漫才コンビ「母心」の嶋川武秀(43)が20日、富山・高岡市議の4年間の任期をスタートさせ、政治家との「二刀流」の第一歩を踏み出した。衆院選と同日選となった10月31日の市議選で1万1604票を獲得し、トップ当選。過去の最多得票(4556票)の2・5倍超えで、同市議選での史上最多得票を大幅更新した。政治家転身で、漫才師としての活動はどうなるのか。相方・関あつし(42)と共に今後を聞いた。
定数27人に29人が立候補した市議選で、嶋川は2位を約3000票引き離す1万1604票を獲得し、ダントツで当選した。高校まで過ごした故郷からの大きな支持を得たことに「注目を頂いた分だけ、しっかりと取り組んでいかないといけません」と早くも政治家らしく“答弁”した。
結成14年目の「母心」は19年の漫才協会「王座決定戦」で優勝。昨年からは落語芸術協会の寄席(定席)にも出演し、活動の幅を広げていた。そのタイミングでの嶋川の“立候補”。関は「シマちゃんが政治活動をしたいってなった時、一瞬えっ?ってなったけど、じいちゃんまで漫才を続けると言うので、だったら俺も応援するって…」。3年前に将来を相談し、「40代はいろいろ挑戦しよう」と決めていただけに、関も触発されて夢だった絵本作家として絵本を出版した。
嶋川は「私たちがやって来たことは究極の地域活性化なんですよ」と強調する。コンビ結成前から福島県に住み、全59市町村で独演会を開催。18年から3年間は、富山の北日本放送(日テレ系列)の「ワンエフ」(金曜・後6時55分)でキャスターを務めた。その際に地元の衰退ぶりを目の当たりにした。「衝撃だったのは、夜、商店街を歩いていて誰もいない。向こうから人が歩いてきて驚く、そんな感じだったんです」
反対もあった。「おぼん・こぼん」のおぼん(72)は関に「それはアカン、絶対コンビ続かん。お前らは漫才を続けなくちゃいけない」。心配する大先輩の声に関は、漫才を辞めないと約束、説得した。政治家と絵本作家としての顔を持つコンビ誕生に2人は「漫才でアドリブが出て、お互いに楽しんでいる。これが理想だよな」と効果を口にした。
嶋川は政治家としての初仕事に「高岡ポジティブ条例」の制定を掲げた。「一番肌で感じるのが、『昔は良かった』というネガティブな発想。そこで、地元の文句やそこに住む人の悪口は言わないとか、条例にしたいんです。ネガティブな発言があったら『条例違反ですよ』って言える。もし、反対するなら『あなたは違うんですか』と聞ける」。漫才師らしく、言葉の力で地元のために活動していく。(高柳 義人)
○…お笑い芸人の地方議会議員としては、漫才協会の先輩の漫才コンビ「青空球児・好児」のツッコミ・青空好児(78)が有名。世田谷区議で2003年に初当選し、現在5期目を務めている。落語家では三遊亭窓里(61)が埼玉・川越市議、三遊亭らん丈(62)が東京・町田市議として活動中。タレントのプリティ長嶋(67)は、千葉・市川市議(1期)から県議に転身。19年に3選を果たした。
◆母心(ははごころ)富山・高岡出身の嶋川武秀(ボケ)と茨城・日立出身の関あつし(ツッコミ)のコンビ。2006年から福島で活動し、08年1月に正式結成。12年1月に漫才協会に加入。同年、花形演芸大賞銀賞受賞。14年に漫才新人大賞受賞。