これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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re-in.◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️の花言葉

LA、LA、LA、・・・

 

夢幻世界を晴れ渡った星空の様に透き通った歌声が支配する。

 

意思あるものが見て、感じ取る夢幻。

 

それ自体に異能を宿した情報・・・認識災害、言霊の類だ。

 

だからこそ物理現象という過程を辿る幻術と違って、情報体である夢幻は対象者無しに異能を発揮する事が出来ない。

 

しかし現象という過程を経由しない分、出来る事の幅は非常に多い。

 

発動条件は、なんらかの方法で自分以外の存在に認識される事。

 

故に【ヘイワン】は音・・・聴覚を経由して夢幻に招き入れ、それを体得したカーソンは歌を認識させる事で夢幻世界の掌握に踏み切った。

 

夢幻世界の支配者である蜘蛛のような精神生命体と幼い樹精が歌に対抗するように音を発し、激しく鳴り響く鈴虫の音、深い森の騒めきと天上の歌声が互いを打ち消し合わんとして衝突した。

 

 

同調する気など更々無いアンサンブルが耳障りな不協和音を奏でる。

 

脆いガラスが割れる瞬間の様に、夢幻世界がひび割れていく。

 

 

支配権を賭けた拮抗の結果は───蒼色の闇に染まっていく世界が、事実をこれ以上無く物語っていた。

 

 

最も容易く、純粋なスペックの差による圧倒。

 

古代伝説級2体と凖〈超級〉エンブリオの《メッセンジャー・アポートシス》によって最大限に強化されたSUBMの間には、歴然とした力の差が存在していた。

 

白と黒のツートンカラーの夢幻が同質の力の干渉によって侵食され、【双胴白鯨】の領域が───全てを呑み込む。

 

 

スキルの創造。

 

 

それは、アーキタイプシステムの恩恵を受ける事が出来ないメイデンが数々のUBMと融合し、その身を以て体得した特異性。

 

そして今、【双胴白鯨】と融合以上に深く一体化した事で、カーソンの特異性は・・・“これ以上無いほど最悪なタイミング”で開花の瞬間を迎えた。

 

 

天使は息をするかの様に練り上げた赤色透明な《竜王気》を纏い、一切の光が通らなくなるまで圧縮し、物質化させる。

 

 

それと同時に、展開された領域が急激に収束していく。

 

 

自身が纏う超高密度の《竜王気》の甚大な圧力で華奢な身体を軋ませながら、収束の負荷に耐えられず崩壊する夢幻世界をまるで黒い《竜王気》が啜り、喰らい尽くすかのように取り込んでいた。

 

【星浄巫蠱】の特性である『融合』と【双胴白鯨】の特性『置換』、そして所有者に非実体に対する物理干渉能力を与える【誇獣闘輪】の『超越』が組み合わさった結果、【双胴白鯨】の《◾️◾️◾️》は数少ない同スキルの中でも異質なものへとなっていた。

 

 

それはかつて【ヘイワン】が到達点を模索するマスターに見聞として伝えた、世界の根幹にして秘中の秘。

 

既に必須前提条件である魔力操作と魂力操作は習得しており、《死霊術》を基にしたオリジナルスキルを作ろうとしていた矢先の事だった。

 

大陸と勢力図を分割する偉業を為した人間でも、◾️◾️でも無い”人外“が駆使していた秘奥。

 

その当時はルンバもカーソンの何方も僅かな《竜王気》さえ発生させる事は出来なかったが・・・今とは全く状況が異なっている。

 

実体のない夢幻を喰らい尽くした事で舞台は現実世界へと移り変わり、今度は自然界に漂う死者リソースと、海水を空間ごと《◾️◾️◾️》が取り込んでいく。

 

逃げ遅れた海棲モンスターが収束する空間に巻き込まれて《◾️◾️◾️》に接触した瞬間、真っ白な粉塵と化し、絶命したことを知らぬまま喰われた。

 

・・・どうやら黒いアレは規模の違いはあれど、ドレイン系に分類されるものらしい。

 

魂の存在を感じられるようになった事で絶命した哀れなモンスターの魂が死者リソースとして吸収されているのが、手に取るように分かった。

 

かつて慣れ親しんでいた、死の直感。

 

あの頃はよく死んでいたが、今となっては懐かしい記憶。

 

【古種峰芽】の時もそうだった。

 

《窮鼠精命》はリソースを奪うドレイン系の手合いとは相性が悪い。

 

アレに巻き込まれれば、俺も死ぬ。

 

─────!!!!

