とっとこ(グラ)ハム太郎   作:zhk

9 / 17
この小説を読んでいる皆様。

自宅待機、しよう!!

グラハム・エーカーとの約束だ!!




沖縄だぞ!少年!!

 雲一つない爽やかな空。

 

 汚れ一つない鮮やかな白い浜辺。

 

 太陽の光をすべて反射して輝く、青々とした海。

 

 美しい景色に馴染みのない景観。燦々と俺を照らす太陽は、その力強さをありありと俺に示してくれてる。

 

 そんな中、俺はキャップを目深に被りつつ、こう言いました。

 

「暑っつい…………」

 

 楽しいー! とか、すげー! とかだと思った? 

 

 それよりクッソ暑い。もう暑い。溶けるわこれはマジで。

 

『貧弱だぞカヅキ。この程度の暑さで音を上げるなど。たかが37、8度ではないか。弱々しい』

 

 グラハムさん? たかがの基準値がなんかおかしいんですけど。東京の方で高くて36度だぞ? 2度も違うんだぞ2度も。わかってんのか、この差のデカさが。おおう? 

 

 とまあこんな感じで、俺の少し前を四足歩行で歩み続けるグラハムスターといつも通りの談笑をしつつも、鍔の下から辺りを見渡す。

 

 冒頭で言った通り、左手にはそれこそ有名なビーチなんじゃないのってくらいの海と白浜が広がってる。まぁきっと有名なビーチなんだと思う。知らんけど。

 

 ここまでの会話でなんとなく察しているかもしれないけれど、今俺達は東京にはいません。

 

 なんと市崎一家とペット(キメラ)は、現在沖縄に旅行に来ておりますーわーパチパチー(棒読み)

 

 何故か、それは父さんが沖縄になったから。ではない。あの日、父さんは帰りにガラポン抽選会してるとこに出くわしたようで、たまたま一回引けたので引いてみた。

 

 するとなんとびっくり! 一等沖縄旅行券をゲット出来たのだ。当たっておいてなんだけど、ガラポンってまだ現役なんだな。これだったり固定電話だったりハイテクになってんのかどうなんかこりゃわかんねぇな。

 

 母さんはそれを電話で伝えられて大喜び、おかしくなって俺のとこで変な風に言うくらいにおかしくなってた。

 

 父さんも夏休みはどうにか休みがとれ、俺も魔法の塾へ何日か旅行で休むことを伝えると、神からの幸運を手にした市崎一家プラスグラハムは夏休みを利用して沖縄に羽を伸ばしにやって来た、という訳だったのだ。

 

 解説終わりっ! 閉廷っ!! 

 

「まさか本当に当たってるとは思わなんだ。人生何があるのかわかんねぇもんだよな」

 

『人生とは長い旅路だ。山もあれば谷もあるだろう。その中で、今回は偶々幸運にもオアシスに巡り会えたのだ。乙女座の私は、この喜びを体現せずにはいられない!!』

 

 笑顔で笑いながら空中ゲッタンをかまし始めるグラハム。どうやって一切地上に足をつかずにできてるのか、神の使いというのは、不思議ですね(諦めた顔)

 

 あとさぁ、一個気になってたんだけどさぁ。

 

「お前、なんかでっかくなってってない?」

 

『む?』

 

 振り向くグラハムのサイズ感は、もう野良猫とかリードのついて散歩してる犬とかと遜色ないレベル。もうハムスターって名乗るのも烏滸がましいくらいの巨体になってきてる。

 

 おかしいな? 会った当初は手に乗るサイズの(大きさだけなら)可愛いげのあるハムスターだったのに、今ではもう家にいるペットみたいな感じになってる。

 

 なんだろう…………あれだ、そうにゃんこ先生みたいな感じだ。にゃんこ先生ほど良くはないけれど。

 

『やれやれ、カヅキも妙な事を聞くものだ。私も生き物なのだから成長するのは当たり前だろう?』

 

「えっ?」

 

『えっ?』

 

「お前そのなりで生き物語るの?」

 

『もちろんだ。それ以外に君は私が何に見えるというのだ?』

 

 怪物ですね、はい。

 

 顔は人間、体はハムスター、大きさは小型の犬と同レベルってそれはもう怪物です。自然界にはまず発生しない生き物なので。

 

