コロナ禍2年目の学び

立命館大・松原洋子副学長「対面授業が再開されても学生が教室に戻らない理由」

2022.01.24

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中村 正史
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オンラインの可能性を実感した

――そうすると対面授業に戻すのではなく、オンラインを活用していくということですか。

オンラインのよさがわかってきたので、カリキュラムにオンラインを落とし込んでいこうとしています。ウィズコロナの緊急避難的な対応にとどまらず、オンライン授業のあり方をしっかり設計し、双方向性を担保したうえで位置づけようとしています。就職活動中や試合の遠征先にいても学びが受けられるようにし、社会人のリスキリング(今後新たに発生する業務に順応するための知識やスキルを習得する再教育)にも有効活用したいです。

2021年度は立命館大学の10年間の中期計画の1年目に当たります。現在、政策の具体化を進めていますが、コロナによって教育のDX化が急速に進んだので、コロナで経験した新しい大学のあり方を取り込もうとしています。

例えば、授業のあり方です。これまでは一つの授業をどう運営するかは一人の教員が担当していましたが、オンラインで複数の教員が担当し、一人が教えてもう一人がアシスタントを担うとか、それをTA(ティーチング・アシスタント)が担当するとか、オンラインを使っていろんなアプローチを併用することができます。学生へのフィードバックの仕方も、授業のスタイルも変わると思います。単に「対面授業を残す」といった消極的な位置づけでは通用しなくなります。

――コロナ後の大学教育をどう考えていますか。

学生はオンラインで効果的な授業を経験したので、対面授業もより質の高いものにしていく必要があります。オンキャンパスで授業をしても、さまざまなツールを使って、授業時間も時間外も学生をサポートしていくことになるでしょう。

オンライン授業でわかってきたのは、オンラインに適応する学生は学びのレベルがどんどん上がるが、一方でキャンパスで友達に支えられながら学びの動機づけを得ていた学生がいて、キャンパスでの関係性が損なわれている現在は別のサポートがないと厳しいということです。

オンラインの限界と可能性を知りましたが、特に可能性を実感しており、改革の大きなきっかけになると考えています。コロナの試練をどう生かしていくかによって、今後、大学として社会に求められる存在になるかどうかが決まると思います。コロナの試練を改革へと転換する取り組みを始めているところです。

立命館大学には三つのキャンパスがあり、学生の半数は近畿以外から入ってくるという、立命館ならではの難しさがありますが、オンラインを活用すれば、キャンパスを超えた展開ができます。同じ授業を各キャンパスで行う必要はなくなり、それを超えるやり方が出てくると思います。

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