別れたはずの交際相手が行く先々で待ち伏せしている、教えていないのに自分の居場所が知られている…。
恋愛感情のもつれや恨みなどから起こるストーカー行為等。
次第にエスカレートし、凶悪な犯罪に発展するおそれがあります。
現実問題、過去にもストーカー被害から事件に発展したものも少なくありません。
この記事では、ストーカー規制法について、平成29年(2017年)に改正施行された内容をもとにストーカー行為の線引きと実事例を紹介しています。
知らず知らずのうちにストーカー行為をしている可能性やされていることも…。
間違いを犯さないためにも、ぜひ概要だけでも参考にしてください。
- 目次 -
実際に事件になったストーカー被害事例
これまでにストーカー被害から事件に発展したおもな事例は、以下の通り。
- 桶川ストーカー殺人事件(1999年)
- 新橋ストーカー殺人事件(2009年)
- 長崎ストーカー殺人事件(2011年)
- 三鷹ストーカー殺人事件(2013年)
- 市川ストーカー殺人事件(2013年)
以上のストーカー殺人事件を受ける形でストーカー規制法が施行・改定されています。
桶川ストーカー殺人事件(1999年)
平成11年10月26日に埼玉県桶川市で発生したストーカー殺人事件。
「ストーカー」という言葉とともにその異常な行為が日本中を震撼させた事件である。
現在の「ストーカー規制法」ができるきっかけとなったことでも知られる。
日本のストーカー事件史上最も有名なストーカー殺人事件。
桶川ストーカー殺人事件の詳細はこちら
1.桶川ストーカー殺人事件とは
平成11年に埼玉県桶川市で発生した、「ストーカー規制法」ができるきっかけとなったことでも知られる、日本のストーカー事件史上最も有名なストーカー殺人事件。
この凄惨な事件をきっかけに「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(通称:ストーカー規制法)が制定されたことでも知られています。
特にこの事件では「ストーカー規制法」がない時代だったとはいえ、警察のあまりにズサンな対応が「殺人事件」という最悪の事態を招いたとしてマスコミに取り上げられたこともあり、多くの警察関係者が処分される事態となった。
2.桶川ストーカー殺人事件の概要概要
平成11年10月26日午後0時53分。
埼玉県のJR桶川駅前のスーパーマーケット「桶川マイン」1階入口近くで若い女性が何者かに刺される。
人通りの多い白昼の事件であったが、犯人は現場から逃走し、被害者はすぐに病院に搬送されたが出血多量で亡くなられた。
事件の第一報はこんなニュースでした。ストーカーの意味はもちろん、ストーカーという言葉自体がまだ世間一般に認知されていうなかった当時、多くの方が「通り魔かな・・・」と感じたことでしょう。しかし捜査が進むにつれ、この殺人事件の背景とともに「ストーカー」という恐ろしい存在も明らかになってきます。
3.犯行に至る過程
事件はどこにでもあるような男女の出会いから始まる。
平成11年1月6日、埼玉県内のゲームセンターで友人と一緒にいた被害者の猪野詩織さん(21歳)が、小松和人(当時26歳)に声をかけられたことがきっかけで交際がスタート。
当時「和人」は本名を隠して「誠」と名乗り、年齢も23歳と偽っていたほか、実際は東京池袋で実兄(武史)と共同経営で複数の風俗店を経営していることも隠し、自動車販売などを手がける青年実業家を騙っていた。
複数の風俗店の経営で多額利益をあげていた和人は、交際まもなく高級ブランドのプレゼントを贈るようになる。
あまりに高額のプレゼントに詩織さんが受け取りを拒否すると、ひと目もはばからず怒鳴りつけるなど暴力的な一面も覗かせたり、携帯電話の番号しか教えていないはずなのに自宅に電話をかけてくるなど、次第に詩織さんは和人との交際に不安を抱くようになる。
3月に入り和人の住むというマンションに遊びに行くが、室内にビデオカメラが隠されていたことに気づきこれ詩織さんが問いただすと、詩織さんの顔スレスレに壁を何度も殴りつけるなど激怒。
こういったことから徐々に和人の暴力的な恐ろしい面を知ることとなり、詩織は和人と別れることを決意するが、別れを告げる詩織に対し和人は「俺に逆らうな」「俺から逃げられると思うな」などと脅し、交際の継続を強要。
そんな和人の言動に「殺されるかもしれない」と、恐怖を抱いた詩織は、仲の良い先輩に事のいきさつを説明した上で「私が殺されたら犯人はこの人」と和人のことを伝えている。
3月末改めて別れるように和人に話をするが、詩織さんばかりか家族全員に危害を加えることをほのめかした上「金で動く人間はいくらでもいる」などと脅迫して交際の継続を強要。
詩織さんはこの後も機会を見て何度も別れを切り出すが、和人はその度に脅迫して交際の継続を強要。
ついには和人と兄の武史、知人の三人でしおりさんの自宅に押しかけ、でっち上げた話で金銭を要求。詩織の父親が毅然として追い返し事なきを得た。
この特の様子をこっそり録音していた詩織は翌日上尾署にテープを持参して相談に訪れるが、対応した署員は「民事ギリギリだね」「これは事件にはならない」と、事件として対応しなかった。
その後も嫌がらせが続き、上尾署に相談に訪れるが「プレゼントもらっているんだから・・」「これは男女の問題だから立ち入れないんですよ」と事件として対応できないとする対応に変わることはなかった。
7月には詩織の自宅や学校、父親の勤務先に300枚もの事実無根の中傷ビラが撒かれ、改めて名誉毀損で告訴するも、対応した署員は証拠として持参した中傷ビラを見て「いい紙を使ってますね」とか、「娘さんの試験が終わってからでいいのでは?」などといい加減な対応に終始する。