 それよりも俺はお前が自分を生き物だと考えてる事にびっくりだわ。なんなのお前、鏡見たことない? ホテル戻ったら写してやるからその目に焼き付けろ。

 

 さて、そんなこんなでゆったりとこのクッソ暑いなか一人と一匹で沖縄散策してるんだけれど、いやーやっぱなんだかんだ言っても海が綺麗だ。

 

 前世と今世の両方を合わせれば二十年くらい生きてきたけど、俺は一度もこの目で海を見たことなかったんでものすごい綺麗に見える。心が洗われるわぁ。

 

『うむ、鮮やかな景色だ。それこそ、戦場で出会う少年とかのガンダムのようにっ!!』

 

「あー隣のホモの邪心も綺麗さっぱり洗い流してくれないかなー?」

 

 今のグラハムの言葉のせいで一気に心がやさぐれちゃったよ。あの海に行った時にはグラハムをしゃぶしゃぶしようか。そしたら少しはマシになるよきっと。海の方が汚れそうだけど。

 

「写真の一枚でも撮っとくか。せっかく来たんだし。」

 

『そうだな。ならばポーズはどうする?』

 

「お前は撮らん。景観が損なわれる」

 

 撮るのは景色だ。誰が好き好んでこんな化け物のバックを沖縄の景色にするんだよ。お前の写真集でも作るのか? ならハッシュタグに怪物降臨ってしといてやるよ。

 

 短パンのポケットからスマホを取り出してカメラを起動。スマホを横持ちにしてピントを合わせる。いやはや、技術の進歩は凄まじいもんだ。このスマホのカメラも俺がいた時の超高性能カメラみたいな感じで撮れるんだもんな。さすがは六十年後、ハイテクですねぇ(老人感)

 

 おっ、ピント合った。それじゃあとはボタンを押して…………

 

『とうっ!!』

 

「あっ!? おまっ!?」

 

 グラハムがタイミングを合わせて飛んできたのに気がついたけれどもう遅い。俺はそのまま勢いで写真をパチャリと撮っちゃった。

 

『ふっ、撮らないのであれば、自分から写りにいけば良いのみ』

 

「なにやってんのお前? 写りたがりか?」

 

『せっかく沖縄に来たのだ!! 私も写真の一枚くらい望んでもバチは当たらんだろう!?』

 

「なんか今日お前修学旅行に来た学生みたいなノリだな。俺よりはしゃいでんじゃん」

 

 あのはっちゃけて写真むっちゃ撮り出す感じのアレ。お前陽キャだったのか? まぁホモ公言出来るんだからそれもそうか。

 

 それに撮った写真のポーズよ、なんで両手がっつり上げて万歳してんのに顔真顔なんだよ。これもう○夢君じゃんよ。いつのまに仲良くなったの? 同じ穴のムジナだからなの? 

 

「あーもうわかった。入っていいよ。俺は好きに撮るから」

 

『感謝する』

 

 出来れば入ってほしくないけど、こいつにも日頃の感謝も込めてこれくらいは優しくしてやるか。おいこら全部片手上げるか両手上げるかのポーズにするな。お前と淫○君はマブダチなの? リスペクトしちゃってんじゃん。

 

 結局写真を一通り撮り終えても、グラハムは頑なにあのポーズだった。やっぱりホモは汚い、はっきりわかんだね(確信)

 

 けどグラハム写ってない奴とかはやっぱり沖縄ってだけあって大分綺麗な写真が撮れた。さすが近未来スマートフォン、優秀!! 

 

「あっ、これあいつらに送ってやるか。今頃東京でぐーたらしてるだろうし」

 

『嫌味だと思われるぞ?』

 

「嫌味だからな」

 

 これくらいしか自慢できる事がない自分がなんだか悲しくなってくるけど…………

 

 早速写真を雫、そしてほのかと作っているグループへ投下。メッセージは沖縄満喫中とかでいった。自分でもセンスを感じない文だけれども仕方がない、文才なんて俺にゃないんだから。

 

 ちなみにほのかとは、一年の時から雫とよく一緒にいた子だ。俺が雫に色々と魔法を教えてもらうなかで仲良くなった。二人して天才で、心が折れそうになった事が何度あったか。

 

 ピコン。

 

