書いたようなこと……によって十分受け止め切れるものにとどまる、ということに賭けている。賭けてるというか、そう見越している。これは、今日明日に巨大隕石が降ってきて地球は滅びることはないだろうみたいな、不可見事象の蓋然性への感性、つまり世界観の話でしかない。私の不安は、しかしそうはいっても隕石は降ってくるのではないか、すなわち、私らの家庭に内設されている緩衝材が全くものの役に立たない想定外の事態がもしかしたら出来するのではないか(そうしてそれに気づいたときにはもう手遅れなのではないか)という考えからくる。だがその漠たる不安は、今のところ、先ほど言った世界観を覆い尽くすほどのものではない。

同じ事を言い直す(自分の整理のために):私らは侵攻が行われないことに賭けているのではない。だから、仮に侵攻があったとしても、それのみを理由に逃亡を考え出すことはない。むしろ私らは、①侵攻が行われない、あるいは②侵攻が行われてもその衝撃は私らの家庭に内設の緩衝材によって十分吸収可能なものに留まる、というより太い線に賭けている。もしも賭けが外れる、つまり、脅威が私らとりわけ私らの家庭の最内層である2歳児に及ぶ、という兆候が認められたら、私らは最善を尽くして最速で逃げる。だがそういうことは起きないであろう、という世界観である。しかしそうはいっても起きるかもしれない、という不安がある。だが今のところ後者は前者を駆逐するほどのものではない。

……というようなことを、もし外務省の勧告を聞かずにオデッサに留まっていたなら、思っていただろうなあと思います。

1月24日(月)

今日のトピックは大使館=外務省ラインからの帰国勧告である。①フェーズが変わった。②だがある意味では何も変わらない。③私たちはここに残る。④だがしかし……

①フェーズが変わった

こうなると私がウクライナに残留して何かあった場合にいわゆる自己責任ということになる。戦禍の異国に在住していることで「同情」されるのでなく、むしろそのことで「叩かれる」存在となる。公の言に従わなかった愚か者が悲劇的末路を辿ることを人らはむしろ積極的に待望する。たぶん私は自己の精神を防衛するために、Twitterアカウントを凍結したり、そうしないまでも、発信を大幅に削減する必要があるだろう。

②だがある意味では何も変わらない

しかし昨日と今日で、退避勧告という現象の他に、本質的な状況の変化が何かあったか。私らは初めから公の勧告など待たずに状況を見ている。見たところ状況にはさしたる変化がない、そこへ(べつだん頼みにもしていなかった)公からの勧告が出た、その一事をもって態度を急変させるべきだろうか。

こういう際の公のふるまいについて、興味ある人もいるかもしれないから、ちょっと経緯をさらってみる。はじめ私は公を大いに頼りにしていた。昨年12月半ばに在ウクライナ日本国大使館に宛てたメール。

これに対しては領事部職員の方から懇篤なお返事をいただいた。そこには「当館もメディアのみならず、あらゆる方面から情報収集を行っているところ、特に皆様の安全に関わる重要な情報に接した場合は、その都度迅速に領事メールや海外安全情報(スポット情報や危険情報)の発出を通じて、また、状況によっては在留届等に登録されている皆様の電話やメールに直接連絡する等して情報発信をして参ります」との文言があった。

しかし状況の明らかな悪化にも関わらず、その後1か月、公から何の音沙汰もなかった。それでまた突いてみたのが今月19日のことだ。

これに折り返し電話があり、領事部職員(前回メールをくれたのと同じ人)いわく、報道に一喜一憂するな、そらメディアはセンセーショナルに書き立てるけれども、大事なのは外交交渉がしっかり行われているということだから。ポイントはそこだから。で要望の安全情報については、いま外務省の方でスポット情報というのを準備中である。

それで同日午後に外務省からスポット情報というものが発出された。「平素から不測の事態に備えた準備を怠らないよう」とのことだ。あまりにお座なりではないか?

