『白箱』
とある山奥の施設にて。
「――これ、頼まれていた資料まとめておきました」
「おお、ありがとう。――大分骨が折れたろう」
「そうですね。多少落ち着いてきたと言っても、異常事態でしたから」
「皮肉なものだ。創設者の息子である最高傑作が、このような暴挙に出てしまうとは」
「でも、あれは普通の親子ではありませんよ。端的に言ってしまえば、狂っている」
「その狂人の下についているのが我々なんだがな?」
「それは否定しません。あの方の思想自体は尊敬していますから。――そういえば、彼の行方はわかっているんですか?」
「何でも、政府運営の特殊な学校らしい。異様な程閉鎖的だから、干渉するのにかなり梃子摺っているみたいだ」
「随分と都合の良い場所に逃げ込みましたね。確か、裏で手回しした人がいたんでしたっけ」
「執事の松雄氏だ。相当酷い報復にあったらしい」
「反逆者は徹底的に潰す、ということですか。私達ももう引き返せませんね」
「かもな。まあ辞めるつもりは微塵もないが」
「ですが、不思議な話です。ここまで厳重に管理された施設なのに、協力者がいたとはいえどうして脱走できたんでしょう?」
「それが、これはオフレコなんだが……最近までの一年間、ここは閉鎖されていただろう?」
「はい、諸事情でとのことでしたけど。やはりその混乱の最中で? いくらそれでも……」
「実はあの時、上はかなり荒れていたらしいんだ」
「荒れていた……? 一体どうして?」
「『脱走者』だよ」
「え? 彼が脱走した時にはもう閉鎖中だったんじゃ……」
「違う、
「そんな……!? でも、そうか。だから緊急対処で閉鎖になったんですね。彼も脱走できたわけだ」
「最近じゃ職員の間でも良くないことが続いているからな。祟りだなんて阿呆なことまで言い出すやつもいる。正しく異常事態だな」
「そんな話も聞きますね。おかげで『例の件』も頓挫してしまったらしいです」
「そうだな。数年前から凍結状態で空中分解寸前だったらしいが、今回の一件で完全に潰えただろう。まああっちはここのとは違って現実性に乏しかったから、続行していたとして上手くいったかは微妙だが」
「ところで、その脱走者は?」
「残念ながら、そっちは行方すらわかっていない。どうやら協力者の痕跡もなかったようで、手掛かりがほぼないんだと」
「そんなことがあり得るんですか? これではまるで、あの最高傑作をも凌ぐ賢人だ」
「狡猾さ、という意味では、あるいは間違っていなかったのかもしれない。ここですら育成に力を注がれなかった能力を持っていたんだろう」
「その脱走者のデータは?」
「プロフィールは覚えていないが、基準点スレスレを延々キープ。大して目立つこともなく、当時担当だった職員も脱落までは時間の問題だと思っていたそうだ」
「あまり重要視されなかったから、我々に届く情報がなかったんですね」
「そういうことだ。そして、検体が脱走すること自体前代未聞だった故、お偉いさん方は慌ててふためくしかなかったというわけだ。……ただ、根拠はないが、今思うとそれすら演技だったのかもしれない」
「本当の実力をひた隠しにしたまま、我々の設けた基準を超え続けていたと? さすがにそれは行き過ぎた考えでは?」
「根拠はないと言っているだろう。そう思える程に不気味な存在に感じるだけだ。他の子供と違って、自発的な言動も稀に見受けられたようだしな」
「確かにそれは不気味だ。本来情緒が育つより前の段階で、そんな傾向を見せた例は限りなくゼロに近いでしょう」
「ああ、だからこそ肝に銘じておいたほうがいい。――本当の狂人というのは、もしかしたらそういう、どこまでも得体の知れないやつのことを言うのかもしれない」
もしかしたら今後の展開次第では消したり大きく変更したりするかもしれません。それくらいな伏線回です。
どこまでやる?
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船上試験&原作4.5巻分
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体育祭(ここまでの構想は概ねできてる)
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ペーパーシャッフル
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クリスマス(原作7.5巻分)
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混合合宿or一之瀬潰し
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クラス内投票
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選抜種目試験~一年生編完結