ストーカー規制法のなかった当時、民事不介入の原則があるとは言え、明らかにその域を超えるような状況でさえも痴話喧嘩として取り合わなかった警察の対応は後に大きな波紋を呼ぶこととなります。
8月には再び父親の勤務先に800枚もの誹謗中傷の手紙が届く。
9月、上尾署員が詩織さん宅に訪れ、対応した母親に「告訴を取り下げてくれませんか?」「告訴は犯人が捕まってからでも簡単に出すことができます」と嘘をつき、告訴の取り下げを要請する。
刑事訴訟法では一度取り下げた告訴は二度とすることができないことになっていますので、この署員が言ったことは明らかに嘘。
母は断固として告訴の取り下げを拒むが、残念ながら告訴は既に上尾署員によって被害届に改ざんされていた。
署員がこういった行動をとった理由は、未処理の告訴件数が増えると、上尾署の成績が下がること、告訴は必ず送検しなくてはならないが、被害届は本人同士の話し合いなどで決着すれば必ずしも送検しなくても良いといった理由があり、被害相談への対応ばかりかこういった成績優先の自分中心的な署員の対応が後に大きな問題となります。
その後も嫌がらせは続き、詩織さんやその家族が被害や不安を訴えているにもかかわらず、警察の対応は一向に変わらず事件当日を迎えることとなる。
和人は兄の武史に詩織さんの殺害を相談。
10月26日、武史に詩織さん殺害を依頼された実行犯の久保田祥史を含む3人が桶川に向かった。
実行犯以外の二人は詩織さんの自宅監視役と運転手。
午後0時53分。
自宅を監視していた仲間から連絡を受けた久保田が、JR桶川駅近くで自転車を降りた詩織さんの右脇腹と左胸部を刺して逃亡。
詩織さんは上尾中央綜合病院に搬送されるが出血多量で亡くなられた。
しかし、事件はこれでは終わらなかった。
事件後、上尾署に設置された捜査本部は記者会見を開くが、報道陣を前に捜査一課長代理は半笑いで事件の概要を説明する姿は異常としか言いようがない。
さらに、事件当日の詩織さんの服装等を「バックはプラダ」「時計はグッチ」などと意図的と捉えることができるような詳しい説明をしたことで、マスコミ各社にブランド嗜好の派手な女性といった印象の報道がなされたあげく、「ブランド依存症の女性」「キャバクラ嬢」「風俗嬢だった・・」などとデマまで流れ、殺害に至った経緯には詩織さんにも問題があったかのように報道された。
そんな中、写真週刊誌「フォーカス」の記者が、詩織さんのご両親に取材。
ご両親の話によって事件の実態を知った記者は警察の捜査に疑問を感じ、独自に調査をした結果、警察よりも先に実行犯の潜伏先を特定し写真を「フォーカス」で発表。
これを受けて警察が実行犯を逮捕するといった、警察は後手後手の対応となる。
問題の小松和人は北海道に逃亡していたが、翌年1月16日、屈斜路湖で死体で発見されるが、遺書があったことから自殺と判断された。
4.事件後
兄の武史は直接実行犯に殺害を指示したことから主犯として無期懲役。
実行犯の久保田には懲役18年、ほか二人には懲役15年が言い渡されているが、詩織さんの交際相手であり事件の根幹である和人は、名誉毀損罪の共犯が認定されたが、詩織さん殺人事件での立件は見送られた。
その後の民事訴訟では本件殺人犯は和人を介さなければ詩織さんとの接点がないことや、和人の攻撃性などから和人の殺人の責任が認定されたとはいえ、被害者感情を考えれば最後の最後まで理不尽極まりない事件と言えます。
この事件をきっかけに、自身の恋愛感情を基に常識では考えられない行動をとる「ストーカー」という存在が世に知らしめられることとなり、同時に「民事不介入」を理由に、防げたはずの凄惨な事件を止めることができなかった警察の対応と法の不備を改善するべく「ストーカー規制法」が制定されました。
新橋ストーカー殺人事件(2009年)
平成21年8月3日に発生した、祖母と孫が殺害されたストーカー殺人事件。
この事件の犯人は元交際相手などではなく、被害者が勤めていた「耳かき店」の客の一人であった。
店員と客というだけの関係に過ぎないにも関わらず、一方的に好意を抱いて起こした凄惨な殺人事件は、ストーカーの被害は誰にでも起こりうるものだと改めて痛感させられる事件だった。
新橋ストーカー殺人事件の詳細はこちら
1.新橋ストーカー殺人事件とは
平成21年8月3日に港区新橋で、祖母と孫が殺害されたストーカー殺人事件。
現場近くで現行犯逮捕された林貢二は、被害者の美穂さんが勤めていた「耳かき店」の常連客だったが交際していたわけではなく、単なる接客業従業者と常連客の関係であったものが一方的に恋愛感情を持ち、ストーカーとなって殺人事件を起こしたものとして話題となった。
2.事件概要
平成21年8月3日、東京都西新橋1丁目、鈴木芳江さん(78)方近隣の住民から「包丁を持った男と女性が喧嘩をしている」との110番通報が有り、警察官が駆けつけたところ同宅にて鈴木さんと孫娘の江尻美保さん(21)が血だらけで倒れいるところを発見されて病院に搬送された。
鈴木さんはまもなく病院で死亡が確認され、孫娘の江尻美保さんは同月7日、入院先の病院で亡くなられた。
3.犯行に至る過程
江尻さんは東京都千代田区、秋葉原駅近くの「耳かき店」に勤務していた。
林貢二は事件前年の2月頃から「耳かき店」に出入りするようになり、同年4月になると江尻さんに一方的に好意を寄せて交際を申し込むが断られ、同店への客としての出入りも禁止される。
事件前月の7月19日には被害者の美保さんが「客の男に付きまとわれている」として110番通報し、警察官が周囲を探したが不審者がいなかった。
この時、美保さんは「男がしつこく言い寄り、断ったっら付きまとわれた」と警察官に説明するが、被害届は出さなかった。
