先日から天然ソーカル事件*1のような意味で話題になっているJ・マーク・ラムザイヤー氏が、ついに日本の新聞から批判的にとりあげられた。
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慰安所制度の査読論文で話題になった後、「余命三年」*2や「桜井誠」から引用している*3と知った時も驚いたが、今回の記事によると沖縄についての論文で渡邉哲也氏と惠隆之介氏の共著から引用しているという。
論文は例えば「本土の大半が飢餓を辛うじて免れていた終戦直後、米軍は沖縄の人々には気前よく大量の牛肉など食料を配布した」と記述する。実際には沖縄の収容所では栄養失調で亡くなる人が続出した。
この記述の引用元は「沖縄を本当に愛してくれるのなら県民にエサを与えないでください」(渡邉哲也氏、惠隆之介氏著)という対談本だ。ラムザイヤー氏はこの本をたびたび引用しながら参考文献に含めず、沖縄差別があらわな書名を明示しなかった。恣意(しい)的な引用はほかにも多く、研究倫理上の問題がある。
出典を明確にしない研究倫理の問題は記事で批判されているとおりだし、そもそも渡邉氏といえば保守速報などを情報源にしてデマを流すような経済評論家だ*4。
はてなブックマークでは初報*5もふくめてラムザイヤー氏を批判するコメントがもちろん多い。
[B! history] 学問の装いで差別強化 米名門大学教授、恣意的な引用 県民の尊厳を攻撃 | 沖縄タイムス+プラス プレミアム | 沖縄タイムス+プラス
しかしひとりid:preciar氏が困惑するしかないコメントをつけていた*6。
少なくとも記事の無料範囲を見たかぎり、社会学という単語すら存在しない。
初報でも「専門は会社法などで、ハーバード大法科大学院での職名は「三菱日本法学教授」」と明記され、ラムザイヤー氏が社会学の研究者と誤認するような記述は見あたらない。
いったい社会学を何だと思っているのか。
*1:意図的にデタラメな論文で査読をくぐりぬけたソーカル事件と違って、さすがにラムザイヤー氏が経済学の査読の問題をあばこうとしたわけではあるまい。
*2:hokke-ookami.hatenablog.com
*3: