とっとこ(グラ)ハム太郎   作:zhk

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腹を壊しました。

痛かったです。

なお、この話には一切関係ありません。

ご理解の上でお読みください。


決戦だ!少年!!

 というわけでやって参りました本日二度目の演習室。演習をした時の場所より小さめの自主練習に使う用なので実質二回目ではないけれど、細かいことは気にしない。

 

 母上には、「ちょっと今後のお話が先生からあるから遅くなる」という嘘を公衆電話を使ってペラペラ言ってあるので晩飯が冷たいんだけどなんていう仲が冷めてきた夫婦間にありがちな事はないので問題なし。

 

 それより近所に未だに公衆電話がある事に驚きだよ。携帯が圧倒的に発展してるこのご時世、未だにこの緑のボックスに休暇は与えられないブラックさ。これが日本の末路を風刺してると言うのか…………

 

 とまぁ逃れられない現実から目を背ける無意味な行動はこれくらいにしておこう。だって目の前数メートル先で既に桃ちゃん準備完成してるんだもん。

 

 あーもうめちゃくちゃだよ、どうやったって勝てっこないって。天地がひっくり返ってもグラハムがノンケになるような事があったとしても勝てんよ。

 

『カヅキ、私は君が勝つと信じているぞ』

 

「どの口がほざいてんだ? あ? お前には後で刹那人形ぶち壊しの刑が待ってるから覚悟しろよ?」

 

『!?!?』

 

 当たり前だよなぁ? 数分前にしっかり言ったでしょうが。それなのに勝手に体乗っ取って勝手に話進めやがって、その結果がこれなんですよ? 理解してます? 

 

「あんだけ自信あったみたいだから聞くけどさ…………なんか勝ち筋とか見えてるわけ?」

 

『そんなものはないさ』

 

 知 っ て た(絶望)

 

 絶対勢いで話してんだろうなとは察してたよ。少し、ほんの欠片くらいでも俺がお前に期待したのがバカでした。

 

『才能差が、戦いの結果に直結する絶対条件ではないさ。であるなら、私達に勝機がないとは一概に言えないだろう?』

 

 言えます(正論)

 

 経験、才能、その他諸々から考えても俺の勝てる未来が見えてこない。そんないきなり格上殺し出来たら俺この辺で有名人になれるわ。もし仮に成功したのなら愚者のアルカナ持って魔術師殺し名乗ってやんよ。

 

 というよりまず魔法に触れてきた時間が違うじゃないか。相手はほぼ確実に何度も魔法を行使してきたある意味ベテランで、こっちはつい最近使えることに気がついたど初心者だ。

 

 強いて桃地に勝ってる点といえば人間性くらいだと思うけど、それは果たし合いにまったく関係ないので除外する。除外したくないけど、除外したら勝ってるとこなしになっちゃうからしたくないけどやむなく除外する。

 

 あれ? そういえばさ…………

 

 この勝負どうしたら勝ちになるの? (今更)

 

「なぁ? この勝負の勝利条件ってなに?」

 

「は? お前それも考えずに挑んだのかよ。バカじゃねぇの?」

 

 辛辣ぅ…………けど言わせてもらいたい。

 

 それもこれも俺の肩の上でサトシのピカチュウみたいに乗っかってる化けもんが悪いんだよ。この果たし合いに関して言えば俺の意思は一切関係ないことを最初に理解してもらいたい。

 

 まさにリアル違うっ!! クリボーが勝手に!! なのだ。だから俺は悪くない。これも全部グラハムって奴の仕業なんだ。俺は悪くねぇ!! (ルーク感増し増し)

 

「普通なら魔法を使った組み手ってのは、相手を戦闘不能に追い込んだら勝ち。けどそれじゃあ、お前が勝てないだろ? なんてったってサイオン保有量しか能がないんだから!!」

 

 まったくもってその通りです。(確信)

 

「だから今回は、お前にハンデやるよ。俺かお前、どっちかが相手に魔法を当てればそれで勝ち。これを十本勝負して、お前は俺から一本でも取れたら勝ちだ。」

 

 ほうほう…………ということはつまり? 

 

 ①戦いは十回勝負。

 

 ②なんでもいいから魔法を当てたら一本。

 

 ③俺は桃地から一本取りさえすれば、それだけで勝利

 

 ふむふむ…………

 

 勝てるんじゃね? 

