「お鍋やるって話は聞いてたけど買い出しに連行されるとは思わなかったプイ」
「いいじゃないッスか。たまには手伝ってくれてもバチ当たらないッスよ？」

そういってプヒーと息を付くプイ先輩は、モコモコのコートにニット帽、薄いブラウンのサングラス、そして首にストール
プレハブ小屋での恒例となりつつある鍋パーティーだが、それを聞きつけて顔を出したタイミングを誤った先輩は容赦なく自分に連行されることとなった
しかし、食べるなら手伝えと連れ出すのはいい。問題は、この人は少し顔と名が売れすぎている。もしも正体が露見すればその場は一瞬にして別の意味での祭りに早変わりとなってしまうだろう
なので、いつぞやの時と同じように軽くではあるが変装してもらうことになったのだ。あの一件以降割と気に入ってるようなのでよかったが…スカジャンにイヤリングのヤンキースタイルは止めておいた

「それにしても手慣れてたプイ。まるで歴戦の主婦みたいだったプイ」
「どういう評価ッスか」
「だって、おネギから大根、ニンジンまで全部いいやつ見分けて買ってたプイ。普通あんなの学生じゃわからないプイ」
「そうでもないッスよ。とある商店街の人気者ウマ娘はもっと早く見分けていくって話ッス」
「それ本当に学生のウマ娘プイ？どこぞの奥様かなにかじゃないプイ？」

さて、と。豆腐や鮮魚などの痛みやすいものは昨日のうちに買い込んで冷蔵庫だ。トレーナーに要請して一気に運べたのはありがたかった
タラがなかなかいいものが安く買えたのは嬉しい。あれは鍋には欠かしてはいけないものだ。それにイワシはきっといい出汁のつくね団子になる
なので今日の買い物は野菜が主体。はっきり言って鮮魚類より段違いに重いので、日持ちするこちらを後回しに二日に分けて買い出しをすることにした。結果、この荷物を見れば正解だったのだろう

「じゃあ、適当なところで戻るッスよ。早く帰らないとまた何か問題起こされててもたまらないッス」
「なんかもう留守番中の子供達心配してるお母さんみたいプイ」
「誰が母親ッスか」

冗談じゃない。あんな子供達抱えてたら１年と保たずに胃に大穴が開いてしまう
大体この程度、少しの間あの集団のわがままに付き合っていれば誰だってできるようになる。別に特別なことじゃない
自分だって元々こんなこと進んでやるタイプではなかったと何度…もっといえば、この先輩だってここ最近はその要素の一つなのだが

「ちょっとだけ寄り道したいプイ。商店街とかあんまり来ないし、見てみたいプイ」
「んー…まぁ、傷みが早い物は買ってないッスけどね。バレたら一騒動なんで、できるだけ手短にお願いするッスよ」

ここで止めればまたフラストレーション溜め込んであとで余計な炸裂しかねない。付き合ってもらったのは確かなんだし、そのくらいはまぁいいだろう
ほら、もう色素の薄いサングラス越しにでもわかるくらい目が輝いてる。見慣れない物にはすぐに飛びついてしまう、本当に子供みたいな先輩だ

「よーし！じゃあさっそくあそこの一種類ずつ買うプイ！」
「判断が早いッスね？目星付けてやがったッスね？」

さぁ早く早くと指さしている先には、店先に暖簾と、魚のような形をした提灯の下がった小さな店
まぁ大抵みんな一度くらいは食べたことがあるだろう、所謂たい焼きというやつだ
自分も嫌いじゃないが…種類はあんこ、カスタードクリーム、白あん…あぁ、これだったらまぁ一個ずつでもなんとか
時々眼が滑るくらい種類豊富な店とかあるけど、絶対に管理とか大変だと思う。場所にもよるだろうけど

「荷物もあるし、買ったら適当なところ座って食べましょうか。手伝って貰いましたし、そのくらいはご馳走するッスよ」
「プーイ！！ありがとプイ！！」

とりあえず、一休みするくらいはいいか。適当なベンチに座ってゆっくりするとしよう
というか、実は割と指が痛くなってきてた。大根、重い

●
「ん、これいいッスね。白あんってあんま普段食べないッスけど、甘すぎなくて割と好きッス」
「んー！王道のあんこはいつ食べても美味しいプイ！」
「ああ、ほら口に付いてるッスから…」