この19日以降は美保さんから相談はなく、警察ではこれ以上の捜査はしていなかった。
事件当日の8月3日、西新橋の鈴木芳江さん方1階で、芳江さん(美穂さんの祖母)に「(江尻さんに)会わせろ」と言うが、芳江さんと口論になって刺した後、2階で就寝中の美保さんを刺した。
4.犯行後
逮捕後、警視庁愛宕署の調べに対し「事件の約2週間前、江尻さんに直接会って関係の修復を求めたが拒否された」「交際を断られ、腹が立ったので殺そうと思った」などと供述。
陪審員裁判で初めての死刑が求刑されたとしても話題を呼んだこの裁判は、平成22年11月1日、東京地方裁判所で林被告に無期懲役が言い渡された。
長崎ストーカー殺人事件(2011年)
平成23年12月に発生したストーカー殺人事件。
元交際相手本人ではなく、その母と祖母が殺害された凄惨な事件です。
当時ストーカー規制法では届出る警察署が限定されていたことや、その警察署で届出の受理を送らせた警察が、実は慰安旅行に行っていたことなども発覚し物議を醸した事件。
長崎ストーカー殺人事件の詳細はこちら
1.長崎ストーカー殺人事件とは
平成23年12月に長崎で発生したストーカー殺人事件。
元交際相手本人ではなく、その母と祖母が殺害された凄惨な事件です。
さらに、ストーカー被害の相談を受けていた千葉県警が被害届を受理せずに慰安旅行に行っていた事実が発覚したことで、平成11年に発生した「桶川ストーカー殺人事件」を彷彿させる警察への不信感が社会問題となった事件。
また、当時の「ストーカー規制法」では、つきまとい等に対する警告や命令は被害者の居住地の警察のみに限定されていたことから、居住する千葉県から実家のある九州に逃げていた被害者が、届けのために何度も千葉まで出向かざるを得なかったことなども”被害を食い止められなかった要因”の一つとして問題となり、平成25年6月の「ストーカー規制法改正」のきっかけとなった事件です。
2.事件概要
平成23年12月26日。
長崎県西海市の山下誠さん(58)方で、午後9時前に帰宅した誠さんの次男(18)が、家に明かりがなく居間の窓ガラスが割られているのを見つけ、三女と東京にいた誠さんに電話で伝える。
誠さんが西海署に通報するとともに、次男は近所の親類と一緒に2人を探したところ、敷地内のワゴン車の荷台から妻の美都子さん(当時56歳)と母の久江さん(同77歳)が刺殺されていた。
3.犯行に至る過程
平成23年2月下旬、三女と筒井郷太容疑者(27)が交際を始める。
同年9月から10月には三女が筒井から暴力を受け、事実上の監禁状態となる。
なお、この時の暴力は後に被害届を提出している。
10月29日に父・誠さんが長崎・千葉の両県警に相談、翌30日には三女の部屋に三女の親族、同僚と習志野署員2人が突入して三女を保護。
誠さんが自宅に三女を連れて帰ることとなる。
署員は筒井容疑者を任意同行し「二度と近づかない」との誓約書を書かせ、厳重注意だけで帰すが、翌31日には筒井から三女に脅迫メールが届いている。
11月に入り長崎県警西海署に障害の被害届けを出したいと相談するが、事件の起こった警察署にするように言われたため千葉県警習志野署に電話で相談。
11月中旬には筒井が三女の知人などに「三女の連絡先を教えなかれば周囲の人を殺して取り戻す」といった脅迫メールを送ったことから、西海署と習志野署に相談するがいずれも「被害者の所在地の警察署に相談をするように回答」
また、三重県警桑名署に脅迫メールを伝え筒井の実家巡回を求めるが、同署は「西海、習志野署に確認する」と回答したのみで以後連絡ない。
12月に入り三女が習志野署に被害届を出したいと電話相談。
12月6日に三女と誠さんが習志野警察署を訪れるが、電話ではいつでもいいと言っていたにもかかわらず、刑事課が一人も空いていないので1週間待つように回答。
これがこの事件で後に大きな波紋を投げかけた。
なんと、「被害届の提出は一週間待ってほしい」と伝えたあとの、12月8日から10日まで、ストーカー事件の責任者だった生活安全課の課長や、父親に「被害届の提出を待ってほしい」と伝えた刑事課の係長など12人が、北海道に慰安旅行に行っていたことが後に発覚。
しかも、この旅行期間中の9日未明に三女宅もチャイムを鳴らしたりベランダを叩く音がしたことから習志野署に通報するが、「顔は確認したのか?」「逮捕はできない」として帰ってしまったほか、この後、三女宅前をうろつく筒井に職務質問するが、捜査を先送りにして事情聴取も済んでいなかったことから逮捕は難しいとして、両親に連れて帰るように指示をするにとどまっている。
後に県警は慰安旅行に行った担当者が事件の切迫性を認識して対応していればより踏み込んだ対応ができた筈だったと、旅行が捜査に与えた影響を認めて記者会見で謝罪するが謝って済む問題ではない。
12月16日午後6時ごろ、誠さん方離れの窓ガラスを割って侵入、久江さんの胸や腹を包丁で数回刺して殺害。
更に同20分ごろ母屋の窓ガラスを割って入り、美都子さんを包丁で十数回刺して殺害。
死因はいずれも失血死だった。
4.犯行後
事件翌日の17日午前、警察は筒井容疑者を長崎市内のホテルで見つけ、任意同行。
この時、筒井容疑者が所持していたウエストポーチの中に包丁2本が入っていたことからこれが凶器とみられた。
事件当時の精神状態を調べる鑑定留置の結果などを踏まえ、刑事責任が問えると判断した長崎地検は26日、三重県桑名市、無職、筒井郷太容疑者(27)を殺人、住居侵入、窃盗などの罪で長崎地裁に起訴した。
さらに、5月21日には殺害された山下美都子さん(当時56歳)の三女(23)に暴力を振るい、負傷させた疑いも強まったとして傷害容疑、6月1日には三女の姉ら8人に脅迫メールを送った脅迫罪でそれぞれ追起訴された。