 

 魔法当てるだけでいいんだろ? なら乱れ撃ちすりゃいいじゃん。なんせ俺は持久力だけは他の奴よりも頭三つくらい抜けてるから(グラハム比)

 

 とりあえず当てる。んで俺は桃地の攻撃に当たらないようにすればいいってことでしょ? いいのかこれ…………俺むっちゃ有利じゃん! 

 

 このハンデなら光明も見えてきたぞ。もしかしたら桃地はジャクシャヲ見下す癖があるだけで案外やさしい奴なのかもしれないな(チョロい)

 

「ルールはわかったか? とっても簡単だろ?」

 

「ああ、分りやすくて助かる」

 

 腰から抜きますは、両親が買っていたCADの中でも特化型と呼ばれる種の物。そう、あの俺が始めて魔法使った時の大型拳銃だ。

 

 明らかに俺の体に合ってないけど、なんだかんだ初めてということだったので愛着が沸いてるのだ。

 

 策は簡単。相手の魔法に当たらずに、こちらはとりあえず持ち前のサイオン量を活かして撃ちまくる。ひたすら撃ちまくる。

 

 単純明快、やることは至ってシンプル。あとはこれを傾向させるだけ。

 

「さて…………俺も俺でお前には少しイライラしてんだよ。両親をバカにされたりしたからさ」

 

 まぁその怒りもグラハムの謎行動のせいで遥か彼方に飛んでいったんだけども。一騎討ちなんで空気感作っていこう空気感。

 

 それに、こいつに対してそれなりに怒りを感じてることに関しては、紛れもないし隠す気もない事実なんだから。

 

「だから、少し痛い目見てもらう(どうにか頑張って)」

 

「ハッ!! 雑魚が!! やれるもんならやってみろや!!」

 

 両者の掛け合いをゴングに、グラハム主催の果たし合いが幕を上げるっ!! 

 

 さぁ! 乱れ撃つぜっ!! サイオン弾っ!!! 

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 はい。現在果たし合い九本目が終了したところなのですが、私、市崎香月はというと…………

 

 演習室の床と仲良く添い寝している状態であります。床が冷たくて気持ちいいよぉ…………

 

 あのね、勝てる気しないんだけど( ゚ ρ ゚ )ボーー(諦めの顔)

 

 両者動かずに魔法の撃ち合いになって、何故だかしらないけど俺が撃つ奴が当たるよりも先に、俺に魔法が当たるの。それもむっちゃ痛いよくわからん真空弾みたいな奴が。それもサイオン弾より早いし。あんなのずるいぞ!! 反則だ反則!! 

 

 加えてあいつ、的確に痛いとこ狙ってくんの。顔とか腹とか股間とか。あそこに真空弾当たった時はこの世のすべてを悟った気分だった。

 

「おいおい見ろよ! あーんな大口叩いてたのに、あっさりやられてやんの!!」

 

「プププっ!! だっせぇ!!」

 

「あしゅら? だっけ? 全然すごくねぇじゃん!!」

 

 はーいちょっと待って。阿修羅も大口も全部俺ではないんですよ。まるで俺がカッコつけて惨敗してるみたいに言うのはやめてもらえませんか? (揺るがない事実)

 

「おいおい、俺様がせっかくハンデつけて十回勝負もしてやってんだぜ? これで一回も勝てないって事はないよな? えぇ??」

 

 ウザい…………ただその一言に尽きるわ。

 

 なーにがハンデで十回勝負にしてやっただ! お前ただ俺をいたぶって楽しんでるだけだろこのドSくず野朗が!! 弱いものいじめはモウヤメルンダッ!! (アスラン)

 

 痛いんだぞその空気弾!? なんかよくわからんし透明だから避けにくいし!! てか飛んできてるのかも微妙に分かりにくいし!! なんだよそれ、お前はいつから吉良吉影なんなんだ…………桃地は多分隠れて手を愛でてるんだきっと。俺にはわかるぞ(確証なし)

 

「次でラストだぞ? 頑張れー才能ない無能やろー」

 

「どうせ負けるって! 今のうちに降参しろって!!」

 

「諦め悪いのはダサいだけだぞ~?」

 

 ガヤがうるさいんだよただの桃地の腰巾着がっ!! ぶっ殺してやろうかあぁ!? 無理だけどよぉ!? 返り討ちにされるのが目に見えてるけどよぉ!? ごめんなさいねぇ!? 