口の脇に餡子粒付けてニコニコ笑ってる姿は、まあこれだけ見られてもとてもトレセン学園の英雄とは気づかれないだろう
さっき配ってるのを貰ったポケットティッシュで口を拭ってあげる。こら、プキューとか変な声出さない
商店街の隅にあった人気のない休憩ベンチに腰掛けて、二人してたい焼きを頬張る。これがまた予想以上に美味しくて、プレ先輩の提案に乗ってよかったと珍しく素直に思えた

「これ、表面しっかり香ばしいけど生地はふわっとしてて、中身だけじゃなくてもう生地から美味しいッスね」
「ふわっともっちりとしてて満足感凄いプイ。見た目以上に入ってるあんこに全く負けてないプイ」

言いながら一つのたい焼きを両手で持ってモキュモキュと頬張っている姿はもうただのハムスターだ
ついでに、買い物袋とはまた違う個人用の小さ目のエコバッグを取り出して。その中には、さっきついでに買っておいた暖かい飲み物が二つ。うん、冷めてはいない

「どうぞッス。カフェオレのホットでよかったッス？」
「プイ！？なんかいたせり尽せりプイ…ありがとうプイ♪」
「言い忘れてたッスけど、この事は他の面子には内緒ッスよ？絶対ズルいズルい言いだすに決まってるんスから」

自分用の加糖コーヒーを開けて、一つだけ注意事項
本気でズルいズルい言いだす連中もいるしそれに便乗してズルいズルい言いだす連中もいる。そうなればまた面倒な事になる
あの集団勢ぞろいで平和な商店街を練り歩く蛮勇は持ち合わせていない。何が起きるかわかったもんじゃないし、そもそもこっちの胃が持たない

「わかってるプーイ。こんな楽しい事独り占めしたってバレたら絶対文句言われるプイ。内緒ナイショ、プイ」
「そうしてくださいッス。年が明けてまだそんなに経ってないのに、一体いくつ騒ぎが起きたことやら」
「どれも楽しい思い出プイ」
「そうッスね。大半火付け側にいたッスよねこの妖怪一緒に走ろうは」

コーヒーの容器で軽く頭をコツン。プィっと変な声
少しずつ日が沈みかけてきた商店街は、夕日の残照に照らされて赤く輝く
早々と店じまいしているようなところもあれば、今からが稼ぎ時と言わんばかりに活気づく店もある
見れば、今からシャッターを開けている場所も。ああ、あそこは飲み屋か何かか。そりゃ今からが戦いの時間というものだ
全国にここほど活気がある商店街もいくつ残っているのだろうか。決して豊かな場所ではないが、それでも見ていてふと暖かさを覚えるこの活気は心地いい

「いいところプイね、ここ」
「そうッスね。だからッスかね、毎度足を運んじゃうのは」
「他にも美味しいもの売ってる所知ってるプイ？」

言うか言わぬべきか。若干迷うが、ここまで同行したならもう別にいいだろう

「八百屋を出た時に、向かって左に脇道あったの覚えてるッスか？」
「あー、なんとなく覚えてるプイ」
「そこの奥に小さいカフェがあるッス。パンケーキがとにかく美味いんスよ」
「何だとプイ」

獲物を狙う目。プキュピーンと光る眼は、さあ吐け洗いざらい吐けと無言の圧を叩きつけてくる
凄い圧なんだけど、なんだろうかこの
決して英雄と呼ばれるほどの三冠バが出していいジャンルじゃないと思う駄目な圧は
ため息一つ、観念の白旗だ

「時間があって一人の時、よくそこに隠れてたんスよ。だからこれも内緒でお願いするッス。貴重な隠れ家なんすよ」
「次のお休みを聞いておくプイ」
「あとで予定合わせるッスよ。わかってるッス、ちゃんと連れていくッスよ」

ならよし、とニマーっと笑顔に変わるプイ先輩。この人の表情筋は本当に休みなしだ
ただまぁ、お仕事中の時よりは負担が少ないだろう。少なくとも、楽しいという分類の感情を素直に出せているのだから
冷めないうちに、残りのたい焼きにもかぶりつく

「あ、カスタードいいッスね。これ甘さ少し控えめでくどくないッス」
「ほんとプイ。あ、これカフェオレに合うプイ。和菓子とカフェオレの出会いプイ」
「和菓子…なんスかね？」

俺に最近はカフェオレクリームとか出してる店もある。結構前から合わせられてる組みあわせなんだろう
そういえば今回寄らなかったエリアにある総菜屋の揚げ物も美味しいんだよなここ、とか考えて横を見る