それで半分ほどはまぁそういうものなのかなと安心しつつ、もう半分はやっぱり何か腑に落ちない感じというか、外交当局がそれは外交交渉に特段の重きを置くのは分かるけれども、外交交渉の継続にもかかわらず事態が急激に悪化するということもあるのではないか、要するにこのチャネルからの情報はあまり頼みにしても仕方ないのではないかと思い、私らは私らできちんと考えて判断して行動しようということで、妻とよく話して備蓄のことも決めたし、帰国の是非についても一応検討して、結果「帰国はしない」ことに決めた。

そこへ今さら、米国の同様の措置に追随したとしか思えないタイミングで退避勧告のようなものが出て、それひとつをもって翻意する理由になどなるだろうか。外交交渉なら今だって続いてるじゃないですか?

③私たちはここに残る

私らはこれで現実的に考えているつもりなのだ。社会に激震が走っても、こと私たちの家庭に関しては、ショックアブソーバーシステムは十分であって、少なくとも衝撃を子供にまでは及ばせないことができる。そうしてその限り、いま2歳の子供が楽しくのびのび遊んで成長するためには、日本よりまだこちらの方が好適な環境である、と考えている。

まず前提として、侵攻してくるかもしれない人たちは、憎悪に燃え・血に飢えた殺戮者などではない。私たちのことを兄弟と思っているらしい人たちだ(だからこそ攻めてくるのだ)。彼らは原則的に、その戦略戦術目標を果たすべく統率された行動をとる。その中で市井のウクライナ人を殺傷するようなことがあれば、それは彼らの目的にとって、プラスどころかマイナスである。(知らない中でも特に知らない人は、核兵器を持っていて悪の皇帝プーチンが独裁支配している極悪暗黒帝国おそロシアが攻めてくる、イコール大量破壊と大量死は必至、みたいに思ってるのだろうが、それは虚像だ)

だから私たちは、ロシア軍というよりも、ロシア軍の侵攻ないし政権転覆企図に触発されて起こるウクライナ民族主義過激派の暴動とか、社会の無秩序化の方が恐ろしい。cf.14年5月2日、オデッサ労働組合会館。

それで私たちは、今住んでるこの街中のアパートの周囲を見回す。私らは街の地理を相当によく知っているつもりだが、このあたりにロシア軍の戦略目標になりそうな施設・枢要な地方行政機能・集会だのデモだのが起きるような開闊ないしシンボリックな場所は存在しない。商店街すらない。一言で特徴づけるなら「ビーチに近いエリア」である。港湾からも離れている。

さらに具体的に、地図に即して考えていくに、私らの住む場所から内陸40㎞のダーチャに至る道筋にも、まぁポロシェンコのチョコレートプランテーションとかはあるが、軍事行動の標的になりそうな施設はない。経路はオデッサーキエフの主要幹線道路を一部に含むので、道路自体が封鎖される可能性もあるが、いうて40㎞の道のり、最悪の場合はベビーカーを押して朝から晩まで歩いて歩ききったるわいと思っている。見かねて誰か拾ってくれるだろうと、女子供にやさしいこの国の民のメンタリティにも若干期するところがある。

そうしてダーチャに逃れさえすれば、そこには菜園・果樹園のひと夏ぶんの収穫を瓶詰めにしたものをはじめ、大量の保存食がある。それから千リットルの天水槽と井戸水がある。ガスも独立している。ストーヴは薪である。電気だけは供給だのみだが、最悪の場合は日の出とともに起きて日没とともに寝るわい。

今住んでるアパートの方にもすでに一週間や十日分の食料・水その他の貯えはある。これをさしてショックアブソーバーは十分ではないかと言っている。少なくとも今しばらく状況をうかがう猶予はあるように思う。

④だがしかし…

とはいえ胸は騒ぐし、絶対にこれが正しいと自信をもって言うこともできない。正確には、考えて、いや今はこれが正しいとひとたびは絶対の確信をもって言うのだけども、いろいろな情報に接してるうちすぐまた不安が萌してしまう。