 

 あーもう身体中痛い…………唇切れっちゃってるし…………インストラクターさーん、これいじめですよー? こんな一方的な暴行見過ごしていいんですかー? 仕事なくなりますよぉー? 

 

 プライドを投げ捨てて第三者に助けを求めたくなるけど、残念なことにこの自習室は完全に密室でインストラクターさん達はこの部屋の外。助けは来ることはない。

 

 ので、俺にはこのまま無惨にボコられて笑い者にただされるがままか、どうにか勝って一矢報いるかの二択が強いられるわけなんだけど…………さてどうしたもんか。

 

 俺の攻撃は数撃ちゃ当たる戦法だったけど効果は一切見られない。それより撒き散らす前に空気弾が俺に飛んできます。勝つには空気弾に当たらず、当たってくれる感じがまったくしないサイオン弾を桃地にぶつけないと言えないわけなのだ。

 

 特に問題は、あの桃地が撃ってくる空気弾だ。

 

 見にくい、速い、痛いの三拍子が揃ってるこのチートみたいな魔法を攻略しない限り、サイオン弾をぶつける策も成功しない。

 

 どうしたもんかねぇ…………

 

『カヅキ』

 

 と、悩んでるときにこの九回の戦闘において一切口を開く事すらなかったグラハム先生がついに動いた。

 

『まだ戦う気持ちは消えていないか?』

 

「ギリギリ…………でもそろそろ折れそう。あの空気弾が鬱陶しすぎて━━」

 

『空気弾は気にしなくていい。撃ってくるタイミングはもう読めた』

 

「……えっ?」

 

 無駄遣いと思ってたイケボから放たれる、なんだか物凄い心強い一言。

 

「読めたって…………どのタイミング?」

 

『本当に細かな事だ。空気弾が飛ぶほんの少し前、桃地は手元のタブレットに親指を乗せる。その後すぐにカヅキへ空気弾が飛んできていた。この九回の戦いすべてでこれは確認できた。ほぼ確定だろう』

 

 すっげぇ…………それって本当にコンマ何秒とかの世界の話なんじゃないの? それ見えたの? やべぇ…………エースパイロットの動体視力まじやべぇ…………(ボキャ貧)

 

『最後の一戦、私が言うタイミングでしゃがむんだ。ならば空気弾はカヅキの頭上を通っていく。そこを狙ってサイオン弾を叩き込めばいいのだが…………問題は君のエイム力だ』

 

「うっ…………当たる気がしないんですよね…………」

 

『これに関しては仕方がない。まだやり始めたばかりだ、照準が定まらないのも無理はないだろう。だがこの魔法以外君がまともに使えるものがないこともまた事実だ。』

 

「そーなんだよね…………」

 

 俺のガバエイムでは桃地の空気弾をグラハムのサポートによって避けられたと仮定しても、結局はサイオン弾が当たらないので勝てない。

 

 当たらなければどうということはないという偉大なシャアの言葉にあるように、俺が当てなければどうしようもないのだ。

 

「当てる…………要は魔法を当てれば…………」

 

 あっそうか。

 

 魔法を当てれば勝ちなのか。

 

「グラハム、回避のタイミングを任せる。」

 

『…………何か妙案が思い浮かんだ。そんな顔だな』

 

「そこまでのもんじゃないけど。まぁ上手くいけば勝てないこともない」

 

 そう、本当に上手くいけばのはなし。ほとんど賭けに近いことだし、初手のグラハムの声に即座に反応出来なかったら俺の負けだ。

 

 けど馬鹿な俺にはこれくらいしか勝つ方法が思い付かないし、余裕を持っての勝利なんざ今更夢のまた夢だ。

 

 俺には桃地の言うとおり才能とかセンスとか言われるもんがないわけだから、泥臭く行くしかないわな。

 

 それに…………

 

「さすがに負けっぱなしでいるのは、俺の貧弱プライドも許してくれそうにないからな」

 

『ふっ、同感だ。勝ちに行くぞ! カヅキ!!』

 

「おう!」

 

 やることは決まった。あとは実践するだけ、腹を括ろうやる気を出そう。

 

「お? やっと準備が出来たか? んじゃ、さっさとボコって帰るか」

 

「そう簡単にはいかせないぞ。こっちはだって勝ちに行くんでね!」

 

 話から唐突にCADの銃口を桃地の方向へ向けて引き金を引きまくる。奇襲? 知らないよ、なりふり構ってられませんよ勝つまでは!! 