「ﾓｷｭﾓｷｭﾓｷｭ…」

大型ハムスターが絶賛たい焼きに夢中だ。これとかいくつか残ってる他の美味しい店はまた今度教えるとしよう。じゃないと次が食べ歩きツアーになる
そういえば、あのギャンブル狂いがおススメしていたホルモン煮込みの美味しい店も最近行ってない。寒いうちにまた行きたくなってきた
なんだか、そんなことを考えていると今まさにたい焼き食べてるというのにお腹が空いてくる
駄目だ駄目だ。まるでどこぞの日本総大将か芦毛の怪物みたいなこと言い出したら終わりだ
芦毛の事を考えたから寄ってきたとは考えたくないが、少し離れた場所でコロッケか何か買ってる芦毛マニアの姿も見なかったことにしてスルーを決め込む

「ん、ご馳走さまプイ」
「どういたしましてッス。満足したッスか？」
「大満足プイ♪こういう買い食いってなかなかできなかったし、またやりたいプイねー」
「食べ過ぎてメジロしないでくださいよ？」
「なにそれプイ」
「ゴルシがたまに使ってる隠語ッス。気にしないでくださいッス」

ゴミを纏めてベンチから立つ。ああ、小腹は満たされた感じがある。これなら帰りも苦じゃないだろう
思えば、姐御やエールちゃん達にすら教えてない隠れ家の場所まで喋ってしまうとは。今日は何処か、自分も浮かれていたりしたのだろうか
元々気分屋ではあるし、そういう気分なだけだったのかもしれない。もしくは、別の理由があったのかもしれない
例えば、そう…心を緩ませる、何かがあった、とか

「じゃあ、暗くなってきたし帰るプイ？」

例えば。
夕日の残り僅かな残照を受けて笑うこの人が身に着けているものが
以前、自分が贈ったストールとハンドメイドの耳飾りだと気づいてしまった時からとか
茜色の陽ざしを照り返す真鍮の蹄鉄飾りとそれに飾られた笑顔が、なんかもう誤魔化す気にもさせなかったとか

「………ん。じゃあ、帰りますかね」
「また来るのが楽しみプーイ♪パンケーキ、パンケーキ♪」
「ちなみにドリンクはカフェラテがおススメッス」
「セットでいくプイ」

ちゃっかりと次の約束まで取り付けられてしまった以上、またこうして二人してここを歩くことになるんだろう
そしてまた、こうして夕日の中二人で同じ方向に帰っていくことになるんだろう

「お鍋も楽しみプイねー。味付けはどうするプイ？」
「ヒントは、この間エールちゃんが帰省から帰ってきたって事ッス」
「オーケー理解したプイ」

それはきっと、これからも悪い気はしないだろうから

「問題は締めッスね…またどうせ戦争になるから一通り用意したッスけど」
「リゾットっていうのもあるらしいプイ」
「火種増やします？ここで？」

ちょっとだけ悔しいけど
それを楽しみにしてしまっているのは。きっと、自分もどこか同じだろうから

以上。我慢できずに酒を飲んでしまったので舎弟した

オルプイは我々に尊さを与える。

デートですね？

オルプイいい…

舎弟からのプレゼントを身につけてるって
それ舎弟色に染められましたってことでいいんですよね？

たい焼きの最近の種類豊富さはなんなんだろうねと

体を壊さない程度に飲んでくれ

はいこれがデートです
異論は聞き入れません

これはちょっとした予言だが
ネイチャには間違いなくこのこと漏れるんじゃないか？

今気づいた
帰り道は私服で二人並んで食材入った買い物袋持って歩いてるわけだ
夫婦？

味噌鍋か…

エールちゃんが帰省から帰ってきたならまぁお土産はわかりきってるもんな…

>食べ過ぎてメジロしないでくださいよ？
風評被害ですわ！風評被害ですわ！

>No.890262291
ありがとう…デートありがとう…

ヤンキーカップルだこれ！

オルプイだ！囲め！尊さを逃すな！

>これはちょっとした予言だが
>ネイチャには間違いなくこのこと漏れるんじゃないか？
おやー、あのウマ娘カップルは…
ま、黙っときますか…

「これがエールちゃんがおみやげに買ってきた鍋つゆッスか
どうせ赤味噌…って辛？！」
「名古屋名物赤から鍋でええええええええええええええす！！！！！！」

>「これがエールちゃんがおみやげに買ってきた鍋つゆッスか
>どうせ赤味噌…って辛？！」
>「名古屋名物赤から鍋でええええええええええええええす！！！！！！」
名古屋こわー…