5.第一審
平成25年6月14日長崎地裁で開かれました。
第4回公判では三女が証人尋問で出廷し、「死刑でも足りない。家族を殺すと言われていたので、死ぬことも逃げることもできなかった」と涙ながらに訴えた。
また、同居を始めるとすぐに暴力を振るわれるようになり「鉄亜鈴やコップで殴るなどひどかった」といった状況や、「雑貨売り場で男性客を接客する時は、携帯電話を通話状態のままにさせられていた」などと職場にいるときでさえも拘束されていたことなどを明かした。
被告は裁判で「警察官に自白を強要された」とし、無罪を主張していましたが、重富裁判長は「自白は具体的かつ詳細で信用できる。公判での供述は信用できない」として、2人の殺害を被告の犯行と認定し「何の落ち度もない2人の命を理不尽に奪い、結果は重大」として求刑通り死刑を言い渡されました。
被告側は判決を不服とし控訴中です。
ストーカー規制法が施行されたことによって、警察が積極的にストーカー事案に対して介入できるような法整備がなされてもなお、警察の体質が変わることなく、凄惨なストーカー事件を食い止めることができなかった衝撃的な事件として知られています。
逗子ストーカー殺人事件(2012年)
平成24年11月6日、神奈川県逗子市で発生したストーカー殺人事件。
今回の事件では殺害を予告するなどのメールを何度となく被害者に送信していたが、現行のストーカー規制法では断られたにもかかわらず繰り返される電話やFAXは「つきまとい行為」として明文で規定されているものの、メールは対象外となっていることから警察はスートーカー規制法の適応外と判断。
「メール」も対象として規定されていれば殺人を防げたとは言い切れないものの、同法の不備が問題となりました。
2013年のストーカー規制法の改正のきっかけとなった事件としても知られている。
逗子ストーカー殺人事件の詳細はこちらから
1.逗子ストーカー殺人事件とは
平成24年11月6日、神奈川県逗子市で発生したストーカー殺人事件。
今回の事件では殺害を予告するなどのメールを何度となく被害者に送信していたが、現行のストカー規制法では断られたにもかかわらず繰り返される電話やFAXは「つきまとい行為」として明文で規定されているものの、メールは対象外となっていることから警察はストーカー規制法の適応外と判断。
「メール」も対象として規定されていれば殺人を防げたとは言い切れないものの、同法の不備が問題となりました。
また、犯人が知らなかった被害者の結婚後の苗字や住所の一部を犯人に言ってしまっていた警察の大失態がマスコミにも取り上げられて大きな話題となった。
2.事件概要
平成24年11月6日昼頃。
神奈川県逗子市で元教員の小堤英統(こづつみ・ひでと)容疑者(40歳)が以前交際していたフリーデザイナーの三好梨絵(りえ)さん(33歳)を殺害し、自らも現場で自殺した事件。
この事件では、被害者の自宅住所をインターネットに書き込みをしたり、探偵に依頼するなどして調べた経緯が取り沙汰されたほか、依頼を受けた探偵が被害者の住所を特定するために、さらに依頼をした別の探偵が違法に個人情報を入手したとして逮捕されるなど、探偵業界にも大きな波紋を投げかける事件となった。
3.犯行に至る過程
平成16年、三好さん(当時、旧姓「柴田」さん)は世田谷区のバトミントン教室で小堤容疑者と知り合い、平成18年ごろまで交際。
当時、小堤は都内の私立女子高で社会科を担当する非常勤教師で、バトミントン部の手伝いもする生徒に慕われる人気者だったとも言われている。
ところが、柴田さんから別れを切り出されると、小堤は柴田さんに「お前だけ幸せになるのは許さない」などと執拗にメールを送るようになったが、この時は当時住んでいた東京都内の警察に相談しメールは途絶えたという。
平成20年夏、柴田さんは結婚し「三好」姓となり、逗子市に転居。
しかし、この年の秋には小堤容疑者は身内を装い三好さんの勤務先へ電話をしている。
平成22年、逗子署がが小堤容疑者の家族を通じ注意したところ、小堤容疑者は自殺を図って入院。
小堤容疑者の母親によると、小堤容疑者はこの頃、三好さんの結婚を知ったらしい。
三好さんが結婚したことを知った小堤のメールはエスカレートし「ぜってー殺す」「刺し殺す」などと殺害を予告するメールを一日に100件も送り付けることもあった。
三好さんは警察に相談し、平成23年6月に脅迫容疑で逮捕されることとなったが、逗子署は逮捕状を読み上げる際に、当時小堤が知らなかった結婚後の「三好」という姓と逗子市という住所の一部を小堤に読み聞かせてしまったことが後に大問題となる。
小堤は警察が読み上げた情報を基に、三好さんの行方を執拗に探し始める。
質問サイトへの投稿や元勤務先へのメールで問い合わせるなどをし、大手ポータルサイトのサービス「Yahoo知恵袋」を利用したことは報道でも大きく取り上げられた。
脅迫容疑については裁判の結果、懲役1年執行猶予3年の判決を受け同年9月に釈放となったが、これで事態は収まったわけではなかったということではなく、結果として逮捕状の読み上げが火に油を注いだことになってしまった。
翌平成24年3月~4月にかけて、小堤は再び1000通を超えるメールを三好さんに送りつけてくるようになり、三好さんは再び警察に助けを求めた。
この時点で約6年もの間ストーカーの被害を受けていることになる。
ところが、「婚約不履行だ」「慰謝料を払え」といった事務的な文面であったことから警察は「脅迫」とまではいえないとし、ストーカー規制法でもメールという行為自体が明文で規定されていないことから適応できないと判断した。