「おっ、返信来た」

 

『どちらからだ?』

 

「雫だけど…………ん? 写真? 」

 

 スマホに上がったのは画像が送られたことを指す通知。なんなのか気になった俺は何も深いことを考えずにアプリを開いた。

 

 そこに写っていたのは、水着姿の雫と同じような服装をした雫の家族。バックには俺の眼下に広がる海に負けず劣らずなビーチがあった。

 

 そして間髪入れずにメッセージが一本。

 

『こっちは小笠原で海を満喫中。(^-^)v』

 

 …………そうだ、完全に忘れてた。

 

 雫は金持ちだったんだ。

 

 大分前に言ってた気がする。小笠原に別荘があるって。それともう一つ、近くのビーチはプライベートビーチになってるって。

 

 …………うん。なにも勝ててないわ。むしろ敗北感がすごい。マウントもなにもとれやしない、俺はいつになったらあのチビッ子に勝てるんだ。一生懸かっても無理そう…………

 

『香月は何してるの?』

 

『海辺付近の遊歩道を散歩中』

 

『やってることがお年寄りみたい』

 

 誰が年寄りだ。こっちだって好きで散歩してるんじゃないんだよ。

 

 お前にわかるか? 片や両親が久しぶりにゆっくり出来るからって息子の俺ですら嫌になりそうや甘~い雰囲気になってて、片や隣ではグラハムが外へ行くぞっ!! ってうるさいし。もう出るしかないじゃない!! (マミさん風)

 

 まぁ? その両親の空気を読んで二人の時間を作って上げたんだぞ? 俺は出来た息子だよまったく(自画自賛)

 

『二人ともズルい!! ((ヾ(≧皿≦メ)ノ))』

 

 そこへほのか参戦。ズルいって言ってる事はもしやほのか、東京に一人なのか。可愛そうに。お土産にサーターアンダギー買ってってやるから。それで満足してください。

 

『私は誘ったよ?』

 

『家の用事で行けなかったの!!』

 

『私も行きたかった~』

 

『ドンマイヽ(´・∀・`)ノ』

 

『ふんっ( ̄^ ̄)』

 

 あーあ、ほのかふて腐れちゃったよ。ま、今回ばっかりは仕方ないしな。ただここで何か送ると俺に怒りの矛先が向きそうなので自嘲する。面倒事は避けるに限るぜ。

 

『そうだ、今日塾で聞いたんだけど、桃地君が北陸の方に転校するんだって』

 

「なにっ!?」

 

『なんとっ!?』

 

 唐突なほのかから飛んだ情報に、俺もグラハムもビックリ。てか頭の上に乗るな。首への負荷が半端じゃないから。

 

『それでなんだか塾でお別れ会みたいなのするんだって。二人は来る?』

 

『嫌だ』

 

『断固拒否する』

 

 おお、俺と雫がほとんど同時に返信した。あいつも桃地の事嫌いだからな。俺? 俺にとってあいつはトラウマもんです。見かけるだけで未だに腹の下らへんがスゥースゥーするし。

 

『むぅ、これでは逆襲が出来んな』

 

「しゃーないしゃーない。」

 

 悔しそうなグラハムだったが、はっきり言ってこれは俺にとってありがたすぎる。万々歳だ。これでいちいち嫌味とか皮肉とか、陰湿な弄りをしてくる輩がどっか行くんだから。

 

 けどお別れ会か。出来れば招待状を本人から渡されたかったな。だったら目の前で破って『お前を殺す』ムーヴが出来たってのに。でもやったら速攻で股間アタックだな。

 

 しかしこれで、俺の長きに渡るイビられ生活が終了する!! 遂に塾にも俺の平穏がやって来るんだ。六年も待った甲斐が会ったよ。

 

 他人の転校でウキウキになる俺。他人から見ればただのグズだけど、相手は虐めっこだから。そこ考慮してね? 俺も情状酌量の余地があるから。余地しかないから。

 

 そんな事を思いつつ、夏休み明けの生活がより一層楽しくなるなと鼻唄を歌いながら上機嫌になっていた。そんな時だった。

 

「おい、なに眼飛ばしてンだガキ?」

 

 急にドスの効いた低い声が耳に入ってきた。えっなにすみませんでしたスマホ見てただけなんですと、頭に一瞬で謝罪の言葉を思い浮かべる三下魂を露にしながら視線を上げる。

 