ともあれこれが私たちの解答だ:外務省=大使館の勧告には応じない。帰国しない。私たちはだいじょうぶである。

言葉にするといかにも愚かしい頼りない葦のような「解答」だ。死亡フラグというやつか。叩かれそうだから、やはり金輪際、Twitterの発信はやめようと思う。ブログの更新は粛々と続けるが、これはもはや虚構と位置づけよう。私たちの肉体はやはり公の勧告に従って帰国したのだ。この日記は以後、実は日本に帰国した何丘が、現地の生活と心情を妄想し、あたかもウクライナにとどまっているかのようにして書き綴る、虚構日記となる。

1月23日(日)

わりと大丈夫な時間帯の多い日だった。夜などは「あ、俺、超えた!突き抜けた!」と思うた。(これ書いてる今1/24朝は再びどす黒い不安に苛まれてるが)

妻と子供と公園へ、その名も戦勝公園、お池の水が凍って・・いるのは知ってたが、それが十分安全安心な厚みを持っていることを誰かが最初に確かめたのだ、それからわらわら人が出て、用意のいい者はスケート靴を履いて滑る・ホッケー楽しむ。私たちも氷へ降りたよ。太郎(2歳児)の銀盤デビューは青空天然スケートリンク。

その流れで日用雑貨の店入って、こんなのは餓鬼道だと思いながら、貯え十分な筈のToペーパーとTiペーパーを1コずつ買い足す。しかしこんな餓鬼みたいなふるまいが、少しは心の慰安になるのだ。「そのために何かをしている」ということが。

何が目に触れるかわからないと思いながらニュースサイトを開きツイッターを開き、いつ水が止まるとも分からないからと食ったそばから皿洗い、早めの行水を済ませ、大便一発済ませて「よかった間に合った」など思い、またトコヤ行くことも散歩することも「一朝事あった際に身軽に動けるように」という文脈の上に一々自分の行動を置いて考えてしまう・・人生は妙な季節に入ったものだ。

神経がたかぶってるのはビタミンDが足りてないんじゃないのか、私も飲んでるこれを飲みなさい、と妻に促されて、掌に一錠を受け、諾々とこれをはみ、水で流し込みながら、「日本に帰りたい!!」と一瞬、強く思った。あまり里心というもののない薄情な人間だ。移住2年半で二度目に(だけ)思った。

1月22日(土)

相変わらず「ロシアの侵攻」はインターネットの中にしかない。不思議だ、不思議だ、不思議だ。そんなものは私がインターネットを見ている時間を除いて今日一日の生活の中のどこにもなかった。

子供の散歩で(犬の散歩みたいに言うが)遊園地に入った。いつもの土日の賑わいだ。観覧車も回ってる。全く馬鹿々々しい。何がリアルか。俺と妻と子のこの生活こそがリアルだ。それ以外の空言、仮象が・・しかし、こんなにも俺の心を曇らすのは何故かよ。なるほど見える世界のうわべの泰平の方にもまた真実はないのかもしれない、コロナウイルスもこの国の人びとはなきがごとくに振舞った、そのくせしっかり蝕まれたのだ。この国の人の世界史からの奇妙な切断感。それに染まりすぎないようにとコロナについても気をつけていたではないか、今も同じことではないのか。

ツイッター

ツイッター見ていて大概軽蔑と嫌悪と怒りしか覚えない。怒りというのはたとえばこういうのからくる。

ロイターの糞切り抜きからの伝言ゲーム。下に書いてる(1月21日の記述)がゼレンスキーは「最悪の場合というものを想定するならば侵攻はどこからどのようになされるか」との質問に答えただけだ。それに歴史お宅か軍事お宅か知らないが「すわ第5次ハリコフ攻防戦!」とか嬉々として反応して、それがやたらに回覧される。逆にその前のゼレンスキーの国民向けビデオメッセージ「侵攻なんかないから落ち着け」みたいなのは全然周知されないのだ。Kがいかにも楽しんでるふうなのもそのKが楽しみながらする情勢案内を3.5万人だかが見て戦争脳に染め上げられて、おそロシアによる新次元の蛮行・戦火と流血と涕泣を期待しているのだろうなどという想像が走るのもひたすらに不快で、ひたすらに胃に悪い。とりあえず近い将来の夢は、この冬が過ぎたらKのフォローを外して「フォロワー一人減らしてやったぜざまぁ!」と青空に叫ぶことだ。実際いまKにこれほど精神的に苦しめられている日本人が他にいるかな。とはいえその能力は買うし新刊が出れば必ず読む。対照的なのはたとえばHで、文章が下手・要点抽出が下手・一方全肯定一方全否定で硬直、要するに能力精神両面で3流ジャーナリスト、こんな奴がのさばってるのは奇観。