警察の発表では「三好さんから小堤からのメールが届かなくなったので、彼を刺激しないように警告はしないように要請があった」ことから、三好さんのアパート周辺に防犯カメラを設置。同年4~10月にパトロールを計146回行ったとしている。
平成24年11月6日。
小堤容疑者が三次さん宅に侵入した時間は不明だが、午後3時10分ごろ三好さん宅2階の出窓の柵にひもを掛けて首をつっている男性を通行人が発見し通報している。
駆けつけた逗子署員は首をつっている男性と、一階で血を流して死亡している女性を発見。
そばには血のついた包丁が落ちていた。
言うまでもなくこの男性が小堤容疑者で女性は三好さんです。警察は殺人事件の可能性が高いとして捜査を開始。
三好さんの体には多数の刺し傷や切り傷があり、司法解剖の結果、死因は首などを刺されたことによる失血死、死亡推定時刻は午後2時ごろだった。
翌11月7日。逗子署は小堤容疑者がこのアパートに住む三好梨絵さんを刺殺した後、自殺をした疑いが強まったとして被疑者死亡のまま小堤容疑者を殺人容疑で書類送検する方針を固めた。
4.新たの事件の始まり
逗子ストーカー事件は、被疑者の自殺によって事件自体は収束することとなったが、ここに新たな事件が浮上しました。
それは、小堤が三次さん宅の住所を知った理由です。
一つ目のポイントとして、結婚して姓が変わっている三好さんの姓や住所の一部を警察が逮捕状の読み上げなどの際に小堤に言ってしまっていること。
小堤は、これによって新しい姓やおおよその住所をしたものと思われます。
二つ目は、三好さんの詳しい住所を調べるために小堤がインターネットの掲示板などを利用したこと。
三好さんのご主人を「昔お世話になった人」として、広く情報を呼びかけました。
これによって正確な住所が判明したわけではないのですが、嘘を信じて安易に個人情報を書き込みかねない今のネット社会に警鐘を鳴らす結果となりました。
三つ目が「探偵を利用した」こと。
これが大きな事件となりました。
確かに人探し(行方調査)は探偵の主要サービスの一つですが、小堤はこれ利用して三好さんの」正確な住所を知ったことが判明しました。
もちろん、小堤は「私はストーカーです。これから殺人事件を犯します」と言って探偵に依頼し、探偵がそれを受けたなんてことはあるはずもなく、ネットの時と同様に「昔お世話になった」などともっともらしい理由で依頼したことは容易に想像できます。
しかし、結果としてその探偵が仕事を受けたのは事実。
そして、それを他の探偵業者に再依頼をした。
再依頼を受けた探偵業者が違法な手段で個人情報である三好さんの住所を手に入れ、結果として小堤が事件を起こしたことも事実。
これでは探偵がストーカー犯の片棒を担ぎ、殺人事件に至ったと言われてもやむを得ません。
2021年のストーカー規制法の改正内容に当該事案が盛り込まれたのは言うまでもありません。
小金井ストーカー殺人未遂事件(2016年)
平成28年5月21日、東京都小金井市で発生した殺人未遂事件。
芸能活動を行っていた当時20歳大学生の女性がファンを自称する27歳の男にストーカー行為を繰り返したのち、小金井市内のライブハウスにて、ナイフで20ヶ所以上刺され、重体に陥った事件。
2016年のストーカー規制法の改正のもととなった事件とされている。
小金井ストーカー殺人未遂事件の詳細はこちらから
1.事件の概要
2016年5月21日に東京都小金井市で発生した殺人未遂事件。
芸能活動を行っていた大学生の冨田真由さん(20歳)を、ファンを自称する岩崎(旧姓:岩埼)友宏(27歳)がTwitterなどのSNS上でストーカー行為を繰り返した後、小金井市内のライブハウスにてナイフで20ヶ所以上刺し重体に陥らせた。
以前より真由さんからストーカー被害の相談を受けていた警察は、真由さんの携帯電話番号を110番緊急通報登録システムに登録していたが、小金井市内のライブハウスより真由さんの携帯電話から110番通報があった時、警察は真由さんの位置情報を確認せず真由さんの自宅に警察官を派遣してしまった事も問題となった。
その後に目撃者による通報で警察が現場に駆けつけ、その場にいた岩崎を傷害罪で現行犯逮捕。
後に岩崎が「殺すつもりでやった」と供述したことから容疑を殺人未遂と銃刀法違反に切り替え送検した。
真由さんは事件後病院に緊急搬送されたが、20ヶ所以上刺されたため一時心肺停止状態となり、その後も長い間意識不明の重体に陥っていた。
6月3日頃、意識を取り戻し一命を取り留めたが、一部の神経が麻痺し、視野が狭くなり、男性恐怖症など心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負うなどの後遺症が残った。
現在でも、後遺症で口に麻痺が残り、食事や会話にも支障が出ているという。
この事件をキッカケに、TwitterなどのSNSを使った「つきまとい」も、ストーカー規制法の規制対象とすべく法改正された。
2.犯行に至る過程
岩崎は京都府京都市右京区に在住する会社員で、東京都内の私立大学に在籍している大学生で、女優やシンガーソングライターとして活動していた真由さんに対して、ファンを自称していた。
2016年1月中旬ころから岩崎は『君を嫌いな奴はクズだよ』と名づけたTwitterアカウントで真由さんと接触を試みる。
当初は真由さんに対し好意を持った書き込みが目立っていたが、真由さんから返信がない事などによる嫉妬心から不穏な書き込みが増加。
「そのうち死ぬから安心して」といった攻撃的な書き込みを向けたり、一方的に贈り付けたプレゼントを返却するよう真由さんやその関係者に要求した。
