「クイズ!脳ベルSHOW」が超人気番組になれた訳

飲酒にカンニング「何でもアリ」なBSの異端児

「この番組はコンセプトこそありますが、細かい部分は決めていません。マーケットやターゲットを意識してがちがちにしてしまうと、演者もスタッフもしんどくなってしまう。余白があるから楽しむ余地が生まれます。高齢のゲストの方々も、『そんな感じでいいんですね』と素で参加できる。その雰囲気が、番組の中で表れているのかなと思っています」(谷口氏)

番組全体の演出を担当する丸林徳昭ディレクターも、次のように話す。

「昔のテレビの見せ方を意識しているところはあります。今のクイズ番組は、視聴者にわかりやすく作るため、新しいジャンルのクイズが登場する際などは、作り込んだチュートリアルを見せることが通例です。ですが、我々は極力そういったことはせず、基本的にしゃべりだけで進行しようと。また、地上波の番組ってオープニングトークがほとんどなくなってしまって、番組早々から企画が始まるのが当たり前になっています。でも、うちは必ず出演者4名を紹介するオープニングトーク、あいさつから始まる(笑)」

この牧歌的な感じが懐かしくもあり、逆に新鮮に感じてしまう。

「今のテレビの作り手は、“同じところで笑ってください”という作り方をする傾向が強い。でも、昔のテレビって見る人によって笑うポイントがバラバラだったと思うんです。雑だっただけかもしれませんけど、笑いどころが違ったはず。自由に感じられるように作っています」(丸林氏)

制作会社が仕切る異例の『11時間テレビ』

地上波の広告費が年間1兆5000億を超える中、BSの広告費はその10分の1、1200億を超える程度だ。予算こそ少ないが、自由は利く。だからこそ、アイデアで勝負する。

BSの面白さと可能性、それを裏付けるのが『クイズ!脳ベルSHOW』を母体とするBSフジの秋の超特番『BSフジ11時間テレビ 全国対抗! 脳トレ生合戦!!』だ。冒頭で同番組の発展の歴史に触れたが、2017年からは特番として放送されるまでの巨大コンテンツになっている。

「地上波の場合、27時間テレビなど全国放送の大型特番となると系列の各テレビ局の問題が生じます。系列局とは言え別会社です。そのため、フジテレビ系列であれば、フジテレビの社員が音頭を取って、系列局とともに番組をまとめます。しかしBSは全国一波。11時間テレビは脳ベルSHOW同様に、D:COMPLEXが仕切っています。ほぼ制作会社のスタッフだけでこれだけの特番を手掛けるというケースは少ないでしょうね」(谷口氏)

「文化祭ですよ、ホント(笑)。意思疎通も早いので、いろいろな試行錯誤やチャレンジができる。船頭が多くなると、どうしても番組作りは複雑になってしまいます。11時間テレビは自由……どころか、自由すぎますね」(丸林氏)

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