 

 狙いを定めるとかそんな事は考えず、ただサイオン弾を撒き散らす。それだけなら今までの九回の手法はまったく同じ。

 

 けれど、桃地はまるであり得ない物をみたような顔になった。そりゃそうだろうな。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 走り銃口がブレブレになるのも気に止めずに撃ちまくる。うわぁ全っ然当たんない…………悲しくなってくるわぁ…………

 

「ただの自殺行為じゃねーか!! そんならこれで終わりだっての!!」

 

 動揺から立て直し、桃地は右手のひらを接近する俺へと向ける。そして━━━━

 

『今だカヅキっ!!!』

 

 待ちに待ったグラハムの声が聞こえた。

 

「信じたぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 自己への叱咤の掛け声と共に走る勢いのまま体勢を一気に下げてスライディングを仕掛ける。瞬間、俺の頭上を前髪を吹き荒らしつつ空気弾が飛んでいった。こいつまた股間狙ったな! 下道め!! (義輝)

 

 ともあれ回避は成功。桃地と俺の距離はぐんぐん詰まり、もうほぼ桃地の目下、足元辺りまで接近できた。

 

 射撃が当たらない。それは、あくまで遠距離から構えて撃てばの話だ。

 

 であるなら、絶対外れない距離から撃ってしまえば確実に当たる。俺が出した結論とはそんなバカみたいなことだった。

 

 が、そんなバカみたいな事を普通する奴がいないからこそ桃地に対して完璧な奇襲となり得る。

 

 桃地の呆けた顔がよく見える。それにここまで来ればもう回避できない。回避するより、俺が引き金を引くスピードの方が圧倒的に速いっ!!! 

 

『ゆけぇカヅキィィィィィィ!!』

 

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 これで俺の、

 

 俺達の勝ちだっ!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と思っていました。

 

 確信してました。

 

『「あっ……………………」』

 

 俺のCADが宙を舞うまでは。

 

 桃地がCADを蹴り飛ばしたとか、CADに向けて正確無比な魔法の射撃を放って弾いたとか、そういう事ではないのです。

 

 外的要因が原因ではなく、原因は…………

 

(手ぇすべったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?)

 

 そう、緊張して出た手汗で元より大きく持ちにくかった大型拳銃CADがシュポッと、本当に気持ちよく俺の手からCADが抜けていった。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

『……………………』

 

「「……………………」」

 

 俺、桃地、グラハム、腰巾着A&Bという四人と一匹がいるにも関わらず、誰もなにも一言も喋らない。そうこうしてると、俺の手から飛んでいったCADが俺の頭に当たった。痛い。

 

「…………あのーですね。すみませんでした。空気弾は許してください」

 

 何故だかわからないが、なんだか謝っといた方がいいような気がして。あと空気弾を食らうのはもう嫌なので、俺は満面の笑みで桃地に対して謝罪と懇願した。

 

 すると、桃地も優しそうな笑みを見せた。ああ、これで許してくれると思ったとき、

 

「バーカ、死ね」

 

 股間に空気弾が飛んできました。

 

 瞬間、宇宙の摂理を理解したような気分になって、

 

「おおおう~っ!?!?」

 

 鈍痛が、股間を襲う。

 

 痛いなんてもんじゃない。なんかこう、説明できないんだけど…………うん、痛い。むっちゃ痛い。この世の終わりかってくらい痛い(意味不明)

 

「「「ギャハハハハハハハ!!!」」」

 

『だ、大丈夫かカヅキっ!?』

 

 演習場の床で転げ回る俺を見て大笑いする桃地達と、真剣に心配しに来るグラハム。優しさし嬉しいけれど、その優しさではこの鈍痛は弱まらない。

 

「これでわかったか? 魔法は才能がすべてなの。才能ないお前は、こんなだっせぇ姿がお似合いだぜ!!」

 

 桃地がそう言うと、またもギャハハハハハハハという汚い笑いが演習場に轟く。その笑い声は徐々に遠くなっていき、ガチャンという音を最後に聞こえなくなった。恐らくもう演習場を出たんだろう。

 

『……大丈夫か?』

 

「痛みは引いた…………だいじょぶ。」

 

 むくりと体を起こし腹を押さえる。まだ若干痛みは残ってるものの、動けないほどじゃない。

 

「あーっ!! 悔しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」

 

 くっそが!!! あそこでミスるか普通!? あんな距離俺であっても絶対サイオン弾外さないし桃地のド畜生も避けれんかったのに!! 