新聞

オデッサライフという露字ローカル紙を購読してる。その最新刊に「ロシアの侵攻」のロの字もなし。10ページしかないぺらぺらの週刊紙だが市民の生活に密着した情報がみっちりいろいろ詰まってる。今号は市内某主要道路の修繕工事が遅々として進まない問題、南ベッサラビア料理の紹介、2022年はコロナ禍収束の年となるか、ウクライナの乳製品メーカー各社のプロフィール紹介(謎)、「今週のアネクドート」などなど。

義父オミクロン

義父がコロナに罹患した。オミクロンというやつ。幸い症状は軽いようだ。義父は前の冬に一度罹患して、その半年後にはワクチンも打ったが、こうして今またやられている。義父はリヴァイとエルヴィンを足して2で割らないほどの豪の者で、何があっても最終義父と合流しさえすればプーチンが攻めてきても勝てるというくらい頼りにしてるので、今このときが私たちが一番脆弱なときだ。おーいプーチン、チャンスは今ですぞー。

1月21日(金)

やっぱ睡眠大事だな。よく寝たので一日全然大丈夫だった。

今日も泰平の海。

トコヤ政談

美容院に行ってまたゴリみたいな髪型にしてもらった(ゴリにしてくださいと言うわけではないが結果的にそうなる)

相客もなかったので「ロシアが攻めてくるんやないかとかいうニュースについてどう思います」と聞いてみた。その美容師は歳の頃わたしと同じくらいで10歳の子をもつ女性、生え抜きのオデッサ民。「まぁ不安がないとは言わないけど正直わが国民のメンタリティとして政治ってのはどこか遠くで偉い誰かが自らの利害関係のために演じる角逐の劇であって我々庶民にはその趨勢に寄与することもできなければその内幕を知ることもできない、だから要するに興味がない、政治は政治・生活は生活、何がどう転んでもなるようになるさって感じでもう久しくTVも見ない」私「その政治的アパシーみたいのは14年以降強まった感じですかね、それとももっと根の古いものですか」「どうだろね。何しろこの8年間さんざ聞かされてきたからね、戦争だ戦争だって、もう慣れっこになってしまいました」私「今何か起こるとしてもご自身の生活にはそんな影響がないだろうというお考えですか」「ロシアが取るとしても東の方だけだと思う。ああでもオデッサも取るかもしれないよね、リゾートだし、港があるし」私「食料の買いだめとかは」「してない」

ニュース

ワシントンポストによるゼレンスキーへのインタビュー:⑴(最悪のシナリオとしてどこかへ攻め込まれるとしたらどこだと思うか、との問いに対して)たとえば歴史的にロシアと関わりの深いハリコフであろう。クリミアの伝で「ロシア系住民の保護」とか称して入り込んで、しかし100万都市ハリコフを丸ごとどうするとかではなくて、そこを端緒により巨大規模の戦争を展開していくのであろう。⑵(今年はプーチンが郷愁を覚えるところのソ連邦の設立100周年の年だが、プーチンはその記念碑的事業としてウクライナ吸収を図っているのではないか、との問いに)老い先長くないプーチンがレガシーのことを考えるのも分かるがウクライナの占領は短期的勝利に終わるだろう、14年以前の友が14年以後は敵になってしまった(=そんなことをすればポストソビエト空間の真の意味での統合はむしろ毀損される)⑶(軍事侵攻の暁にロシアに対して発動されるという西側の制裁について)なぜ制裁が必ず侵攻の後でなければならないのか、なぜ今発動しないのか。予防的制裁ということもあるのではないか。