 

吸収対象が無差別な所為で世界諸共殺されそうな勢い・・・【双胴白鯨】の自我は完全に暴走状態に陥って“終焉”と同質の存在に成りかけていた。

 

アレとはよっぽど生物的でシステムにも組み込まれてこそいないが、既に理性など存在しないのであろう事は容易く理解出来る程にその行動原理は純粋で、シンプルだった。

 

 

───破壊衝動。

 

 

ただ己を突き動かす衝動のままに世界を滅ぼすもの。

 

世界の終了装置が”終焉“だとするならば、これは”終末“とでも呼ぶべきだろうか。

 

それは・・・在るだけで世界を消滅させる”呪い“という現象だった。

 

 

 

俺はそれを昂るでもなく、恐るでもなく、ただ食い入る様に見ていた。

 

 

混沌とした感情はいつの間にか何処かへ行ってしまったかのように。

 

 

奇妙な事に、俺はそれに深い───共感を覚えていた。

 

 

染み入るように、水の色が変わるように静かで、明確な変化。

 

 

【アガナースタ】の“透明”とは全く異なる・・・“無色”の闘争心。

 

 

───闘争本能。

 

 

熟れた林檎が果樹の枝から落ちるように。

 

野に生きる獣が爪牙の使い方を誤らないように。

 

 

“理由”もなく───ただ自然現象の如く、そういう力を持っていた。

 

 

俺から【死霊王】が離れて・・・否、己を押し込めていた“型”が歪み、外れていく。

 

 

水面に写る影が不自然に揺らいだ。

 

 

パラパラと冒涜の化身による仮初の体を覆っていた“殻”が脱落していく。

 

 

残されたのは“未分化”の集合体。

 

 

酷く曖昧で漠然とした純粋で不定形な力が膨大な闘気によって方向性を指定され、性質を限定される事で、初めて形を得る。

 

 

(─────)

 

 

愛しい少女の幻聴が聞こえた気がした。

 

 

まだ、僅かな未練があったのかもしれない。

 

 

しかし俺は───今度こそ声を徹底的に消し去る。

 

 

「思い出す」機能が戦闘専用へとチューニングされ、視界が無彩色に変化する。

 

 

透き通った無色の思考は、寸分の躊躇もなく最後の一線を越えた。

 

 

より機能的で───”抹殺“に特化した形。

 

 

黒い金属片と歯車と生体パーツで複雑に織り編まれた機械の義体。

 

ギチギチと昆虫の鳴き声の様な音を立てて繊細な操作が内部で恒常的に行われ、その都度適切な“性質”へと切り替えられる。

 

生命の温もりはなく、一切の無駄を省かれのっぺりとした艶消しの表面装甲が示すのは強い拒絶。

 

外部接続の為のジョイントが存在しない内部完結機構によって個体として完成された機械生命体。

 

人としての手の機能は失われ、武器としての機能を有しているだけの無骨で無機質な義手。

 

その手は誰かの手を握る為のものでも、掴むものでもなく───命を狩る為に存在していた。

 

 

風が吹いている。

 

大気すら吸い込まれ、一点に向けて強い風が吹いていた。

 

嵐のように轟々と吹き荒ぶ暴風圏の中、ひらひらと風など知らないかのように白い花弁が舞っていた。

 

 

黒い《◾️◾️◾️》を纏う“終末”から───そして、一機の機械生命体から。

 

 

彼等は花弁を散らし、衝動と本能に従うだけの───────現象だった。

 

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

 

◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️は世界の終わりのような場所で咲き廻る。

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