なのに警察には、プレゼントとして岩崎が贈った腕時計を返送されて殺害を計画したと供述しており、真由さんに腕時計を返却された後はさらに書き込みが過激化している。
真由さんは警視庁武蔵野警察署に書き込みをやめさせるよう相談。
しかし同署は真由さんに恐怖心が見られなかったことを理由とし一般相談として処理し、ストーカー事案などの専門部署に連絡しなかった。
また真由さんの母親が右京区に住む岩崎の嫌がらせを止めさせるよう京都府警察にも相談していたが、これに対しても京都府警は警視庁に相談するように伝えていた。
岩崎は真由さん以外の女性に対しても、SNSで嫌がらせを繰り返していた。
2013年には芸能活動を行う10代女性のブログに対し、脅迫的な書き込みを残したとして警視庁より呼び出しがあったものの、岩崎は出頭しなかった。
更に2015年12月、滋賀県在住の女性からも、岩崎との対人関係について滋賀県警察に相談があったようだ。
事件当日、自身のブログに「行ってきます」と残し、自宅のある京都より上京。
真由さんが現れるまで長い時間待ち伏せし襲撃の機会をうかがっていた。
真由さんが小金井市のライブ会場に入ろうとする前、岩崎が接触。
真由さんは岩崎を無視しつつ110番通報した。
その後真由さんは、岩崎に会場内に立ち入らないよう諭すが、岩崎は電話をかけ始めた真由さんに激高し、犯行に及んだ。
犯行後、岩崎は「かわいそうと思った」ことにより、自ら東京消防庁に119番通報した。
犯行後、真由さんに「生きたいの?生きたくないの?」と声を掛けたという。
岩崎は、警視庁小金井警察署の取り調べに対し、プレゼントの返却やTwitterをブロックされた事を動機に挙げ、「真由さんと結婚したかった」と述べた。
伊勢崎市に住む岩崎の兄は、岩埼について「自分の感情を表現するのが下手で、溜め込んでは感情を爆発させる事が多かった」と評している。
岩崎は幼少期に柔道を始め、中学時代に県大会で優勝するなど成績も良かった。
岩崎を知る人物は、岩崎は子供に人気があり「優しすぎる」一面があると語った。
しかし、柔道で華々しく活躍するその一方で人間関係がうまくいっておらず、中学生時代の同級生は岩崎の様子を「普段から口数が少なくて、部活の後も一人で帰っていたし、女関係の話が出たことも一切ありませんでした」と語っている。
また、岩崎はAV女優の波多野結衣のバスツアーに参加し、彼女の作品に出演したこともあった。
3.判決と法廷での異常なやり取り
岩崎は一審で懲役14年6か月の判決が言い渡された。
岩崎は判決を不服として東京高等裁判所に控訴したが、その後翻意し控訴を取り下げ、刑が確定した。
被害者意見陳述の場で、冨田さんが被告への憎しみを読み上げた時、被告から見えないよう衝立の奥に座った冨田さんは「こんな人を許すことができません」と発言。
次の瞬間、岩崎は「じゃあ殺せよ!」と叫んだ。
法廷はざわついたが、冨田さんが果敢に「絶対に許してはいけない! 一方的に恋愛感情を抱き、思い通りにならなければ殺そうとする。今度こそ私を殺しに来るかもしれない」と続けると、岩崎は「殺さない!!」と叫ぶ。
裁判長に即座に退廷を命じた岩崎は、刑務官に引きずられながら「殺すわけがないだろう! 殺すわけがない!!」と絶叫する。
一旦休廷となり、被害者意見陳述は時間を改めることに。
だが開廷後、冨田さんは精神的ショックのあまり証言をすることができず帰宅した。
騒動は初公判でも起きていた。
「被告人が結婚してくださいと言ってきた」検察官により冨田さんの調書が読み上げられている最中、岩崎は「フフフッ」と笑った。
「以降、被告は終始ニヤニヤしていました。ブツブツと独り言も多く、あまりの気味の悪さに裁判員も顔をしかめていました」と傍聴人が語ったという。
4.批判・問題点
岩崎の危険性がわかっていながら事件を防げなかったことにより、過去のストーカー事件の教訓が活かされていないという旨の批判が相次いだ。
ストーカー規制法の不備
逗子ストーカー殺人事件の反省から、2013年7月よりストーカー規制法による取り締まり対象に「連続した電子メール」が追加されており、実際に逮捕者も出た。
しかしブログやTwitterといったSNSの書き込みは電子メールとの解釈はなされずに事実上野放しとなっていた。
事件後この規定が時代錯誤であるとして各マスメディアや専門家が一斉に非難し、ストーカー規制法改正に向けた署名活動も開始された。
この事件を受け政府与党は、SNSを規制対象とし、ストーキング行為を非親告罪化する改正案を提出予定との方針を明らかにし、衆議院本会議で全会一致で可決された。
5.事件後
事件発生前より真由さんの被害報告や岩崎の異常行動を把握しておりながら適切な対処を取れなかった警察にも批判が相次いだ。
批判対象となった事柄は以下の通りである。
・真由さんに相談を受けたにも関わらず緊迫性は高くないと判断し、ストーカー案件を取り扱う専門部署に報告しなかったこと。
・岩崎が他の女性に対し嫌がらせ行為をした際、被疑者登録を失念し、警察署同士の情報共有がうまくできなかったこと。
・武蔵野警察署は真由さんの相談後、岩崎がトラブルを起こす可能性を考慮し真由さんの携帯電話番号を110番緊急通報登録システムに登録したが、真由さんの自宅を事前に登録していたため、真由さ んによる110番通報後位置情報確認を怠り自宅に警察官を派遣したこと。
これらの批判を受け警察庁長官は「どんな場合でも被害者の身に迫る危険を正しく判断し、守るのが警察。教訓を全国的に共有し適切な対応を徹底する」と語り、ストーカー対策には警察本部と警察署などが一体となって対処することなどを指示。
警視庁は真由さんとその家族に謝罪したことを明らかにし、同日、「安全を早急に確保する必要があると判断すべき事案だった」とする最終の検証結果を公表した。