最後の点に関しては、技術的に難しいのかもしれない(それによってむしろロシアの行動が刺激されるという危険と、ロシアは制裁への耐性が異常に強いという点で)が、私も激しく共感同意するところで、なんか侵攻するもしないもロシアの匙加減・ロシアにとっては良くて勝ち悪くてもノースコアドローみたいな空気になってるが、今のこの状況そのもの、すなわち隣国との国境に10万もの軍隊を置いて圧力をかけ、その主権的意思決定に対する甚だ厚顔な容喙(NATOに加盟するんじゃねえ、とか)をしていること自体に対する懲罰というのを、どうして西側は行えないのか?

オデッサ市長、市内の防空壕を視察(露語):オデッサ市内にはなんでも353の防空壕があるんだそうだ。基本的に全部使える状態らしい。

1月20日(木)

4時台に目覚めてしまって寝不足。朝のニュース巡回で昨晩ゼレンスキーがビデオメッセージ出してたことを知る。苦手なウクライナ語だががんばって見た、7分半。

内容はロシアのウクライナ国境付近での策動が報じられていることを背景に国民にパニックを起こさず静穏に日々を送るよう呼び掛けるもので、個人的にはまぁ驚いた。いつものやり方ならウクライナとしてはここぞと騒ぎ立ててロシアをデモナイズし内にあっては政権求心力を高め外に向かっては自国の窮状をアピって有形無形の支援を取り付ける。でも、今日にも敵が来るかもしれない早く支援を寄越せどころか、「早急かつ不可避の侵攻」の可能性を明確に否定してみせた。

もうひとつ意外だったのは、そもそも「国民を落ち着かせるための」こんな動画を必要と考える政権の国情認識だ。私の管見の外ではやはり国民の浮足立ちがちゃんと観察されるのか。不思議の念。ここオデッサは全く平熱である。少なくとも指標の一つとしての食料品の買い占め(を行わないよう動画でも呼びかけられてるが)は全く起きていない。昨日話した大使館の人もキエフは平穏そのものだよと言っていた。在住者Twitterも大体そんな温度感に見受ける。

それでも侵攻の脅威にさらされてる側のリーダーがこう明言してくれたのは大きい。安心の材料がひとつでも欲しいというなかで今度ばかりはゼレンスキーごっつぁんですと手を合わせた。

だが時系列的にはこのゼレンスキー動画の後に、例のバイデンの問題発言があったのだ。

このCNNのニュース読んでがくーんとなってしまった。バイデンて何、ポンコツだったの? 当のウクライナが侵攻なんてないから落ち着けと訴えてるときにアメリカが「たぶんロシアは侵攻すると思う」とかほんと何なんだよそれ。しかも「先っちょだけならいいのではないか、という意見も我が陣営にはある」とか素人目にも明らかに言っちゃいけないこと言ってる。ウクライナが「おいおいアメリカさんよお!」と怒るのも分かるで。