二人がトレセン卒業して十数年後にサンデーの2×3ちゃんが入学してきそうなレベルのイチャつき具合

>二人がトレセン卒業して十数年後にサンデーの2×3ちゃんが入学してきそうなレベルのイチャつき具合
レズよ！

彼女はね
そんなに気安く出歩いてパパラッチに追われるような真似をしちゃいけないの

>彼女はね
>そんなに気安く出歩いてパパラッチに追われるような真似をしちゃいけないの
うるせープイ
ボイコットされたくなかったらこのくらい好きにさせるプイ

>彼女はね
>そんなに気安く出歩いてパパラッチに追われるような真似をしちゃいけないの
明日の予定ボイコットするプイ(着拒)

芦毛マニアは何してるの…？

>芦毛マニアは何してるの…？
🐴失礼な
私だって買い食いぐらいしますよ

芦毛絡まなければ🐴は割と普通の子だから…

>芦毛マニアは何してるの…？
夕方の葦毛ほど美しいものはありませんよ

そのウマ娘が来た店にはなぜかその後芦毛のウマ娘の客が増えるという

>(ようやく手書きに専念できる…)
かわいい…素直な笑顔いい…

プイプイはプレハブ空間に馴染みすぎててそろそろ元からチームキボンヌだったんじゃないかと思えてきた

ディープインパクトはでした。会だけどプイプイはそれでいいと思うよ
…何で絡んでんるんだろうそういえば

プイプイが居座りすぎてそのうち仕事で疲れた三冠馬の休憩施設になりそう…

>いつも素晴らしい怪文書ありがとうございます
>書いてみるととても難しいですね…
ありがてえ…ありがてえ…

>酒飲みに感化されて怪文書書こうとしたけど円滑な進行や適切な改行が思った以上に難しい…！
>書き手って凄いんだなと実感しました…
欲望に任せて書けばいいのです
酒はリミッター解除の手段です

書いてる途中なんだけどとまっちゃってるわ
狂気の描写が足りない

>プイプイが居座りすぎてそのうち仕事で疲れた三冠馬の休憩施設になりそう…
疲れた最強スプリンターや世界一位の休憩所にはなってるな既に…

隙あらばイチャイチャする三冠馬どもめ

>>プイプイが居座りすぎてそのうち仕事で疲れた三冠馬の休憩施設になりそう…
>疲れた最強スプリンターや世界一位の休憩所にはなってるな既に…
その内会長もくるの…？

>…何で絡んでんるんだろうそういえば
い
三
プイ

>その内会長もくるの…？
会長はプレハブの狼藉に虹色に光る役割があるから…

>>その内会長もくるの…？
>会長はプレハブの狼藉に虹色に光る役割があるから…
きた場合カチコミってことになるのか…

モツ煮食いにきてたフェスタに見つかってたら多分ゴルシに伝わって大惨事

怪文書の味方は勢いで天敵は羞恥心だ
ソースは何作か書いた翌日にゴミ箱にｼｭｩｩｩｰｯ！してきた自分

>その内会長もくるの…？
庇護欲からプイプイがサボり場としてプレハブを📞に紹介する
いつの間にか鍋の肉を食べにブライアンがやってくる
三冠馬がサボりすぎて七色に光る会長がプレハブに突撃する

>1643037629328.png
ありがとうございます…美しい…

>隙あらばイチャイチャする三冠馬どもめ
ひょっとしてこいつら恋人なんじゃないか？

>三冠馬がサボりすぎて七色に光る会長がプレハブに突撃する
何故かいるシービーが生徒会長も疲れてるでしょ？たまには休みなよって誘う奴じゃん！

多分プイはプレハブ空間に対する好きと舎弟に対する好きを分けてるよね

>>三冠馬がサボりすぎて七色に光る会長がプレハブに突撃する
>何故かいるシービーが生徒会長も疲れてるでしょ？たまには休みなよって誘う奴じゃん！
ナリタブライアンです…

>1643037629328.png
くそっ　美少女め

>多分プイはプレハブ空間に対する好きと舎弟に対する好きを分けてるよね
オルフェちゃんは特別プイしてくれ～！