 

『…………カヅキの気持ちもよくわかる。が、相手は格上だったんだ。ここまで健闘出来ただけでも万々歳だと言えよう』

 

「まぁそりゃそうだけど…………けどあと少しで! あと少しで勝てたんだぜ!? あーもう!!」

 

 頭をガリガリとかきむしりながら、最後の最後にミスを犯した自分が嫌になる。

 

『カヅキ』

 

「あ? なに!?」

 

 自分への苛立ちをぶつけるようにグラハムへ尋ね返した。こんなの完全な八つ当たりだ、俺に勝負強さがなかったのが悪いだけなのに。それでもこの悔しさをあっさりと流すなんて、俺には出来なかった。

 

 けど、グラハムはそんな俺の八つ当たりに対し嫌な顔一つせず言った。

 

『その今の気持ちをよく覚えておけ』

 

「…………へ?」

 

 どゆこと? といった具合の俺を見つつ、グラハムはそのまま話を続けていく。

 

『今回君は、この敗北から自分の実力のなさ、そして悔しさの涙を流した』

 

「いや泣いてはないんですけど」

 

『黙って聞け』

 

「はいっ!!」

 

 珍しく真剣じゃん…………珍しく(重要)

 

 ちょっとビビって声上擦っちまったぜ。

 

『この敗北は、ただの敗北ではない。君を大きく飛躍させられる敗北だ。なぜ負けたのか、なぜこうなったのか。そして、どうすれば勝てたのか。考えることが多くあるはずだ』

 

 なぜこうなったのかに関しては十中八九お前のせいだと思うんですがどうでしょうか? (正論)

 

 でもグラハムの言うことも一理ある。俺がどれだけ出来ないのかは今日一日でひじょーによくわかったし。弱点がわかれば、そこを今後改善するという目標が出来上がるわけで。

 

 こう考えるなら、案外今回の果たし合いもなんだかんだで悪くないかもしれない。

 

 もしかして、グラハムはそれを考慮した上でこんな形の勝負を挑んだのか? いやないな。それは絶対にないわ。考えた俺がバカだった(本日二回目)

 

 まぁ…………でも…………

 

「ありがとな。グラハム」

 

 こいつがいて助かった。本当に。

 

『礼には及ばんさ。これが私の役目なのだから。なので少年のフィギュアを壊すことに関して免除してもらいたい』

 

「それは拒否します」

 

『何故だっ!?』

 

 そこはしっかりと区別するわ。確かにやって良かったとは思ったけどそれは結果論。罰はしっかり受けてもらう。

 

「んじゃ帰るか。そろそろ帰らんと母さんにマジで怒られそうだし」

 

『ま、待ってくれ!? どうにか、少年だけは!?』

 

「聞こえない~な~」

 

『カヅキィィィィィィ!!』

 

 けたたましい叫びに耳を押さえつつ、俺は演習室を出る。

 

 けどこの果たし合いを他の奴が見てなくて良かったぁ。見られてたら俺精神的に死んでると思う。特に女子に見られたら。

 

 さすがに同い年の女子にあんな醜態見られたら死ぬ。もっかい神様んとこに行くはめになってたかもだし。

 

「そこに関しては助かったって思っとくか」

 

『なんの話をしている! それよりも少年のフィギュアだけは五体満足でいさせてあげてくれ!! まだ来たばかりの5代目なんだ!!』

 

「知るかんなこと!! 俺は言ったからな次勝手にやったらそうするって!! それでもやったお前が悪いんだよ!!」

 

 わいのわいのと騒ぎながら、俺達は帰路についた。インストラクターさんかすっごい変なものを見る目で俺を見ていたのが悲しかったです。まる。

 

 

 

 

 





本当に誰も見てなかったんですかねぇ(伏線)

黒髪の表情に乏しい子が見てた気がする(ネタバレ)

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