ニュース大体見たあと見るのやだなぁ怖いなぁと思いながら小泉さん他のTwitterを見る。そこまでひどいことは起こっていない様子で安心する。

在ウクライナ日本人会

つながりのある在住者3人と(つまり私含め4人で)スカイプした。ロシアの話、コロナの話、ここが変だよウクライナ、ここがいいよね日本。私が呼び掛けて昨日の今日で実現した。ロシアイシューにつき私が各地・各家庭の空気感を探りたかった(というと言葉が悪いか)のと、大使館の人と話した感触を皆様にシェアしたかったのと、あと自分は一応万一に備えて非常食等の備蓄をしています(皆さんもどうでしょうか)という話を、自分の恐怖とか不安をなるべく伝染させないような形でする・・のが狙いであったが、全然思ったようにいかなかった。皆さんあまりに気にしていない様子なので毒気を抜かれてしまい、他愛もない話にずるずる付き合ったあと、最後にねじ込むような形で「あの、そろそろ刻限なんでしたかった話ひとつしていいですかね」とかいう切り出しで、自分はロシアがマジで攻めてくることもなくはないんじゃないかと思ってる、それで在ウクライナ日本国大使館の「安全の手引き」というのを参照しながらこれこれの備えをとっています、皆さんも一応どうでしょうか、みたいに話してみたのだが、その口調が自分でびっくりするくらい暗くて重たくて、なんかめちゃめちゃ変な空気になってしまった(と思う)。しかし幸いにというか私のご高説が終ると速やかにその話題は流れ去りまた新手の軽い話が盛り上がりの兆しを見せたので、じゃ私はこれでとかいってそそくさと退室。寂寥。圧倒的一人相撲感。やはり俺がおかしいのか。センセーショナリズムを旨とする無責任なマスメディアとマイクロメディアの言説に踊らされて一人きりきり胃を痛めていてイタいのは俺か。

それで交信のあと溜息ばかりついている私に妻が私たちはどだい大状況に働きかけることは不可能なんだし備蓄とかできることをしているんだから心配しないで、心を蝕むんならもうTwitterなんか見ないで、と慰めてくれる、答えて私、ほれ病原菌も寝不足だったりちゃんとごはん食べていなかったりして弱ったオルガニズムにこそつけ込んでくるであろう、今の私がこう凹んでるのも、たぶん単純に寝不足で、あと例によって朝飯を食ってないからだと思う、今晩よく寝たら明日は大丈夫だよ。あとTwitterはやはりこの状況に対する人々の発言とりわけベンチマークしてる数人の専門家の情報は見ておきたいので見る。

備蓄

水はとりあえず45Lほど浄水が溜まったのでひとまずよしとする。一通り見渡して、モノもまぁ当座これで十分なようだ。そら安心には限度というものがない、ちがうか、何といえばいいか、石橋を叩く回数には上限というものが設定されてないので、まだ足りないかまだ足りないかと米だのパスタだの幾らでも買い足していくことはできるわけだが、それも餓鬼道だよな畜生道だよなと思って足るを知っとく。

銀行行って現金だけ作ってきた。徒歩30分の大きい銀行、行きは公園を突っ切って歩き、帰りはトロリーバスに乗って帰った。

1月19日(水)

この日がまぁ非常事態宣言in my family発令の日だ。発令はこのようになされた:妻に折り入って話がと切り出して「自分は専門家じゃないから究極的には分からない、たとえば兵器の移動を示す衛星情報とやらの検証もできないし、ロシアが今そんなことする必然性というのも自分自身完全には腑に落ちてないくらいだからその点であなたを説得することは不可能だけども、こうして米国高官の誰がまた誰が今か侵攻と発言したとかしないとか、そういうニュースに日々接して不安を覚えないということもまた俺には不可能だ」そこからもう一歩踏み込んで「さてそれででは何が起こり得るか何を恐れるべきかということについて俺の考えなんだけども、①ロシア軍を恐れることはないと俺も思う、俺とてロシアの軍人が市井のウクライナ人に対して銃砲を向けるなどということは考えることもできない、しかし②14年のような社会の紊乱(соц.беспорядок)こそは恐るべきと思う、それから③サイバー攻撃による社会・生活インフラの麻痺で⑴水道⑵電気⑶ガス⑷インターネット⑸決済システムといったものが使えなくなるということも理論上あり得ると思う」そこで私たちが具体的にとるべき方策は「何しろダーチャに逃れれば地球上そこより安全な場所はないだろうと思われる、しかし大渋滞だとか交通カオスが出来するかもしれないし、上述②③の状況下で数日はここ(※オデッサ中心部のアパート)で籠城できる態勢はとっとく必要があると思う、そこで水・食料品その他の備蓄を始めようと思うんだが理解・協力願えるか」「うん」

というようなことで買い出しやら方々への連絡やらをわたわたやりだしたのがこの日だ。

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