遊戯王-孤独に巻き込まれた決闘者-R   作:秋風

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寝穿様 とある英霊様
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ではでは、第2話でございます


02「伝説の男」

Side秋人

 

「貴様か、遊戯の親戚というのは…確か、武藤秋人だったな」

 

「…は、初めまして」

 

 俺は磯野さんに連れてこられた場所にいる。そこは童実野町の中心に位置する海馬コーポレーション、その社長室だ。そして目の前にいる人物こそ、伝説とまで呼ばれた男。海馬瀬人…武藤遊戯の永遠のライバルともいえる人物だ。その風貌はGX時代背中しか見なかったが顔は老けたような様子はない。が、アニメの時よりも大人びているのが判る。

 

「まあいい、座れ」

 

「は、はい…」

 

 促されるままに席に座る俺。その鋭い眼光は俺を捉えて離さず、睨みつけたままである。正直に言おう、めちゃくちゃ怖い。その威圧感から背中では嫌な汗がびっしょりと流れているのが判る。

 

「お前を呼び出したのは言うまでもない、先日のデュエルアカデミア試験の試験内容についてだ」

 

「……」

 

 ここまでは予想通り。やはりこの人は食いついてきたか。シンクロ召喚という今までにない召喚方法は、確かにKCのデュエルディスクシステムがなぜ反応しているのかということだけでも社長が気になる要素になりえるだろう。だが、それ以上に社長が惹かれるものが必要だった。故に使ったのが「青眼の精霊龍」たち、青眼シリーズだ。確か、この時代では青眼の白龍サポートは出ていても「正義の味方カイバーマン」や「滅びの爆裂疾風弾」が精々である。故に俺の見せたカードたちは社長の目を惹くと予想していた。そして俺を呼び出す、と。

 

「お前が使っていた『シンクロ召喚』。このような召喚方法は存在していない…が、なぜか我が社のデュエルディスクシステムは問題なく稼働した。メンテナンスも行ったが我が社のシステムには異常がない上、ハッキングされた形跡も一切見当たらない…挙句、そのお前の使っていたカードたちはこともあろうに俺が使っているブルーアイズと酷似していた。が、こんなカードたちも我々の知るデータベースには存在していない……さて、どう説明してくれようか? 武藤秋人」

 

「……説明して納得して頂けるならいくらでも。ただ、俺も何も考えずこのカードたちを使ったわけじゃない。このカードたちを使えば社長、貴方は必ず俺を呼び出すとも考えていました」

 

「ほぅ…? よかろう、説明してみろ」

 

「ええ、ではまず…」

 

 俺は手順を踏んで大まかな説明を始めた。まず、武藤秋人という存在の中にある俺自身(日向明人)の存在について、そしてこの世界が自分の世界では空想で作られた世界であること、そしてシンクロ召喚の詳細。社長は俺の内容について下らん、と最初は一蹴しようとしていたが、俺が社長の生い立ち、悪行(デュエルモンスターズ編以前)のこと、ノア編のことなどを話すと驚いて俺の話を聞き始めた。当事者たちでしか知りえないような内容をなぜ知っているのか、と。最初は遊戯に聞いたのか? とも聞かれたが社長はあの男はそんなことをする男ではないな、と自己完結していた。さらにとどめとして社長しか持ちえないはずの「青眼の白龍」のカード、そして武藤遊戯しか持ちえないはずの「オベリスクの巨神兵」「オシリスの天空竜」「ラーの翼神竜」も社長に見せる。これには驚きを隠せなかったようで、思わず自分の机まで向かっていきデッキを確認している始末だ。

 

「…と、こんな感じです」

 

「ふん…お前といい、遊戯といい、オカルト要素が強くて俺はとても信じられん」

 

「……」

 

「だが、それらを信じたと仮定して、俺に接触した目的はなんだ?」

 

 さすがは社長、といったところか。鋭い…いや、これだけ露骨にやれば誰でもわかることだろうか。

 

「俺は自分の世界に帰りたい。故にその協力者になってもらいたいのです」

 

「なるほど、シンプルだ。が、この俺を相手にするのに、何もないわけではあるまい?」

 

「…もちろんです。つきましては、これを」

 