 視線の先には、軍服をテキトーに着たヤンキーみたいな大柄な男が二人。さっきのドスの効いた声は明らかに彼らの内の一人の物であったけれど、彼らは俺ではなく近くにいた子供二人を、もう見た感じ虐めてますと言わんばかりに囲い込んでる。

 

 一人は目がキッと鋭い男の子、もう一人は女の子なんだろうけど、こっからじゃうまい具合に男の子の背に隠れて見えない。

 

「ほっ…………俺じゃなかった。けどあれ軍人だよな?」

 

『あれは恐らくだが、取り残された血統(レフト・ブラッド)と呼ばれる者達だろう。』

 

「レフト…………なんだって?」

 

 なんだ? その厨二病患者が好きそうな単語。

 

『レフト・ブラッド。沖縄に駐屯していたアメリカ軍がハワイへ引き上げた際に取り残された子供達の事だ。彼らは国防軍に引き取られ、そのまま軍人になった者達。彼らは立派な軍人として任務を立派に果たしているらしい』

 

「えぇ…………明らかにそんなしっかりした軍人って感じじゃないんだけど」

 

『彼らはそのレフト・ブラッドであった者達の子供、いわゆる第二世代なのだろうな。彼らも軍人ではあるものの、素行の悪いものが多く沖縄では大きな問題の一つとなっている。』

 

「へぇ。やっぱ軍関係ってこともあって、グラハムもしっかり調べてたんだな」

 

『以上が先日読んだ観光サイトの注意書きだ』

 

「ごめん、感心返してくれる?」

 

 観光サイトて。お前どんだけこの旅行楽しみにしてたんよ。夜な夜なプレステでなんか調べものしてるなーとは思ってたけど、これについてだったんかい。

 

「てことは要約すると、アメリカにポイ捨てされた子供はしっかり軍人してたけど、その子供は沖縄でオラついてるって事でおけ?」

 

『うむ、概ねその通りだ。』

 

「てことは、今あの子らはヤンキーに絡まれてるわけか」

 

 大変だな。でも運がなかったんだよ。こういうのは、関わっちゃ駄目だ。だって相手は腐ってても軍人でしょ? 俺がどんだけ鍛えてても勝てないし暴力はそれなりに問題になっちゃう。

 

 悲しいけど、これ現実なのよね(スラッガー中尉)

 

 だから俺はクールに去っていきます。俺は知りませんと、関係ありませんと去っていきますよ。

 

 くるりと彼らに世を向けるように体を百八十度回転。そのまま来た道を真っ直ぐ引き返していく。

 

 そう、これが正解。俺はこのまま平和な沖縄旅行を過ごして…………

 

「ビビって声も出ねぇかよ!!」

 

「土下座するなら許してやってもいいぜぇ?」

 

 過ごして…………

 

「人様にぶつかったんだから、きっちり謝んないとなぁ?」

 

「じゃないと、どうなるかわかってるよな?」

 

 過ご、して…………

 

 …………はぁ。

 

「なぁ、グラハム」

 

『なんだ?』

 

「ここって俺らが泊まってるホテルの近くだよな?」

 

『そうだな』

 

「海に遊びに行くって行ったら、あそこの海になるわけだよな?」

 

『そうだな』

 

「なら、あのヤンキー軍人が俺や父さん母さんにもうざ絡みしてくる可能性があるって事だよな?」

 

『そうだな』

 

 よし。グラハムがなんか全肯定modみたいになってるけど、確認することは確認した。

 

「だからなグラハム? 今からやるのは、後々面倒事になるであろう事を事前に処理するんだよ。だからこれは、あの兄弟? の二人が可愛そうだとか、あのヤンキー軍人のやってることが納得出来ないとか、そんな理由じゃないんだよ。理解した?」

 

『フッ、理解しているよ』

 

 微笑を浮かべるグラハム。なんだかその笑顔は、生暖かい感じだ。

 

「…………なんだよ」

 

『なにもないさ。ただ、素直じゃないなと思っただけさ』

 

「うっせ」

 

 誰がなんと言おうと、これは予防行動なんだよ。俺はそんな困ってる人助けにいく正義感なんて持ち合わせてない。これは予防、後の面倒事への予防なのだ。

 