一方、真由さんは同日、「殺されるかもしれないと何度も警察に伝えたにもかかわらず危険性がないと判断されたのは今でも理解できません」などとする手記を公開した。
ストーカー規制法とは?|2021年8月3度目の法改正で適用範囲拡大
悪質なストーカー行為は「ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称:ストーカー規制法)」によって規制されます。
ストーカー規制法のおもな目的は以下の通り。
- ストーカー行為を処罰する規制を明確化
- 被害者に対する援助措置
ストーカ規制法の法改正のあらましは以下の通り。
- 2000年:ストーカー規制法が成立
- 2013年:法改正(電子メールを送り付ける行為をつきまといに追加)
- 2016年:法改正(SNS上の嫌がらせ行為をつきまといに追加)
- 2021年:法改正(GPS情報の無断取得、見張り他を規制対象に拡大)
これまでに2度の改正が行われていましたが、2021年にようやく3度目の法改正に至りました。
改正ストーカー規制法の概要について見ていきましょう。
改正ストーカー規制法の概要(2021年6月・8月:施行)
ストーカー規制法は、これまでに2013年と2016年の二度、改正が実施されています。
法改正の背景には、従前の規制内容では新たに登場した電子メール・SNSなどによるつきまといなどに対応できなくなったという事情がありました。
また、残念ながら、ストーカーによる事件の発生を受けての法改正になり、法制度の在り方を問われることもありました。
改正ストーカー規制法の改正のポイントは以下の通り。
それぞれの項目について見ていきましょう。
改正ポイント1.:実際にいる場所における見張り等が規制対象に追加
従前のストーカー規制法では、自宅・勤務先・学校といった対象者が「通常いる場所」における見張り等の行為が規制対象でした。
新たに対象者が「実際にいる場所」における見張り等の行為もつきまとい等として規制の対象に追加されました。
実際にいる場所の具体例は、以下の通り。
今回の法改正によって、インターネットやSNSなどの情報を頼りに、対象者が訪れる予定の場所へと加害者が先回りして押しかけるといったケースにも、ストーカー規制法が適用されることになりました。
参考:駅で女性見張る、男を逮捕 改正ストーカー規制法を初適用―兵庫県警
逮捕事例の詳細はこちらから
駅のホームで帰宅途中の女性を見張っていたなどとして、兵庫県警人身安全対策課などは30日、ストーカー規制法違反の疑いで、大阪市福島区大開、会社員福原日出雄容疑者(55)を逮捕した。
「気持ちを抑えきれなかった」と容疑を認めているという。
15日に一部施行された改正同法で、付きまとい行為を規制する場所が拡大されて以降、適用は全国初。
逮捕容疑は5月31日~6月21日の間、眼科助手の女性(32)の大阪市内の勤務先周辺をうろつき、6月18~21日には、女性が利用する同市内の駅のホームで見張った疑い。
県警によると、女性が「以前、ストーカー行為をされた男に似たような後ろ姿の男を見掛けた」と5月21日に尼崎東署に相談。
警戒中の捜査員が、女性に付きまとう福原容疑者を確認した。
2人に面識はないという。
改正ポイント2.:拒まれたにもかかわらず、連続して「文書を送る行為」も規制対象に追加
これまでの従来の規制法では、拒まれたにもかかわらず電話・FAX・電子メール・SNSやブログなどでメッセージを伝える行為が規制の対象でした。
しかし、これらに加えて、拒まれたにもかかわらず連続して『文書を送る行為』も規制対象に追加されました。
『文書を送る行為』は、ストーカー事案における典型的な行為でありながらも、これまでは「つきまとい等」として規制されていなかったため、一方的に好意を伝える手紙や対象の個人情報を記載した文書の送付・投函(とうかん)を処罰できませんでした。
文書とは、文字・記号で人の思想を表示したものを指すと解釈するのが一般的です。
ただし、今回の法改正では、以下の内容も規制の対象とされています。
- 白紙や写真など
- 空の封筒にGPS機器を入れる
- 宅配便を送る
上記の内容でも対象者は不安に陥れるおそれがあるほか、転送を前提として空の封筒にGPS機器を入れて送付し住所を調べる、宅配便を送り受領通知を受けることで行動を把握するといったケースも想定されているため、非常に広い範囲で適用されると考えられます。
改正ポイント3.:GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等も規制対象に追加
これまでの従来の規制法では、GPS機器等を用いたつきまとい等は想定されていませんでした。
しかし、今回の法改正では、GPS機器などを用いた位置情報の無承諾取得など、対象者の承諾なくGPS機器などの『位置情報記録・送信装置の位置情報を取得する行為』や、『これらの装置を取り付ける行為』が規制対象に追加されました。
これにより、対象者の自動車にひそかにGPS機器を取り付けて、取り付けたGPS機器から位置情報を取得するといった行為は処罰の対象となります。
今回の改正では、主にGPS機器を想定しながらも、あえて『位置情報記録・送信装置』と表現しています。
これは、新たな技術の開発などによって規制対象外となる行為が登場する事態を回避するためです。
GPS機器などを用いた、位置情報の無承諾取得などの行為に関する改正は、令和3年8月26日に施行されました。
ストーカー規制法改正後の規制対象|従来の8類型に規制対象が追加・拡大
改正ストーカー規制法では、これまでの従来規制法の8類型に加えて、新たに規制対象が拡大されました。