 そう言って俺が取り出したのはカードの束。それは俺が使っていたブルーアイズデッキにも入っていた青眼の白龍をサポートするためのカードたちだ。

 

「もし足りない、というのなら他のシンクロモンスターや俺がまだ見せていない『エクシーズモンスター』もお譲りする準備があります」

 

「エクシーズモンスター? なんだそれは」

 

「シンクロとはまた違う可能性の世界で存在するカードの事です」

 

 そう言って俺は他のカードも見せる。俺は社長にもわかりやすいように説明をしながら『伝説の白き龍』のカードを見せる。

 

「ほぅ……面白いカードだ。といっても、このカードは公式には使用できないようだな」

 

「俺の世界では世界大会の記念カードですからね」

 

「ふむ…」

 

 さて、社長はどう反応してくれるのか。このカードたちは3枚ずつ渡したとはいえ、他に存在しないカードたちだ。しかも、青眼の白龍をサポートするためのカード…故に、価値は海馬瀬人という人物にとってはとんでもなく大きいはずだ。しかし、この人の今までを見れば無理やり奪ってくるということもあるだろう。が、俺が海馬瀬人という人物を知っている以上それに対して何か対処しているとも考えているはず。

 

「…いいだろう。貴様の願いを聞き入れてやる」

 

「本当ですか!?」

 

「ただし、条件を付ける」

 

 条件付き、か。とはいえ、この人が協力者になってくれることはかなり大きい。多少の条件ならば飲まないといけないな。その後、海馬社長が俺へと条件を提示する。その内容は以下の通り。

 

・俺の持つカードを一通り見せること。そのカードたちの出た時期を細かく説明する

 

・他のカードでも社長が気に入ったカードがあれば献上

 

・社長が選び出したカードをいくつかピックアップしてペガサスと交渉、カードを量産

 

・互いの関係はあまり表沙汰にしてはならない、元の世界の話などもってのほか

 

 と、大まかに分ければこの4つである。細かい条約もいくつかあるものの、これを飲むのならば社長が直々に俺のことをバックアップしてくれることを約束してくれた。俺の家には無数に同じカードがある。だいたいでいえば9枚ずつくらいか。ただし、世界や物語で重要となるカードは1枚しか存在していない。例えば神のカード、さらにシグナーの5竜、そしてナンバーズなどだ。それを除けば、社長にカードを渡しても多少問題はない。俺はその作られた契約書にサインし、社長に渡す。すると、それと同時に携帯電話、そしてKCと刻印がされたバッジを置かれた。

 

「ではこれを貴様に渡しておく。これを使えばすぐ俺にかかるようになっている携帯だ。そしてこっちはこの会社に入るための証のようなものだ。これを付けていればアポなしでここまで来ることが出来る」

 

「ありがとうございます」

 

「それと…お前のデュエルアカデミア入学のことだが」

 

 デュエルアカデミア入学のこと? やっぱりシンクロ召喚についてはまずかったのだろうか。俺がそう思っていると、社長は説明を始めた。

 

「今年のデュエルアカデミアの生徒だが…はっきり言う。例年よりすこぶる成績が悪い。それは中等部から上がってくる生徒たちもだ。まあ、お前の場合は筆記、実技共に問題はなかったが…このままではデュエルアカデミアの存続にもかかわる事態だ」

 

「えーと…それで?」

 

 その話は、アニメを見ていたので知っている。十代たちの入学時期の生徒たちの成績がすこぶる悪い、という話。故に、十代の活躍で徐々にオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドという格差による偏見が無くなっていくわけだが……

 

「お前の成績では本来ラーイエローだ。が、お前にはオシリスレッドで入学してもらう」

 

「え?」

 

「そして上位と言われているオベリスクブルー、そしてラーイエローを圧倒しろ。お前のカードたちならそれが可能なはずだ」

 

 つまり、この人は俺に十代と同じことをしろ、と言いたいらしい。社長は言いながら別の誓約書のようなものを取り出した。

 

「もし同意すれば学費は免除する。要望もある程度聞き入れよう。お前の話を信じるのならば、お前は今のデュエルアカデミアの現状は知っているはずだ」

 

