コロナ禍2年目の学び

立命館大・松原洋子副学長「対面授業が再開されても学生が教室に戻らない理由」

2022.01.24

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中村 正史
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大規模大学の多くは、新型コロナウイルスの感染が収まり始めた昨年10~11月ごろから対面授業を再開していますが、「学生はあれほど対面授業を望んでいたはずなのに、学生が教室に来ない」という声がさまざまな大学であがっています。なぜなのでしょうか。この現象を探っていくと、ポストコロナの大学教育にもつながりそうです。立命館大学の松原洋子副学長に聞きました。(写真は、立命館大学衣笠キャンパス=同大提供)

松原洋子

話を聞いた人

松原洋子さん

立命館大学副学長、大学院先端総合学術研究科教授

(まつばら・ようこ)お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(学術)。立命館大学大学院先端総合学術研究科長、衣笠総合研究機構長、人間科学研究所長などを経て、2019年から副総長・副学長。専門は科学史、生命倫理、科学技術社会論。

教室の学生が少なく、がっかりする教員

――多くの大学で対面授業を再開しても、学生がキャンパスに戻っていないようです。立命館大学はどうですか。

思ったほど学生が戻っていないというのは同じです。キャンパスの人数を50%程度に調整する入構制限を継続していて、その上での対面授業再開なので、そういう印象になるのだと思います。教員としては、張り切って教室に来たのに、学生が来なくてがっかりすることはあるようです。どこも似たような状況だと思います。

コロナ前はキャンパスに来ることが前提だったので、2020年春にコロナの感染が拡大して、教員も学生も試行錯誤しました。その中で、それまでオンキャンパスでの授業や生活しか経験がなかった学生は、「早く対面に戻してほしい」と求め、「大学の施設が利用できないのに学費が必要か」と訴えました。そのため、どの大学も、前例のない非常事態下にあっても、授業の継続、授業の質の維持のために努力しました。

その結果、以前は対面の授業しかなかったのが、オンラインが出てきて、必ずしも対面でなくてもいいと考え方が変わってきました。これはオンライン授業をポジティブにとらえて、質を上げてきた証しだと思います。

この2年間で得た重要な知見は、対面かオンラインかではなく、問題は授業の質であるということです。学生にどうフィードバックし、どうコミュニケーションを取るか、学生の意欲を促進する努力を大学はしています。重要なのは、状況の変化に対応した授業形態を取りながらも、質の高い教育・学びの機会を学生に提供することです。

――いろんな大学で「学生はあれほど対面授業を望んでいたはずなのに、対面を再開したらオンラインを望む」「対面授業を再開したのに、学生が教室に来ない」という声を聞きます。

教員の心情からすると、大学に来て授業をするのに、学生が少なく寂しいというのはあるでしょうが、それは対面授業に対する学生の意欲の低下を意味するものではありません。新しい段階の授業を展開しているということであり、学生の授業アンケートでも評価は上がっています。対面授業とオンライン授業は二項対立ではありません。ポストコロナを目指して、どういうキャンパスをつくっていくかが問われています。

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