規制対象になる行為は以下の通り。
つきまとい等
- つきまとい、待ち伏せ、現に所在する場所または通常所在するの付近においての見張り、うろつき、住居等に押し掛け
- 監視していると告げる行為
- 面会、交際などの要求
- 乱暴な言動
- 無言電話、連続した電話・文書・ファクシミリ・メール・SNSのメッセージ等
- 汚物などの送付
- 名誉を傷つける
- 性的羞恥心の侵害
位置情報の無断取得等
- 相手方の承諾を得ないで、GPS機器等により位置情報を取得
- 相手方の承諾を得ないで、相手方の所持する物にGPS機器等を取り付ける等
※赤太文字部分が今回の法改正で範囲拡大、追加された規制対象となります。
これまでの法改正では、事件にや事例に基づいた法改正がなされてきました。
しかし、今回の法改正では、将来予見される事案を見越して、かなり広い適用範囲が設けられています。
これまでのストーカー規制法の法改正のたびに「法律の在り方」が問われる場面が多々見られました。
今回は、これまでの教訓を生かし、かなり広い範囲を見越していることが伺えます。
ストーカー規制法改正後の新設・追加規定(規制対象除く)
改正ストーカー規制法では、新たに規定された内容と追加改正された規定がそれぞれ定められています。
参考:ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律の概要
改正後の規定1.: 禁止命令等の制度の見直し(新設)
警察署長等は、被害者の申出に応じて、「つきまとい等」を繰り返している加害者に「ストーカー行為をやめなさい」と警告することができます(法4条)。
しかし、今回の改正では、公安委員会は、「警告」を経なくても、加害者の聴聞の必要はあるものの、被害者の申出により又は職権で、禁止命令等をすることができ(法5条1項)、さらに、緊急の必要がある場合には、聴聞又は弁明の機会を与えなくても(ただし、事後的な意見聴取は必要)、被害者の申出により、又は、被害者の身体の安全性が害される危険性がある場合には職権で、禁止命令等をすることができることになりました(同条3項4項)。
禁止命令等の有効期間は1年とされ(同条8項)、また、被害者の申出により又は職権で、1年ごとに聴聞を経て更新が可能となりました(同条9項10項)。
なお、仮の命令の制度は廃止されました(旧法6条)。
改正後の規定2.: ストーカー行為等に係る情報提供の禁止(新設)
ストーカー行為等をするおそれがある者であることを知りながら、その者に対し、被害者の氏名、住所等の情報(被害者情報)を提供することを禁止する規定が設けられました(法6条)。
2012年に発生した、逗子ストーカー殺人事件で探偵が個人情報の違法入手したことがきっかけとなったことが知られています。
改正後の規定3.:ストーカー行為等の被害者に対する措置等(新設、追加)
職務関係者による被害者の安全確保・秘密保持、職務関係者に対する研修・啓発、国・地方公共団体等による個人情報管理の措置に関する規定(法8条)が新設された。
避難のための民間施設における滞在支援、公的賃貸住宅への入居の配慮に関する規定(法9条)が追加された。
改正後の規定4.ストーカー行為等の防止等に資するための措置(新設)
加害者を更生させるための方法、被害者の健康回復の方法等について、調査研究の推進に関する規定(法10条)、国・地方公共団体が努めるべき措置として、実態把握、人材育成・資質向上、知識の普及・啓発、民間団体との連携協力・支援に関する規定(法11条)や財政上の措置等必要な措置に関する規定(法12条)が設けられました。
改正後の規定5.罰則の見直し(改正)
従来のストーカー規制法よりも罰則規定を見直し、厳罰化されました。
1.:罰則の引上げ
- ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に(法18条)
- 禁止命令等に違反してストーカー行為をした者及び禁止命令等に違反してつきまとい等をすることによりストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に(法19条)
- 上記以外の禁止命令等に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に(法20条)
それぞれ処せられることになりました。
2.:ストーカー行為罪の非親告罪化
上記㈠のストーカー行為罪について、告訴がなくても公訴を提起することができることになり(法18条)、ストーカー行為罪を親告罪とする規定(旧法13条2項)が削除されました。
改正ストーカー規制法の動画による解説
動画による解説は以下の通りです。
動画では、体験者しか分からない恐怖や実体験を知ることができます。
改正ストーカー規制法のまとめ
三度目となる2021年の改正では、つきまとい等が適用される場所や方法が拡大されたほか、GPS機器などによる位置情報の無承諾取得が規制対象に追加されました。
今後は、改正に対応した幅広い摘発が積極的に推し進められ、事件化を未然に防ぐものと考えられます。
ストーカー行為を受けた被害者の多くは強い処罰感情を抱きやすく、捜査機関の対応も厳しくなるため、逮捕・刑罰を受ける危険は高いでしょう。
法改正に伴って、取り締まりが一層強化されるため、思いがけずストーカー行為の加害者として容疑をかけられてしまうトラブルも予想されます。
明日は我が身とならぬよう、充分にご注意くださいませ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
また違う記事でお会いしましょう。