「ええと、そう、ですね…寮とか、食事とか、オシリスレッドは相当酷かった気が…あれって、同じ授業料払っているのに苦情とか来ないのかなとかも」

 

「ふん、知っていたか。噂ではオシリスレッドのレッドはレッドゾーンのレッド、などとほざく奴もいるらしい。俺としてはそのような意味はなかったのだが…まあ、そんな話はいい。その辺も何とかしてやる…もっとも、お前の家の経済状況を考えればお前にとっては美味しい話だと思うが?」

 

 や、やっぱり俺のことは調査済みだったか。武藤秋人の家は母子家庭で、父親はすでにこの世にはいない。そしてさらに妹までいる。そう考えればこの学費免除、というのは相当大きいといえるだろう。

 

「わかりました。その条件を飲みます」

 

「くく、何、心配するな。定期試験の評価などがあればそのクラスは上がっていくのだからな、問題はあるまい」

 

 そう笑う社長はどこか機嫌がよさそうである。その手にはすでに俺が渡したカードが握られているところを見るに、早く自分のデッキの改良をしたいのだろう。

 

「ええと、そんなところでしょうかね」

 

「そうだな、今日はこれでいい…が、今後お前は忙しくなるぞ。覚悟しておけ」

 

「は、はい…」

 

 それはもちろん、契約のカードの事についてだろう。ジャンル分けが果てしなく辛いのは気のせいか…いや、気のせいじゃないな、うん。俺は社長に挨拶をして部屋を退出しようとする。だが、最後に社長に声をかけられた。

 

「おい、最後にこれを言っておく」

 

「はい?」

 

「お前の持つ、この世界の知識というのはあまりあてにはするな」

 

 …? どういうことだ?

 

「お前が俺に説明をしたとき、お前が言った話の中には多少の差異が存在していた」

 

「つまり…?」

 

「この世界がお前の言うとおりに動くという保証はどこにもないということだ。それを肝に銘じておけ。お前自身の思い違いなどもあれば…お前が身を滅ぼすことになる」

 

「……!」

 

 確かに、そうかもしれない。単純な話だがアニメ版や漫画版というのはパラレルワールドの扱いになっている。故に、この世界が俺の知っている通りに動くという保証はどこにもない。現に、この海馬社長も俺に協力してくれるような人物かと言えばかなり怪しい話だ。

 

「わかりました…気を付けます」

 

「ふん…わかったなら行け。俺も忙しい」

 

「はい。それでは…」

 

 そう言って、俺は今度こそ社長室を後にし、KCを後にするのだった。

 

 

Side海馬瀬人

 

「……ふん、武藤秋人、か」

 

 今日はなかなか面白い物が手に入った。異世界などという話や、俺が空想の人間だったなどということなど、どうでもよくなるほどに。そもそも俺はオカルトな話は信じていない。奴の目的など知ったことではないが、貰ったものの対価は払って相応だろう。それに、やつほどの実力者ならばオシリスレッドからオベリスクブルーになどすぐに上がることだろう。そうなればオシリスレッドの生徒たちの意識も上がっていくはずだ。これでデュエルアカデミアの株も上がるだろう。それに…

 

「こいつらがあれば、今度こそ勝てるぞ、遊戯に…!」

 

 奴と接触して得た最大の利点は渡されたこのカードたちの強さだ。これだけのカードさえあれば、今度こそ、今度こそ遊戯に勝つことが出来るはずだ。俺はそう思うとすぐに通信で磯野を呼ぶことにした。

 

「磯野、俺だ」

 

『は、いかがいたしましたか社長』

 

「今日の仕事と取引先はすべてキャンセル。後日に回せ」

 

『は、は…!? 社長、宜しいのですか!? 今日は確か重役たちの会議や新たに新設する海馬ランドの設計技師たちとの会議が…』

 

「そんなものなんとでもなる。もし文句を言うようなら金で黙らせろ。それと、これから誰も俺の部屋に入れるな。いいな? それと、例の件だが、武藤秋人が引き受ける。合格通知を至急手配しろ」

 

『は、はい! 了解いたしました』

 

 通信を切り、俺はテーブルの上にカードの山を並べ、自分のデッキを取り出す。こうもカードを触るなどいつ以来か…だが、このカードたちを見て俺の決闘者としての魂が疼きだしたのも事実だ。