『さて、彼らを止めるとして、何か策はあるのか?』

 

「ある…………けど下手すりゃ相手さん怒って力ずくになるかも。」

 

『そうなればサポートしよう。今は、君が思うようにやるといい』

 

「後押しありがとうございますねっ!」

 

 そうと決まればやろう。もう一度体を反転し、兄弟? を囲い込むヤンキーズの方へ走り寄る。手に持ったスマホを手早く起動してヤンキーズの方向へ向けつつ、彼らの手の届かない、けれども会話は出来るくらいの距離で俺は立ち止まった。

 

「おいっ!!」

 

「んあ?」

 

「お?」

 

 俺の呼び掛けに、ヤンキーズは注意を兄弟? から俺へと向け直す。あっ待って、思ったより威圧感が…………。

 

 けど呼び掛けたんだ、ここで引き下がれない。引き下がったとしたらそのままずるずるとヤンキーズに絡まれるだろうし、そうなれば後日にまた絡まれる可能性も上がる!! 

 

 大丈夫! 策もある!! こんな奴等、ビビる価値もないわ!! 言ってやる、言ってやるぞぉ!! 

 

「しょの子達を虐めるな! きゃわいしょうだろ!」

(その子を虐めるな! 可愛そうだろ!)※香月の言い分

 

 噛んだ、盛大に噛んだ。一番決めなきゃいけないところで。

 

 シーンと、また懐かしいあのイヤーな空気が流れたと思うと、ヤンキーズが吹き出した。

 

「アハハハハ!! わ、笑わせんなよ!!」

 

「きゃわいしょうだって? よく頑張って出てきましたね?」

 

 うっ…………痛いとこを! ええい立て直しだ!! このまま強引に続けてやる!! 

 

「うるさい! いいのかお前達、そんな態度をとって!」

 

「「あ"?」」

 

 ヒェ…………あ、に点々ついてるって。ヤンキー特有の奴だって! 

 

『大丈夫だ。彼らにはまだ圧をかけることしか考えていない。武力行使するほどではない。続けろカヅキ』

 

 本当か? 本当だよな? 信じるぞ? お前マジでそれ嘘だったら俺ぶちギレるからな!! 

 

「お、俺はお前達が二人を囲んで絡んでるところをビデオで撮ったんだぞ! どうだ!!」

 

 おうおう、なんか口調が丸まま小学生みたいになってる。俺の予想じゃこう、なんかクールに行く感じを予想してたんだけどなぁ。

 

「へぇ? それがどうしたんだよ」

 

「ビデオ持って警察んとこでも行くのか? 対応してくれりゃいいけどな?」

 

 やっぱり警察は対応してくれないんですね…………グラハムの説明から、もしかしたらとは思ったけど。だって警察が動くんなら観光サイトに書くような事態にはならないしね。

 

 出来れば警察を頼りたかったけどそれも役に立ちそうにない。なら、本当に俺が咄嗟に思い付いたこれしかない。

 

 あーもう! 素直に警察呼んどけばよかったな!! けど遅いよな!! わかってますよはい!! やるしかないんですよねわかります!! もうどうとでもなれぇや!! 

 

「本当に、いいんですか?」

 

「あ? 何がいいんだよ」

 

「言ってみろや」

 

「そうですか。だったら、

 

 

 

 

Yo-tubeで流してやるぜHAHAHA!! 

 

「「っ!?!?」」

 

 ヤンキーズ二人に動揺走るっ!! 

 

「いいのかなぁ~? いいのかなぁ~? 俺がボタンポチっと押したらすぐにネットに大拡散だよぉ? 世間は軍人が小学生を虐めるこの図をどー思いますかねぇ??」

 

「…………っ!」

 

「この野郎!!」

 

 おおキレてるキレてる。

 

 ぜーんぶハッタリ、嘘ばっかりだけど。

 

 Yo-tubeに流す? 流し方知らんよ。まず、映像すら撮ってないし。

 

 けど、この嘘は大分この二人に刺さるはずだ。

 

 グラハムの言うように、このレ……レ……なんだっけ? まあいいや、ヤンキーズの素行の悪さは沖縄の大きな問題だ。

 

 であればそんな彼らがなにも悪いことをしていない小学生を虐めてる映像が出回ればどうなるか。ネット民のいい餌だ。速攻で住所特定されて個人情報がネットを行き交う事でしょう。

 

 それに彼らは軍人だ。ならこういう関連の問題が発覚したら軍内部でもただじゃ済まないはず! 

 

「お前調子乗ってんじゃ━━━」

 

「動くな! 動いたら、俺がすぐにでもボタン押して動画が世界へgoするぞ! それでもいいのか! 立場的にも、今後的にも考えて!!」

 

「くっ…………」

 

 さぁ全力で嘘をつけ。本当だと思わせろ。スマホを見られたらアウトだ。だから裏だけ見せて、いつでも押せるという事をより現実的にする。

 

 頼む…………頼む。このまま引き下がって!! 

 

「ちっ。覚えてろよガキ。」

 

 おっ? これは? もしや? 

 

 ヤンキーズの一人はそう俺に吐き捨てると、もう一人を引き連れながらこの場を去っていった。終始、俺をギラつくような目で睨みながら。

 

 これは? つまり? 

 

「勝ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「っ!?」

 

 ヤンキーズが見えなくなったのを確認するなり、俺はガッツポーズをかました。あっ男の子の後ろの女の子がビビっちゃった。ごめんね。

 

 見たかこんにゃろ!! オラつかせやがって!! 小学生に負けてやんの!! だっせぇなアハハハハ!! (勝利の宴)

 

『見事だったな。よくここまで考えたものだ。』

 

「ちゃっかり嘘にかかってくれたお陰だわ。それがないと上手くいかなかったし」

 

『どちらにせよ、結果は君の勝ちだ。なかなかな手腕、見せてもらったぞ。』

 

「へへ、そりゃどーも」

 

 グラハムの称賛に顔がニヤつく、いやーそれほどでも。

 

「すまないが、君は誰と話しているんだ?」

 

「…………へ?」

 

 そこで少年が俺に話しかけたことで、ようやく俺は現実に帰って来た。

 

 あれ? ちょっと待って? 俺、調子に乗ってグラハムと喋ってたけど、こいつ他の奴には見えてないんだよな? 

 

 俺めっちゃ恥ずかしいことしてたんじゃない今? 

 

「助けてくれて感謝する。ちょうど困っていたところだったんだ。」

 

「お、おう…………そっか」

 

 それに気がつくと、額から嫌な汗がドボドボ流れてきた。あーホントに俺って絞まんないね。こう、なんか最後に残念になる感じ。どうにかなりませんかねぇ。

 

「なんの礼も出来なくて悪いが、俺達はここで失礼する。妹共々、感謝するよ」

 

「お、おう…………そっか」

 

 なんかこの男の子、グラハムに声似てない? そっくりなんだけど。

 

 少年はそう言うと、後ろの妹に声をかけ俺に背を向ける。が、その時妹さんが俺の方を向いて、一礼した。

 

 その時、俺に電流走る。

 

 妹さんむっちゃ美人や!! 

 

 なにあの綺麗な黒髪!! 透き通る白い肌!! もはや二次元のレベルなんだけど!! あんな子おる普通!? そんなんできひんって!! 

 

 なーんて事を考え、というかあの妹さんに見惚れてるうちに、兄弟二人はもう俺から大分距離が離れたところに行ってしまった。

 

『カヅキ…………』

 

「なに?」

 

『…………無理は言わない。諦めた方がいい。色々な意味で』

 

「お前そーいうこと言う!?」

 

 わかってるよ!? わかってますよ!? あんな可愛い子が俺みたいなフツメン野郎に食いついてくれるなんて思ってないから!! あわよくば今のでカッコいい…………惚れたわなんて展開期待してないから!? 

 

 嘘ですっ!! (トランクス)

 

 ちょっと期待しました! だってするでしょ普通!? 男ならするって!! お前ホモだからわかんないだろうけどさぁ!! あーイケメンになりたかったよぉぉぉぉぉ!! 

 

 世の中って、非情だよね? (涙目)

 




香月「お前あの子と声似てない?」

グラハム『たまたまだろう』

香月「いや絶対似てるって」

グラハム『たまたまだろう』

香月「いやだから━━」

グラハム『たまたまだ』(迫真)

香月「アッハイ。」

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。