 

「くくく…待っていろ、遊戯。次に対決するとき、勝つのは俺だ…!」

 

 

 

 

 

Side秋人

 

 海馬社長との会談の後、俺はなんとか家へと帰ってきた。社長と話したのはほんの少しの時間だというのにドッと疲れが来ていた。あの人の事だ、きっと俺の目的なんぞどうでもいいんだろう。あの人にカードを譲り渡したのはあの人が武藤遊戯に勝つことに対して強い執念を持っているからこそ。あのカードたちを譲れば同意してくれると思ってのことだ。とりあえず上手くいったが、その代わり随分と利用されることにもなりそうだ……まあ、そうなることは想定の範囲内だけども。

 

「ただいまー…」

 

「あら、お帰りなさい。どこに行っていたの?」

 

「ちょっと、カードショップへ」

 

 家に入ると、秋人の母親が迎えてくれる。その手には封筒が握られていた。

 

「おめでとう秋人、デュエルアカデミアに入学できるのね」

 

 どうやらそれはデュエルアカデミアからの合否通知らしい。その速達の文字を見るに、俺が帰ってくるまでの間に社長が手配したのだろう。そこにはオシリスレッドでの入学と書かれていた。さて、準備は整った…これで後はデュエルアカデミアへ行くのを待つばかりか…

 

 

 

 

数週間後

 

出発の日

 

「いってきます」

 

「あ、ちょっと待って秋人」

 

いざ出発、そう意気込んだが、そこで母に呼び止められた。

 

「え?」

 

「これ、遊戯君から」

 

 母から受け取ったのは一通の手紙。遊戯……というと、武藤遊戯か。多分AIBOの方だよな? 大会の写真ではアテムだったけど。とりあえず手紙を読むことにする。

 

『アカデミア合格おめでとう! 君がアカデミアに行くと聞いて驚いたよ。頑張ってね。僕も応援している。お祝いってわけじゃないけど、よかったら使って。きっと君を守ってくれるはずだ』

 

 封筒の中には『ブラック・マジシャン』そして『ブラック・マジシャン・ガール』が入っていた。映画で喋っていたところを見るに、このカードたちは多分カードの精霊が宿っているんじゃないだろうか?このカードが精霊のカードだと遊戯は知っているのだろうか? それに、こんな切り札とも呼べるカードをそう簡単に手放して…って、そういえばAIBOの方の嫁はサイレント・マジシャンだったな。この世界の『武藤秋人』という人物はそこまで遊戯に信頼されているのか?

まあともかく、こうして俺はアカデミアへ向かうこととなる。

これから起こる非日常のことなど、この時俺は知るはずもない。そう、この時は

 




リメイク前での変更点

海馬社長早期登場
リメイク前作品でももっと早く登場させればなぁ、と思っていたので出しました。劇場版も近いしね、仕方ないね

 前作では校長先生から学費免除を引き換えにオシリスレッドでの入学を頼まれていましたが、校長よりもオーナーである社長からの方がなんかいいかなということでこんな展開に

社長が楽しそうで何よりです
 海馬社長にシンクロカードと青眼サポートカードたちが渡りました。個人的に社長には遊戯に勝ってほしい(王国編での勝利のような形ではなく)。まあ、今度の映画でどうなるかはまだ分かんないんですけどね

海馬社長軽すぎじゃね?
 まあ、あの人もオカルトは嫌いで、信じてはいませんが認めないとは言ってませんからね。彼も実際、アテムのことがあるわけですし、少なからず信用はしてくれたんでしょう。なにより、青眼シリーズの超強化によって、遊戯に勝つ可能性が出てきますから

遊戯がブラマジとブラマジガールを渡した理由
 前作でも渡していましたが、これに関しては前作の途中で書こうと思った部分が抜かされてしまいました。なので、リメイク前を知る読者も知らない理由なので、後々書く予定です。ちなみに、80話超えたあたり(笑)

Next03「決闘者たちの学び舎へ」

次回、ノース校編は……

  • 十代と万丈目のデュエルが見たい
  • デュエルよりも修羅場が見たい
  • レジーを付け狙う生徒と秋人がデュエル!

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